もう、後戻りは出来ない 無意識の中で頭が考えていた +++ 第7章 烏が告げる協力者と今後 何故か灯露の家は本日集会の場となっていた。というより、交流会となっていた。 だが、あまり仲良くなれる気配は無い。 「あ、あの・・・。もうすぐ母が帰ってくるのでそろそろ・・・。」 「あ、もうそんな時間ですか。すみません、長い間居座ってしまって・・・。」 「あきませんどす。こない遅までおったら末永はんに迷惑をかけてしまうどす。」 慌てて立ち上がり、帰る私宅をする雅季、郁、風里の三人。それに続いてそろそろと羽梟も立つ。 残るこの二人は急ぐ気配はさらさら無い。 大人数では言い訳が厳しいが二人だけならまだ大丈夫だろうと、二人の事はほっておいて、四人を玄関まで見送ろうと部屋の扉を開ける。 「・・・悪いんだけど、まだ話が続くようだから、このまま神社に行こう。」 動く気配が無かった男がすんなり立つ。つくづく遊ばれているのではないかと思ってしまう。 「・・・話とはなんですか?しかも急に。」 「ここじゃちょっとまずいからね。だから神社に来てもらうんでしょ。 ほら、早く行こう。灯露さんのお母さんも帰ってきてしまうでしょう?」 話を上手く丸め込み、一同は家の外に出た。 「さて、行きますか。」 鏡衣智はどこからか細長い棒を取り出した。 よく物語に出てくる魔法使いが持つ杖のようにその棒には装飾品がいくつかついていた。 「我、契約名ゼルディスの名において、今我前に異空の門を開き導け!」 呪文と言われる言葉を言い、杖を足元に現れた紋章にトンと突く。 それと同時に紋章が光を持ち、風を生み出す。 「我と共に、仮の者達も導きたまえ。ゲーゼル=ディスト!」 魔術発動の鍵の言葉。唱えた後すぐに、異空間を開き別の場所へと移動する魔術。 更なる風が溢れ、一同を包み込み、その場から姿を掻き消した。 一同が風で周りが見えなくなる一瞬の後、見えた景色に驚いた。 間違いなく、ここは灯露の家前ではなく神社の家の中であった。 「そこら辺に座って。先客を呼んで来るから。」 何がどうなっているのかを判断仕切れてない為に、鏡衣智の言葉など耳に届いてはいない。 「・・・悪の王め。」 郁の口からはこんな言葉がもれる。神への反逆者が魔王で魔王を封じた男を悪の王。 郁には皐月同様に鏡衣智の事は疑い深く悪の王と言うべきに足りる人物なのだ。 そして何より、この中で一番強いと思われて油断できない人物なのである。 灯露、皐月、郁、雅季、風里、羽梟、そして鏡衣智。この七人が二度と起こしてはいけないと言われる事態を防ぐ鍵になる者。 深刻な問題だと受け止めつつ、自分で大丈夫だろうかという不安が押し寄せてくる。 鏡衣智を待つ間の時間が長く思えるほどに。 というのに、どうして自分の周りの人間はこうも緊張感と言うものを持ち合わせていないのだろうかと、ほとほと呆れ、反対に尊敬してしまう。 皐月に郁が絡み始めた頃、鏡衣智が戻って来た。一人の男と一緒に。 鏡衣智は普段と変わらずに空いているソファに座り、また男も続いて隣に座る。 「・・・さて、彼が皆に紹介しておかなければいけない、今回の関係者の一人。」 「「「――?!」」」 今度の事態の関係者はこの七人だけだと思っていた。そんな中に言われた一言だった。 「彼は白城 達烏。幻想種は烏。私の元へ情報を伝える仲介人。 私が魔王の復活を願う一派が動き出したと知らせてくれたのも彼。」 達烏は紹介と共に軽く会釈をして表情を変えずにそのまま座っている。 やはり、部下は部下。主人と似ている。この、感情を必要以上に表に出さないところが。 「で、彼が新たに知らせてくれた届けがあって、君たちに話が長くなりそうだから呼んだんだ。」 誰も何も言わずに話を聞く。 「魔王の復活を願い世界を支配しようと企む者。人から言えば悪魔だ。」 「そのまま、ですね。悪魔もまた、人ですか?それとも幻想人種ですか?」 「言い質問だね。雅季君の言う通り名前も人種もそのままだ。 ただ、悪魔は魔王の勢力が一番頂点に達していた時に遣えていた腕と足とも言われた者達。 奴等もまた、人ということを忘れた者。 そして、幻想人種でありながら、憎しみと悲しみとが溢れかえり己がわからなくなり自我が壊れた者。 まとめて、魔王に遣えたもの全てが魔であり、その中の一番勢力が強かった団体が悪魔。 今回の敵。」 知らされる敵の正体。この今を守り時の流れを止めない為には彼らを止めるあるいは消すしかない。 それを行うのが自分達。 「それで、さらにわかった事だけど、あといくつか封印を解くにあたって必要な事があることがわかってね。」 「必要な事・・・。」 「「――?!」」 鏡衣智に言葉を返した時、羽梟と達烏が同時に奥にある窓の方に視線をやる。 「来たみたいだ・・・。」 「来たようです・・・。」 二人の言葉と共に、窓をに向かい落ちてくる影。そして、粉砕する窓ガラスと飛び散る破片の音。 「・・・礼儀のなっていない方・・・ですね。人の家の窓の粉砕、どうしてくれるんですか?」 侵入者と鏡衣智の睨み合い。 そして、これから起こる事態が偽りでも物語でもなく事実で現実だと理解できた時でもあった。 侵入者は鏡衣智と同じぐらいの歳に見えるいたって近所を歩いていそうな男だった。 服装だけが明らかに違うものだとわからせてくれる。 「・・・貴殿等、鬼神の命令により、御命ちょうだいする。」 腰から灯露には物騒なと思ってしまう刀を取り出した。また、その刀が男には合わないように思える。 刀を持ち出す時点で何時の時代の人だよと突っ込みたくなるのでよけいそう思うのかもしれない。 「・・・いきなり現れて家を破壊して・・・。出来れば何者かを名乗って頂きたいものですね。」 「鏡衣智、ここは私にお任せを。」 家の破壊によって静かに怒る鏡衣智の許可を取り、達烏は一歩前に出た。 「・・・我、鬼神に仕えし四鬼。名を邦陣と申す。・・・主、一人で我とやる気か?」 「・・・ああ、その通りだ。邦陣とか言ったな、お前は私一人で十分だ。」 邦陣は達烏の言葉に怒りを覚えたらしく、切り出しに刀を振り上げて降ろす。 キィィ――――ン 金属がぶつかり合う音。邦陣の振り落とされた刀を受け止める。 「・・・悪いですが、目を覚ましていただく為に、こちらも・・・。」 達烏は刀を振り払い、持っている獲物を使い、邦陣を床にたたき崩す。 床に倒され、相手は動かなかった。達烏の持つもの。漆黒の長い棒のようなもの。 「さすが、達烏さん。相変わらず動きがいいですね。やはり黒水晶と半烏人だからですか・・・?」 「・・・両方、ですかね。」 達烏は倒れた邦陣から離れ、反対に鏡衣智が近付く。 「まったく、あっさりと呪術にはまってしまって・・・。 彼もまだまだですね。実力はそれなりにあると言うのにもったいない。」 やれやれと腰を落として邦陣を拾い上げる。そして、自分と達烏が座っていた場所に寝かす。 「・・・あの、その人・・・。」 「あ、彼?彼は邦陣。達烏さんのパートナー。」 「えっ?!」 一人驚く灯露。後の者達は平然と出されていたお茶をすすっている。 「・・・彼は邦陣、私の仕事の相方です。彼もまた、半烏人です。」 「って事は、敵かと思った彼は味方?」 「そうなるね。彼は悪魔によって呪術をかけられていただけだからね。 あ、そうそう、彼が来たから言っておかないと。 彼が侵入して探ってきてくれた事があってね。 ま、その時に誤って見つかってこの調子だけどね。 封印を解く最後の物は通信機で伝えてくれたからね。」 「今度は誰と関係があるものですか。そこの二人ですか?」 雅季は仲介者の二人を指差す。だが、鏡衣智はニヤリと笑みを浮かべて言い返す。 「雅季君、確かに君の質問はいい質問だけど、違うよ。 関係者はたぶん皐月君と灯露さんだ。まだ、どうとも言えないけど、確率は高い。」 「え?私ですか?」 「そう、確率的には二人だろう。それで、最後の物はね、『太陽と月』なんだ。」 「太陽と月・・・?」 何だそれはと意味を理解していないものならそう思うだろう。 石と封印者と生贄ならば、現にここに入るのだから問題はないが、太陽と月というものは持ってくる事が不可能だ。 「そう、太陽と月。全世界にそれぞれ一人だけという幻想人種の中では最強の称号とも言われる位でもあってね。 わかるように、太陽のような光と恵を与え、成長させる力と、月のような闇の中で全てを映し、眠りにつかせる力の二つ。 それを持つ者が必要だと言うわけだ。」 「私、太陽でも月でもないですよ?」 反論する灯露の隣では皐月が面倒くさそうに話も聞かずにあくびをしている。 「灯露さんはね、太陽の魔力を持つ者。皐月君は月の魔力を持つ者。 この二人が古から伝えられているある呪術を行うと幻といわれている何かが現れる。 それが、封印解放に必要な最後のもの。」 二人でどうやって何かを現すかはわからないと言われた。 しかし、この事がある以上、完全にこの話から抜ける事は不可能だ。 「・・・そう言えば、まだ言っていなかったね。 邦陣は烏としてまだ修行の身だけどね、達烏は修行を終えてさらに力をつけたものだからね、称号は天狗なんだ。」 「はいぃ?!」 話が飛んで急に言われた言葉。 一人大げさな反応を示して少し恥ずかしくて顔を赤く染めて下を向く。 どうして誰も驚かないのかと、反対にここにいる全員に不信感を抱く。 「これからいろいろと仕掛けて来るだろうから、気をつけて下さいね。 ほら、邦陣が元に戻ったって事で、事態の悪化を避けるために今まで以上に早く対策を立てないとあちらも危険ですから。」 「・・・。」 返す言葉がない。この笑顔でよくもまぁ、そのような事が言えるものだ。 下手すれば死ぬ事だってありえるのだ。 第一に、このメンバーでという時点で危ないのかもしれないが・・・。 「さ、もう遅くなりますから、帰りましょうね。」 神社から追い出された後、皆それぞれの家路へと帰っていく。 太陽が沈んだ薄暗い空には、一羽の烏が飛び交い、何かを予言するかのように鳴いていた。 +++ あとがきと言う名の言い訳 +++ 今回もお読みいただき有難う御座いました。 さてさて、これでメンバー全員集合。そして、第一幕の出会い編が終了となります。 いちよう、区切りをつけるために中章(終章)を次につけておきたいと思います。そちらに、全体の長いあとがきの言い訳を書きたいと思います。 これからも、気長に見守って下さるとうれしいです。 |