7章 館の主と黒い猫

 

 

 灯露はまだ、ルウイと供に、自分の『夢の中』にいた。

そして、あの日の出来事を、テレビで見ているかのように見ていた。

 迫ってくる影から逃げる二人。そして、つかまった二人。

さらに進み、自分が力を使っているのを見て、あれだけのことがありながら、やはり恐怖で自分から消し去っていたんだなと思いながらみていた。

 最期に、動かなくなった彼を見て、泣き叫ぶ自分。守りきれなかった大切な人。

 いち早く駆けつけてくれた優しい祖母と母。

 二人がこのことを隠すように、自分から記憶を消した事。

 全て、灯露は思い出した。

 

 ルウイは隣に呆然と立っている灯露にこれからどうするのかと尋ねた。

「・・・わかんないけど、このままじゃいけないと思う・・・。」

目からは涙が零れ落ちる。本人は不思議そうになんでだろうといいながら、服のすそでぬぐうが止まらない。

「・・・今は流すだけ流せばいい。整理がつけば、自然と止まるから・・・。」

そういって、彼女の好きにさせる。

 そこへ、何者かの気配を感じ、灯露を守るように背に隠し、誰だと叫ぶ。

「・・・そのように警戒はしなくてもいいですよ。悪いようにはしませんから・・・。」

現れたのは和装の少年だった。

自分達より少し年下に見えるが、目と持つ気配によって、『ただの少年』でないことぐらい、ルウイにはわかる。

「とりあえず、名乗っておきましょう。私は・・・和島 京。小さな店、『幻和館』の主ですよ。」

「その、店の主がどうしてこのようなところにいる?!」

そういわれてもしょうがないですねといいながら、いきさつを簡単に説明してくれた。

 ようは、自分の使役する『夢見鳥』という蝶がこのような不安定な空間へ従業員の一人をつれていってしまったのだという。

「・・・で、貴方は何者?」

「・・・そこまで説明はいらないでしょう?そういう貴方こそ、何者なんですか?」

それをいいわれればそうだが・・・。

ここへ来る事事態も外にいる二人によって追い返されるので、安易には入れないだが、それ以上に入ってきても自分は『普通の人』と見た目はかわらないのだから、『何者』という相手が自分の正体に気付いていることがわかる。

「ま、いいですけどね・・・。夢管理局のお嬢さん。」

「知っているんじゃない・・・?」

「・・・ルウイ・・・さんの知り合い?」

会話から知り合いではなさそうだが、ここへ来る事は自分たち以外不可能だとライシュによって説明を受けていた灯露は知り合いなのかと聞いてみる。

答えはもちろん『違う』だ。ならば、この人は何なのか。自分の過去の夢の続きなのか。

 だが、見覚えはない。

「見覚えがないのは当たり前ですよ。今日始めてお二人にあったのですからね・・・。」

心を見透かされている。

「・・・下手に考えたり口にしたりしないほうがいい。」

ルウイは灯露に耳打ちして、相手に危険な要素がないかどうか見極める。

「で、私は探しものをしていまして・・・知りませんか?」

「いえ、私達は知らないね。何せ、彼女の夢を共有するためにここにいるのだからね。」

「そうですか。・・・ここは彼女の夢ね・・・。」

そういうと、少年は二人に背を向けて立ち去ろうとした。

 そこへ、また別の来客が現れた。

「え?ね、猫?!」

「少々、待っていただきますよ、館主殿。」

「わぁ、しゃ、しゃべった〜?」

ルウイの後ろで目の前で繰り広げられる光景に何度も驚く。もう、何が起こっているのかわからない。

「・・・これは・・・紫音さんですか・・・。久しぶりですね・・・。」

「こちらも、久しぶりに会えてうれしいですよ。」

簡単な挨拶を交わし、本題に入る二人。どうやら、会話から顔見知りらしい。

「貴方の探しもの・・・近くにいたのでお届けに来たのですよ。」

そういい、何か一言、言葉をいうと、目の前に鳥かごとピーピー泣いている風里と同じ耳と尾を持つ少年が現れた。

「・・・これはこれは・・・、お手数をおかけいたしました。」

そういい、帰りますよといって京は少年と鳥かごのまま蝶をつれて視界から消えた。

 もう、何がなんだかわからない。

ルウイもこんなことがこの場所で起こるなど思っても見なかったのでどうしようか困っていた。

 そんな二人をみて、お邪魔した未定ですね、すみませんと頭を下げて、一言いった。

「鏡衣智さんがお待ちですし、もうこの夢は終わったようなので、戻りませんか?」

ルウイは知らないが、この猫は間違いなく自分達のことを知っている。

「と、とにかく戻る・・・。」

今はそれが一番重要だった。

 こうして、やっと灯露は『現実』に戻ってこれたのだった。

 

 

 戻ってきたあとも、やはりあの黒い猫はいた。あの少年はいなかったが、猫はいたのだ。

 しかも、鏡衣智が終わったことを知って中に入ってきたとき、猫のことを見て驚いていたが、うれしそうに、会えてうれしいですねといっていた。どうやら、間違いなく知り合いらしい。

「そんなことより・・・、キサ、どういうことかしら?二人・・・いえ、四つもの外のものを入れるなんて!」

「だってだってぇ〜、そんなこといったって、気配なかったんだもん〜。」

怒られて半泣きになるキサ。それを、猫は止めに入り、経緯を説明する。

 猫の名前は紫音といい、あの京という少年同様、鏡衣智の『同業者』ということ。

それと、あの場所へは自分達のような特殊な力をもつものならば目的の場所へ『飛ぶ』ことができて、その『飛ぶ』間に結界などにも引っかからず『飛べる』ことを説明した。

「・・・まったく、鏡衣智さんのように、はた迷惑な人が他にもこの世界に存在していたなんて、知りませんでした。以後気をつけます。」

「・・・そんな敵意を込めて言わなくても・・・。」

「す、すみません、私が貴方方の仕事の最中にお邪魔したのがいけなかったのです。」

紫音のことはルウイは気にしていない。

一番むかつくのは、その二人をひきつけた原因であろうこの男、鏡衣智なのだ。

「また、さらに嫌われちゃったねぇ。」

「普段の行いがよくないからだ・・・。」

郁の言葉はごもっとも。邦陣もうんうんと同意をこめてうなずく。

「邦陣、あなたは黙ってなさい。」

厳しい一括。さらに、ふがいない貴方にだけは言われたくありませんなどと言い返す。

それが何を意味するのか、邦陣はわかっている。

以前、敵の調査中にミスで操られたときのことをさしているのだ。

「とにかく、我々は一度戻って書類処理してきます。」

「また、灯露さんが同じように『夢を隔離』するならば、戻ってきます。

たぶん、もう大丈夫でしょうけどね。」

「えー、もう帰るの〜?」

三人は立ち上がって、帰る準備を始めた。といっても、リビングの窓を開けるだけなのだが。

「しょうがないでしょう?まだ仕事は整理しないと終わりではないんだから・・・。」

「そうだぞ。それにクレシスが何かやらかしてからでは遅いからな・・・。」

「はぁ〜。せっかく友達になれたのに〜。」

「友達だったら、また会いにこればいいだろ。」

そういって、窓ガラスのない場所をコンコンを二度たたき、捻じ曲がった空間から帰っていった。

「・・・あんなんでいいの?」

「あの人達はいつもあんな感じですよ?何せ、『人』を捨ててますからね。

ま、人じゃないのでいいんじゃないですか?」

 そういって、この話は終わりと強制的に終わらせた。

 しかし、あれだけにぎやかだった彼女、キサが帰ると、本当に静かだなと思えた。

だが、それは少しの間だけ。

「はぁ、なんで、別れがしみじみならないんだろうねぇ?」

目の前で繰り広げられる言い争いを聞きながら、ため息をつく。

「苦労しているみたいですねぇ。」

猫が共感してくれるが、それは人としていいのかどうか微妙なところ。

「そういえば、魅音さん、いいんですか?」

「あ、そういえば。すみません、私も帰ります。」

そういい、座っていたソファから下り、窓のそばまで歩いていった。

「魅音さんによろしく。あと、復活そうそう無茶はしないようにとね。」

「はい、伝えておきますよ。」

そういいながら、黒い猫もまた、窓の外へでて捻じ曲がる空間に吸い込まれて消えた。

「・・・いいのかなぁ。あの帰り方。」

だんだん平凡な日常から遠ざかって行くなと感じる灯露。

 だけど、この目の前にいる人は変わらない。

「それは、いいことかもね。」

 

 

 

 あとがき

 

黒い猫の紫音さんと幻和館の京さんの出張!

ここでばらしちゃいましょう、あの二人の正体。書いてある通り、鏡衣智さんの『同業者』です。

つまり、同じ『天界人』です。別名、『有翼人』って奴。

二人とも出張ありがとう。そして、本来の話に戻って頑張って下さい。

あと、続編書くか書かないかわからないけど、キサちゃん含める五人組!君達も出張ありがとう。

(お礼をいう私・・・なんだかなぁ・・・。)



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