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十章 白銀の月降臨 追い詰められていく青。 「ねぇ、私のことは私がなんとかするから、降ろして。そしたら、青の自由に戦闘が出来るでしょ?」 「・・・駄目だ。そんなことをしたら貴一に何を言われるかわからないからな。」 「そんな事言っても、これじゃぁ・・・う、後ろ!!」 明らかに、追い詰められているにもかかわらず、会話が出来るほど余裕があるのがにくたらしい。榊は痺れを切らして、捕獲を止めて、始末する事にした。 「全員、死ぬ覚悟でやれ!」 「了解!」 全員が、先程までと違い、明らかに殺す気でいる。 「青、やっぱりあんた一人で・・・。」 「黙っててもらいたい。」 何度も言うが、青はお構い無しである。こう言うとき、男は強情だと再確認する藍。 「じゃぁ、本当に危ない時は、すぐに私はほってやりなさいよ。」 軽く頷き、襲い掛かる男達を倒す青。
カリスは、貴一達と離れてその様子を見ていた。 「なかなかやるね。やはりNo.1というところか。だが、女連れて右手だけ、何時まで続くものか・・・。」 「・・・どうしても、私達が手を出す事を許さないと・・・?」 「そうだね。だから、白銀の月のことを教えてくれたらって言っているでしょう?元No.1のあなたなら知っていてもおかしくないんじゃない?組織表のNo.1と同等あるいは以上の力を持つのだからね。対立したことはないわけ?」 「ないから言っているでしょう。それに、誰も姿を見ていないのですよ。」 「可笑しな話だね・・・。そう言えば、可笑しな事に元No.7でありながら現No.1についたあの男。彼ならば知っているのかな?」 カリスは面白そうに笑みを浮かべている。彼にとっては、青を捕らえる事などどうでもいいのだ。ただ、見ていて面白いというところだろう。いつまでも、粘り、いつその粘りが途切れるか。 「瞳鈴、あの男と女を捕獲して来い。」 「駄目ですよ、翔維。今は組織で動いているのですから。瞳鈴も、翔維の命を考えるならば、そこを動かない事です。」 一枚も二枚も上手である。どうやっても、四人をここから青達の場所へ行く事を許さない。 「何か、思い出したら言ってよ。いつでも聞いてあげるからね。」 悪魔の笑顔を向けるカリス。 「くそ、このままじゃ・・・。」 「落ち着け、今は待つんだ。」 貴一も内心はとても慌てているのだ。 「今この場でこの男を相手している余裕は無い。本当に危なくなった時、その一瞬にだ。」 その時、男を一瞬でも気をそらし、青達を助ける。今は待つしかない貴一達であった。 アイコンタクトでお互いに指示をだす二人を見ているカリス。 「俺は、そう簡単に通さないからね。これでも、ここの二番目だからさ、通すような事があったら、降格されちゃうんだよね。」 相手は、もし動けば本気で止めにかかる。これで、確実となった。やはり、青達を助けるには、一瞬か、この男を倒すしかないのである。 「あらあら、やはり、元No.7の実力なのかもね。」 カリスの言葉に二人の視線は青へと向く。 「青、藍!!よけろ!!」 バランスを崩した青に一瞬だけ隙が出来た。それを、榊が見逃すはずが無い。 「もらったー!!」
ザン―――――――――――――――
誰もが目を疑う。 雲に隠れていた月が、再びこの地を照らし始めた。 「う、嘘だろ?!」 「まさか・・・。」 「青・・・。」 「ほう、君が・・・。」 それぞれの声があがる。 青は、襲い掛かる榊を弾き飛ばした。そして、月の光によって、彼の髪は銀色に輝いていた。目の錯覚だろうが、銀に見える。 「・・・いいかげんにしてもらおうか。俺は、気の長いほうではないからな。」 先程までの彼とは似ても似つかないすさまじい殺気である。右手には扇とは違い、笛を持っていた。 「そろそろ、体の中に入っていた薬が薄れてきただろう?」 「あ、そう言えば・・・。」 藍を降ろし、笛を持ち構える。 「今のうちに貴一達の所へいけ。」 「あ、わかった。」 藍は薄々気付いていた。青がどうしてほとんど攻撃態勢に入らず避けるだけだったのか、自分を置いておかなかったのか。薬が切れるのを待っていたのだろう。自分も攻撃が出来るように、戦力を増やす為に。 「さぁ、覚悟は出来ているな。仕事とは関係が無いが、呼び覚ました以上、相手をしてもらう。光栄に思ってほしいね。俺が相手をするのだから―――!!」 青の動きはほとんど目で捕らえる事は出来ないほど早かった。榊には、次々と倒れる手下しか見えていないだろう。 あっという間に、青は雑魚を片付けた。残るのは榊と翼である。 「く、くそっ!!」 このまま負けるのは組織内の契約で許されない。生きるためには負けることは許されない。No.4にまで上がりつめた榊には、生きる道は継続か上がるかである。 榊が必死の攻撃も、同様から鈍くなり、青でなくても簡単に倒す事は可能である。 「もう、おしまいか・・・?そうだな、俺もあまり長く付き合ってもいられないしな、これで終わりにしよう。」 笛を左手に持ち替えて、すさまじい速さで二人の間に突っ込んでいく。 「・・・扇笛鳴舞(せんじゃくみょうぶ)。」 榊と翼の二人は青が間を通った瞬間、同時に宙に投げ出された。青の手にはいつの間にか右手にいつもの扇を持っていた。 ドサッ 二人が地面に落ちた時、バックで手をたたく音が聞こえた。 「お見事です。さすが、白銀の月。でも、まさかあなたがそうだとは思いませんでしたよ。どうりで、簡単に7から1へ上がったものです。」 規則正しく拍手をするカリア。新しい玩具を見つけた子供のように笑顔に嘘がない。その反面、何を企んでいるのかがわからないので一番危険である。 「さてと、そろそろお開きになると思いますが、一つ聞いておきたいのですが?」 「・・・なんだ?」 ただならぬ雰囲気が漂う中、カリアは気にもせずに続ける。 「マスターからの命令であなたを招待したいのですよね。」 「断る。」 「そう言うと思いましたよ。今は、この人達の旅のお付き合いですからね。でも、諦めませんから。また、どこか出会いましょう。」 カリアは不思議なほどすんなりと、この場を立ち去るようだ。だが、進む方向が少し違った。 「さて、榊、翼。両名は完全なる敗北上、マスターの命令に逆らった罪により、降格を命ずる。初めからやり直すといい。」 そう言い、今度こそ建物の中に入っていった。 何はともあれ、一段落ついた。
だが、まだ四人の決着はついていなかった。 「で、どうしようか。そろそろ日が昇る。そうすれば、街人に知られる。」 「しょうがないが、今度ということになるだろうな。決着はまた今度だ。それまで、負けることも死ぬ事も許さぬよ、貴一。」 「貴方こそね。」 お互い、再びの決着の日までの約束を交わした。 「あんた、しっかり貴一を見張っているんだよ。死なせたらただじゃおかないからな」 「お前なんかに言われなくても、貴一や藍や青は俺が守るんだよ。」 「弱いくせに。」 「お前こそな。」 この二人は、決着がついても仲良くなれそうには無い。反対に、泥沼化しそうである。 「お疲れ様、青。今日はありがとうね。」 「・・・別に、何もしてないし。」 サングラスがずるりとずれる青。慌てて賭けなおすが、慌てている為に落としてしまう。 「もう、何やってるのよ。ほら。」 拾って渡してやる。それに、青はありがとうご言った。 今日は、意外とといい日なのかもしれない。大事にならなくて良かったと誰もが思った。そう、この後、大きな問題になることは誰も予想しなかった。 宿に帰ってきたとき、暖かく心配したぞという第一声と共に迎えてくれた五人によって、心配も疲れもかき消されたのだから。 対立していた組織との接触があったが、今は依頼人の仕事をするのみと、再び旅に出た。今度こそ、二頭の聖獣を見つけるために、もう一つの『白い日』を探す為に。 一部を見ていた追跡の二人は、青が組織の陰の存在である白銀の月と言うことを知り、余計に連れ戻さなければいけないと改めて実感した。これが、マスター輝が青を手放すことができない理由の一つだったのだ。 もうしばらく、追いかけっこは続くようだ。 貴一達が生きていた事は、全ての組織に知れ渡り、誰かが白銀の月の正体を知ったという情報も流れ出、周りは動き出していた。 全世界の支配権を巡る争いが始まろうとしていたのだ。
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