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何人かいる人たちが食事をしているのと、奥にある設備から、たぶんここは食事をするところなのだろう。 「奏鈴。すまないが、こいつに食事を頼みたい。」 「あら、どうしたの?おやまぁ…。」 「迷子のようだ。」 「そうなの。わかったわ。ちょっと待っててね。」 そういって奥へ行く女性。ここにいたらあとはどうにかなる。そういって仕事があるから悪いが行くと言って、男もどこかへ行った。 椅子に座ってぽつんと一人になったボク。 いい匂いから、少しおなかが減った。 「ほら。お口にあうかしら?」 そういって、出されたのは温かいスープだった。 とまどいながら、一口食べたそれはとてもおいしかった。はじめて食べたそれに、ボクはなぜか涙がこぼれた。 「あらあら、どうしたの?おいしくなかったかしら?」 とまどう女性に、ボクは違うと首を横に振って伝える。 ただ、温かい人からの好意がうれしかったのと、あたたかくて、ボクは『食事をしたことがない』という事実の意味を理解してしまったのだ。 それがまた悲しくなったのだ。彼女が悪いわけじゃない。むしろ、お礼を言いたい。 ボクはすっかり忘れていたが、ボクが望んだことがここにあるからだ。 「違う。おいしいんだ。おいしくてあったかくて…うれしい。だから、寂しくて悲しくて寒いんだ。」 矛盾。嬉しいのに悲しい。あたたかいのにさむい。ボクですらもう何が言いたいのかわからない。 けれど、その女性はボクを抱きしめて頭を撫でてくれた。 しばらくして、さすがに恥ずかしくなって離れたけど、子ども扱いして撫でる手に戸惑いはあるものの、お母さんという感じで少しだけ嬉しかったのは内緒にしておくことにした。 |