家に帰り、味を感じない晩御飯を食べ、夢で覚めたらなかったことにならないかと布団に入り、眠りについた。

だが、目を覚まし、神社へ行ってみると、夢ではなく現実だとわからされた。

神社前には、まるで自分が来る事がわかっていたかのように、鏡衣智がまだ半分寝ている皐月を掴んで立っていた。

 笑顔でおはようと言い、お荷物を預けられてしまった。








 +++ 第3章 吸血鬼祓いの見習い修道女








 時間はまだ早いのだが、クラブ関係で早く来るものもいるので、一緒に歩いていて嫌であった。

皐月は気にしていないようだが、一般的に見ると風貌はいいので、注目されてしまうのである。

あげくに、自分が一緒にいると何あれと言う感じで文句をいうものもいた。

どうせ自分はおまけですよと言ってみるが、むなしくなってしまった。

 始めに、職員室へ提出しなければいけない書類を昨日の間に鏡衣智が仕上げてくれたので、渡すために引っ張っていった。

ここでは、やっときた皐月を見て喜び、つれてきてくれてありがとうと感謝される。

静かに過ごしたい灯露にとっては、当分皐月がいるせいで騒がしい毎日を過ごすだろうと肩を落とすのだった。








 やっとのことで、長い一日は終わった。

休み時間、昼、放課後と、皐月の周りにはギャラリーがなくなることはなかった。

しかし、早く帰りたい灯露は怒りのオーラを何とか抑え、笑顔で帰ろうと話し掛ける。

皐月はああと簡単に答え、カバンの中に授業ノートを詰め込む。

ギャラリーはなんであの女がと目の敵にされる。

目の敵にされる覚えはないのに、全ての元凶皐月を恨むことによって、怒りを抑えた。

 帰り道、ギャラリーがやっといなくなった頃。

「…まったく、どうして私がこんなことになるんだかね。というか、あんた性格かわってない?」

「別に、勝手に思い込んだのはそっちだろう?」

反抗的な言葉。昼も休み時間も帰りも一緒。他には聞こえないように言われる言葉。

はらたたしくてしかたがない灯露。出来れば、二度と関わりたくないと思う男である。

しかし、今となればそうはいかない。

大きな好奇心といろいろなことへの興味があり、ここから離れる事はできそうになかった。

「そう言えば、クラスではしっこにいた子。
確か日向 郁(ひなた かおる)だっけ?その子がすごい目であんたのこと見ていたけど、何かやらかしたの?」

「別に、何もしてはいない。第一、今日始めてあった奴に恨まれる覚えは無いね。

それより、わけのわからんお前がどうしてまた家にまで来るのかがわからん。」

「黙れ。好きで行かないよ。話を聞くだけだもん。」

何だかんだと言いながらも、皐月にも興味があった。

自分が魔女だと言うのは自分は今までと変わらず自分なのだからと実感はわかないのだが、目の前にいるこの男は吸血鬼だと言う。

自分より、この男に対しての方が興味がわく。

「…あと、忠告をしておいてあげるよ。鏡衣智には気をつけろ。それがあそこでの最大限気をつけること。」

「は?鏡衣智さんに気をつける?!」

聞き返すが、先に早足で歩き、答える気はあきらかにないと見える。

もう、と言いながら、灯露も早足で後についていった。








 神社の前まで来ると、玄関で鏡衣智が出迎えてくれた。

「おかえり。初日はどうだったかい、皐月君。」

「周りがうるさかった…。それより、君をつけて呼ぶなって言っているだろう?」

「年上に聞く口の聞き方じゃないよ。」

二人にとってはそれが当たり前なのかもしれないが、灯露にとってはどうしても皐月の言葉遣いに口を突っ込んでしまう。

「玄関で騒ぐのもあれだし、中に入ろうよ。それに、話の続きもしないといけないしね。」

二人の背中を押し、中に押し込む鏡衣智。

今日も上手く話を流されるかもしれないなぁと言い返せなくなっている自分を呪いたくなった。

 今日も、昨日と同じリビングへと通された。何か違和感を感じた。

微妙に中の家具位置や家具が変わっているような気がした。後は、皐月が起きているということだろうか。

「さ、今日も紅茶で悪いけど、どうぞ。」

「あ、ありがとうございます。」

お礼をいい、やっと話にうつった。

「皐月君はたまに暴走しちゃうからね、灯露さんには止め役になってほしいから、教えておくよ?」

昨日言っていた束縛どうのって奴のようだ。だが、その話がでるやいな、すぐさま皐月は嫌だと止めに入る。

「何でこんな奴に教えるんだよ?!」

「だって、君の周りに四六時中いるわけにはいかないからね。私だって忙しいんだよ。」

皐月もほぼ拒否権は鏡衣智には認められていないようだ。これに関しては仲間だなぁと親近感がわく灯露である。








 長い皐月と鏡衣智との口での対立は皐月が折れた事により、そのまま進む事となった。

「皐月君の暴走を止めるのは覚えていたらとっても簡単だからね。魔法を使わなくても、すぐに大人しくなるから。」

「確か、本名で縛るとか。」

「よく覚えているね。彼の本名は“ルナスティ・リアンディレイファル”って言ってね、長い名前なんだよ。

私もいちよう教えておくけど、“ゼルディス・フーガロ・メンテルティアス”っていう長い名前ね。

長いから皆相手が言うあだ名で呼び合っているんだけどね。

昔はね、本名は服従を誓う主人だけに教えていたんだよ。

普段使っていて、誤って呪を使われて縛られても困るからね。

あの日を境にして主との関係もなくなったからね、いらないけどあるんだよね。」

確かに、すぐには覚える事は出来そうに無い名前である。何処の国の人の名前ですかとつっこんでしまう。

しかし、幻想人種という空想の中なので別に問題は無いのかもしれないと一人で納得する灯露。

「契約の名の元、主に従えで本名を叫べばそれでいいのだけど、名前、覚えた?」

「…すみません、もう一度教えて下さい。メモして帰って覚えてきます。」

どこからか紙とシャープペンシルを取り出し、頼む灯露。鏡衣智はというと、熱心だねと感心した様子でもう一度教えてくれた。

自分の本名も何かあったとき、呼び出しに使えると言う事で、もう一度教えてもらった。

「明日も、お迎え頼めるかな?…いつまでもそこでぐれないの、皐月君。」

「…うるさい。」

どうやら、本名を灯露に知られた事がまだ気に入らないらしい。

わがままっこだが、すぐに気にしなくなるからほっておいてと言うが、本当にそうなのだろうかと、ソファの隅っこで二人の存在は無いかのように無視をしている皐月を横目で見た。

「あ、もうこんな時間か…。」

鏡衣智は自分の腕時計を見て、大分時間が経っていたことに驚いた。

「もう6時だし、親御さんに心配かけることになるね。」

「いいえ、問題はありませんよ。」

と言うが、話を長くした自分達がいけなかったのだからと、皐月に絶対命令を下し、外に出した。

つまり、皐月に灯露を家まで送っていけと言いたいのだ。

「…なんで俺が?」

「そりゃぁ…。」

「何だよ。」

「女の子を一人で暗い夜道を帰らすわけにはいかないでしょう?

それに、今日は灯露さんにとって危ない日だからね…。」

何か意味ありげに笑みを浮かべて言う。皐月はなんとなくわかったようだ。

「とにかく、行ってらっしゃい。」

二人を見送り、灯露より皐月の方が危ないだろうけどねと付け足して言うが、二人には聞こえてはいない。








 神社の階段を下りたところで、灯露は先程の気になる言葉のことを聞く。

「あれは、あいつの趣味の一部だ。そもそも、呪術師自体もほとんどがあいつの趣味だ。」

「しゅ、趣味?それはかわった趣味で…。」

「あいつは、呪術という名のごとく、呪(のろ)いも呪(まじな)いするが、占いもよくやるんだよ。

どうやってやっているのかは知らないがな。結構当たるんだよ。つまり、今日のお前は厄日となる。」

「は?何それ。」

とてつもなく間抜けな返答を返した気もするが、今は気にしないでおこう。

つまり、鏡衣智は今日自分があまりよくない事が起こると知っておきながら呼び出しをしたのだ。

「…やっぱり流されてる〜。」

そう思っても、また流されるのだろう。結局、自分は鏡衣智には敵わないのだ。

そこらにいるような悪霊でさえも、敵ではないのだろう。

 しばらく歩き、沈黙だった二人だったが、皐月は足を止め、辺りを見渡していた。

「どうしたの?」

聞くが、返事は返ってこない。

「ねぇ、どうしたのって言っているでしょう?!」

腕をつかんで耳元で怒鳴ってやった。

皐月は灯露の顔を見て何かを怒鳴ろうとしたが、口を閉ざし、かすかに聞こえる声でこう言った。

「人間以外の気配を感じた。」

ただそれだけを言った。だが、灯露に伝えるには十分なこと。

人間以外ということは、つまり、自分達のような幻想人種から明らかに人とは言えないもののことだろう。

これが、鏡衣智の言いたかった良くない事なのだろうか。

「で、どうするわけ?」

「さっきから薄々だが感じていたが、気配は強くなっているから、ここはあまり動かない方がいいかもしれない。

相手は何かわからないが、こちらのことには気付いているはずだろうからな。」

「何それー?!」

絶対に、この男が自分の災難の原因だと思う灯露であった。

しかし、そんな事を考えている場合ではない。

どこからか鼻にくる刺激臭がし、向こうの方から何かがやって来る。

「な、何よあれ?!ねぇ、あれは何、あれって、もしかしなくても、あれ?

でも、なんであんなものがこんなところをうろついているのよー?!」

だんだん近付いてきたそれは辛うじて人の形を保っている、よくホラー映画で出てくるゾンビであった。

「ねぇ、あれ、あれ…。これって夢?夢にしては学校もあってー?!」

混乱して何がいいたいのかわからなくなり、意味不明なことをいいだしている灯露。

 その間にも、彼らは二人に近付いてくる。一歩、一歩と歩み寄ってくる。

もう何がなんだかわからなくなっている灯露を見て、走るぞとだけいい、腕をつかんで反対方向へと走る。

 走っている間、何処からとも無く彼等は現れる。

そのたびに、彼らのいない方の道へと逃げる。まるで、行き先を誘導されているような状態になっていた。

「次から次へとうざい奴等だ…。」

「ねぇ、どうしてあれにつっこまないの?あきらかにあんなものがいてはおかしいでしょう?」

涙目になって訴えるが、相手にされない。

皐月にとっては、道を歩いていようとも驚く事ではないようだ。

やはり、呪術師をしている鏡衣智と一緒に暮らしてきているからだろうか。

たぶん、それ以外には考えられない。つい昨日、自分も黒い塊のようなものと遭遇している。

長い年月を共にしてたのならば、日常茶飯事であのようなものを会っていたのだろう。

「で、でも、どこまであれは追いかけてくるのよ?」

「知らん。あいつらを操っている奴に聞け。」

その言葉に何それとまた疑問形で問い返す。

どうやら、昔からも、ゾンビを操る者がいたようだ。

つまり、彼らを操って自分の使役にし、いろいろなことをやらせる。

主の命令には絶対服従で感情も無い為、扱うのは楽らしい。

しかし、今はそんなことを教えられてもうれしくはなかった。

 逃げる中、二人はやっと彼らは追いかけてこなくなり、一息をつく。

「で、ここはどこよ。どっかの教会みたいだけど…?」

「あいつらがたくさんいそうな場所だな。」

「え?じゃぁここにいるの?やだ、それじゃぁ、逃げる場所これ以上ないじゃん。」

しかし、これ以上走ることは出来そうにない。その場に座り込んで家に帰りたいと心でつぶやく。

 そこへ、教会の中から誰か出てきた。

「…どうやら、おでましのようだ。あいつらを操る親玉のな。」

「…愚かな罪人。私が闇へと葬り去ってあげましょう。」

現れたのは修道女の格好をした女の子。しかも、見たことのある顔の子。

「あ、日向 郁―?!」

そう、その少女はクラスメイトの郁であった。服装でわかりにくいが、間違いはない。

「末永さん、今すぐその男から離れなさい。彼は怪人、吸血鬼。取り込まれれば殺されるわ。」

郁の目は本気である。しかも、皐月の正体がばれている。

灯露はどうしたらいいのかと迷っているうちに、郁は吸血鬼に動きを封じられたのねと勝手に誤解をしたようだ。

「私は吸血鬼祓い、心配しないで末永さん。今すぐ助けてあげるわ!!」

そう言い、首に掛けられていた十字架を手に持った。

「鏡衣智が言っていた修道女見習いの女に注意しろってこいつかよ。まったく、厄介な。」

睨み合う二人の側で、どうしたらいいのかと、動けずにいた灯露だった。







 +++―――あとがきと言う名の言い訳―――+++
こんにちは。趣味でまくりの李紅の話を読んで下さってありがとうございます。感謝です。
二部の内容スタートです。予告通り?新しいキャラが登場です。というか、いいのかなぁ?これは…。
元気な修道女さん。何考えているのか謎っぽい。というか、考え方が危ない。きっと、料理を作るととんでもないものを作るのだろうなぁ。と、思ったりします。
こんなクラスメイト、いたらどうですか?良いですか?それとも迷惑?迷惑な方が多いかな?でも、楽しくなるかな?どっちだろ。どっちでもいいか。
という事で、今回も痛いところをつかず、流して次へとお進み下さいませ。(汗)





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