太陽の翼−夢幻の世界 <後編>





 先ほどからずっと同じ道を歩いているように思えた。

「ねぇ、本当にこんな所をあるいていてつくわけ?」

「さあねぇ、彼が道を開いてくれない限りこのままでしょうねぇ。」

と言う。その言葉にミルフィアの体が止まった。道を開かない限り無理?ならば、今まで歩いていたのは無駄だと言うのか?

「ちょ、それじゃぁ、いったいどうやって・・・。」

と、叫んだが、途中でカルステの手で止められた。

「・・・一つ、いいですか。」

「ああ、何でもいいよ。僕に答えられる事ならね。」

と、いつもの何を考えているのかよくわからない笑顔。最初から、カルステはこの人の事はすきではなかった。

「・・・ここは、夢幻の世界と言いましたね。夢や幻の世界。ならば、ここの主であるカンナルスさんは取り込まれたりはしないのですか・・・?」

一瞬、ネアルドの顔が変わった。

「・・・答えにくい質問ですね。」

と、少し困ったような顔だった。だが、さっきの何かを考え、企むような笑顔は変わらない。

「ま、あえて言うならば、彼はある処置をしておくのですよ。主たる者、夢や幻如きに取り込まれていては仕事になりませんからね。強い思いほど、取り込まれやすい。

 だから、彼はちょっとした魔法を使うんですよ。しっかりと、自分の意志を保てるようにね。」

と言う。ミルフィアには何が何なのかさっぱりわからなかった。

「・・そうか。ならこちらもそうすれば、主の創りだしたこの幻想から抜け出せると言うわけだな。」

と言う。ネアルドは何か面白い物を発見したときのような感じでカルステを見、そして、正解とつぶやいた。

 こちらでは、全然話についていけないミルフィア。

「ね、カル。いったい何の話?」

と、服を引っ張って聞く。すると、簡単に、この場所から出て主に会いに行く方法だ。と答えた。

 ネアルドは一歩城に下がって、二人を見守っている。

「「 グルド 」」

と、言う。グルドとは、この世界でも古い言葉だ。意味は何者にも囚われぬ、強い思い、そして、心。

 この魔法は、強い意思がないと発動はしない。つまり、ここから出て主に会いたいという強い意思がないと成立しない魔法なのだ。この魔法の効果は、簡単に言えば『結界』だ。自分の周りに薄い膜のようなものを創る。そして、それが幻などを見せる物を完全に遮断する。

他の結界でも確かに可能なのだが、意思・心が弱ければ幻想に囚われる。身は守れてもその後に、幻想に取り付かれてはその結界は役に立たない。

 この結界だと、最初から意思と心の強さを知る事が出来、成立すれば完全にそういった物を遮断する事の出来る。

 この結界だけは、どんな優秀な使い手だろうが、心に弱さを見せたとき、成立しなくなる。つまり、失敗だ。

「おみごと。さすがですね。ま、そうでなくては楽しくも無いし、目的の物もお渡しできませんけどね。」

と、いきなり目の前が暗闇から一つの部屋の中に変わった。しかも、前には一人の人が立っていた。どうやら、声からしてこの人がカンナルス・ケイフィルだろう。

「さて、ようこそ、夢と幻の架空と言う名の世界へ。」

と、言う。後ろにはネアルドがちゃんといる。彼は最初からあの魔法を使っていた。周りがどうなっているかも全て『わかっていた』のだろう。

 最初から、暗闇と道は幻でこの部屋にいたのだ。

「ま、そんなに怒らないでくれるかい?カルステ君。試した事は悪いとは思っているんだからさ。」

この言葉がとてもむかついた。ネアルドと最初に会ったときと同じだったからだ。

 と、せっかく顔を合わせたかと思うと、いきなり、指をパチンと鳴らす。すると、床に穴があいた。夢幻の世界と言われている場所なのだから別に不思議な事は無いのだが、いきなり落とされては驚くし、迷惑だ。

「いってらっしゃ〜い。」

と、穴の上からもう今はいない二人に向かって手を振っていた。

「ったく、君はいつもやりすぎですよ。」

と、ネアルドは呆れたように言う。この顔をミルフィアが見ればどう思うだろう。

「別に、僕はあなたよりはましかと、思いますけどね・・・。」

と、ここで冷たいにらみ合いが起こっていた。だが、顔はいたってさっきとかわらずにこやか。だからこそ、周りの空気が凍り付いていて怖いと思う。

「まったく、僕の弟君は・・・。」

と、ため息をついていた。

 


 一方、そんな会話など知らず、そして、絶叫をしているミルフィア。

「カル〜〜〜!これは、どーこーまーで落ちるの〜〜〜?」

と、涙目になっている。それも仕方が無いかもしれない。さきほどからカルステの首にはりついて絞めている。

「ミ、ミルフィア・・・。た、頼む・・から・・・。」

と、必死で腕をはずそうとするが、そんな抵抗は逆効果だった。不安定になる為、さらにきつく絞められるのだ。

「た、頼む・・ら・・、う、腕・・・。」

しばらくは、このままになりそうだ。しかし、どこまで落ちるかわからない為、カルステも少し不安になってきた。このまま底が無ければどうなるのだろうか・・・?

 しかし、そんな考えはすぐに頭の中から消えた。なぜなら、ミルフィアの絶叫と、首を絞める力が強くなったからだ。

 


 ドテッと、何かにぶつかった。どうやら、底についたらしい。

「いてて・・・。もう、何なのよ〜。」

と、ゆっくりと上体を起こした。

「あ、あれ?カルステ、どこいったの?」

と、辺りを見回すがいない。どうしようと慌てだすミルフィアにカルステの声が耳に入った。

「い、いる・・・。そ、それより、のいてほしい・・・。」

カルステは落ちたときに首を絞めていたミルフィアの下敷きになっていたのだった。

「あ、ごめん・・・。」

と、顔を赤くして退いた。

「でも、これこらどうしたらいいんだろうか・・・。」

と、何も無い、ただ暗い闇が広がっているこの空間を見回すカルステ。ミルフィアもだんだんと不安になっていく。

「そう言えば、あの人は何がしたかったんだろうねぇ?」

確かに、そこが疑問なのだ。最初にここに来た時もそうだが、何か、「試している」ように思える。何を試したいのかはよくわからないが、きっと、それで認められないと出られないのだろう。

「まったく、何も説明なしとは嫌な人ですね。」

「え?どうしたの、カル。」

「ですから、あの人は自力でここから抜け出してもう一度あそこに戻って来いと言っているんですよ。」

と、さっきより声の音量を上げて言う。なるほど。と納得するミルフィアだが、すぐにどうやって戻るのだろうと、不安になる。こんなに暗いのだから仕方が無いのかもしれない。なにより、この闇はあの「洞窟」の闇みたいで嫌だったのだ。

 数日たっているが、まだはっきりと覚えている。あの光景。血だらけになっているカルステの姿。

「人間って、弱いなぁ・・・。」

と、ボソッとつぶやいた。

 

 二人は落ちてどれだけ時間がたったのかはわからなかったが、ずっとその場所に座っていた。シンッと静まり返った闇が広がるばかり。

「・・ねぇ、このままでれなかったらどうなるんだろう?」

と、小声でぼそっとカルステに言うミルフィア。ずっと、ここから出る方法を考えていたのだが、何も思いつかない。昔読んだ絵本やお話を思い出してもこんな時に使っている魔法などなかった。

「出ようと思えば出れない事は無い。」

と、言うのだ。この言葉に眼が点になる。どういうことだ?

 驚いて固まっているミルフィアの顔を見ながら、続けてこう言う。

「闇ならば、光で照らせばいい。」

簡単な言葉が返ってきた。確かに言っている事は間違いではない。

「光があるから闇が生まれる。光を飲み込むのは闇で、闇を照らすのが光。その光を身につけて照らせば抜け出せる。」

確かにその通りだ。ミルフィアはどうしてそんな簡単な事に気付かなかったのだろうかと思っていた。

「あ、そっか。魔法。使えばきっと出られるね。」

と言って、二人は立ち上がった。

 



「 チェンジオーバー・クライス 」

 



ティアラとクラウンの力を解放して自分の力とする。

 変身をして、魔法が使えるようになったミルフィア。カルステはどうやら変身をしなくても使えるようだが、この方が寄り確実に安定して使えるらしい。

 


『 深き闇を照らし出し、幻を絶て。



 光の神よ、我に今力を貸せ。これは契約、太陽の翼を我に与えん。 』

 


二人が同時に詠唱しはじめ、光が二人を包み込む。だが、すぐにその光はミルフィアの周りだけになった。

 そして、光はミルフィアの背中に集まり、大きな翼を創りだした。

「や、やった。カル〜、成功したみたいだよ。」

と、はしゃぐミルフィア。だが、すぐにその感情は冷めた。自分にはあるのにカルステには無いのだ。一緒に呪文を唱えていたのだが、カルステには翼が無いのだ。

「・・・け。」

カルステはミルフィアの反対側を向いて何かを言った。だが、小さすぎて聞き取れない。

「・・け、早く行け。」

と、言い、「契約の太陽の翼」に命令を下す。

「契約に従い、闇を照らし光の地へ連れて行け。」

すると、ミルフィアの姿はだんだんと光に包まれて見えなくなる。

「や、やだ、カル!どうして、ねぇー。」

その言葉を最後に、その場所から姿を消した。

「・・お前はそれでいいんだ。僕は僕でちゃんと戻るから・・・。」

 

 

 少し時間は前になる。ミルフィアとカルステが闇の中に落ちる前、幻想世界の入り口にあいつの姿があった。

「あの二人が水晶を手に入れるのを阻止しないといけませんね。ですが、しばらく様子を見るのも楽しいかもしれませんね。あの二人は本当にあの王子と姫とそっくりですからね・・・。」

と言い、扉の中に入った。彼には幻などなんともない。

 なぜならば、昔に心を消したのだから。心のない者に幻など見せても効果は無い。

「ですが、あの王子の生まれ変わりはさっさと始末をしておかないと後が困りますね・・・。」

と、暗い闇の長い道を歩いていた。

 ここの主が歓迎しない物は、自らの足でその場所まで行かないといけないのだ。

 


時間は少しずつ経過し、少しずつ動きが見られた。

 





     あとがき

 どんどんと得体の知れない展開へと。というか、急展開ですか?
 しかも、おかしな兄弟のにらみ合いなんかもありましたし。
 新たな敵もやってくるみたいですし。書いている本人も謎ですよ、これ。
 終わりはいったいどこでしょうねぇ(遠い目



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