進んでも進んでも、道らしい道はない。このまま行き倒れになりそうだと思うぐらい、進んでも木々が続くだけ。

さすがに疲れて休憩しようと、大きな樹の根本に腰を掛けると、誰かの声が聞こえてきた。

「おや、珍しいな。こんなところに客がくるなんて。」

そういって、ボクが腰かけた大きな樹の上から飛び降りる影があった。

あらわれたのは、見るからに胡散臭い男だった。しかも、身のこなしが一般人ではないし、そもそも、そんな恰好でこんなところを徘徊している時点でおかしい。

明らかに、こういった辺鄙なところを出歩くのに向かない、高そうな生地だし、所々にある装飾は高そうだ。

「それで、君はここで何してるんだい?迷子かい?ここは迷子が多いからね。あ、俺の名前はゆえる。よろしく。」

「あ、はぁ…えっとボクは名前もわからなくて途方にくれてただけで…でも、ある意味迷子かもしれません。」

「そうかそうか。それは困ったね。」

本気で困ったようにみえない男が、相槌を打ちながら、この先に進んだらちょっと面白いことがあるよと言って、その方角を見て男の方へ視線を戻したら、すでに男はそこにはいなかった。

本当にそこに誰かがいたのかもわからない。それだけ、曖昧な存在。

とにかく、どうしようもないボクはこの先を進んでみることにした。

 

風が吹いた

道が開けた