連れてこられたのは、立派な扉の前だった。

「ここって…。」

「ここの主様がおられる。迷子であっても、行くところがないのなら、しばらくここにいるつもりなのだろう?」

「えっと…。」

「いなくても、主様に挨拶しておいて損はない。それに、主様ならお前のこと知っておられるかもしれんしな。」

そう言った男はノックをし、中から許可の言葉を聞いて扉をあけた。

そこには、男が一人…いや、二人いた。

どちらかが主という奴でもう一人が秘書といった立場の人間だろうかと考えていると、隣に立っていた男の表情が変わった。

「貴様、どこから入った!」

剣を今にも抜こうとして、怒りをあらわにする男。どうしようとあたふたするボク。そんなボク達をみても笑っている男。そう、その男にはっとボクは気付いた。

少し前、この先へ行くようにと言っていた、森にいた怪しい男がそこにいたのだ。

「なんでっ?!」

「やぁ。」

相手もボクに気づいているようで、のんきに手をあげている。

「何だ。知り合いだったのか?」

「いや、全然。」

速攻で知り合いであることを切られた。確かに知り合いという程お互いに知らないのも事実だが、あんまりだ。

「さっき、森で出逢っただけ。迷子みたいだから、道にでたい、町へいきたい、そんな理由ならここへくればどっちも解決しそうだから教えただけ。この先まっすぐって。」

「そんなんでわかるか、馬鹿め。」

べしっと男をはたいた。

「主様…。」

「ああ、その者の案内、ご苦労だった。お前は仕事だろう?ここはもういいぞ。」

隣の男の反応から、あの黒い服の方がここの主様ということのようだ。

「問題ない。これのことは無視しておけばいい。どうせ、時間が来たら勝手に帰る。」

「ちょっ、相変わらずひどいね。こんなにも愛してるのに。」

その瞬間ぞわっとした。それは隣の男も同じだったようだ。

「主様…やはりその男は危険です!あのろくでもない女と同じぐらいに!」

そう言って、今度こそ剣を抜いた。

「ったく…ゆえる。お前も冗談はほどほどにしておけ。」

「ちょっと、それはないよ。俺は俺の心のまま、愛を語っているだけだから。」

「お前の愛は嬉しくない。だいたい、この前はゆうにも言っていただろう。」

「いいだろ。世界には美しいものがたくさんある。その美しいものをめでて何が悪い!」

「有害でしかないわ!」

そう言って、男は切りかかった。

「ほどほどにしておけよ、琴詠。」

斬撃を裂ける男。本気で殺す気の男。それに対してどこまでも冷静で変化のない男。

「それで、要件は何か?」

「あ、えっと…。」

とりあえず、自分のことがわからないこと。たぶん迷子であること。行く当てもなくて、むしろ帰る場所がわからなくて困っていること。全て話すと自身のことについて知りたいのかと彼は聞いてきた。

「わかる、のですか?」

「ああ。だが、わざわざ知る必要もないことでもある。どうする?」

 

それでも知りたい

それなら聞かない