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第3章 物語の本当の始まり
風里と郁が連れて行かれて連れ戻しに行った次の日。全員、学校へ欠席届を提出し終え、鏡衣智が住む神社にいた。昨日の晩から、ここに泊まってずっといる。
朝起きると、すでにリビングには皆がいた。寝坊したかなぁと慌てて席に付く灯露。
「おはようございます。」
挨拶をして、朝食にてをかける。
鏡衣智は灯露が来て全員そろった事を確認して、話を始めた。
昨日、話すと言って今日は休むとして後回しにされた、五十年前の出来事。
「何処から話そうかと考えて、やはり、順番をおって、あの日、水が全てを流した日から簡単に話をして五十年前の事を話そうと思う。」
いいね?と全員に確認をして、話し始めた。
水が地を流れ、全てを洗い流した日。それが全ての始まりだった。
全てを洗い流したと言っても、以前話したように、生き残った者がいた。
だから、全てとはいえないのだけど・・・。その生き残った者が神を恨んだ。あの事で、大切な人を失ったから。
幻想人と仲良くしていた彼女だった。幻想人が裁かれるのを密かに抜け出させて逃がしていた子。
それをその者も手伝った。
そして、水が地に溢れて洗い流した。
幻想人は人よりは助かった。何せ、人は自然の強大な力には対抗が出来なかったから。
それで、彼女は亡くなってしまった。遺体も見つからず水の中に沈んでね。
今はこの地があるように水はないけどね。
だから、彼女は完全にこの世から姿を消してしまった。
そして、一人残った彼は哀しみで何もかも失ったと思った。
幻想人達も助けてはくれない。あれだけ協力してきたのに、大切な人も自分の事もほったらかし。
何より、あの水をこの地に来させた神を恨んだ。神が全て悪いと。
人が幻想人を殺す前に何か対処していれば変わっていたかもしれないと、いつしか哀しみが憎しみに変わり、恨みが彼を動かした。
そして、彼は神の領域へと向かい、多くのものの命を奪った。天界人も人も幻想人も。
彼にとって、一番大切な人はもういないから、それ以外のものは彼にとっては何の気にもならない。
死ぬものは死ぬ。何より、大切な人を守れなかった自分が許せなくて、憎しみで行動を起こしてしまった。
そんな彼を、やっとの事で、神の右腕とも言われた補佐によって封じられた。
消滅させる事は神が拒んだからだ。神もまた、責任を感じていた。
自分は見守るだけで、あの水も、流れの中に彼女が沈むのを助けられなかったという事があったからだ。
彼もまた、別の道があったにもかかわらず、破滅への道を進ませるように追い詰めた事もあったから。
それで、封じた。
消滅をさせようとしても、きっと彼の力が大きくて封じるのでせいいっぱいだっただろうが・・・。
その時、その補佐は彼が最後の抵抗として放った呪によってこの地に束縛された。
二度と天界に戻れないようにと。
そして、やっと一時は争いが止まった。
それから何年経った日。
今から五十年前、私達が経験して何人かの犠牲を出してしまった事態の事。
関係者は私と達烏、邦陣、皆が通う学校の校長、私の友人、そして皐月君の祖父と灯露さんの祖母、郁さんと雅季君の祖母、それと風里さんと羽梟君の祖父。
この九人を含めて十八人が関わった。
その時、私の友人と皐月君の祖父と風里さんと羽梟君の祖父を含めた十が亡くなった。
生贄の祭壇に登り、儀式を行われて命を落とした者はいなかった。
その十人それぞれ、大切な人を守った。
魔王と言われた彼が出来なかった事をして、反対に命を落としたんだ。
五十年前、魔王の部下が動き出す事を知ったのは五日前。
復活に必要として重要だった関係者が全員集まってしまっていた。
だから、このままでは駄目だと、それぞれ何人かにわかれてグループで行動する事にした。け
ど、結局はやられてしまったけど・・・。
当時、皐月君の祖父が神の闇の力とも言われた月の魔力を持ち、灯露さんの祖母が神の光の力とも言われた太陽の魔力を持っていた。
今は、君達二人が持っているけどね。二人が生まれたと同時に、力は受け渡された。
だから、二人とも、死ぬまで気にしていたよ。
皐月君の祖父の場合、亡くなってしまっていたけど、力は皐月君の父には受け告げられてなくて、まだ、時間があるとわかった。
私は彼を育てたよ。責任もってね。それから、彼は結婚して皐月君が生まれた。そして、力を受け継いでいた事がわかった。
それからしばらくして、皐月君を残して二人はこの世を去った。事故でね。
見た目はそうだが、実際は奴等が絡んでいる。
五十年前は、お互いが守ろうとして片方が消えた。残された者はそりゃ哀しんだ。
だが、すぐに立ち直った。また、同じ事が起こる事がわかったから。
だから、必ず次で終わらせると。そしれ、自分達の血族の中で、関係者の力を受け継ぐ者が現れるのを待ち、奴等に気が付かないように封印を施した。
きっと、君達全員にまだ封印は微かに残っている。
でも、もう封印では抑えきれないほどの力が眠っている。
それで話しておかないといけない事がある。関係者の力と基本的な能力などをね。
生贄に必要なものは幻想人だといったはずだ。どうして他の人では駄目か。
以前は他にも幻想人はいるから一番危ないのは太陽と月それぞれの魔力を持つ皐月君と灯露さんだと言った。
けど、本当は他の四人ともが同じだけの危険を持っているんだ。理由は、持つ能力。
幻想人がいいなら、達烏でも邦人でもかまわない。
達烏は烏天狗だから、生贄の幻想人には向かない。邦人は見習で力が弱いから選ばない。
これが理由で除外されているが、君達以外にも似たような条件を持つ幻想人は何人かいるだろう。
しかし、四方位の守護神の力を持つのは君達だけ。
中国では四神と呼ばれる神獣が東西南北それぞれにいるように、これにもそれに似たような条件があるんだ。
北地属の黒獅子に、南火属の朱鳥に、西に風属の白狐、東水属の蒼竜の四つの守護神の力を持つ幻想人でなければ駄目。
太陽の魔力と月の魔力という相反する力を持つ幻想人も必要。
この六人は、偶然見つけた幻想人ではいけない。確実にその力を持つものでなければ生贄の儀式は成立しない。
生贄の祭壇がある塔の話を覚えているよね。
実は塔は真中の塔からそれぞれ東西南北に塔がある。
彼等は順番を守っているのではなく、それぞれの守護する方角の塔に生贄を捧げないといけないから、それを守っている。
昨日は説明があやふやになって申し訳がない。
その生贄の祭壇にすでに一人あがれれた者がいる事は話したよね?
その者もまた、関係者。始まりを告げる生贄。
もし、その者が生贄として捧げられていない間は守護神を生贄に捧げる事は出来ない。
つまり、その者が生贄にならない限り、他の者が生贄の祭壇への時間が遅くなる。
つまり、その者こそ、この哀しいだけの物語を止める事が出来たもの。
しかし、今回はすでに生贄として捧げられてしまったから、後戻りは出来ない。
すでに進んでしまっている。そう、十年も前に。
これが、鏡衣智が話した内容だった。
「えっと・・・、神様の補佐の人って、鏡衣智さん・・・?魔王さんを封じたのって鏡衣智さんでしたよね・・・?」
話を聞いていて一番疑問に思った事。それをそうだよと大した事はないように答える。雅季も少なからず驚いている。
やはり、ただの人じゃないとはっきりわかった瞬間だった。
「それに、ここにいてもいたって不便はないし、かえって面倒な書類関係の仕事がないから楽だしね。」
笑っていってのける。本当に重要な右腕とも言う補佐だったのか疑いたくなる。
「よくもまぁ・・・、というか、鏡衣智さんらしいけどな・・・。」
「羽梟さんの言う通りですよ・・・。それで、いつもふりまわらされていますから。」
達烏の苦労が良く分かってきて、鏡衣智が悪者のように見えた。
だが、灯露はそんな事で楽しく笑っていられる余裕がなかった。
なぜならば、話に出てきた十年前に生贄が捧げられたという事に体が震えて拒否反応を起こしているからだ。
それが、自分の記憶や夢に繋がるものだと、どこかで脳がわかっている。
だが、思い出そうとしない。思い出さなければいけないと思うのだが、思い出す事を体が拒んでいるのだ。
きっと、自分がこの物語に関わったとわかる証明になるものは、その十年前の事が関係しているのだと思う。
その日から、完全にこの物語から離脱できなくなってしまったのだろう。
だから、逃げるつもりはない。だけど、頭が危険信号を送り続けている。
何か悪い事態が起こるような予感がしてならない。
気のせいであってほしい。そう思うが、ここまで体がおびえるほどの事があることには間違いがないのだ。
だから、全てを否定する事は出来ない。
今はまだ、待っているだけでいいと思うから、しばらくはこのまま待っていようと思う。
記憶も、どれだけ拒否をしていても、いつか思い出すと思うから。
その後鏡衣智が、郁が北の地属性の黒獅子、羽梟が南の火属性の朱鳥、風里が西の風属性の白狐、雅季が東の水属性の蒼竜だと教えてくれた。
完全な覚醒をした瞬間、姿が変わるだろうと。そして、使いこなせるようになったが、威力は少々落ちるが、人の姿のままでその力を扱う事が出来ると言った。
それを聞いた郁は自分が化け物と同じとかなり暗く落ち込んでいた。
彼女のプライドのようなものがあるから、許せない事もあるが、灯露も同じように太陽の力を持つ魔女だと言ったら、同じだと開き直った。
妹みたいで可愛いけど、これはいいのか少し複雑なのだが・・・。
まぁ、落ち込んだままいられても困るのでこれでいいやと話は打ち切る。
「さてと、とりあえず、一人でいるのは危険だから、グループを作っておこう。全員に一度に連絡を取り合うのは無理だからね。ペアを作っておくのがいいだろう。」
そう言って、勝手に決めたペア。それに郁はかなり不満足らしい。
兄の雅季がペアなのには文句がないが、得体の知れない皐月と灯露が一緒なのが気に食わないらしい。
可愛いけど独占欲の強い娘を持った気分を味わう灯露。
しかし、こればっかりはこのペアが一番安全だと思うので、郁もしぶしぶ納得した。
風里は達烏と邦陣と一緒で、羽梟は鏡衣智と。これで四つのペアというか一つはグループだが出来た。
行動はばらばらになったり固まったりもするが、連絡を行う相手はこれで決まった。
「さて、とりあえず、君達四人の現状の力を測定したいから、ちょっと外へ来てくれるかな?」
妖しげな笑み。出来ればついていきたくない。それが四人の心の中の答え。しかり、四人には拒否権はない。
「達烏、行こうか。邦陣、悪いけど二人を見ておいて下さいね?」
「わかりました。」
「承知。」
二人は軽く頭を下げて了解した。
鏡衣智と達烏について四人は部屋を出て行き、二人と一人はもうしばらく続くだろうこのひとときを過ごす事にした。下手に騒ぐより休憩をしていた方がいい。
お茶と飲みながら、平和だなと思ってしまう二人と一人だった。
+++++ あとがき +++++
だんだん明らかになってきました。ここまで来るのにいったい何をやっていたのやら・・・。
ここでやっと正体がばれる鏡衣智さん。実は、彼は幻想人でもある天界人でした。あれで、結構偉い人なのだから驚き。私も驚き。
書類整理が面倒とか言って・・・。いいのかなぁ?
いよいよ、四人が覚醒してきます。誰が一番かな?
しかも、四人は神様だしね、守護神だし。主人公の座危し?二人にはもっと頑張ってもらわねば。
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