十一章 扇と笛

 

 

 

所属していた組織と激しく対立していた組織の上位でライバルでもあった彼等と再会し、青が白銀の月という、裏の裏で誰も知らないとまで言われていた裏階級No.!とその場にいた者に知られ、二日が経った。

貴一達はまだ、この町にいた。だからといって、敵である彼等が何かを仕掛けてくる事もなかった。彼等も彼等のマスターも貴一達が逃げない事を知っていたから。それに、あの伝説の事も手に入れようとしているが、今は貴一達に任せて横取りしてもいいと考えているので、今はこの平和を手に入れることが出来ていた。

貴一、藍、海樹の三人は青が白銀の月と知っても、あまり態度はかわらなかった。どうりで強いわけだと反対に納得できた。

「でも、あれじゃぁわからないよね。青は人が変わるし。第一に扇じゃなくて笛を使ってたし。」

朝食を宿の部屋で全員机を囲みながら食べていた時、藍がポツリともらした。

「まったく、青は・・・。藍、あんた達は見てしまったからしょうがないが、絶対他言する事は許さないよ。」

その言葉に、忠告と言わんばかりに言葉を挟む紅乃。

「どうやら、元マスターだけではなく、貴方も知っていたようですね。」

「当たり前だろ?俺は青がいないと生きていられない奴になったんだからな。それに、仕事中に邪魔するのも悪いし、ある程度青の行動や予定を把握していたんだよ。」

「それって、ストーカーと言う奴だろ?」

「おい、今なんていった?!」

海樹の言葉に過激に反応する紅乃。彼はまだ、海樹にだけはあからさまな敵意を剥き出しにするのだ。

 そんな彼等を無視して、子供三人組は早々と朝食を食べ終えて、昨日に引き続いて町の検索に行くとはりきって出て行った。

「・・・いってらっしゃい。」

水は友人の巫女がいる珠を子供達に手渡して見送った。

 昨日と同じ朝の風景。

 

 

 彼等も朝食を片付け、大事な話に入った。

「で、これからどうするかが問題だ。」

海樹の言葉に誰もがうなずく。そう、これからどう行動するかによって、命を落とす危険性も出てくるのだ。とくに、ライバルとしていた貴一が生きていた事をしった亜岳の存在。貴一を強い奴と見ている奴等は過去に何度も引き入れようとしていた事もあった。それと同時に、白銀の月を手に入れようとする組織やカリア。そして、子供達の依頼でもあるこの物語の件。どれもが周りにとっては手に入れたいものだった。

 白銀の月は何者かはわからない影だけで噂されていたが、昨日の出来事で、青が白銀の月だと数名にばれた。きっと、影で隠れてあの騒動を見ていた辰二達も知っただろう。だから、なおさら命令に従った一刻も早く連れ戻そうとするだろう。

「依頼の件はいくらでも真実に辿り着くまでは奪われても取り返す事が出来るだろう。だが、一番まずいのは私と青ですね。」

その通りだった。貴一だけでも引き入れたら戦力が上がるが、青を入れたらはっきりとした差が出来てしまうだろう。

「まったく、青も青だよ。あれだけここは『瀧靜』じゃないって言ったのにさ。」

「だから、ごめんって。」

「それに、お前達も青を簡単にそうなるように追い込ませるからだろ!」

紅乃はかなりご機嫌斜め。それもそうだろう。青も隠しておきたくて隠しておいたものを、昨日何人もの前で明かしてしまったのだから。

「それは、私達のミスが招いた事です。青もすみません、助けられる余裕が出来なくて・・・。」

「大丈夫だよ。問題ないし。それに、藍が助かったからいいじゃないか。」

過去の事は過去の事と続けながら、紅乃が入れてくれたお茶を飲んだ。

「で、話を戻しますが、そろそろ、ここから離れたいと思います。そろそろ、彼等が動くと思いますから。確実に捕獲して手に入れるために、今は作戦と言うものを考えている最中でしょうが、そろそろ話がまとまっている頃でしょうし。」

「そうだよな。子供って言う荷物があるからな。」

「荷物だなんて、何を言っているのよ海樹。あの子達は荷物じゃないわよ。」

「そう言う意味じゃなくってさ・・・。大事な宝をしまってある荷物って事だよ。旅行でも、荷物を簡単に奪われて困る奴いるだろう?」

海樹はただのたとえ話だと言うが、藍の目は許してくれなさそうだ。

「確かに旅先で荷物を奪われたら困るわよ。でも、それはいくらでも代用のきくものよ。でも、あの子達は代用なんてきかないわ。」

言い返せなくなった海樹。それに、これ以上言っても、反論されるだけなので黙っている事にした。

 彼等はそれぞれ、明日出発の為の準備として出かけていった。宿の部屋には貴一と青が残っていた。紅乃は水が少し行きたいところがあると言うので、青が頼んで一緒に行くよう行ったので、今はいない。貴一と青は今回荷物番だ。

 貴一は青に残っていた菓子を皿に並べてテーブルに出して食べるように言った。

「・・・で、聞いてみたい事があったんだけどさ。」

「何?」

静かな部屋に二人の声は響く。

「青が扇を持つ理由。後、白銀の月の時に笛を持つ理由。他にも戦力になるものだってあるでしょう?確かに、過去に一度、青は俺に刀や剣、銃などは確実に人を殺す物だから嫌だと言う事は聞いた。だが、どうして扇と笛なんだ?」

「確かに、言ったよね。必要以上に傷つけたくないからって。かといって、この扇も笛も人を傷つける事にはかわりがないけどさ。」

青は皿の上に並べられた菓子を一つ手にとって食べる。

「気になっていた。扇の理由。別に必要以上に傷つけたくないのだったら、他に棒でも糸でも球でも良かったはずだから。」

今まで見てきた変わった武器を持つ者達を思い出しながら言った。

「・・・そうだね、話してもいいかもね。いつまで誰にも話さなくても、いずれは知られる事だから・・・。」

青は貴一の方を向いて、相手の目をみて話し始めた。青が紅乃とも出会うより前の事。

 


 青は物心ついた頃に両親を無くした。だが、親戚は誰も引き取ろうとはしなかった。それは、鈴華という妹の存在のせいだった。

 青は妹と離れる事を拒んだ為に、誰も引き取れなかったのだ。一度に二人も引き取る事は、しかも、幼い妹もとなると引き取る余裕がなかったのだ。

 青はその頃から剣術や武術において優れている事を知られていたので、引き取る事を考えた人もいたらしいが、妹まで引き取る事は出来なかったから、引き取る事を断念したのだった。

 その結果、青は両親が唯一残した家と少しのお金でそのまま妹と暮らす事にした。月に一度、親戚中が一軒につきいくらと決めて、それを集めて渡してくれたのだ。だから、引き取るより安いお金だけだったので、それに何より、青は大人にも負けない程の剣術や武術を持っていたので、安心したいたのだった。

 そんなある日、親戚の一人で青の友人だった少年が組織、いわゆる瀧靜の連中に絡まれ、ぼろぼろにされていたのだった。それを見つけた青は相手に飛び掛り、得意の剣術によって相手を倒した。

 そして、人を傷つける恐ろしさを知った。服も体も刀に切られて飛び跳ねた血によって紅く染まっていたのだ。なんとか全員生きていたが、青にとって、その時の幼い青にとってはとても恐ろしい光景だったのだ。友人も友人の両親も親戚も誰も青を責める事はなかったが、後悔が心の中で住み着いた。友人を助けた事によって感謝されたけど、青はあまりうれしくなかった。人は簡単に傷つけられて、死んでしまう事を知ったから。きっと、あいつらも下手すれば両親のように簡単に死んでいたのだ。

 それから、青は両親がそれぞれ大事にしていた残していた扇と笛を持ち出した。そして、それをつかって剣術と武術にあわせて一人で特訓した。

 ほぼ完璧に扱う事もできて攻撃も守備も大丈夫な状態にまで持ち込んだ時、夜盗が家に押し入った。もちろん、青は対抗して撃退した。だが、扇は半分に割れてしまったのだ。笛も日々が入ってしまった。

 いくら、これで戦闘が行えても、元が強くなければ壊れるのだ。

 青は一番信頼している鍛冶のおじいさんに頼んで、この扇と笛を元にもっと強くしたものにして直してほしいと言った。

 おじいさんは快くそれに答えて3日だけ時間をほしいと言った。

 それから3日して、青は引き取りに行った。扇と笛に刻まれていた模様がそのままはいっていて、それぞれについていた紐飾りがついていた。

 青は何度もお礼を言って、その鍛冶屋を後にした。それが、そのおじいさんとの最期の挨拶だった。その日の夜に、彼は発作を起こして亡くなったのだった。

 青は本当に哀しんだ。もしかしたら、これを頼んで無理をさせたせいなのかもしれないと。

 


一度、青は話す言葉を区切った。そして、再度話し始めた。

「後で知ったんだけど、その鍛冶屋のおじいさんが俺の祖父だったんだ。母方の両親で、祖母は何かあって離婚して離れたんだってさ。だから、おじいさんは、俺の手助けが出来るのならってやってくれたんだと思う。」

貴一はただ黙って聞いているだけ。まず、最期まで聞くのが、聞き出した自分の最低限の義務だろうから。

「祖父はどうして祖母と別れる事にしたかはわからない。けど、何かがあって、別れたんだよ。決して祖母や母を捨てたわけじゃんかった。祖父だって知る前に聞いた話、妻を置いて出て行ってしまった形になったと後悔していた。」

青は手に扇と笛を見つめながら、思い出すように言う。

「この扇と笛は、父と母の形見だけじゃなくて、祖父が大切にしていた笛と扇、実は、あの二つは祖父から二人へ贈ったものらしくって、それよりはるかに丈夫で強いものによって作られた大事な仕事の品だったのを、使って直してくれたんだ。つまり、これは三人が残してくれた物なんだ。あと、ここにある紐は組織に入った頃、切れたのを妹が最期に母からもらったっていう奴をつけてくれて・・・。つまり、これは家族が残してくれた宝物なんだ。」

青はだから、これを誰にも奪われないようにすると同時に、守る為の物に手を加えてくれた家族の為にも最後まで生きようと思うと言った。生きたくても、生きられなかった四人の為にも。守る事が出来なかった自分が、生きているうちに見つけた何かを守る事が出来るように。

 青は今、守るものはこの仲間。仲間を守る事が、家族を守る事が出来なかった自分の罪の償いのようなものだから。でも、つぐないだけで守るんじゃなくって自分の為でもある。

 家族は、自分が生きる事を、どんなことにも負けない事を望んだ。そして、この二つを残した。だから、死ぬわけにはいかないのだと青は言った。

「今の戦術体制は、祖父によって教えられたものなんだよ。歌舞って知っているだろう?扇をもって舞を舞ったり、笛を吹いて、唄ったりするやつ。祖父はその笛と扇を作っていたんだ。それと同時に、簡単な基礎戦闘術も教えていたんだ。扇と笛の戦闘はそのときに祖父にならった。祖父とは知らずにね。」

そのときになって、やっと貴一は話し始めた。

「そうか、青は本当に家族に愛されて、支えられていたんですね。」

貴一も両親を覚えていたら、両親の温もりを知っていたら、少しは状況が変わっていたかもしれないと思った。

「青は、だから仲間と見た人間は自分を犠牲にしてまで守りたいと願うのですね。」

青はゆっくりとうなずいた。

「でも、仲間の一人としていっておきたいことがあります。無茶はしないで下さい。俺も、大事な仲間である青を失いたくはありませんから。」

「・・・ありがとう。」

また少し、仲良くなれた二人。間があいていた間はもう完全に埋まっているだろう。

「そろそろ、皆戻ってくるね。」

「そうだね。」

二人は一緒にカップを持ち、残りを飲み干した。

 その時、ドアが開いて、出かけていた皆は戻ってきた。

「ただいま。」

声をそろえて言う彼等に二人はそろえて『お帰り』と言ってやった。






     あとがき

 青の家族のお話と扇と笛にまつわるお話でした。
 そろそろ、それぞれのメイン三人の過去に触れて行きたいと思います。
 藍は結構最初の方で姉のことが出ていましたが、海樹や貴一は全然ですし。


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