今も昨日のことのように、彼女との日々は思い出せる。

別れ方があまりにもひどいものではあったが、彼女と過ごした日々が霞むことはない。

むしろ、鮮明に覚えている。

やはり部屋でゆっくり彼女との過去の日々を思いながら、過ごそう。そう思った時だった。

ノックと共に、入室したのは琴詠で、珍しく慌てた風だった。

「どうした?」

「お休みのところ失礼します。街へ出た者の一部が、街で起こったトラブルにより、救助に向かいたいと思います。」

「わかった。」

「それで、ホーレインとネルタに同行を願おうと思いますが、ここの警備のことで、凛々の所在がつかめず引継ぎができないのですが…。」

要約すると、凛々がいないので、連絡をしてほしい、もしくは、凛々が行くのがいいということか。

「急ぎの所本当にすまない。凛々は…まぁ、いろいろあって今日は無理だろう。私が変わりにいるから安心してくれ。」

「…ですが…承知しました。お手数をおかけします。」

「琴詠も、街の者達のことを頼んだ。」

「はい。」

急ぎ出て行く琴詠。

「凛々は、間違いなく今日は寝たまんまだろうからな。」

さっき思い出したとはいえ、今日は彼女と出逢った、かつて凛々とも共に祝った特別な日だ。

彼女の死後、続くのは、凛々のかくれんぼ。

今日が終わるまで、凛々はでてこない。彼女なりに思うところがあるのだろうが。

「こんな日にトラブルとは…ここも本当に人が増えたものだな。」

 

 

部屋を出る

部屋のまま気配を探る