ティアラ×クラウン×ガーディアン




昔々のある世界でのお話。世界には五つの国がありました。

東西南北と中央の五つ。東西南北にはそれぞれガーディアンと呼ばれる守護する者がいます。中央には、王子様と姫君がおりました。

しかし、ある日急に二人はいなくなってしまいました。

中央をまとめる二人がいなくなったことから、周りに有る四つの国も乱れました。これはすべて世界を黒く染め、支配しようと企むハデアが原因でした。

ハデアとは、姫君の事を深く愛していたのですが、行動がどうしても悪い方へ行ってしまい、王子様に中央の国への出入りを出来なくされ、北のはずれに有る洞窟の中に閉じ込めてしまいました。

それによって怒った彼は王子様を消して自分が支配しようと企んでしまったのでした。

だが、外へ出れない彼がどうやって二人を消したのかはわかりません。だから、一番疑わしい者でもつなぐことは出来ませんでした。

世界は乱れ暗闇への道を歩もうと動いていましたが、希望の光が残っていました。

王子様と姫君は中央の国の中で住んでいた神殿の中にティアラとクラウンを残したのです。

そのティアラとクラウンにはとても不思議な力がありました。それを狙う盗人や盗賊などがやってきますが、どうしても触れることが出来なかったのです。

これは、それぞれティアラとクラウンは認めた主しか触れられないと言うのです。

この二つの主がこの世界を元に戻してくれると誰もが信じて待ちました。

これを、中央を囲んで存在するそれぞれの国を守ってきたガーディアンが守るようになり、そしてふさわしい主を探し出すと言う事になりました。

時は二百年ほど立ちましたが、今もまだハデアは洞窟内の結界によって動けません。だが、結界は少しずつほころんできて、彼は時間がたてばきっと外に出てくるでしょう。王子様と姫君の行方は今もわかりません。







  ティアラ×クラウン×ガーディアン
        現れる継承者 前編







 ここは世界の中央と呼ばれる国の中のあるひとつの街。大きく運命が変わることになる少女と少年がいつもと変わりなくすごしていた。



「うわ、降ってきた〜。朝はあんなに晴れていたのに〜。」

急に曇りだし妖しい天気になって足を速めたが、遅かった。雨は降ってきてしまった。いたって今までどおり普通に生活をしてきたミルフィア・カルネアド。

見た目は十歳ぐらいに見えるが実は十六だったりする。よく初対面の人間には間違えられる。

 間違えられると言えば、今は一緒に暮らしているカルステも最初会ったときは年下だ間違われていた。実際は同い年だったのだ。

それを聞いても、別に驚く様子もなく、謝る様子もなかった。

 彼は、自分と同じで親がいない。自分の場合は、仕事に出かける際に現れた盗賊によって殺された。あの時はとても悲しかった。

そしてしばらくしてからカルステに出会ったのだ。彼は、迷子かと間違えたのだと言っていた。失礼な!と思ったが、今は一人ではなくなり、うれしいので黙っている。

 ミルフィアの場合は、小さい頃の記憶があり、そして両親との生活があった。だが、カルステは何も覚えていない。

気が付いたとき、怪我をして森の中で倒れていたと言うのだ。きっと、何かが起こって意識を失い、記憶が飛んでしまったのだろう。

今でも彼は遠い空を眺めながらぼんやりと考えている。自分はいったい何者なのかと。

 ここ最近、いろんなことがあったなと思い出しながら少し笑みをこぼした。だが、雨は待ってはくれない。だんだんときつくなってきた。

ミルフィアはカルステのいる家へ、というより小屋へ急いで戻った。





 小屋へ戻るとすぐに用事をしなければいけない。生きていくためにはお金がどうしても必要だった。二人は手分けしていろんな仕事をこなして、この一月一緒にためたお金は二月分の給料ぐらいはあった。

 今日も仕事へ行く。

二人はそれぞれ自分が得意とする事を仕事で生かしている。

ミルフィアは元気と明るさで、店の宣伝や客への対応。カルステは身軽な体を利用して少々危険な場所へいって頼まれた薬草などを取ってきたりしている。

今では、この街の中で知らない人は少ない。

 今日は、めずらしく二人とも同じ依頼人で同じ仕事内容らしいのだ。

「こんにちは〜!」

と、玄関で元気よく挨拶をしるミルフィア。カルステはここはあまり嫌だとぶつぶつ文句を言っている。

嫌だと言う理由。ミルフィアも同じ。

この街で一番の金持ちで一番のわがまま大魔王と影で呼ばれているジャスティアという三十代の男だ。どうせ、お金と権力を使ってとんでもない事を言い出すに決まっている。

 二人はメイドに案内されてどんどん奥へと案内される。行けば行くほど暗くなっていく。

「本当にこんな暗いところにすんでるのかなぁ〜?」

と、疑問に思うミルフィア。それを聞いたメイドは「ご主人様は最近体調をくずされて太陽の光にあたらない部屋へ移動したのです。」と言う。

体調を崩したならばなおさら太陽の光の入るところの方がいいのではないのかと思うが、カルステが別に何か問題があるんだろうと小さな声で言うので「ま、別にいいや。」と自分が気にすることでもないと頭の中からすぐに消した。切り替えがとても早い。

 だいぶ廊下を歩いた頃、突き当たりの部屋についた。しかも、ここが主であるジャスティアと言う男がいると言うのだ。

「ご主人様、お二方をお連れいたしました。」

と、扉を開けて二人を通した。そして、すぐに「失礼いたしました。」と出て行った。

 この人の仕事を行い、二人は180度運命の輪は回転した。





 部屋の中は薄暗い。ベットと机や棚があるなとぐらいしかわからない。男の顔もあまり見えない。しかも、椅子にどっかりと二人に背を向けて座っているのでなおさら表情もわからない。

「よく来てくれた・・・。」

と、シンとした部屋の中に声が響いた。声と話し方はなんだか優しそうだ。噂で耳にする彼とは別人に思える。

「実は、二人に頼みたい仕事があるんだ。きっと、二人にしかできんと思うのだ。」

と、椅子を180度回転させて二人のほうを向く。しかし、彼の表情は薄暗い中ではやはりわからなかった。

「私の知り合いの占術師がな、お前たちが世界の運命を握るティアラとクラウンの主だと言っていたんだ。知っているだろう?この国、いや、この世界で伝えられているティアラとクラウンとガーディアンの事を。この世界を暗黒の闇へと導こうとするハデアと急に消えた王子と姫の話を。」

と、言うのだ。二人にはすぐには話が飲み込めなかった。

確かに、二百年程前にこの世界に起こった歴史として聞いたことが有る。だが、あれはもう今は関係ないのではいないのか。今は、破滅の道を歩もうとしている世界には見えない。

 しかし、その後に自分たち二人はもう一年と持たない結界から出てこようとするハデアを静めて王子と姫を見つけ出し、世界の均衡を元に戻す最後の希望と言われたティアラとクラウンの主が自分達なのだと言うことがわかった。

本当に自分達なのか?と疑い聞くが、その占術師には間違いはないと言う。

 ここで、さらに思った疑問。この人は信じることの出来るいい人なのだろうか?

「そう思っていても仕方がない。金だけに目がくらんでまともに仕事を駄目な者がいるからな。そういう噂を流しておけば、こき使われて殺されるなどなら生半可な気持ちでは来ないだろう?」

と言った。この人は、もとから悪い人ではないということがわかった。お金だけもらって仕事をしないと言うふとときな輩がいるので、悪い噂を聞いてまで来る馬鹿はいないだろうと考えてやったらしい。だが、それは町全体で自分の評判を落としたことになるのだが・・・。

 二人は少し考えた。はっきりと今の状況もわからないので断ろうと思ったが、彼の真剣さが見えなくてもわかったので、とりあえず仕事内容を聞くことにした。

「仕事内容は、神殿内にあるティアラとクラウンに触れる事。」

これだけだと言う。「なんだそれ。」と気が抜けるミルフィアだった。そんな簡単な事でいいの?という感じだ。

「それに触れられるのは、主と認められた者のみだ。二人なら大丈夫。」

と、付足していった。「何それ?」と思うミルフィア。そんな簡単なことで主かそうではないかとわかるらしい。拍子抜けだ。

「じゃ、とにかく行ってきますね。」

と、ミルフィアはカルステの腕を引っ張って、屋敷を出て行った。向かった先は言うまでもなく王子と姫の神殿。





 二人は走って神殿まで行き、まっすぐ神殿内の最上階の中央にあるティアラとクラウンの置いてある台の前に立つ。

子供がちょっとしたいたずらや冒険をする時のようなどきどきわくわくといった感情がミルフィアにはあった。

「カル、一緒に同時だよ?」

と、さっきから何回も同じ事を言う。ここへ来る前からずっと言っているのだ。そして、これが最後になった。二人は、そおっとそれぞれティアラとクラウンをつかもうとした。

 そのとき急に下の方が騒がしかった。何かがあったらしい。それに気をとられて、今自分たちはそれぞれティアラとクラウンを手にしっかり持っていることに気付いていなかった。

 あわてて階段を駆け下りるが、まだ下は続く。しょうがないので、途中で窓から外を覗いた。

見えた物は、街で暴れている魔物。ガーゴイルと言う奴だ。石像が悪の力を吸収して動き出した魔物で、とても硬くて倒すのは難しい。強力な魔法や特別な魔術ぐらいでした倒せない。剣術でも最高クラスの人ぐらいしか倒せないだろう。

「どうしよう、カル。やばいよ・・・。」

と、窓から下を見ながら言う。ガーゴイルの数は七頭。少し多い。

剣術や魔術でも一箇所に集まらないと無理だし、なにより数が多いと効果が低くなる。それだけ、高度で最高クラス級の術しか効かない。

「今気付いたんだけど、これって不思議な力があるって言ってなかったか?」

と、クラウンをミルフィアに見せながら言う。「あ、なるほど。」と、わかったようだ。やっと、自分たちがこの主になったと言う事がわかった。

今持っているのだから、主なのだろう。だが、どうしたらいいのか二人にはわからない。そうしている間にも、ガーゴイル達は街を破壊していく。

「何でもいいから、力を貸して。あの魔物倒してー!」

と、ティアラをギュッと腕に抱いて叫んだ。瞳からこぼれた涙がティアラに触れて光りだした。同時にクラウンも光りだす。

「な、何なのこれ〜?」

「し、知るか!」

と、あわれる二人。そんな二人にどこからか声が聞こえた。この声は直接頭の中に入ってきているようだった。





『あなたたちに秘められた力の封印を解きましょう。目覚めなさい、あなたたちはこの世界の均衡を保つクライスマスター』





 声が頭に響いたと同時に二人は神殿のはるか上を浮いていた。しかも、服も髪型、色までもが変わっている。いったい何が起こったのだろうか。

「う〜ん、どうしようか。」

「どうするもなにも・・・。とりあえずあれはどうにかしないと小屋もぺしゃんこだ。」

と、下で暴れている七人の魔物、ガーゴイルを指差す。

「だからって、どうしろっていうのさー!」

と、足をばたばたさせながら言うミルフィア。カルステは今はどうしようもないとだけ答えて浮いたまま座っている。どうやら、落ちる気配はないようだ。

『さぁ、あの物を浄化しなさい。あなたたちなら大丈夫。言葉が浮かんでくるはずです・・・。』

いったい本当になんなのだろうか。だが、声の言われるまま浮かんだ言葉を口にすることにした。何もしないよりましだろうと言う考えだ。



「 ライカイショウホ 」



小さい頃、読んだ王子と姫の絵本で載っていた魔法の呪文。

なんだか急に思いついたので叫んでみたミルフィア。それが、魔法として発動したらしい。ガーゴイルめがけて光の矢が飛んでいく。それによって、三ものガーゴイルは浄化されて消えた。事にきずいた残りのガーゴイルはこちらに向かって飛んできた。

「うわ、どうしようカル〜。」

と、少し泣きそうになって言う。怖いのではないらしい。勢いよくこっちへ向かって来るガーゴイルが危ないから嫌だというのだ。

今はそんな事を言っている場合ではないのだが、ギャーギャーとうるさい。自分の身の心配はしていないらしい。

「 カイリョウイ 」

今度はカルストが呪文のようなのを叫んだ。ミルフィアはこれも確か絵本に載っていたなとのんきに思い出していた。
 この呪文で残りのガーゴイルはすべて浄化されて消えた。街の被害はそこまで酷くはなかった。


 なんだかよくわからないが、何時の間にかガーゴイルを倒していた二人。

「本当に消えちゃったよ・・・。」

と、ぼけ〜っとしている。しかも、何時の間にか服も髪も元に戻って神殿のティアラとクラウンのあった部屋に立っていた。

「とりあえず、これもってジャスティアさんの所に戻るよ。」

と言って階段を降り始めた。遅れてミルフィアもカルステの後を追いかけて走っていった。

 屋敷に戻ってみると、来ることがわかっていたようだった。チャイムを鳴らす前にメイドが出てきて部屋まで案内したのだ。今度は違う部屋だった。

そこにはジャスティアと黒いフード付マンとのような物を着ている人がいる。男か女かはわからない。だが、感じで人間ではないと思った。

「おかえり。それを持っているという事は、二人とも主として認められてようだね。」

と言う。その後に黒い服の人が続けて言う。

「魔法もそれなりにつかえるようですね。」

と言うのだ。なんでわかるんだ?と不思議に思うミルフィアだった。

「あのガーゴイルは私が召還した物だからねぇ。」

と言った。この人がガーゴイルをわざと呼び出して街を壊していた?どういうことだ。この人が確か自分たちがこのティアラとクラウンの主だと言う事もわかっていた占術師。

では、全てがこの人の思うように動かされているのではないだろうか?と思い始め、なんだか嫌な感じだった。

 だんだん、この人はどうも普通の人ではないと確信した。このティアラとクラウンのせいかどうかはわからないが・・・。

「でも、ああでもしないと二人とも魔法なんて使えなかったでしょう?」

と、フードを頭からおろしながら言う。結構若い青年だった。自分たちよりは年上だろう。

「初めまして、ミルフィア・カルネアド。そして、カルステ。僕は、ネアルド・アーネスト。西の国の風白虎ですよ。」

と言う。風白虚と言うのは聴いたことが有る。

西の国を守護しているガーディアンの事だ。と言うことは、この人は何百年も前からいることになる。

「そうそう、ちなみに僕はガーディアンでは二代目なんですよ。」

と言う。だが、百年ほどは生きてますけどね。と言うのだ。二百年も百年も二人にとっては同じだった。しかし、この人が本当に風白虚なのだろうか?第一になぜジャスティアと一緒にいるのだろうか。知り合いとしては国が違う。ガーディアンはそれぞれの守護する国の中でも王の話ぐらいしか聴かないと聞いている。

「僕はね、昔こんな国の守護なんてやってられるか!ってな感じで国を出たことがあるんだよ。その時に半分行き倒れていた僕を助けてくれたのがこの人。」

とか、心を読んだのか言った。だが、国を出る、つまり家出をして、行き倒れなんてなんとも情けなくあきれた話だ。西の国のガーディアンがこんなのでは国民も困るだろう。

 風白虚は話を戻して言う。あとの三人のガーディアンと出会って自分たちを認めさせてそれぞれ力“力”使いこなせないといけないらしい。なんと言うか、とても面倒くさい話だ。

「では早速。東の水青龍のアクマルスに会いに行こうか。」

と、なんとも楽しそうに言う。西の国だけでなくこの世界では偉いと言われているガーディアンの一人がこんなので本当に良いのだろうか?と思いたくなった。ミルフィアはこんなので本当に大丈夫なのかなぁと思うがすぐに楽しい方向へ考え出した。

「東の国へ行って海を見に行こう!」

彼女は海を見たことがなかったため、見たいと言うのだ。さっきまでの考えなどもう頭の中にはない。
 そんな楽しそうに話しているミルフィアとネアルドを見ていると、自分は場違いなのかなと思うカルステだった。

 こんな風に、二人の長い旅が始まったのだった。





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