東の国へ向かおうとするミルフィアとカルステ、そして西の国のガーディアンであるネアルド。なんとも不安なメンバーだ。カルステはため息をつく。 「東の国ってここからだと結構遠いよね?」 と、ミルフィアも地図を眺めながらため息をつく。 たとえ、国についてもそんな端にガーディアンはいない。中央の王が住むあたりにいるだろう。だから、国につくまでにも結構な距離だが、さらにプラスした距離が有る。 だが、そんな心配は無用だった。風白虚であるネアルドには簡単なことだった。風に乗ってすぐについてしまったのだ。 「はい、つきましたよ。」 と、笑顔で言う。いかにも作られた営業スマイルと言う奴だ。 裏を隠しているように思えて、この人だけはあまり近づかない方がいいだろうと判断したミルフィアだった。 「さて、アクマルスのいる泉にでも行きましょうか。」 と言って二人の返事を聞く前に歩き出した。なんだか楽しそうな顔だ。本当に今ここに来ている目的をわかっているのかどうかも危い。だが、こんなところへ来たことのない二人は彼についていくしかなかった。こんなところで迷子などごめんだ。 街の中を横断したため人込みでなかなか歩けない。 「すっごい人の量・・・。」 と、人を見るのが嫌になってきたミルフィア。別に嫌いではないのだが、こうもうじゃうじゃといられるとうっとおしい。そのうち摺りに会いそうだ。 「カルステ、どうして君はあまり話をしないんだい?寂しいじゃないか。」 と急に話を持ちかけられた。そんな事を言われても普段から話をあまりしない自分にとっては今日は結構話した方だ。 だが、ネアルドには話をしない。と思われてしまっているようだ。まぁ、仕方がないだが・・・。それを聞いたミルフィアは影でクスクスと笑っている。 余計なお世話ですとネアルドに返しせば、彼はふーんとだけ言ってまた前を向いて歩き始めた。 しばらくして、街から離れて樹がたくさん生えている公園のような場所についた。奥はとても深そうで森のようだ。 「さて、泉までは面倒なので呼びますか。」 どうやらこの奥に泉があってアクマルスという人がいるらしい。 二人は隣にいるネアルドを見る。何かをつぶやいているようだ。そして次の瞬間には、三人を取り囲むように風が渦を巻いた。正確には、ネアルドを中心にして渦が巻き、その渦はしばらく三人を取り囲んですぐに空高く舞い上がり、消えた。 しばらくすると、森のような樹だらけの方向から何かがやって来た。それは、近づくにつれ、何かはっきりとわかった。だが、あまりわかりたくなかった。 こんなことがあっていいのかと言いたくなる。今度は、水の渦がこちらに向かってきているのだ。今まで魔法などと無関係だった二人には考えられない光景だった。 水の渦は、三人の上まで来ると九十度方向を変えて下にいる三人目掛けて降ってくる。このままでは、危ない。 だが、ネアルドは慌てる様子もない。もう、この場所にいるのがいやになった二人だった。 バッシャ〜ン! 水は地面に落ちてはじかれて消えた。水が一番強く落ちた場所、つまり中心あたりの場所に女の人が立っていた。おそらく、この人が、アクマルスという人だろう。 「やぁ、久しぶりだね。元気だったかい?」 と、のんきに会話を楽しもうとしているネアルド。相変わらずよ。とだけ答えて二人に目を向ける。 「この二人が主、クライスマスター?それにしてはティアラの方はまだ小さい子供じゃない。」 と、またも見た目だけで判断されてしまった。普段ならむかついてもあまり言わないが、この女の話し方、態度は気に入らない。だから、これでも十六です!と言い返した。 ふ〜んと別にそんなことはどうでもいいというような感じで返される。これが、さらにミルフィアの怒りが増える原因だったが、彼女は気にしていないようだった。その様子を見て、やれやれと思うカルステと、絶対この女とは仲良くなれない!と思うミルフィアが見られた。 三人は、今晩はアクマルスの家に泊まることになった。ミルフィアだけはかなり嫌そうだった。カルステはそんなことはどうでもよく、ただ寝れたらいいと言う感じだった。 三人それぞれの思いで、アクマルスの家へ向かった。今度はアクマルスの術によっていとも簡単に泉についた。 術と言う物は、便利だが、術を使う者にとってはかなりのリスクを背負うことになる。だが、ガーディアンであるこの二人にはそれほどまでひどくはないのだろう。手提げかばんの中に入っているティアラに目をやる。 自分も魔術とかが使える。だが、この二人や残りの二人のガーディアンほど使いこなせないだろう。わかりきっている。そんな状態では、ただの足手まといで、それだけは嫌だった。 三人はアクマルスの案内のもと、泉の中に入った。そこは、空間がいじられていておぼれる、苦しいというようなことはない。まるで、竜宮城の中のようだ。 「さ、二人はこの部屋ね。」 と、ミルフィアとカルステを部屋の中に押し込んでさっさと出て行った。 「何なのよ、あの人。やっぱり好きになれない!」 と、もう出て行った後のドアに向かってベェ〜!っとやっていた。カルステはそんな事は無視をして奥にあるベットに座った。 「もう、カルもムカツかない?あの女、絶対私とは会わない。」 と、まだ言っている。カルステはふぅっとため息をついた。 「そんな事より、今日はもう寝ようよ。」 と、寝ることを提案した。ミルフィアはむくれていたがアクマルスともう顔を会わせたくないと思い、寝ることにした。これで静かになるとカルステは思ったが、そんな簡単には寝かしてもらえなかった。 早く寝たいと思うときに限ってなにかとんでもないことが起こる。今までもそんなことは結構あった。今回も問題が発生した。 夜中、今夜は年に一回、普段は一つしかないが、二つ現れて重なる日。それが、ちょうど夜中。 泉の中の神殿に異変が起きた。 水魔がこの神殿を攻撃してきたのだ。それも、かなりの大群だった。 本格的にハデアの結界が弱まっている証拠でも有る。これ全て、ハデアの下僕で、一緒に結界内に閉じ込められていたはずだからだ。それが出てきているのだから、弱まっていると考えるのが普通だろう。 水魔の攻撃によって神殿は一回大きくゆれた。それのせいでミルフィアとカルステの二人は飛び起きた。 「な、何?あれはなんだったの?」 「知るか・・・。おい、あれじゃないか?」 驚くミルフィアにふと目に入った窓の外の光景を指差して言うカルステ。すごい数の魔物だった。 「何これ?きもちわるい・・・。」 「そんな場合ではないだろう?とりあえず、二人を探しに行こう。」 「二人?あ、あの女とネアルドね。でも、いる場所なんてわかんないよ?それに、今の攻撃なんか二人とも気付いているだろうし、あっちに行った方が早いよ。」 と、大群の方を指差して言う。止める間もなく、ミルフィアは部屋から飛び出していった。 カルステは慌てて追いかけた。素早さでは彼女の方が上だが、彼女の考えることはだいたいわかるので、先回りは出来る。 あの大群の場所へ行くなら近道を行けばいい。カルステは途中で走る方向を変えて、窓から飛び降りる。身軽な彼だからこそ、屋根をつたって走っていける。 この神殿は広いが、目的の場所が決まっていたため、すぐに外へ出られた二人。あの後、すぐに合流できた。 「わぁ、すごいねぇ。あ、いた!二人ともあそこにいるじゃん!」 と、見つけたようだ。今、戦いの真っ最中のようだ。一瞬で十から二十ぐらいの水魔が消える。だが、あれではきりがない。後から後からどんどん出てくるのだ。あれではこちらに不利だ。 「とりあえず、行ってみよ。」 と、誘うが、今行けば足手まといになると言って引き止めた。確かに今の自分たちではただの足手まといなだけだ。その時、あの時聞こえた声と同じ声が聞こえた。 『ティアラとクラウンを使いなさい。もう知っているはず。あの呪文を・・・。』 そう言われた後、ふとあの時と同じように言葉が浮かんだ。 「「 契約者が命ずる、悪しき輩を光で浄化し、清める為、力の封印を解け!」」 と、二人同時に言った。その後続けて同時に言う。 「「 チェンジオーバー・クライス 」」 それを叫んだと同時に二人は光に包まれて、あの時と同じ格好になった。 「やっぱり、またみてもこれってすごいよね。」 「僕はどちらかというと嫌ですけど・・・。」 「じゃ、あれ浄化しちゃおう♪」 と言ったが、止められた。何でと聴くと、どうやらあれはおかしな点があると言うのだ。 「おかしいと思うだろ?あれはいったい急にどこから現れたんだ?」 そう言われてみると確かにおかしい。だが、考えても何も浮かばない。 「確か、本で書いてあったんだけど、術師って言うのは、結構範囲が広いんだ。たぶん、召還術と再生術かを使っている可能性があるかもしれない。」 と、カルステが言う。それを聞くとなるほどと納得するミルフィア。では、その術を行っている術師を探し出して倒せばいいんだ。そうとわかって周りを見る。だが、それらしい人物はいない。 ふと、周りを見ているときにあの二人が目に入った。あのムカツクガーディアンの女が苦戦している。さすがにずっと使い続けるのはつらいのだろう。そう思った瞬間、水魔の攻撃を受けた。アクマルスの血が飛び散った。 「アクマルス!」 気付けば彼女の名を読んでそこまで行っていた。カルステはまったく・・・。と言いながら追いかけた。 「大丈夫・・・?」 と、聞いてみる。どうせ、まともな返事はないと思ったが・・・。彼女は、とても力の低下で話す事もあまり出来ない状態だった。ネアルド聞けば、神殿の中にいる者に危害が加わらないようにずっと結界を張りながらかばっていたため、余計に力の消費がひどかったらしい。 それを知ったミルフィアは、ごめんなさい。と一言いって水魔の大群の方向いた。カルステはやれやれと言いながらも付き合うようだ。 「テメー等全員、始末してやる!」 彼女は完全に切れていた。たとえムカツク奴でも、傷つけるのは許せない。 昔、両親が言っていた。どんな物でも、生命は一度きり。お互い助け合ってこそ、未来の道を進むことが出来るのだと。 ムカツクと思った。だが、この人は、他の人を巻き込まないために必死で頑張っていた。そこは昔のお母さんと一緒だった。 ミルフィアは真正面から水魔に突っ込んでいって叫んだ。 「 メネス・クロアー 」 これも、絵本で書かれていた呪文の一つだった。姫が一瞬でたくさんの数の魔物を浄化した光を利用した魔術。上手くいったのか、その場には水魔はもういなかった。 カルステはアクマルスに変わって結界を張り、回復魔法を使った。 彼女はとても驚いていた。この前、一回きりで使ったようなマグレに近い感じで倒したガーゴイル。しかも、あれはネアルドが召還して力を使わせるためにやった物。きっと手加減はしていただろう。 だが、今の二人は完全に使いこなしている。しかも、わざとミルフィアを怒らすように言って突き放していたにもかかわらず、助けてくれている。 しかも、一瞬で百も二百もいた水魔を浄化した。あれはまぐれではなかったようだ。 水魔が全て消えた後、ミルフィアはアクマルスの元に戻って来た。 「大丈夫?しっかし、酷い怪我だねぇ。直りそう?カル。」 「たぶん、一日休めばなんとかなるでしょう。回復と再生の術をかけておきましたから。」 「ネアルドはどうして立ってるだけなの? と、つっこまれた。実は、ここは水中なので風がなくて操れないのだ。少々は操れるが、上にいるよりかなり体力がいる。 ここへ来るまでも、移動をしたりしていたので疲労が目立ってしまう。休もうとすれば水魔が来てそれどころではなくなったのだと言う。 「駄目じゃん・・・。」 「すまないね、ミルフィアにカルステ。僕が一番の役立たずだね。」 と、右手を頭の後ろに持っていって苦笑いをしていた。ガーディアンもいろいろと苦労をしているようだ。 そんな感じで会話をしていた。だが、アクマルスは黙ったままでいた。 今言うか言うまいか、迷っていたのだ。この二人はティアラとクラウンの持ち主として認めると。 だが、言わないでおけば、きっといけない気がした。だから言おうとした。だが、今はまだ言えなかった。魔力の気配がしたのだ。それには他の三人も気がついた。 「どうやら、登場らしいですよ、ミルフィア。」 「カルの言ったとおりになるのかなぁ?」 と、言う。そして、構えた二人。アクマルスとネアルドを後ろに守るように。 水魔がやって来た方向から魔力が強くなってこちらへ向かってきている。 「さっきのよりこれはとても厄介ですよ。アクマルス、どうします、ミルフィアとカルステだけではどうかと・・・。」 と、心配して言ってみるが、あの二人なら大丈夫だよ。といって立ち上がった。 立ち上がったのは手助けをするためではない。二人を見守るためだ。それを聞いて、そうですか。とにっこりと微笑んで隣にたった。 ミルフィアとカルステ。二人はクライスマスターとしてアクマルスに認められた。ネアルドにもだ。 「お前等がクライスマスターか・・・。しっかし、すっごいガキだな・・・。」 と、声が聞こえると一瞬目を瞑った間に眼の魔に誰かがいた。 「ちょっと!ガキって失礼ね!これでも十六なんだからね。」 と言う。そんなことは対抗しなくてもいいと思うのだが・・・。 「それはすまんな・・・。お詫びに、あんたを消してやる!」 と、いきなり攻撃をしてきた。それを寸前で交わしたミルフィア。何がお詫びだよ!とまた文句を言っている。しかし、あちらは休むことなく攻撃を続ける。 これではよけるので精一杯できりがない。カルステはしょうがないと、ミルフィアに周りには知られず耳にささやく。 聞いたミルフィアはわかった。と言って、カルステを前へ出した。 「何をするつもりかわからんが、俺様には勝てないぜ!さっさと死にやがれ!」 と、攻撃をさっきより強い魔力でしてきた。その攻撃のまん前にカルステが出た。 何をするつもりかと思ったが、きにせずいくつもの魔球のようなものを向けた。だが、カルステはひるむ気配はない。口元は笑っている。 「 シュンカイソクハ 」 右腕を向かって来る球に向かって伸ばし、掌を向ける。この呪文は、相手の魔力を吸収して自分の魔力に変換し、そして、反射させる魔法。 さっき、頭の中に浮かんだので試してみたのだ。 「このやろー!覚悟!」 と、一瞬隙の出来た相手に向かって棒のような物を持って上からドンッと攻撃をする。 それのせいで、相手はふらついた。ミルフィアが自分の力と体重を全部かけてやったので、結構くる。重力を使ってさらにダメージは大きい。 「汝、清めの儀を行い、裁きを受けよ!」 と、素早くミルフィアが言った後、カルステも一緒に言う。 「「 ホーリー・クロアー 」」 ミルフィア、カルステ、ネアルド、アクマルスの四人は神殿の中央にある部屋にいた。 「でも、本当にあいつを浄化させるなんて、すごいですね、ミルフィアにカルステ。」 と、ネアルドがほめている。小さい子供をあやすように頭をなでている。それにはミルフィアはぶーっとふくれる。 「ま、それなりに力は使いこなせるみたいね。飲み込みが早いわ。」 言い方にまだ少しとげがある気がするが、今は気にしないでおこう。 あの後、二人は呪文を唱えて相手を浄化した。 「お、おのれ・・・。さ、さっさと殺せ!生かしておいてもお前等には得なことはないだろう。」 と、苦しみながら言う。あの術で完全に魔力を消されたのだ。 「そんなことはしない・・・。」 と、誰かが言う前に言うミルフィア。たとえ、どんな悪い者でも生命を奪うことは、決して許されない事だと昔何度も言われていたからだ。 「さっさと、いきたいところにいきなよ・・・。」 といって、背を向ける。そして、アクマルスとネアルドのいる方へ歩いていく。カルステは何も言わなかった。 「いつかきっと、後悔するからな・・・。」 と言って、あいつは消えた。かなりの負荷でだったが、そのうちまた来るだろう。 アクマルスはまだ二人を認めたとは言わないが、残りの二人のガーディアンに会いに行く旅には付いていくことになった。 「まだ、言う必要はないね・・・。」 と、もうしばらく黙っていることにしたらしい。本人たちも、別に今は気にしていないようだ。 ミルフィアとカルステの旅はまだ始まったばかり。この先、どんなことが起こっても、きっと乗り越えられるだろう。 戻る |