現れた一人の男 何故か、彼の方が悪魔のように見えた きっと気のせいだろうけど、そう見えた だって、何の感情もなく、悪魔を消し去ったから その時の目が今の顔とは似合わないほど、笑っていなかったから +++第5章 兄は悪魔祓いの修道士 主の郁に逆らうゾンビには、悪魔が取り付いていた。 「さっきね、悪魔の気配がして祓い具を取り出していたら、別の気配があって、危ないと思って急いできたんだよ。」 手には妖しげな小さな壷を持っていた。 郁の兄はその後、壷の中身の水を相手にかけ、呪を唱える。頭に響く叫び声を残し、ゾンビもろとも気配は消えた。 「気配が薄くなった悪魔を仲間が助けてしかえしをしようとしたらしいね。 小さい低級のいたずら悪魔だったから簡単だったけど、だめじゃないか、郁。」 又出てきたと言う感じで相手を見る灯露。 しかし、今はそれより郁と皐月のことが気になる。 座り込んでいる郁に近付き、優しく腕で包み込む。 「ごめんね、水沢、すぐに止めなくて…。」 「ま、末永…さ…ん…。」 「お兄さんも来てくれたし、遅いから帰ろうね。」 何故か小さなことどもをあやすように言ってしまった。 だが、郁は気にしていないようで、反対に泣き付いてきた。 支えていた糸が切れたのだろう。今はクラスメイトではなく、友達なのかなと思えた。 「泣かれると、すごく困るんだけどねぇ。」 郁の肩を軽く持ち、体を離して言う。 「それにね、末永さんってのは止めてほしいなぁ。あまり、なれていないから…。」 それではどう呼ぼうかと悩む郁に灯露はそうだなぁと考え、『灯露』って呼ぶように言った。 「ひ、灯露…。」 呼び捨てにするのは郁にとって、勇気がいるようであった。 「あ、あの、ひ、灯露…。私と、友達になってほしい。」 いきなりで驚くが、根は悪い子ではないようだ。 性格に多少問題があるのかもしれないが、人それぞれ持つ心の闇もある為、もしかすると、皐月ともいつかは仲良く出来るのかもしれない。 ふと気付く、郁の兄の存在。すっかり忘れていたが、彼もいたのだ。 「あ、助けて下さってありがとうございます。」 すっかり言うのを忘れてしまっていたが、お礼は言ったので、やっと満足になった灯露であった。 忘れていたと言う事に対して誤る気配はない。 「いいよ、これが悪魔祓いの仕事ですからね。それに、郁も危なかったですから。」 もう一度頭を下げ、皐月の元へ行く。 「ねぇ、どうやったらこれはとれるの…?」 「…知らねぇ。」 「主に従えだったら、私の命令に従うのかなぁ?」 呟いた後、にこやかに皐月の頭をなでてお眠りと言う。 名前の呪は主への絶対服従。従うかのように、皐月は眠りについた。 そして、その後、光の鎖を消えるように念じると、透き通っていき、跡形もなく消えた。 「おっと。」 地面に崩れ落ちるのを上手い事受け止め、これからどうしようかとまた困り出した。 「どうやら、終わったみたいだね。」 声と共に現れたのは鏡衣智であった。 彼の笑顔を見ている限り、全てを知っていそうである。 ややこしい話をする必要がないのにはいいかもしれないが…。 知っている、つまり見ていたのならば、もっと早く助けてほしいものである。 「まったく、皐月君もいけない子だね。これだけ暴れちゃったら明日が持たないよ?」 「やはり、知っているみたいですね…。」 言葉を聞くや否、知っていると確信した。暴れたということは、先程の覚醒のことだろう。 知っていると言う事は、やはりどこかで見ていたのだろう。 「今日はやたらと遅くなってしまったね…。送っていくよ。」 と、腕に抱えていた皐月を肩に持ち上げ、灯露の腕をつかんで歩き始めた。 「ヤリスギハイケマセンヨ…。」 後ろを振り向かず、鏡衣智はそう言った。 小さくなり闇夜に消え行く三人の姿を見つづけた兄弟を、外の人声により気付いた神父が中に入るように呼びに来た。 次の日の朝、自分から皐月を迎えに行く灯露。 まだ二回目であるが、昨日の出来事のこをで知りたいことが多く、面倒くさがっている場合ではなかった。 「あ、おはようございます、鏡衣智さん。」 頭をぺこりと下げて、挨拶をする。それに対し、おはようと笑顔で返してくれた。 隣に立つ眠たく面倒くさそうな皐月に見習わせたいと思ってしまう。 「あのですね、昨日の事なんですけど…。」 早速聞いてみる。 「あの二人とは、知り合いだったんですか?」 「…。」 いきなり言って困らせたのかと、相手の目を丸くしている姿を見て思ったが、すぐに元の顔に戻り、答えてくれた。 「あの二人、ですか?二人はいちよう、皐月君や灯露さんと同じ学校なのですよ。この辺で結構有名な方ですよ。 両親がいない、または捨てられた子供なので、教会で修道女と修道士として過ごしているようですがね。 無茶さえしなければ、結構優秀な吸血鬼祓いと悪魔祓いなのですがねぇ。」 「あれ、本当だったんだ…。」 どうやら、郁がゾンビを操る事は本当のようで、皐月を退治する可能性が高いようだ。 「ま、皐月君は強いし珍しい子だからね。 簡単に祓われはしないだろうけど、注意しておく事にこしたことはないよ。 ま、本名さえ知らなければ大丈夫だけど。」 笑顔である。 鏡衣智の場合は、本名を知っていようとも、絶対に簡単に服従させる事が出来ないだろうし、反対に主を取り込んでしまいそうである。 ふと、腕時計を見て、時間が過ぎてしまうので早々と皐月の腕をつかんで歩き出した。 いってきますと、鏡衣智に言葉を残して。 「…元気でいいものだ。」 そんな二人を見送った鏡衣智は何かの気配を感じたのか、横目で何かを見た。 「…で、何の用だ?」 何もいないその場所に話し掛ける鏡衣智。 『わかっておられたか…、さすがですな。』 鏡衣智は横目で見た後、そこから声がした。 すぐに二人を見送った道に視界を戻すが、話すことを止める気配はない。 『動き出したようです、奴等の主の復活へ向けて…。まだ、時間はありますが、どうしたものでしょうか。』 難しい顔で少し考え、もうしばらく様子を見ているように言った。 「…灯露さん、どうやら巻き込んでしまうようだ。」 声の主は消え、鏡衣智も家の中へと戻っていった。 学校の校門を過ぎ、下駄箱で履きかえようとした時、名前を呼ばれた。 「灯、灯露、おはよう…。」 挨拶がだんだんと小さく消えるように言う声。振り向くと、そこには昨日あったばかりの郁の姿があった。 「おはよう、郁ちゃん。あ、郁ちゃんで良かった?」 「え、あ、私も出来れば郁の方が…。」 「じゃ、郁ね。」 そう言い、後ろに立っている忘れてしまいそうな兄に挨拶をする。 二人はにこやかにしているが、少し顔がこわばっているところがある。きっと、皐月が側にいるせいであろう。 「そう言えば、兄の事言っていなかったよね?」 「…そう言えば、名前をまだ聞いていないかも。」 「そんな奴なんかの名前なんか知っても何もならないぞ?早く行くぞ、灯露。」 相変わらず、口が悪い。この二人だからこそ、余計に悪くなるのかもしれない。 「あ、ごめんなさい。水沢が…。で、名前教えてもらえませんか?」 「僕は郁の兄で、雅季と言います。以後、よろしくお願いしますね。」 「あ、はい。私は灯露です。」 お互い自己紹介を終え、雅季は校舎が別棟なので、時間がないからと早々と歩いて行った。 残った3人は、同じ教室へ歩いていき、授業を全て受けた。 帰り、仲良く四人で下校した。もちろん、皐月と郁は一番端でそっぽ向いている。相当仲が悪いようだ。 隣に立っている雅季の笑顔も気になり、苦笑いをして、生きた気がしない。 帰るまで、このままなのだろうかと、早く家に帰りたい灯露。 「・・・で、この後どうしようか。教会でもいいけど、あの人もいないとね。」 「でも、この男の家には行きたくないわ!」 「俺も、お前等なんかを上げたくないね。」 意見がばらけてしまう。本当にまとまりが悪いなぁと、苦笑いするしかない灯露である。 「とりあえず、鏡衣智さんがいる方がいいのなら、やはり神社にしようよ。ね、水沢。」 「・・・。」 そっぽ向いて返事を返さない。 そんな奴の意見は聞かなくていいのと郁が言うが、やはりこの四人の中では神社にいくにあたっての意見を出す権利が強いのは皐月だろう。 だが、否定はしていないようなので、肯定ということで、四人は神社へ向かう事にした。 神社への石段を登り終えると、明らかに来ることがわかっていたように、鏡衣智が立っていいた。 「お帰り。さ、入って。」 四人を手招きして家に招きいれる。何処まで本気で何処までが冗談なのかわからない男。 顔は正常を保っている雅季だが、警戒を怠らない。 「それで、何のお話をしますか?」 「・・・。」 四人とも口を出さずに静まり返る。 困ったなと鏡衣智はつぶやくが、誰も反応をしない。 このまま一日を終えてもいいのだが、今朝の報告として、巻き込む事になる四人には忠告をしておかなければいけない。 「・・・一つだけ、忠告をしておきます。」 先程とは打って変わり、こちらにも伝わるほどの真剣な痛い視線を向ける。 「・・・あの悲劇が再び起こるかもしれません。」 冷たく突き放すような声。しっかりと四人に告げる予言者の言葉。 「な、何だと・・・?!」 警戒心が微塵も感じないほど動揺している雅季。 「あれが、あの魔王が、帰ってくるのか・・・?!」 「どうしたの?お兄ちゃん、何か知ってるの・・・?」 動揺する心を抑えて握る手をゆっくりと開き、一息ついて話す。 「そう、魔王だ。以前この地に君臨した魔術師の異名。 知っているだろう、何年も何百年も前にこの地が神の手によって全てを洗い流された事を。」 あれは過去の現実かどうかもあやふやな歴史。 それが関わってくるのだと言う。そして、雅季は続けた。 彼は歴史を記された書物を読み、あの時の事を知っていた。 実際の話かどうかは別として、このような事は起こしてはいけないと、起こった時には力を貸してほしいと神に誓ったぐらいだった。 「神の涙とも異名として言われているあの後。一人の魔術師が生き残ったんだ。」 「生き残った?人間達は全て洗い流されたはずじゃ・・・?」 「そう、記録としてはね。」 雅季が一息つく。そして、目の前に座っている男を見る。 何もかもを見透かしたような男。何処まで知っているのかはわからないが、自分よりは知っているはずだ。 それでも、雅季に説明をさせるところが、何を考えているのかがさらにわからなくなる。 だが、今はそんな事はどうでもいい。 「そいつは多くの人を見殺しにしたと神に恨みを持った。いつか、神に復讐をすると誓って。」 「復讐・・・。私と同じね。吸血鬼を全て亡き者にして復讐を遂げると言う私と。」 郁もいつしか落ち着きを取り戻していた。冷静のようで冷たい面差しを持っている。 「その魔術師はその後、多くの幻想人種を手にかけて力を吸収し、とうとう不老不死を手に入れ、最強の力を手に入れた怪人となった。いや、怪人ではなく、魔王だな。」 「だから、異名が魔王なのね。」 五人ともが黙り、部屋に窓からさした夕焼けでオレンジ色に染まった。 「・・・そろそろ、帰らないと親御さん達が心配するね。」 立ち上がる鏡衣智。そうですねと、続いて立ち上がる雅季。3 人は夕焼けの日差しの中、それぞれ家路へと戻っていった。 あの後、雅季が言った言葉。誰もが信じられなかった。 そんな事が実際にあったなんてと。確かに、幻想上の生物や獣がいる事は目の前にいるのだから信じているが、想像をはるかに越えている。 “ 魔王は神への復讐の為、人をも手にかけ、あの日以上に地が血で赤く染まった。 そして、とうとう神の領域に足を踏み入れ、多くの争いを嫌う天界人が消滅した。 魔王は、あの時すでに、神同等の力を手に入れていた。 ” 封じられていても、力が留まる事を知らず、今になり、復活を遂げようとしている。 灯露は、自分に何が出来るのだろうかと考えながら、家路を歩いて行った。 何か出来るのか。 しかし、今の自分は魔法という力を持っているといわれているが使えない方が少しがくがくと振るえる。 怯えているのか。あの話の事を。あの、魔王のことを。 まだ、耳に雅季の言葉が残っているからか。 +++ あとがきと言う名の言い訳 +++ 読んでいただきどうも有難う御座いました。 どんどん設定が膨らみつつある話です。うう、初めはもっと設定は薄っぺらかったのに。もう、ぺらぺらって感じで。いったいどこがどうなってこうなったのやら・・・と驚きものです。 今回は、話の結構深い内容が入っています。しかも、次へ持ち越し気味です。 まだはっきりと決まりきっていない設定も徐々に出ています。うう、早く決めなければ。しっかし、いったいこれはどうなるやらね。 もうすぐで出会い編として第一幕が終了予定です。そして、とうとう本当の内容の魔王や過去の事、そして灯露の魔法の力などなどと、出てくる予定です。そして、知られざる魔封石と魔放石の本来の力と扱い方が明らかに?! そして、どんどん謎が深まりつつ謎が明らかになりつつある鏡衣智さん!!私も彼は謎だー!!誰か教えて下さい〜。(情けない) 後、鏡衣智さんと会話をしていた何者か。今後どこかで出てくるはずです。同一人物かは微妙な所ですが・・・。たぶん同一人物でしょう。さて、今から予測してみましょう。今までの私のパターンから、彼は何者でしょう?! おっと、またもあとがきが無駄話で長くなってしまった。 と言う事で、今回はこれで失礼いたします。 それでは次の太陽と月の守護(略)で会いましょう。 |