第
5章 西の白い神

 

 

 目が覚めたら、いつの間にか布団の中にいた。

起き上がって側の時計を見ると、時間は
8時。

外の明るさから考えて、朝のようだ。

つまり、自分は昨日あの襲撃からずっと寝ていた事になる。

「・・・やっぱり緊張感がないのかなぁ・・・。」

また迷惑をかけてしまったのだろうなとつぶやきながら、側に達烏が用意してくれたと思われる服を着て、下のリビングへ降りた。

 下に行けば、昨日と同じように皆すでにいた。それと、知らない人が三人いた。

「灯露さん、紹介しておくよ。こっちからキサ、イオン、ライシュ。

私の知り合いで、少しだけ今回の関係者。深い意味ではなくて仕事でね。

彼等はいちよう、人ではあって人ではない者で、夢管理局の特別所属の人達。」

「あ、始めまして、末永灯露です。」

鏡衣智の説明の後に、頭を下げていちよう自己紹介をしておく。

相手は知っていたとしても、自分が言葉を交わすのは初めてなので、礼儀として名乗っておく必要はあるだろう。

すでに鏡衣智あたりから名前を教えられていても。

「こんにちは、灯露さん。」

元気な少女は確かキサと言っていた。それをライシュという青年が落ち着くように注意している。

兄妹か何かなのかなと首を傾けてみていると、相手が見ていることに気付いて、場の悪さに顔を背けた。

 そして、彼等がここにいる目的は話し始めた。

「それで、私達は特別任務を受けて動く者でして、基本的には夢の管理をしないのです。

今回の任務内容は、見る事が出来なくて管理が出来ない閉ざされた夢の処理なんです。」

それを聞いて、ライシュと言う青年が何を言いたいのかすぐにわかった。

自分の、自分でさえも理解しがたい、思い出せない抜けた記憶の部分の事。

「灯露さんは、何かその夢で覚えている事はありますか?」

「・・・あまり、はっきりとは・・・。

起きた後は、もやがかかったみたいで思い出せなくなって・・・。

でも、何か暗い場所にいる事は確かです。

そして、自分以外の何かがそこにいるんです。」

そこまでしか分からないと答える。

そこまでは、ある程度の調査と、最近微かに見えるようになった彼女の夢と、ルウイがなんとか入り込んで見てきた光景の内容を聞いているので知っている。

それが、彼女を苦しめる原因となったもの。顔見知りだったら鍵となる者が生贄となり、物語が動き出した始まりの日の記憶。

やはり、間違いはなさそうだ。

 話を進めている間、鏡衣智が達烏に指示を出して、皐月達を含めた四人と邦陣と外に出ているように行って部屋から追い出した。

「では、一緒に夢の中へ行きましょう。よろしいですね?」

灯露の確認を取り、うなずいたのを確認した後、ライシュは立ち上がり、腕につけていたブレスを取り外し、それを変形させて杖にした。

「キサ、イオン。しばらくの間、器の方を頼む。」

「了解〜!大丈夫まかせてよん。」

「大丈夫です。彼女を見張っておきますので。」

「何よそれ〜?!」

仲がいいのか悪いのか。まるで、今の自分達と似ているなと思ってしまう灯露。

「とにかく、器に何かあったら、精神は戻ってこれないからしっかり、見張っておけよ?」

念を押して、鏡衣智の方を見る。

「それでは、しばらく彼女を預からせて頂きます。」

「わかりました。その間、この部屋は自由に使ってくれてかまいませんよ。必要ないとは思いますが・・・。」

「いえ、何者にも邪魔されない事に越した事はありませんから。」

そう言って、鏡衣智も部屋から去って行った。

残された灯露は多少不安があったが、この三人が
h自分に害を成すようなことをするとは思えないので大丈夫だと言い聞かせて、相手を見た。

どうやら、始めるらしい。

「夢を司りし我等の名において、夢への扉を開き、彼の者の夢へ。」

ライシュの言葉は灯露の頭の中に直接響いてくるようだった。

そしていつの間にか、周りはあのリビングではなくなり、不安定な空間にいて、足元には二人を囲うように魔法陣と言われる紋様が淡く光を放って存在を知らしめていた。

 

 “ シンザー・オーパス ”

 

彼等の言葉で『同じものを共有するためにその場所への扉を開く』。

つまり『夢への扉を開いて共用する』と言った意味。

 ライシュが持っていた杖を紋様の中心で突いた時、空間はゆがみ、扉が現れて開き、二人を飲み込んだ。

 夢の世界へと、二人は足を踏み入れたのだ。

 

 

 

 その頃、外では郁が出てきた鏡衣智をにらみつけていた。

どうしてあの得体の知らない三人の元に残して出てきたのかと怒っている。

邪魔をしたら悪いからと言っても、聞いてくれる様子はない。まぁ、別にそれで気にする男でもないが・・・。

「で、どうするつもりですか、鏡衣智。昨日同様、彼等はまだ近くに・・・。」

「そうだぜ、匂いが離れていないから。」

昨日の襲撃した相手の気配がまだこの境内には残っている。

その事に三人だけではなく、四人も気付いていた。何せ、昨日より、明らかに気配を残しているからだ。

まるで、故意に自分がそこに存在しているのを知らしめるかのように。

「・・・今はまだ、気配を伺っている所・・・だと思いますから。

もう少ししたら仕掛けてくるでしょう。そのときに油断さえしなければ問題はありませんよ。」

「とかいいながら、昨日は灯露、危なかったぞ。」

「それを言われると困りますね・・・。」

確かに、それだけは鏡衣智には誤算だった。

そして、自己防衛で瞬時に結界なるものを創り出した事も計算外。

やはり、毎度の事ながら、自分の頭の中で予測している事は、ことごとく無に返されている。

無意味な予測となってしまっているのだ。

 かといって、そこで戸惑っている時間はない。

予測が自ら外れていくのなら、予測しなおせばいいだけの事。

それか、その時に合わせて対処すればいいただけ。今のように。

「動いた・・・。気をつけて、来る!」

鏡衣智の言葉に誰もが神経を気配に向けて集中して戦闘態勢に入った。

 

 

 境内は長い間続いた攻防により、かなり破壊されている。

だが、鏡衣智と烏達の結界により、実際には『壊れていない』のだ。

「あまり、長く続くのはよくありませんね。さて、どうしたものか・・・。」

『 それは、こちらとて同じだ・・・。 』

相手は『架乃』と名乗る風使いと『来琉』と名乗る雷使いだった。

 今は、お互い無闇にやりすぎても効果がないと判断し、様子み状態。

「で、どうするつもりだよ、旦那。」

「旦那と呼ばないで下さい、邦陣。それより、気を抜かないで、彼等の守護でもしてなさい。」

「・・・お前のような輩に守られるほど弱くはない。」

そんなところで言い争いもけんかもしている場合ではないのだが、まだ、郁は鏡衣智と協力しようとは思っていない。

「でも、このままではまずいよな・・・。で、そこで転んでるけど、大丈夫なんか?」

「はい、なんとか・・・。わてとしたことがこないなところでこけるやなんて・・・。」

かといって、のんきに話をしている場合でもない。

隙があると相手が感じたと同時に攻撃が再び開始されるので、気を抜けばこの世から簡単にさようならだ。

『 とにかく!恨みはないけど、我らが魔王様復活の為、犠牲になってもらう! 』

「ですから、そんなものには誰もなりたがらないといっているのに、どうして言葉が通じないんでしょうねぇ。嫌だ嫌だ・・・。」

「鏡衣智、あのようなものに同意を求める事事態間違っているぞ?」

「まぁ、いいけどね・・・。」

『 さっきから、本当、口がへらないな。しかも、いちいち文句ばかり・・・。 』

『 落ち着きな、来琉。あんなのいちいち相手にしなくてもいい。 』

『 そうだけどさ・・・。 』

 真面目なようで不真面目な今。

『 しょうがない、あれだ。それでカタつける! 』

『 おい、正気か?あれは・・・。 』

『 そんなこと、どうでもいい。今はあのむかつく男の始末だ。 』

そういい、覚悟しやがれと、いい、架乃も納得し、何かを始めた。

 何かの呪文のような言葉をつむぐ二人を見て、鏡衣智は烏達の顔を見て、あの術だとわかり、止めようと対抗呪文を唱える。

 その間、郁達は見ているだけしか出来ない。下手に動いても足手まといなのだ。今の自分たちは。

 そう、まだほとんどこのことに関与していても力がない自分達では、たとえ弱いとしても、力を引き出せず、使いこなせないので対処できない。

 ただ、この四人を見ているだけ・・・、そう、それだけのはずだった。

「・・・あれは・・・。」

風里には、あの二人がしようとしていることがわかった。そして、とても恐ろしい光景が頭に浮かんだ。

「あ、あれは・・・だ、駄目・・駄目どす、あれは!」

血相を変えて叫ぶ風里がただ事ではないと、今まで気にしていなかった邦陣は焦った。

 なぜならば、邦陣は感じ取ったのだ。風里の周りに漂う力の気配を。

 あれは、白い西の神、白狐のものだった。

「ま、まずい・・・、気付いてるやろ!鏡衣智!今は厄介だ、早く、急ぐんです!」

だが、間に合わなかった。風里からあふれ出た力が爆風を起こし、そこにいた全員を巻き込んだのだ。

「・・・我は西を守護する風の白狐、里風狐。闇を闇に返すため、参上した。

 覚悟するがよい、魔の力を手に入れし、神に背く哀れな王の部下どもよ。」

 西風の白狐、里風狐がこの地に戻ってきたのだった。

 

 

 

 あとがき

 

や、やっと一人目覚醒です・・・。

覚醒編のはずなのに、もっと早く覚醒するはずだったのに、延びに延びて・・・。

風里ちゃん覚醒!西の守護する風の白狐さん。

紹介文がやたら長いし・・・。





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