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八章 囚われの取引 なんとか無事に港についた一行達。途中、可笑しな事があり、二人もの同行人が出来たが、気にせず旅を続ける事にした。 「なぁ、あいつも一緒はやだよ。」 「しょうがないでしょう?水さんのことがあるし…。」 「青からはなれないしな…。」 後ろを着いて歩く純、藍、海樹は貴一の後ろを歩く話の男と青を見てため息をつく。こう大勢で、しかも目立つ服装の紅乃と子供連れでは目立ちたくなくとも目立ってしまう。これでは、組織に見つけてくださいと言っているようなものだ。 「しょうがないね、二つか三つにわかれて、宿で合流しようか。それまで買い物でも何か仕事探しでも情報のやりとでも自由に出来るだろう?」 「その方がいいわ…。」 こうして、貴一と海樹と純の組と紅乃と青と水の組と藍と菖蒲と奈央の組に別れた。始めは三人で気楽にしていたのだが、どうしてこうなったものかと子供三人と部外者の紅乃を見て思ってしまう。青に関しては、自分達が連れ出したのだからしかたがないとして、紅乃と水は明らかに自分達と関係の無い人物だ。だが、今となってはそうも言えない。 「宿は言ったとおり、時間は日が暮れた後。いいね。」 三組はそれぞれ違う方向へ歩き出し、人込みに紛れていった。 貴一達はそろそろ仕事を見つけて収入を得たい為、情報を集めに店に入っていた。仕事を見つけるに当たって、大きな組織が関係するものや瀧静が関わるものや動きを把握しておかなければいけなかったのだ。組織内と外で結構勢力争いで顔を知っている者も他組織内にいるからである。 「なぁ、死んだ事になっていても、やっぱり駄目なのか?」 「そりゃぁね。使えると判断したら、即調べるだろうね。どんな事をしても、プラスになることのためには手段を選ばない人たちだから。君も、巻き込まれる対象に入るんだったね、悪いね。」 「そんなことはないよ。貴一達が守ってくれるんだろう?それに、奈央と菖蒲にはあのお姫様がいるから大丈夫だろうしな。」 「確かに…。」 二人でただの兄弟に見せるように店で注文をして雑誌を読むふりをして、情報を集める為に出て行った海樹の帰りを待っていた。 「でもさ、蒼い髪の人を含めた三人。あの組み合わせはどうかと思うんだけどさ?」 貴一はあははといいながら、たぶん大丈夫だろうと言う。明らかに部外者だったものだが、それは純達も同じなので、それ以上は言わなかった。 紅乃は青と腕を組み、水は二人の後についていくように歩いていた。紅乃の服と、青と水の姿は目立っているのだが、本人達はなんとも思ってはいなかった。 水は小さくなる思いで、また紅乃にお礼を言っていた。今があるのは紅乃のおかげだとか、友達を助けてくれたとか、王子に会わせてくれて、思いを伝えることが出来て本当にありがとうと、何度も言っていた。 「いいよ、もう。楽しく行こうよ。そんな気を使うようなことはないからさ。」 一方的にお礼を言われても、さすがに紅乃も困り始める。 「ありがとうばっかりより、仲良くしてくれた方がうれしいけどね。ほら、あそこで昼飯を食べような。歩いて疲れただろ?」 「あ、はい。」 「…俺は行きたい所が…。」 「いいから行くぞ。青は絶対に来るの。」 命令形。水には疑問形だが、青には絶対服従のごとく、拒否権はない。 「…拒否権…、二人ででもいいじゃないの?」 「駄目。」 今日の彼は血をわけてもらってすぐでなのか、船の上でのストレスの発散か、元気であった。ため息をつきながらも、逆らわず付き合う青であった。 藍は菖蒲と奈央の服を見ていた。一つ二つ、可愛い服を着ても罰はあたらないからと言いながら、前の仕事で稼いだお金と、組織内に侵入した時に拝借したいくつかの宝石や石を先程売りさばき、いただいたお金を合わせて結構ある。 「すごいね、藍姉ちゃん。」 「でも、泥棒はいけないことだよ?」 「いいのよ、あの男の所有物ぐらいね。散々人をこき使っておいて、姉を見殺しにするような悪い人だから、問題ないのよ?」 しかし、とってくること自体には問題があるが、学校というところへ行って学んだ事のない二人はあっさりと騙される。 「さ、どれがいい?」 これ以上言うと、二人の教育に悪いと判断した藍は二人の気を服へと戻す。 「私はこれがいいな。あと、これかな?」 「私はこれがいい…。」 「よし、会計済ませて何か食べに行こう。」 おやつと思って行こうと、会計を済ませて服を袋に詰めてもらい、店を後にした。 そんな中、彼等をつけている組織の朱従と守宮錠。 「追いかけてきたのはいいですが、三つにわかれてしまいましたよ?どうしますか?」 「そうだね、私等の目的は石と青だろう?石には藍がついているからな、青から先にどうだ?わけのわからない奴が二人いるが…。」 「石を取り戻す間、大人しくしていてくれるでしょうかね?」 確かに、そこは問題だなと思う。だが、人質にしてどうのこうのと出来るだろうという朱従の判断により、青達を尾行する事にした。 彼等はあまり目立つことはここでは避けたかった。なぜならば、ここは瀧靜と対立を繰り返す組織、“秦楼”があったからだ。 「彼等も大胆なことをしてくれますよ。顔が知られているというのに…。とくに、ここのNo.1の亜岳が獅子を目の敵にしていますからね…。」 「とにかく、ここでは何もせずに様子を見るか。どうせ、後で合流するだろうから、どれかをつければ問題は無いだろう?」 何も起こらなければいいのだがと心配と警戒の二つが入り混じる中、二人は青達の後をつけた。 ここは、奏楼が支配する町。やはり、貴一達のことは報告される。似た人物としても、いろいろと裏取引に使えるからである。 貴一や二人の心配は現実に起こってしまった。 買った服に着替え、店でおやつを食べ、満足げに出てくる三人に男達が向かってきた。ちょうど、人の少ない場所であったので、あまり被害はなさそうである。 「下がってて、二人とも。」 藍は荷物から弓術具を出し、矢を放つ。 「今のうちに逃げるよ。」 前列を走ってくる男達を足止めさせ、二人の腕を引き走る。いくら巫女の守護があるといえども、必要以上には危険にさらす事は出来ない。二人はかたぎの世界に住む素人のしかも子供なのだから。自分のように手を汚してはほしくないのだ。 「あ?!」 菖蒲が少し出ていた道の石に躓き、転んでしまった。もちろん、その間に男達には追いつかれてしまった。 「…おとなしく、来ていただきますよ。」 「へん、おとなしくしてはやれないものでね。」 構えて、襲い掛かる男達を順に投げ倒す。だが、大人数相手にはさすがに疲れる。長旅の疲れと、二人を守ろうとするあまり、隙が出来てしまった。 「し、しま…っ?!」 「藍姉ちゃん!!」 指示を出していたリーダーであろう男が藍に薬を嗅がせ、その場に崩れ落ちるように眠りについた。 「…そこのガキも一緒だ。捕まえろ。」 「了解…。」 男達が二人にも襲い掛かる。藍をおいていけないが、他の誰かに知らせないと助けてもらえないということもあるので、その場から逃げようと走り出す。だが、子供の足では逃げきれるはずが無い。 「菖蒲、早く!」 腕を引っ張って走るが、菖蒲は奈央ほど速く走ることは出来ない。その為、簡単に追いつかれ、男が二人を捕まえようとした。だが、二人は捕まる事は無かった。 「な、何?!」 大きな音と男の声が聞こえた。捕まると思った瞬間、二人は目を瞑ったので、何が起こったのかわからなかった。恐る恐る、目を開けると、視界は少しぼやけている気がした。だが、すぐに自分の目がぼやけているのではないとわかった。 「もういい、騒ぎが大きくなる前に行く。」 指示を出し、諦めた男達は藍を連れて去っていく。 「あ、藍姉ちゃん?!」 追いかけようと立ち上がったとき、男達が残していったと思われる紙切れを発見した。自分達は巫女の守護によって守られて、藍にも守られて、藍を守ることは出来なかった。その悔しさもあるが、今は助け出すことの方が大事なので、合流すると言って宿まで走っていった。 すでに貴一達は戻ってきていて、事情を聞きいて紙の内容を読み、青達が来次第助け出すと言った。 紙に書かれた内容は簡単なものであった。だが、一人と書かれているあたり、襲われて去っていく際に書いて残していったのだろう。器用な事をするものだ。 間違えは無く、貴一本人だとお見受けする。 一人、客人として呼ばせてもらった。 お前も来い。 そろそろ、決着をつけようではないか。 時刻は12時ジャスト 奏楼の門で待っている 来なければ、客人は戻らないと言う事を考えてもらうよ 決着と奏楼ということから、貴一や海樹には誰の事かわかった。 「あいつだな。」 「そうだ、藍を人質に使い、取引とはな…。」 「どうする、決着といっても、今まで負けたことは無いが、勝った事は数少ない。ほぼ引き分けだっただろう?」 思い出す、まだ組織内で活動していた頃を。 「問題は無い。藍に手を出した事を打ちのめすだけだ。亜岳だろうが、誰だろうがな。」 その言葉の後、青達は帰って来て、今夜の仕事を話した。
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