もう、知らないだけじゃいけない

 だけど、自分達で出来るかどうかもわからない

 不安がないわけではないんだ








 +++第6章 編入生は狐舞妓と梟操師








 あの後、雅季達の話はさらに続いた。

「人だという事を、自然の一部だという事を忘れてしまった愚かな人。」

「人が人だという事を忘れ、手放した時、人は消滅する。

これが自然界での掟であり、神への忠誠を誓う者の最低条件。」

郁は見た目に寄らずいろいろ知っていた。

「・・・あなたは、いったい何処まで、何を知っているのですか?」

「・・・。」

鏡衣智は答えない。皐月は窓の外を見やり、3人は鏡衣智を見た。

「・・・私は、神ではなりませんからね。何も、知りませんよ。ただの呪術師であり占術師である私からの忠告です。」

「・・・こたえる気は無い、と言う事ですね。」

「どうとでもどうぞ。

ただ、私が言えることは、あなた方四人が再び起こるあの大惨事を止める者となる、と言う事です。

そして、私もまた、あれに関わる者だという事です。」

今までの中で、一番恐怖を感じた鏡衣智の顔。

顔は何時ものように笑っているように見えるが、中が明らかに違う。顔と言う仮面で中を隠している。

雅季と郁もたぶん気付いているだろう。

「・・・ま、私も全てを知っているわけではありませんから、全ての事に答えて上げられる事は出来ません。

しかし、つい先日ある情報が入ったので四人に言っておきましょう。」

手の内を全て見せようとはしない男が急に話を出す内容。

「その人が魔王が復活するかもしれないと言う事を伝えてくれたんですけどね。

それで、魔王が復活するにはいくつかの事をクリアしないと封印を解く事が成立しないんですよ。」

「・・・魔封石と魔放石。そして、幻想人の5つの生贄。」

「その通り。私は半人ですから完全な覚醒者ではないので数には入りませんけどね。

皐月君と灯露さんは危ないのですよ。あなた方二人も狙われます。持っているその石を狙ってね。」

鏡衣智がそれぞれ指差すもの。

それは郁,雅季が共に身を守る物として、そして神を守る物としてもちつづけていたもの。

修道院に住む者としての証明でもある十字架だった。

「これが、石・・・?」

「そう、二人がそれぞれ魔封石と魔放石。四人が狙われるわけがわかったかな?

そして、私もまた例外ではないのだ。封印を解き放つ為に成立していなければいけない事の一つ。

封じ手がこの世から消える事。」

「・・・もしかして、鏡衣智さんが・・・?」

恐る恐る尋ねる声が震えながらだ。灯露の人差し指が震えながら鏡衣智を差す。

それを、普段と変わらぬ妖しげな笑みを浮かべてその通りを言ってのける。

「・・・さて、そろそろ遅いですね。あと、もう一つ言っておかなければいけませんね。

復活の為にすでに1つの幻想人が生贄として捧げられてしまいました。

残りは4つ。奴等が狙うは皐月君と灯露さん。そして、この地に近付くもう一人。

運命の輪とやらは、間違いなく進んでいるようですよ。ま、後1つがどうなるかは不明ですけどね。」








 朝日は昇る。人の世界では時間は止まる事を知らない。

 昨日の話が本当なのか、これから起こる事なのか。

灯露はずっと考えていて、眠った後も寝た気がしないほど目覚めがよくなかった。昨日の話のせいだろう。

「灯露、起きた?ほら、朝食冷めるよ。今日も神社へお迎えに行くのー?」

したから母の声が聞こえる。娘は昨日の理解しがたい現実に苦しみ悩んでいると言うのに。

灯露はいない母に小さく文句を言う。まぁ、言ってもどうにかなる問題でもないのだが。

 しかし、今はそんな事をして時間をつぶしている余裕はない。時間と言うものは待ってくれない。

すぐに流れていってしまう。急いで服を着替え、下に下りていった。

「遅いじゃないの。神社にも迎えに行くのに駄目よ?待たせたら悪いわよ?」

「わかってます。」

急いで朝食を口に入れて側に置いておいたカバンをつかむ。

「いってきます!」

灯露は慌しく扉を開けて出て行った。

「まったくあの子は・・・。」

困った子だと続けていい、ふとある事に気付いた。

「・・・灯露の・・・まじないが崩れかけている・・・?!」

彼女が気付いたまじない。

祖母がまだ生きていた頃、生まれたての灯露が自分では抑えられないほどの魔力を持っている為に、安定するまで封じておく事になり、今まで簡単なまじないをかけて封じられていた。

確かに彼女は魔女ではなが、祖母は偉大な魔女の血を引き、魔力も強かったので、血が繋がっている灯露が強い魔力を受け継いでもおかしくはないほど。

その為に、灯露は昔、命を狙われて殺されかけたのだった。

そして、灯露を助けようとした近所の少年が命を落としたという事態も起こってしまったのだ。

 誰もが恐れていた自体が起こってしまったのだ。誰も止める事が出来ず、ただ見ているだけだった。

その時の灯露を今のように元気付けられる者も声をかけられる者もいなかったぐらいだ。

 祖母はすぐに灯露の記憶を消し、再び強い魔力により封じた。

あのまじないだけでは駄目だと判断したからだ。だが、解けるのは時間の問題だと言っていた。

灯露が何らかの拍子に力を解放するだろうと。そして、記憶を取り戻すだろうと。

 彼女は魔女のような力はないが、祖母の側に長い間いたせいもあり、そういった事に敏感になっていた。

というより、祖母と同じ気配のするものを感じ取る事が出来ると言った方が正しい。

「最近の、おかしな空気と関係が・・・?」

不安と力になることができない無力さが彼女を襲った。

「まさか・・・ね・・・。」

きっと何かの間違いだ。彼女はそう言い聞かせ、いつもと変わらぬ家事に没頭しだした。








 学校では、ざわざわと普段静かな廊下にまで響くほどざわついていた。

今日、この学校に、灯露のクラスに編入生が来るのだと言う。

どんな子なのだろうかと、朝からどこからか仕入れた情報でざわついていた。

「・・・珍しい。今の時期になんて・・・。」

「そうだよね。始まってまだ一学期も終わってないしね。何かあったんじゃないの?」

担任が教室に入ってきたので、灯露は慌てて郁にまた後でと言って席に戻っていった。

「おはよう。皆はもう知っている通り、編入生が来る事になった。入れ。」

出席簿を教卓に置き、扉の外にいる編入生を呼ぶ。

「彼女は白藍 風里だ。確か、京都の方にいたらしい。この時期の編入は、急な両親の都合だ。

今日からは新しいクラスの仲間だから仲良くするように。白藍、席はあそこだ。」

指差す先はちょうど空いている灯露の後ろの席。しかし、そこは隣がいない。

「末永、すまんが今日の昼休みにでも、学校内を簡単に教えてやってくれ。」

どうしてか、皐月を学校へ連れてくるようになって、こういった厄介事が回ってくるようになった。

「はい。」

しかし、逆らえるはずが無い。素直に返事をしておく。それに、この子は皐月ほど悪い子には見えない。

皐月が悪い子という事ではなくて、普通の子だと言う事だ。

「よろしくね。えっと、白藍さん。」

「あ、はい。よろしゅうお頼み申します。」

少し間が出来てしまう。

この言葉はどこの方言だっただろうかと考えながら、普通の子でも大変な事には変わりないなと泣きたくなる灯露だった。

 昼休みがやって来た。灯露は風里と一緒に昼食を取る。もちろん、郁と皐月も同じ席だ。

「本当に申し訳ないどす。」

言葉もその姿も申し訳なさそうに灯露に言うものだから、何故か灯露の方が悪いようで気が使いすぎて窮屈だった。

 風里。彼女は京都の方から来た舞妓見習さん。

こっちに来てからは標準語を話せるようにしているらしいが、それがかえって中途半端な言葉になり、理解しにくい言葉が出てくる。

それを、聞き返すほど灯露には勇気も無い。はぁと、本日何回目かのため息が出た。

 学校内の簡単な案内をする時は、郁と皐月の目つきから怯える風里のことを気遣い、灯露は二人に教室で大人しくしているように言っておいた。

今ごろ何をやらかしているのやら。少し心配な事も残っているが、今は気にしないでおこう。

「で、ここが図書館。だいたい学校のある日は開館しているからね。あ、これが貸し出し証明書になるから。」

と、思い出したかのように生徒証明書を出す。一人五冊までだよとつけたして。

五冊と言っても、全校生徒の半分以上はここを利用していない。

結構広く、多種多量だと言うのにもったいない気もするのだがなといいつつ、灯露も今のところ利用した回数は指で数えられるほどだ。

 その後、食堂や進路指導室,第二職員室を回り、予鈴が鳴ったので教室へと戻って来た。

 戻ってくると、すぐさま郁がやって来て腕をつかんできた。

気に入られているのは確かに悪くは無いのだが、このあからさまな風里と皐月に対する殺意はどうにかならないものかと、またため息をつく。

 やっとの事で長い一日が終わろうとしている。しかし、まだ日は沈みきっていない上に帰路の道が残っている。

しかも、まだ家までの道があやふやな風里を近いからといって送っていくように言われてしまった。

「あ、申し訳ないどす。」

しかもこの調子だ。迷惑をかけて悪いと泣きながらついて来る。

一緒にいる自分がいじめたように見られるし、何よりこの集団で入るのが恥ずかしかった。

だんだんと増え、そしてめちゃくちゃなメンバーとなりつつある灯露の周辺。

数えるのも面倒になるほどのため息がまた灯露の口からこぼれだした。

「末永はん、今日はほんまにありがとうどす。」

家につき、ご丁寧に頭を下げる。

ついたその場所は、つい最近引っ越して空家になっていた灯露のお迎えさんだった。

「せやけど、まさか末永はんみたいな優しゅうして下さる人が御近所さんやなんて、うれしゅうどす。

明日からもよろしゅうお頼み申します。」

そこまで改まらなくても良いのだが・・・。灯露自身の方が恐縮してしまっている。そして、気に入らない郁がさらに強い殺意のようなオーラをまとっている。
「・・・鏡、衣智さん・・・。」
そんなところへ、ふと視界にはいった人物。呟く名前から全員が同じ方向を見る。

やぁと言いながら手を振る。

「現れたな、全ての悪の元凶めが。」

昨日の話で完全にさらなる強い警戒心を抱かせてしまったようだ。

雅季も鏡衣智の神出鬼没さと読めない感情を警戒しているようだ。

「まったく、それは酷いんじゃないのかい?せっかく紹介しておくべきだと思ってわざわざ出てきてあげたのに。」

「誰もお前など呼んでおらぬわ!」

「じゃぁ、いいの?昨日言っていたここへ現れるもう一人。」

先程までの威勢のいい声がぴたりと止まる。

「あ、先日は案内してくれはって、ほんまありがとうさんどす。」

「いいんだよ。ついでだったから。で、この子が言っていた幻想人の一人。」

「え、嘘・・・?」

四人は同時に反応する。まさか、この編入生が幻想人など誰も思いもしなかったからだ。

「嫌どすわ、こんなところで言わはるやなんて。」

顔を赤らめて手で覆い隠す風里。見ている限りでは本当にいたって普通の高校生だ。

ただちょっと転校先からでなのか言葉遣いがわかりにくいだけで。

「どうしたんだい?先程までの威勢のいいのがおさまって。まさか、気付かなかったのかい?

まだまだだね、君たちも。」

この期に及んでまだ挑発をするか・・・。

この後二人と一人の対立に巻き込まれないかどうか心配になる灯露。何より、これにも無関心な皐月。

これが、今後大惨事のキーメンバーだと思うと、なんとかなるのだろうかと不安が広がるばかりだ。

 そしてふと気付く。ここはまだ家の中ではなく外で、住宅がそれなりに立ち並ぶ場所の道端。

つまり、御近所さんにはこの声が丸聞こえであり、姿も見られている。

「あの、話は家の中でしませんか・・・?ちょうど、今日は昼から母は出かけているし・・・。」

灯露は通り過ぎて行く人の視線が気になっていた。

このままでは恥ずかしい。なので、家に無理やり全員押し込んだ。








 家に通し、それほど広くは無い自分の部屋に入れた。

さすがにこの部屋で五人はきついのだが、今はしょうがない。

リビングにいて母が帰ってきたときに何を言われるかわからない。

ここにいても同じ事だが、まだましだろう。

お盆に6つのカップを載せ、それぞれにお茶を入れて部屋に持ち込み、話を再開した。

「えっと、それでしたら、もう一度ちゃんと自己紹介しておかんとあかんどすな。」

風里は小さく何かを呟いて自己紹介を始めた。しかも、幻想人と呼ばれる理由と一緒に。

「白藍 風里、見習い舞妓どす。ほんで、幻想種は白狐どす。よろしゅうお頼み申します。」

と、白い狐に変化して自己紹介をした。灯露は危く持っていたお盆を落としかけてしまう驚きよう。

「さて、君たちも彼女に自己紹介をするんだよ。

今後、いろいろとお互い厄介になるメンバーなんだからね。

あ、私は呪術師の鐘貫 鏡衣智です。ま、言わなくても先日言いましたね。」

二人の自己紹介終了後、残りが続いて名乗る。

不本意ながらも、今後何かある時はお互い手を組む必要も出てくると思われるからだ。

「私は郁、日向 郁。近くの修道院で修道女見習いやってる。」

「私は郁の兄の雅季と言います。同じく修道士見習です。」

「・・・水沢 皐月。」

「あ、私は末永 灯露ね。いちよう、魔女らしいの。で、水沢は吸血鬼らしいのよ。」

と、一通り自己紹介を終える。

全くと言っていいほど、皐月は他人に対して何も関心も示さなければ、答え方も無愛想で答えたかと思うと口が悪いという最悪な状態。

どうにかしてほしいものだとおもいつつも、どうにもなりそうにないなと、今では諦め気味の灯露。

「でも、まさか白藍さんが関わるメンバーになるとはね。思ってもみなかった。」

「私もそうどす。今度、なにとぞ御迷惑をおかけすると思うどすが、よろしゅうに。」

仲良くなれるかなと思いつつ、他の人達とも仲良くやっていってほしいものだと願う灯露。

「さて、昨日の話の続きになるのだけれど。」

「話の続きですか?又何かあったのですか?」

警戒と疑いのまなざしを鏡衣智に向ける郁と雅季。完全に敵対心をつけていると思いつつも、話の続きを聞く。

「実はですね、彼女と同時刻にここへ来た少年がいましてね。

同じ学校でもう一人の編入生徒されていたと思うのですがね。」

「そう言えば、いたな。」

雅季はそのもう一人の事を知っているようだ。

「それで・・・、窓、開けさしてもらうよ。」

「あ、いいですよ。」

何をするつもりだろうと見守りつつも話を聞く。鏡衣智の話は窓を開けながらも続いていたからだ。

「もう一人。クラスが違っていたからね。今ここへ来る前に会って呼んでおいた。あ、来た来た。」

と、窓の外を指差す。見たその先には、一羽の黒に近い茶色の羽を持つ鳥がこの部屋目掛けて飛んできた。

「あ、あれですか?!」

「む、邪悪な気配・・・。窓を速やかに閉めるべきよ。」

「えっと、郁、そういう問題じゃなくてね・・・。」

「会っておくのも今更だからね。早い方がいいでしょう。座りなよ灯露さん。」

会話を一時終え、それぞれの場所にもう一度座った頃、窓から入って来た一羽の鳥が中に入り、瞬きの瞬間に人の姿へと変わった。

「彼が嵐山 羽梟君。見た通り幻想種は梟だが、その中の五大長だ。

ちなみに職業は操師だ。」

「まったく、鐘貫さん。ここ見つけるのに苦労したんですよ。

貴方が外に顔を出さなかったら見つけられませんでしたよ。」

それはすまなかったといいながら、反省の色は見当たらない。まったくこの男はと思う。

「これで、この地に封印を解く為の条件に必要なものがそろったわけだ。

後は相手の動きによるけどね。さて、今回初の封印が解けるかもしれない事態。どうなるかね?」

大変な事だといいながらも楽しそうで何処までが本気なのかいまいちわからない男。

第一に今何歳だという疑問が湧き出てくる。

 大惨事が起こった後、生き残った魔術師の神への復讐。

それをおさえ、封じた男が鏡衣智。いくら大惨事の後だといっても何百年も前の事だろうし、最低でも百はあるだろう。

だが、見ている限りではそうは見えない。こういった奴も狸というのか。

よく考えてみれば考えも全てまとめてたぬきだ。妙に一人納得していた。







  +++ あとがきと言う名の言い訳 +++

今回も太陽月守護(略)を読んで下さって有難う御座います。
今回は一気に新キャラ二名様追加です。狐と梟ですよ。しかも舞妓と操師。
舞妓の事はこれから調べないといけませんね。話し方もエセ京都弁。
こんなの遣うの舞妓さんぐらいっしょ。私の頭の中での処理では話す(涙)←ならするなよ。
しっかし、これから本当にどうなるやら。同じような言葉が最近続いている気がするわ・・・。やっぱ、今は平凡に近い同じ毎日だからだね。(と言う事にしておこう)
実際は私の文才能力の無さが原因なのでしょうが。これは私自身がどうにかならない限り無理なので。すみません。(謝罪)
いちよう、これで私の中での設定では最初のあとがきでの第一幕の三部が終わりなのかな?後一つつけられるのかな?後一つつけたとしたらあの人が表に登場と言う所だね。
その後は第一幕終了と言う事で簡単な次への繋げが入る予定。そしてとうとう!!物語の第二幕に入るのですよ。この物語のメインとも言う内容に!!これはあくまでも前置きなのだ!
はじめの方では、対決する事になるある組織の一派との対面と対決。そして、とうとう完全に解ける灯露の魔法の力!!いろいろな思いが交差する中、彼等は何かを知る。ということで予告終わりです。(これはネタバレなのか?ネタバレになってしまうのか?!)
それではまだまだ続きますので、これからもよろしくお願いします。(ぺこり)






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