| 第4章 満月の夜の覚醒と束縛 長い時間が経っているように思えた。 ずっと睨み合ったまま動かない二人を見る灯露は自分も動く事を忘れていた。 +++ 第4章 満月の夜の覚醒と束縛 「まだ、幼いようね。歳は見たまんまあたりね。その方が、払う時は楽だけど。」 そう言い、手に持つ十字架を上にかざし、真っ直ぐ下に振り下ろした。 「な、そんなのあり?!」 郁の持つ十字架の先は伸び、細長い剣のようになった。切れ味も剣と同じぐらいあるようだ。 彼女の足元の草が祓い飛ばされているのが見えたからだ。 「ね、ねぇ、逃げた方がいいんじゃ…。」 「俺が目の前にいる限り、あいつが気を失わない限り、逃がしてはくれないさ。」 皐月の言う事は確かに間違ってはいなかった。 「今すぐその首を切り落としてあげるわ!!」 そういい、郁は突っ込んできたのだ。逃げる事を忘れた灯露を横目に、邪魔だといい、押し倒した。 「…いった…、何す…って。」 灯露の視界には、長く伸びた十字架を振り下ろした郁の姿と、それを黒い手袋をはめた手で抑える皐月の姿があった。 「ちょ、素手でって何やって…?!」 けがするじゃないと言おうとしたが、鏡衣智の呪術が込められている代物だから問題ないという言葉で妙に納得できて言わなかった。 「っく、幼き吸血鬼の分際で…。」 「修道女見習いの癖に、その口の聞き方はどうかと思うけどね。」 相性が悪いのか、きっと仲良くなれそうにないなと思う灯露。 吸血鬼と吸血鬼祓いというだけでも、仲良くなれそうにないが、性格からしても、仲良くなれそうにはない。 「しょうがない、主に従い、仮の者を捕らえよ!!」 郁は一歩飛び下がり、大きな声で叫んだ。一体何が起こるのかと思ってみれば、ぎょっと驚く。 「う、嘘―?!」 現れたのは先程のゾンビであった。皐月の言ったとおり、郁がゾンビを操っていたのだ。 「まったく、うようよとうざいわ!!」 皐月はどうやら切れる寸前のようだ。そろそろ止めなければいけないと思い、慌てて立ち上がり、近付こうとした。 「―――?!」 郁の命令を聞かず、襲い掛かるゾンビ。 「ま、末永さん?!」 「お、おい?!」 ゾンビの力とは思えぬほどの力で押し飛ばされる灯露。二人の声は遠のく意識の中でかすかに聞こえた。 その時、雲をかぶっていた月が顔を出した。今日は満月であった。 なんでこんなことばっかり… あれ、体が重い、しかも痛いし… ちょっと、皐月。聞こえないの…? 重いまぶたをかすかに開け、ぼやけた視界で必死に探す。 「み、みな…わ…。」 再び意識は遠のく。かすかに見えたそこには、恐ろしく感じるまさに吸血鬼という皐月の姿があった。 灯露がこちらに近付いてきた時、主人の命令を逆らった奴が襲い掛かった。 どうしてか、助けようとしてしまった。だが、それは間に合わなかった。 「…末、永…灯…露……。」 側の樹に身体をたたきつけられ、ずるずると崩れ落ちる灯露の姿を見て、フルネームを呟く皐月。 うるさくて、いつのまにか家にいて、自分の本来の名を知られて嫌っているはずだが、これに怒りを覚えた。 抑える事は出来ない。雲に隠れていた月の灯りが差した時、皐月の中で何かがプツンと音を立てて切れた。 「…どいつもこいつも、まとめて始末をしてやるよ……。」 皐月の眼は血のように紅く染まり、歯は、目立たなかったはずだが牙とわかるように伸び、爪が鋭く伸びて尖る。 想像世界の怪人、吸血鬼が、満月の闇夜に降臨した。 闇夜を彷徨い、人の生き血を求める怪人、吸血鬼 狼男とも呼ばれる吸血鬼、満月の夜に本来の力を発揮する 決して、怒らせてはいけない 己の力尽きようとも、怒らせたものに対し、目的を果たそうとするからである 吸血鬼、日数を重ねれば強くなる 怒りも、回数を重ねるごとに、恐ろしく気迫だけで飲み込まれる 降臨した吸血鬼は、次々と意志を持たぬ者に襲い掛かり、無へと返した。 そして、一番の原因のゾンビには、すぐには消し去らず、苦痛を与え、もがき苦しみ声を上げようとも解放をしなかった。 最後には、全てをばらばらに解体し、一瞬で消し去った。 その光景を見て、何も言えず動く事は出来なかった。 次は自分に襲い掛かるとわかっていながらも、郁は動けなかった。あの時感じた恐ろしさと同じである。 幼い頃、自分を襲った吸血鬼と同じ。 「…もろい奴め……、次は、お前だ…。」 皐月が振り向いた先には郁がいた。いつ襲い掛かってもおかしくはない。 あの時の恐ろしさから、体が震え出す郁。 皐月がゆっくりとした足取りで、郁に近付いていこうとした。 一歩、一歩と近付いてくる。郁には皐月の姿を見たまま動く気配はない。 後数メートルと来た時、灯露は重いまぶたを開け、打ちつけた背中と腰をさすりながら立ち上がった。 「ちょ、み、水沢皐月!!」 少し姿が変わっているが、間違いなく皐月である。 灯露の言葉が耳に届いたのか、進める足をピタと止めた。そして、郁から灯露の方を向く。 「な、何やってるのよ?!」 慌てて走り寄る灯露。 明らかに吸血鬼だとわかる彼を見て、怖いと言う思いは確かにあるが、今はそれどころではないのだ。 「…ま…なが…ひ…ろ……。」 声も先程までの彼とは違い、直接頭に響いてくるように聞こえる低めの声は、人間のものではないと体が感じ取る。 「なん、で…?なんで、こんなふうに?戻って、日向さんを手に掛けちゃ駄目。」 今どうなっているのかはわからないが、あのままほっておくと、皐月は間違いなく郁を殺しているだろう。 ここから姿を消した彼らのように消滅の道を進むだろう。 「…どう…て、あい…つ…は…、俺を殺…そ…と…。」 聞き取りにくいが、なんとなくでわかる。 灯露は皐月の頭をぽんぽんと二回軽く撫でるようにたたき、笑顔を作って言う。 「もう、いいじゃない?日向さんはもう、水沢を殺ろうなんて思ってないから、ね?」 「…。」 しかし、皐月は意志を曲げようとはしなかった。やはり、性格に問題がある為だろう。 一度言った事、した事は曲げない子だと鏡衣智が言っていた事を思い出した。 「…離れ…て…ろ、あいつ…俺が…殺る…。」 「あ、駄目!」 だが、腕を振り払われて、よろけた拍子にその場に転んでしまった。 「あ、水沢!!」 殺ろうと座り込んでしまっている郁を見下ろす皐月。 その時、転んだ拍子にポケットから落ちたと思われる、メモの紙切れを見つけた。 これしかないと、紙切れを見て、手で握る。 急いで立ち上がり、もう一度「水沢」と叫び、注意をこちらに引かし、続けて叫んだ。 「契約の名の元、主に従え!ルナスティ・リアンディレイファル!!」 言葉と共に、自分の足元と、皐月の足元に模様が浮かび上がった。 魔法陣というやつだろう。 自分の足元の模様が消えた後、皐月の足元の模様から細い数本の光が飛び出し、皐月を捕らえた。 がっちりと、捕らえるその光は、まるで鎖のようである。 「…束縛の…呪…。」 「水沢、戻って…?」 そう言い、縛り上げられた皐月に近付き、首辺りに包み込むように抱く。 「…末永…灯…露…。」 「お帰り、になるのかな…?」 身体を離し、ニッコリと笑いかける灯露。皐月の姿は元に戻っていた。 しかし、そうゆっくりもしていられそうにはなかった。 「…危な、後ろ!!」 急に皐月が叫ぶ。気が抜けたように座り込んでいた郁もその言葉に反応し、我に帰る。 「ちょ、何あれ?!」 「あれは、まさか?!」 郁の命令を聞かないゾンビがまだ残っていたようだ。 「あれは私の操るものではない。悪魔が取り付いておる!」 それで納得が出来る。気が抜けていた郁が操れるはずがないのだから。 皐月も先程の命令無視の奴のことに関して納得できていた。 だが、納得できても襲い掛かろうと近付く奴に倒す手立ては今のところない。 「ひ、日向さん、これはどうしたら…?」 「わ、私は…。」 慌てふためく二人に誰かが言う。 「大丈夫、彼らには帰ってもらうからね。」 どこからか、一人の男が現れた。 「お、お兄ちゃん?!」 「え、お兄ちゃん?!」 なんと、登場した男は郁の兄だったのであった。 +++―――あとがきと言う名の言い訳―――+++ 今回、皐月君覚醒してしまいました。といっても、切れただけとも言いますが・・・ そして、教えていただいた束縛呪を使う灯露。きっと、これは全て鏡衣智さん何かで見ていると思うんですよね。確信犯だから。 そしてなんと、郁には兄がいたのです!という設定で次に進みます。郁兄がきっと悪魔付ゾンビさんを退治してくれるはずです。 が、なんという設定だと我ながらバカかと思ってしまいました。吸血鬼に魔女に呪術師の神主と、さらに吸血鬼祓いの修道女にその兄が登場。やはり、吸血鬼がいたら祓う人がほしいと思いましてね。この先も対立を繰り返す事でしょう。今から楽しみだわ(どこまで続ける気だ?!) そう言えばで、序章から言うのを忘れていましたが、これはほとんど、辞書で引いた語句の意味やこれ関係のサイトを参考に、こうならばこうなるんじゃないかと無理やり作り上げた話ですので偽物がいっぱいです。あらかじめご了承下さい(遅いって) 違うという苦情は受け付けませんので、言うのが遅いと言うのは受け付けます。(遅いお馬鹿がいけないのです、ぐすん)何より、話の感想は喜んで受け付けます。(話キャラの中傷や馬鹿にするような感想は却下しますよ、もちろんね。) それではまた次のお話でお会いいたしましょう。(会えるように頑張ります) |