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現れた光によって銀色に輝く白い毛並みを持つ耳と七つの尾を持つ人の形をしたものが現れ、相手である二人は現れたときに起こった爆風に飛ばされ、一時撤退したようだった。 残されたのは、覚醒して姿を変えたままの風里と一緒にいた鏡衣智達。 「・・・久しいな、鏡衣智よ。」 「ああ、本当に・・・。貴方は相変わらずのようで・・・。」 口調まで違う彼女の様子に、どういうことだと雅季が尋ねると、どうやら、五十年前、つまりあの大惨事の関係者が風里の体を借りて、力を目覚めさせて、今はその彼が力をコンとロースしているのだという。 「それで、彼女はいつ『戻ってくる』んですか?」 「いい質問だね・・・。でもまさか、彼が体・・・彼女の意思まで押さえ込んで出てくるとは思ってもいなかったし・・・。」 「それは我のせいではない。おぬしが私の目の前で同じことを繰り返すからいけないのだ。」 「私のせいではありませんよ。あの二人のせいですよ。」 彼は五十年前、風里と同じように白狐の力を得たもので、今は亡くなっているが、力の継承者に伝える義務を持ちえていたために、意思だけこちらにというか、風里の中で眠って時を待っていたのだという。 そして、先ほどあの二人がしようとしたいたことが、五十年前にもおき、彼の大切な人の命を奪ったのだと教えてくれた。 風里は、彼と同調しているので、その光景が重なり、一部、過去の記憶を引き出し、それが覚醒のきっかけになったのだという。 「で、いつ戻ります?」 「もうしばらく待て。今、あのものと、話をつけている。」 そういい、今から邪魔するなよと釘を刺して、目を瞑って黙った。 全員、ただ、その光景を見ているだけ。
気がつけば、自分は自分の意識の中にいた。 自分の意識の中にいるとわかったのは、先ほどまで、目の前で彼等がいたからだ。 近づいてきた相手は、男か女かわからないが、男の方に近い目つきの鋭い人。 「・・・改めて、お初お目にかかる、風里殿。」 「あ、はじめまして・・・。」 なんとも奇妙な感じだ。どちらも、違うが同じ自分だったからだ。 「話はわかっているだろうが、力の受け継ぎの儀式だ。」 「はぁ・・・。」 彼は風里の額に手を当てて、そのまま時間を過ごした。 実際は、それほど時間はたっていなかったのだが、風里にはそう感じ取れた。 そして、あとで聞いてわかったのだが、彼は彼ではなく、彼女だということ。 だが、おかえりと迎えられてただいまと答え、そのまま家の中に入ろうとした風里はまだ自分が『耳と尾のある姿』である事に気付いた。 「あ、あの、どうやれば、これは・・・。」 「ああ、もう、ある程度風里さんが理解しているだろうから大丈夫だろうけど・・・。 言われたとおりやってみると、あっさり出来た。まるで何事もなかったかのように。 これで、自分は覚醒し、力を使えるようになったというが、いろいろ事前にためしておいて損はないという。 家の中に入っても、まだ灯露はあれをやっているので邪魔は出来ない。 今日みたいに、突然あのようになるのはいろいろとあるかららしい。 「とりあえず、うるさいあの二人と面倒くさがりな皐月君はあとにして、まずは君から始めよう。 そういい、灯露のいる部屋とは別の正反対側にある部屋へ羽梟だけを招きいれ、あとの彼等は外で待機するように命じた。 「・・・うるさいとは失礼な・・・。」 まだ、文句をいう郁。仲良くなるのはまだ先が長そうだ。 「・・・勝手に動かず、ここで待っていて下さい。」 そういい、烏達と邦陣は三人の両サイドに立ち、守の結界をはった。 中で二人きりなったことで、少し緊張をする羽梟。それもそうだろう。 「とりあえず、はじめよう。目を瞑って・・・何も考えないで・・・。」 指示通り、頭を空っぽにしていく羽梟。 「目覚めよ・・・南を守護する火の朱鳥・・・。 羽梟の意思の中に霧のようなもやがかかり始めた。そして、懐かしいような、自分と違う何かの景色が流れ出した。 「・・・始めよう・・・、これで終わらせるために・・・。」 羽梟の目の前に、といっても意識の中になのだが、知らないはずにもかかわらず、知っていると何かが感じた人が現れた。 「・・・初・・・なんじゃろうな・・・。あやつに良く似ているわ・・・。」 現れた人は自分を知っている。・・・羽梟はすぐに理解できた。 「・・・出来れば、繰り返したくはなかった・・・、すまぬな・・・。これを受け取り、今度こそ終わらせてほしい・・・。」 そういい、羽梟の額に手を当てて、何かをした。 「 わしは南を守護する火の朱鳥。名前を翔梟。 目を開ければ、あの人はいなくて、鏡衣智がいるだけだった。 「・・・どうやら受け継ぎは終わったようですね、羽梟さん。翔梟の力。」 「・・・たぶん、そうだと・・・。」 簡単すぎて、いまいち自分が変わった事も感じられなくて実感がわかないが、きっと何か変わったのだろう。 「これで、二人目、ですね。」 「・・・あとの人達は素直に『覚醒』出来るのですか?」 羽梟の勘が正しければ、あとの四人はこの方法で出来ないのだろう。 「ちょっと・・・無理だね・・・。」 「俺と風里さんはお手軽ってわけですね。なんかお買い得な大安売りみたいな感じですね。」 「そんなことはないんだけどねぇ。 なるほどと、その言いたい答えをいうと、正解と答えてくれた。 「あの石はあの二人自身しか今は扱えないからねぇ。困ったものだよ。」 苦笑しながら、外に出て彼等の相手でもしようと、扉をあけた。 「あ、終わりましたか?」 「ああ、なんとかね・・・。」 あとの四人の覚醒は時の流れに任せばいい。そう、鏡衣智は言った。 羽梟と風里の試験は、また別にあるのだという。 知りたいのならば、自分の中に眠る五十年前の継承者に聞けばいいと、いっていた。 「それで、灯露はどうなんだ?」 「大丈夫ですよ。思い出すだけ・・・ですから・・・。」 「それを拒んだからこそ、『消えた』記憶なんだろ?灯露をいじめたらただじゃおかないからな。」 「厳しいですね・・・。でも、大丈夫ですよ。彼女ならね・・・。」 この扉の先に灯露達がいる。だけど、まだその中に入る事は許されない。 今はここにたっていることだけ。扉があくのを待つだけ。
目を開ければ、懐かしい町並みがある場所にいた。 「・・・思い出しましょう。でないと、先へは進めません。」 そういって、先を指差す。 そこはかつて、『始まりの生贄』がこの世の空間から切り離された場所だった。 「さぁ、過去に戻って全て・・・全て、思い出しましょう。 そういって、手を引いて、足を進める。 「・・・ここ・・・。」 体が行きたくないと拒む。なのに、ルウイにひかれて、止まる事は出来ない。 ここは、戻りたくない場所。大切な人を奪った場所。あの憎い影がいた場所。 「あ、だ、駄目・・・ここ・・・駄目・・・。あいつ・・・あいつが・・・。」 それでも、ルウイは足を止めない。灯露に止まる事を許さない。 「思い出して、貴方の全てを。そして、進むべき道を進みなさい。 目の前に覚えがある二つの姿。 片方は幼い自分。そして、もう片方は・・・。 「・・・きー・・・ちゃん・・・。・・・守矢 貴一・・・。」 どんどんと、早送りのビデオテープのように光景がめぐる。 「これ・・・だったんだ・・・。いつも、思い出せなかったあの日のこと・・・。 辛いかもしれないが、思い出さなければならないこと。でないと、進めない。 自分は過去に同じ場所に立たされたとき、前に進まず足を止めた。 「・・・これからは貴方しだいよ・・・。一回、戻りましょうか・・・?」
あとがき この章、タイトルにあっていないし・・・。 灯露さんの過去がでてるし・・・。 やっと、思い出しましたー!ってことで、次はどうなるのか?! |