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今日は、いつもの太陽は昇らなかった。なぜならば、ここは湖の中にある東のガーディアンである、アクマルスの住む神殿の中だからだ。 ガーディアンとは、中央にある大きな国を囲むように、東西南北にあるそれぞれの国を守護する者の事だ。アクマルスは東の国のガーディアンで、水青龍。 そして、もう一人。西の国のガーディアンであるネアルドもいる。 ティアラとクラウンとは、昔、この世界がハデアと言う男によって暗黒への道を歩もうと進みだしたのを、止めて封印した中央の国にいた王子と姫が残したと言われている物だ。 今は、このティアラとクラウンの二つはなぜかブレスレットのようになっている。二人のガーディアンが持ち運びが不便だとかで、形を魔法で変えたのだ。 こんな風に、ミルフィアとカルステの二人は、長い旅の始まりに希望と不安を抱えていた。 旅の始まりは、一つの出会い。
四人は食堂にいた。広い食堂にたったの四人だけ。メイドも使いの者もいない。 「次は、南の国に行こうか。しかし、シュネルアに会うのは久しぶりだねぇ。」 と、なんだか懐かしそうにネアルドが言う。アクマルスははいはいと適当に答えて地図を広げた。 「シュネルアって、南の国のガーディアンをやってる人?」 と、興味が湧いて聞いてみた。返事はイエス。 南のガーディアンは火赤鳥でシュネルア・マトールと言うらしい。 「だいたい、どのあたりに住んでいるんですか?」 「そうね・・・。この辺かしら・・・。」 と、アクマルスが指差した場所は西の国に近く、険しい山が連なっている場所だった。ネアルドも魔法はあまり使わず行くと言うので、ここまで歩きだ。 アクマルスはさっさと朝食をすませ、使いの者を呼び、用意をさせた。 「アクマルスは自分で用意しないんだ。」 と、少し嫌みっぽく言う。うるさい。とだけ返事を返されて、あとは何も話さなかった。 アクマルスは、昨日襲ってきた奴のせいで怪我を負ったが、今は完全に回復をしている。しかも、この二人をティアラとクラウンの主と認めたものの、まだ言っていない為、どうも会話をしずらいのだ。 この旅の第一の目的は、四人のガーディアンにティアラとクラウンの主として認めてもらう為でもある。
まだ、太陽が真上に来る前、四人は神殿から出た。行く支度が出来たので、いよいよ出発だ。 「後の事は、よろしくね。」 と、アクマルスが親しそうな、この神殿の使い人に言う。相手はかしこまりました。と言った後、御気をつけて・・・。とだけ言って、後は何も言わなかった。 出発した四人。今回は、予定通り歩き。ミルフィアだけは、ピクニック感覚で楽しんでいる。それが返って疲れると言う事はわかっていないらしい。 「青い空〜、白い雲〜♪」 と、音をはずして歌っている。一緒にいるこっちの方が恥ずかしいと思うアクマルス。カルステは結構長い付き合いの為、なれたのだろう。 「お、なんか発見!」 と、ミルフィアが何かを見つけたようだ。一目散に走っていく。三人は追いかけるが早い。どうして、普段は普通なのに、こういう時だけは早いのだろうか。 「まったく・・・。」 と、いつもながら振り回されるカルステだ。二人のガーディアンは面倒なので、その場で待っている事にした。そのうち、帰って来るでしょう。などと言って、アクマルスを引き止めたネアルド。 やっと追いついたカルステ。ミルフィアは気の根元あたりでうずくまっている。 「どうしたんだ・・・?」 と、たずねてみる。彼女の腕に有った物。それは、おかしな生物だった。 「こんなの見つけたの〜。」 と、楽しそうに言う。いったい、こんなのがあんな遠くからどうして見えるんだ?その視力の良さには驚く。 なんだかよくわからないが、旅のメンバーが増えたのだった。楽しくにぎやかになるが、問題と不安をも抱えている。
四人と一匹は暗く長い森の中を歩いていた。 「よし、この子の名前はルウだ。よろしくね、ルウ。」 と、さっき拾った獣型の妖精に名前を付けて楽しんでいる。なんと、このルウと言う妖精は体を変化させる事が出来るらしく、今は大きくなって四人を乗せて歩いている。 「ルウ・・・。ネーミングセンスないわね・・・。」 と、余計な一言を言うアクマルス。それには、カチンときたが、ここは何も言い返さなかった。今はうれしいのでそれでいいのだ。余計な事で怒るのもいやだったので、ここは我慢した。 「この子は、まだ幼期ですね。それで、人懐っこいのですね。もう少し大きくなれば、人間嫌いになってますね。」 と言う。このルウはカパリアンと言う種族の妖精らしい。妖精はどうやら人型と獣型があるらしい。最近、いろんな事を沢山知った。きっと、あのままの生活だったら知らないままだっただろう。 しばらく移動した後、ふと、ルウは止まった。それに二人のガーディアンも気付いた。何かの気配がするのだ。これは、人だろう。こんな森の奥深くなのだから、きっと、山賊だろう。 思ったとおり、気配の元は山賊だった。いきなり現れてナイフで切りかかってきた。 「危ない。何よ、この人たち?」 と、わかっていない者も約一名いた。 「 水 」 と、アクマルスが言うと、伸ばした腕の周りを水が蛇のように現れて掌から山賊目掛けて攻撃をする。それには、相手も驚いたようだ。 山賊も、一度決めたターゲットをそう簡単に諦めるわけにもいかない。攻撃はぎりぎりで交わし、相手全員をまとめて捕らえる方法はないかと考えて必死に対抗していた。 だが、それが甘かった。山賊は一瞬の隙をついてミルフィアの方へ行き、腕をつかんで首にナイフを突きつける。 「動くな!」 この一声で形勢逆転となった。動きを止めるしかないガーディアンの二人。 「それでいい・・・。野郎ども!こいつら全員縄で縛れ!」 と、指示が出た。どうやら、この男がここにいる山賊をまとめる人らしい。副頭ってところだろう。 「つれていけ。」 と、四人は腕を後ろに回して縛られたままどこかにつれていかれた。向かった先は言うまでもわかる。この山賊達の住家だろう。 しばらくして、四人は山賊の住家と言うような場所につれてこられて広い何もない部屋の中にいた。 「これからどうなるんだろうねぇ。」 と、結構のんきなネアルド。今の状況を本当にわかっているのか?と言いたくなるカルステとアクマルス。 結構のんきにすごしている四人の前に一人の男が現れた。いや、もう一人後ろにいたので二人になるか。一人はさっきの仕切っていた男だ。もう一人は・・・。 「初めまして。俺はナオ。この山賊の頭をやっている者だ。」 どうやらこの人が頭らしい。だが、まだ十代の青年だ。日焼けして額にバンダナを巻いてピアスをつけている。砂漠で仕事をしている人のようだ。 「あの・・・。」 と、言いかけるミルフィアだが、先にナオが言った。 「そっちのお姉さんとお兄さんは魔法が使えるんだよな?」 二人は確かにね・・・。と答えた。それ以上は答えない。 「頼みがある。ここ最近、雨が降らないせいで泉が枯れている。泉の水を元通りにしてもらえないだろうか。」 頼みを聞いてくれるのならば、何もしないし、出口まで案内もすると言う。どうやら、本当に深刻なもんだいらしい。 「まぁいい。今日はここで休め。明日また返事を聞く。」 と言って部屋を出て行った。扉は閉められた。しかも、鍵までご丁寧に閉めていった。そんな事をしても、この二人にかかれば簡単にでられるだろう。 「ねぇ、どうして話を受けなかったの?」 と、こちらの方が先に疑問として言葉に出した。 「だって、魔法はむやみに使う物でもないし、用がないときに使うと体力と力が消費されるだけでなんの得もないもの。それに、人をいきなり縛ってつれてきて頼まれたって聞けるわけないじゃない。」 と言う。確かにごもっともな意見。だが、どうもあの頭さんの顔が寂しそうだったのでほっておけなかったのだ。 「それに、何よ僕は、彼がまだ何か隠しているのでそれがあるから聞かなかったのですよ。」 と言う。隠し事。あの寂しそうな顔に何かあるのだろうか。 「とにかく、今日は野宿しなくてもよくなったんだしさ、寝ようよ。」 と言って、おやすみと言って寝たアクマルス。ネアルドもでは僕もとご丁寧に置かれている毛布を着て寝た。 「どうしてこんな状況で寝れるんだよ・・・。」 とつぶやいた。外はすでに綺麗な蒼い月が輝いていた。 結局寝れないカルステは部屋を出た。身長より少し上に小窓があり、そこから外に出た。外は岩場になっていたが、彼には何の問題もなかった。こんなのはなれている。 「本当に大丈夫なのだろうか・・・。」 と、さらに不安を抱える事となったカルステ。岩場の一番高い岩の上に座って月をぼんやりと眺めていた。そこへ、急に誰かに声をかけられた。 「すごいね、こんなところにいるなんて・・・。」 と言う。確かに、この岩場は普通の人間には危ないだろう。しかも、一番高い岩に座っているので確かにそう思われても仕方がない。 「でも、まさかあんな窓からこの岩場に出てくるなんて思わなかったよ。」 と言う。どうやら全部見られていたようだ。 「どうした?なぜ何も話さない。」 と、言うがカルステは一向に話す気配はない。ただ、ぼんやりとナオを見ているだけだった。 「ま、そんな事はどうでもいいや。それより、他の三人はどうしたんだい?」 「・・・てる。」 と、小さな声で答えた為、聞こえなかったらしい。 「え?どうしたって?」 「寝てる・・・。」 と、少しいらついたように答えた。よく寝れるね。と笑いながら言った。確かに自分でもそう思う。 「どうして何もしない。」 と、月を見たままいつのまに隣に座っているナオに言う。彼はクスッと笑いながら、別に生命をとろうってわけじゃないからね。と答えた。そして、独り言のように、長い話をしだした。
俺はね、昔は普通の家に住んでたんだよ。南の国の結構大きな街の息子でね。結構楽しかったんだよ。両親がいて、弟がいて・・・。 ある日、いつものように墓まで出かけていったんだ。 だが、その助けてくれた恩人は人間じゃなかったんだよ。結構年のいった妖精だったんだ。もう、あと一月はもたないらしい。 その後、街に出て、金持ちだけに絞って襲ったんだ。その時とかにさ、行き場を失った奴等がいたんだよ。毎回一人は今でもここに連れてくる。そいつ等は、今ここにいる山賊のメンバーだよ。 だから、泉の水は枯らせたくないんだ。妖精達がここに来て俺たちを守ってくれるかわりにこの水を渡しているから。あの恩人のような終わり方をさせたくないんだよ・・・。 と、長々と一人で話していた。二人とも月を見上げたまま何も話さず動かない。 しばらくして、カルステが口を開いた。 「別に、あんたは間違ってはいないよ。誰だって、別に生き方は間違っていないからな。ただ、正しい事だけではなく、間違いもある事にも気付かないといけない・・・。」 と言うのだ。それを聞いて、少し肩に乗っていた重みが消えたのか、先程のような寂しい顔ではなくなっていた。 「聞いてくれてありがとよ。しっかし、本当、話をしないんだな、お前。」 と、言われた。余計なお世話と一言言ってそっぽ向いた。 「別に、弟さんが死んだのはあなたのせいではないし、妖精の願いを叶えられなかったのも、あなたのせいではない。」 と言って立ち上がった。そして、続けてこう言った。 「もしその二人がここにいたら、過去は消えないし戻れない物。いつまでも、過去に縛られないで、前を見ろって。そして、自分の一番いい生き方をして生き抜けって言うよ。死んだ人は帰ってこないけど、死んだ人の為には、その人の分も生きないといけないから・・・。」 と言って部屋の方へ戻っていく。 窓からまた戻って消えたカルステ。その姿を消えた後も窓を見たままぼーっとしている。 「俺が励まされるなんてな・・・。」 と、顔は笑っていた。なんだか心が軽くなったように思える。 「なんか、あいつ弟みたいだな。」 |