第
4章 夢管理局の者と灯露の夢

 

 

 鏡衣智が四人を連れて行って中でくつろぐ三人。

しかし、静かなのが一番いいはずなのだが、どうしても落ち着かない。

「・・・これも鏡衣智の呪いなのか・・・。」

邦陣も落ち着かない。

やはり、何だかんだいっても、大切な友人。

今まで見ていて危なっかしい行動ばかりの彼の事が心配なのだろう。

それで、毎回巻き込まれて一番被害をこうむるのは邦陣自身なのだが・・・。なんとも微妙な関係だ。

被害を受けている最中は、絶対に鏡衣智は助けないのだろう。本当に危ない時だけは助けるだろうが・・・。

 そう思うと、今あの四人は無事なのかどうか心配になってくる。

いくら達烏がついているといっても、相手をするのは鏡衣智自身なのだから。

きっと、郁は全神経を逆立てて威嚇している事だろう。想像できて少し可笑しい。

 皐月も皐月で、邪険にして無視をしながらも、やはり育て親が恋しいらしい。

あの正確だが、憎めないところがあるから、皆被害を受けても一緒にいるのだろう。

「邦陣さん、私、ちょっと外へ行って来てもいいですか?」

「・・・危ないから止めておいてほしいけど、危ないから俺も気になる・・・。」

どうやら、鏡衣智の行おうとしている事はそれなりに危険な事らしい。

それならば、なおさらここで平和に過ごしている場合ではない。

「そうですね・・・。皐月殿、悪いが、付き合っていただきたい。」

「・・・俺もあいつが何をしでかすかきになってしょうがないから行く。」

簡単に一つの答えを出した。三人は、鏡衣智達が出て行った場所まで行く事にした。

 その頃のこちらでは・・・。

「だー?!な、何をする?!」

「あの人本気ですか?!」

「何なんどすかー?!」

「うわぁ?なんじゃこれ?!」

四人それぞれ声をあげる。それもそのはず。

「ほら、ある程度使える力を使わないと、飲み込まれちゃうよ?」

「嫌だー!!」

「嫌どす、あんなぬめぬめー!」

「何考えてるんですかー!!」

「あの人絶対本気で、被害のひどさを何も考えていないっすよ!」

四人を追いかけ出した物、それは物というのか生物の言うのか・・・。半固体の黒っぽい大きなナメクジのような生物。

それが鏡衣智の手によってこの場所に召喚され、四人に襲い掛かる。

しかも、飲み込まれると言われたら、誰もあの中に入りたくはない。

 今自分が使える攻防を考えようとも、冷静に考えられる場合ではない。四人とも、冷静さを失っている。

それは、悪魔やゾンビといった物ではない、得体の知れない気持ちの悪い物体だからこそかもしれない。

悪魔やゾンビだと、あの教会の兄妹は間違いなく徹底的につぶすだろう。

それも、今とは違って冷静に対処して。

だからこそ、鏡衣智はこのような強いのか弱いのかわからないような物体にしたのだろう。

 見ている達烏は呆れていた。

まったく、どうしてこの友人はこうやって遊ぼうとするのか。言う言葉は何もない。

「・・・鏡衣智・・・、ほどほどにしておきなさいよ・・・。」

「わかってますよ。」

と言いながら、楽しそうに返事を返す。明らかに楽しんでいますという顔だ。

今の彼には何を言っても効果はないだろう。

「大分・・・なれたようで・・・。」

ふと見ると、四人はそれぞれ変化、石によって相手から優勢の立場を得ていた。

顔はかなり引きつっているが、冷静さを取り戻し始めたのだろう。

「なかなかやるねぇ。でも、これぐらいの奴にこんなに時間をかけてちゃだめだねぇ。」

相変わらず楽しそうに言う男。ほめていながらけなす、たちが悪い男。

どうしてこんな彼の友人を何年も続けて来たのだろうと、また、何度目かになるそんな思いを自分に問い掛けていた。

 やっとあの物体を四人が片付けた頃、中にいた三人が出て来た。

「・・・終わった後か・・・。」

「四人とも力はそれなりに扱えていたよ。」

「・・・達烏、何をやらかした?」

「私の事は無視かい?」

「そうですね、巨大な黒いなめくじを召喚して追い掛け回したと言う所でしょうか。」

それを聞いた瞬間、邦陣が眉を潜め、灯露はうげっとなる。皐月はリアクションを忘れていた。

「灯、灯露―!」

郁は灯露の姿を見つけて抱きついてきた。半分涙目。それほどまでに気持ちの悪い嫌な生物がいたのだろう。

他の三人も顔色が余りよくない。顔色がいいのは鏡衣智ぐらい。

「かわいそうにねぇ。」

よしよしと頭を撫でてやり、もう終わったんなら中に入ろうと勧める。その時だった。

「伏せろ!」

「こちらへ!」

鏡衣智と達烏の声が響き、邦陣が黒い羽を広げて風里を抱え込んで飛び退き、鏡衣智は皐月と雅季の腕をつかんで素早く後ろに下がり、達烏は雅季と羽梟を掴んで飛び退いた。

そして、灯露は一人残されてしまった。

「灯露!」

「灯、灯露さん!」

「しまった!」

郁の叫び声に、誰も灯露に手が言っていない事に気付いた。

 鏡衣智達が気付いたものとは、空からの襲撃。

光の矢とも言うべき、実態がわからないが人の体を壊すものが飛んできたのだ。

それを灯露はまともに浴びてしまった。

「灯露―!!」

鏡衣智達かばう者も多少それを浴びながらも、守る。だが、ただ一人だけあの中にいる。

 襲撃が収まったと同時に、全員がその襲撃の中心、灯露の元へ駆け寄った。

「灯、灯露・・・?」

そこには眠るように倒れている灯露がいるだけ。怪我は何もしていない。

「・・・どういう事です・・・?」

鏡衣智も分からない様子。その時、目の前から一人の少女が現れ、続いて少年も現れた。

「久しぶり!鏡衣智さん!相変わらず変わらないね!」

「人の世にいながら、それはいけませんよ。」

鏡衣智が答える代わりに、達烏が彼等の名前をつぶやいた。キサ、イオンと。

「ど、どうして二人がこちらに?」

「え?だって、依頼が来たから。」

「依頼って五人の仕事の奴ですか?」

「そうそう。」

会話からして、この二人とは知りあいらしい。やはり、鏡衣智の知り合いにはまともな奴はいないようだ。

だって、この二人は空気のように気配を感じられずに姿を現したのだから。

「実はね、この子が今回の仕事の件なのよね。」

「・・・灯露・・・さんがですか・・・?」

「そう。実は、最近になって夢で過去の記憶が戻って困惑し出してるらしいんだよね。」

えっと言う感じで眠っている灯露を見る鏡衣智以外の者。気付いていなかったらしい。

「内容は私にもわからない。だから、困っているんだよ。ドリーム・カンパニーで処理が出来ないからさ。

だって、彼女以外誰にも見れないのだから。どう処理したくったっても出来ないんだよ。」

キサという少女はそう言う。

「時期からして、鏡衣智の関わる件と関わっているんじゃないかと思ったんだけど・・・。」

知らないのかな?と言いながら、残念そうにもう一回調べなおしだー!と叫んでいた。

「あ、そうそう。先程の襲撃ですが、あれは貴方方の敵である相手からの宣戦布告のおかえしらしいですよ。

あと、先程の襲撃を灯露さんが受けなかったのは、彼女を守る守護の決壊が働いたからです。

どうやら、何かのきっかけがあったら自らを守ろうと働くみたいですよ。

きっと、過去で何かあったんでしょうね。夢に関わるようなね・・・。」

そう言いながら、ここまで来てまたふりだしかぁと困ったように持っていたノートパソコンを開いてメールを送る。

「で、鏡衣智さん。あの二人はいったい何者ですか?」

話をしていて言葉を挟む隙がなかったが、今は一段楽しているので聞いてみる。

さすが、そう言ったことはまめな雅季。

「あ、あの二人ね。彼女はキサで、彼はイオン。

この世界や全ての生命というものの夢を管理する管理局の、トラブルを解決する夢世界の鍵と呼ばれる『ドリーム・キーパー』のメンバーだよ。」

「・・・そんなものが存在していたのですか・・・?」

「存在してもおかしくはないでしょう?だって、現に幻想人や私のような天界人がいるぐらいですからね?」

「確かにそうですね・・・。」

鏡衣智を例として上げられると、どうも納得してしまう。それだけ、彼は一般的からはずれている。

「あ、来た来た・・・。鏡衣智さん、ちょっと耳より情報ですよ。」

「どうしたのイオン。キーパスト何て言ってる?」

「ライシュではないですよ。ルウイからです。」

「ルウイ?」

「夢占いか何かで、わかったことがあるらしいんですよ。」

それには、鏡衣智が反応を見せた。

どうやら、そのルウイという人物の夢占いは鏡衣智が信じるに足りるほどのものなのだろう。

「その夢占いとはどんなものなんですか?」

「えっと貴方は確か、雅季さんですよね?

夢占いとは、一般的なものとは少し違うかと思いますが、ルウイの持つ特殊能力の一つなんですよ。」

相手の夢の中に入ってその場所で一時的に過ごすといった少し変わった能力。

「それで、今回の件で試してみたらしいんですよ。」

「それで?彼女は何て?」

「えっとねぇ、どうやらルウイが言うにはね、灯露さんは記憶を失っている部分があるんだけど、その部分が重大な事を秘めていて、その時に・・・う、うっそぉ?!」

メールを読み上げていながら急に声を上げるキサ。

「鏡衣智さん、かなり深く関わっているみたいですよ・・・。」

「どういう事だい?」

「彼女、下手するとすでに彼等と出会っている確率があるのですよ・・・。」

それを聞いて、あの日の記憶が蘇る。

数分の間だけ、強大な力がこの世に降り立ち、すぐに分散されて消えたあの日。

そう、始めの生贄が捧げられた日。

「それは、本当ですか・・・?」

「そう、これは本当。

そして、彼女は始めの生贄と顔見知りで、目の前で消えたらしいから、目の前で生贄の祭壇に上げられたのだろうね。」

それを聞いて、誰もが言葉を繋げられなかった。

記憶を消してまでも忘れようとした過去を夢で思い出されそうになった挙句、人には知られたくはなかっただろうにもかかわらず、自分達は知ってしまったから。

「うう、灯露さんずっと辛い思いしてきたんだね。」

そう言いながら、半べそになるキサ。自分の事ではないのに、他人の事に同調して感情が動く優しい子。

イオンはまたかと言いながら、慰める。

キサだからこそ出来る。灯露が同じようになったら、きっと誰も言葉すらかけられないだろう。

 今回の始まりのきっかけに巻き込まれ、心に大きな傷を作ってしまった少女。

今更ながら、巻き込んでしまって思い出させるのはと考え出す鏡衣智。

まさか、あの日が一瞬だったのでそんな事になっているとは思ってもいなかったのだ。

これは、自分がその時、風里と羽梟を探すので手が一杯だったせいで余裕がなかったせいだ。

「・・・まさか、痕跡がなかったからとはいえ、気付かないとは・・・。」

「・・・確かに、祭壇に上げられていながら奴等の気配が全て浄化されているのには可笑しいと思った。

だが・・・、だからといって・・・。」

キサとイオンは余計な事を言ってしまったと思うが、知っておいてもらった方がいいと言う事もあるので、今は何も言わない。

自分達は任務を遂行するだけの者。

それによって存在を認められたのだから、任務を果たさなければいけない。

この少女、灯露の夢を解放しなければ仕事は終わらない。


 もうしばらくは、この仕事は続くだろうと思われる。

 

 

 眠ったままの灯露を鏡衣智は抱きかかえて家の中で寝かした。

 そして、もうしばらくはこの話は本人の前では口にしないようにと全員で決めた。

 彼女から話してくれるひまで待つと・・・。

 それが一番いいと思ったからだ。

 




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