夢幻の世界。

  それは、人間が創りだした幻の世界。

  誰もが、幸せな夢を見て、夜のひと時を過ごす。

 

  もし、夢幻の世界が消えてなくなるならば、どうなるのだろうか・・・。

  夢を見ず、眠るだけなど楽しいものか・・・。

  夢と幻。どちらも、架空の世界。

  実際に実在をしているのかもわからない。

 

  水晶。それは、光を通す透明の石。

  未来や過去、別世界を見る占術師が良く使う物。

  なかでも、蒼紫水晶は特別。

  夢幻の世界のみで手に入る。

 

  夢幻の世界は悪・魔を持つ者は通さない。

  清らかな、透き通る心を持つ者にだけ蒼紫水晶を渡す。

  夢幻の世界から持ち帰ることは出来ない。だが、蒼紫水晶だけは持ち帰れる。

  それは、選ばれた特別な者のみだからだ。

 

  クライス・マスター。必ずもっていなければいけない品物の一つ。

 







      太陽の翼−夢幻の世界<前編>


 



 今日で、この神殿での朝は四回目。最初の日は、カルステが目覚めなかった朝。それから三日が経っている。

 理由は、体力・魔力の回復の為だ。三日も休んで、大分落ち着いてきた。

 


 静かに朝食をとる。ナオとマオ、そしてカルロは今だに会話をしない。カルロは、今、敵だった人物とここにいる為、二人以外でも話さない。

「う・・。最近ずっと静かやなぁ。ネア、俺こんなのいややで。」

と、隣にいるネアルドに小声で言う。人がたくさん来て、にぎやかになるかと思えば、その日からずっと静かなのだ。

「しょうがないですねぇ。」

と、紅茶を飲んでいる。しょうがないと言うわりには、顔は楽しそうだ。これのいったいどこが楽しいのやら。

 静かで長く思える朝食は終わり。ここにいるのは今日で最後。

「さてと、レンファさんの所に行きますか。」

と、ネアルドが立ち上がった。他の者も立ち上がった。だが、カルロだけは立たない。

「なぁ、あいつを封印すると言っているわりには、あの二つを持ってないんじゃないか?」

ガーディアンの三人は固まった。ミルフィア達は何の事かわからなかった。

「・・・そんなんで、本当に封印する気があるのか・・?」

カルロは呆れている。アクマルスがネアルドの頭をポカッとたたいた。

「しかし、すっかり忘れてましたよ・・・。でも、アクマルスも忘れていたんでしょう?」

「人の事はいいだろ、本を持っているのはあんたでしょ!」

なにやら言い争いをしている。というより、一方的にアクマルスが言っている。

 わかった事は一つ。ガーディアンに認められる以外にもしないといけない事があると言う事。

 


 最初の目的地を変更した。

 変更先は蒼紫水晶のある夢幻と呼ばれる異界にあたる場所。つまり、夢と幻の世界。

「どんなのなの、蒼紫水晶って?」

と、第一の疑問。水晶自体、見た事の無いのだ。昔、幼い頃に母親に見せられた絵本に出てきた。どても、不思議な感じで実際に見てみたいとおもったぐらいだ。だが、実際に見た事は無い。だから、とても興味が湧く。

「どんなのでもいいや。早く行こうよ。」

と、行く気十分だ。カルステはまた面倒な事が起こりそうでイヤだった。今まで、そうやっていつもまともに終えられたためしが無いからだ。

 だが、クライス・マスターの二人が行かないといけないらしく、しぶしぶ行く事になった。

「さて、行きますか。でも、ナオとマオ、そして、カルロ。君たちは僕の家でお留守番をしていてもらいますよ。あと、大勢過ぎても管理者さんに怒られますから、アクマルスとシュネルアもお留守番です。」

と言って、全員を風で包み込んで一瞬で別の部屋に移った。

「いらっしゃい、僕の家に。」

と、言う。どうやら、西の国らしい。しかも、ネアルドの神殿。

 


 最初は行くと文句を言っていたお留守番組。だが、すぐに待っていると言わせた。どんな手を使ったのかは知らないが、このネアルドが何かした事には違いが無い。やはり、ガーディアンと言うのは謎だ。

 五人と一匹が見守る中、三人は出発する事になった。

「さて行くよ。 異界の道を我が前に開け。 」

すると、三人の前に光が差し込み、道が出来た。その光に触れたとたん、五人と一匹の前から姿を消した。

 道に入り、夢幻と呼ばれる世界の扉をくぐったのだ。

「後は、帰りを待つだけね・・・。」

と、今はいない三人の姿がまだその場所にあるように見つめて言う。アクマルスは結構ミルフィアとカルステの事を心配しているのだ。

 

 光の道に手を触れて、一瞬でまわりの景色が変わって驚いているミルフィア。

「わぁ、すっご〜い。周りが鏡みたい。」

と言う。その通り、とは少し違うかもしれない。周りは鏡みたいにきらきらと輝いている透明の水晶なのだ。しかし、今捜しているのは蒼紫水晶。透明の普通の水晶では駄目なのだ。

「さて、まずは管理者さんにご挨拶をしないとね。」

と、言い、二人の腕を引っ張っていつものように風を操って空を飛ぶ。前のミルフィアならば、空を飛べたら楽しいだろうなと夢だけで終わっていただろう。今は、夢ではなく現実で空を飛んでいるのだ。

「私、ネアルドに会えて良かったよ。」

と、いきなり言う。ネアルドは優しく笑って私もですよ。と答えた。

 


 しばらく飛んでいると、ネアルドが何かに気付いたらしい。向こう側から何かがやって来ると言う。

「え?え――――――?!」

と、叫んだ。見えた物は、架空の動物と言われている、翼を持つ白馬、ペガサス。

「お迎えですね。カンナさんってば、私一人だとこんな事はしてくれないのに・・・。」

と、少し顔をしかめている。カンナとはきっとここの主の人だろうと思うミルフィア。カルステは最近可笑しな事ばかりが起こって大分お疲れの様子。

「さ、これに乗りますか。カンナさんのところまで案内してくれますよ。」

と、二人を乱暴に乗せてその後に自分も乗る。とても、窮屈だ。

『 ようこそ、クライス・マスターのミルフィアとカルステ。 』

と、ペガサスがしゃべった。驚くミルフィアだ。なんだか、こんな生活が今では当たり前のようになりつつある二人。

『 クスクス・・・。ペガサスはしゃべらないよ。改めて、僕はここの管理者、カンナルス・ケイフィル。以後よろしく。もうすぐつくから、それもでは辛抱してね・・・。 』

と言う。なんだかはしゃいでいたら笑われた。また子供っぽいと言う感じだろう。むくれるミルフィアだが、自分でもそうだと自覚はしている為、言い返せない。

 しばらくして、前方に何か浮いている岩の大群が見えた。階段のように上に上にと一段一段と続いている。さすがは、夢幻の世界と言われるだけの事はあるだろう。

「どうやら、ついたようですね。」

と、後ろからネアルドの声がした。どうやら、この岩の一番上にカンナルスと言う人がいるらしい。上を見上げると・・・とても高い場所にこの岩より大きな岩がある。

『 しっかりつかまっててね。ま、落ちそうになっても、そこにいる保護者さんが助けてくれるけどね。ま、助けないほど悪い人ではないから大丈夫だよ。 』

と言う。なんだかからかわれているように思えるミルフィアだった。

だが、すぐにそんな考えは吹き飛んだ。いきなり急上昇したのだ。しかも、スピードがさっきの二倍以上にもなっている。

「い、イヤ―――――。止めて――――――――。」

と、ネアルドの服をおもいっきりひっぱってつかみながら叫ぶ。

「ミ、ミルフィア・・・。首、く、くるしいです・・・。」

と、ミルフィアは恐怖のあまり、いつのまにか、ネアルドの服だけではなく、首にまで手を伸ばして思いっきりしめていた。服だけではバランスを保てないのだろう。

 だが、今のミルフィアにはそんな声は届かない。自分の叫び声で、ネアルドの声など小さくて聞こえない。

 そして、なんとか無事に上についた。ネアルドもミルフィアも死ぬかと思ったと同時につぶやいていた。

 ついた場所には人が住んでいるようには見えなかった。何にも無い下のより少し大きめの岩があるだけ。しかも、可笑しな事に、そこによくある扉が立っているだけだ。

この旅を始めてから可笑しな事や不思議な事は良くあるが、ここまで可笑しな事は無かったと思う。

「あれはね、主の住む神殿への入り口ですよ。さ、行きましょう。」

と、扉を開けて二人を中に押し込んだ。そして、ネアルドが中に入った時、扉は閉まり、そして消えた。

 

 中に入ると、真っ暗でとりあえず、道が光っていた。どうやら、これに従って歩いていけばいいようだ。

「で、でも・・・。なんでこんな・・・。」

と、ミルフィアはカルステにくっついてはなれない。一方のカルステは歩きにくいと顔をいがめている。そう、この道は、一本道。そして、道から外れると底の無い世界が広がっているのだと言う。

人間が見る夢の世界の全てがここにある為、落ちれば、ミルフィアのような人間には一生出れないだろう。

「大丈夫ですよ。いくら彼でも君たちを落としてほったらかしなんてしないだろうからね。」

と、笑いながら言っている。だんだんと、この人の性格がわかってきた気がする。

人の反応を見て楽しんでいる。しかも、わざとだ。最初はとてもイヤだとか思っても、親切な人だと思ったりしたのに。

まるで自分がバカ見たく思えてきた。だが、今はそんな事きにしていられない。

こんな所をいつまで歩けばいいのだろうか。いつまでたっても先が見えない。

 だんだんと、好奇心が恐怖心へと変わってきた。

「うわ〜ん、イヤだよ〜。」

と、叫びだしたのだ。こっちもイヤだとカルステは心で言っていた。





    次へ