一章 狙われた小さな子供達

 

 

 

 次の日の朝、三人はすぐに船に乗り、この地をあとにする予定であった。だが、問題が起こってしまった。

「キャ、」

「どぅわぁ?!」

海樹に誰かがぶつかった。海樹の側で自分達より幼い少女が地に座っていた。少女の後ろにはもう一人、少年が立っていた。

「おい、早く立て。あいつ等が来る。」

「わ、わかって・・・。」

「待ちやがれ!」

二人が走ってきた方向から、あきらかに街の市民や商人ではない男達が走ってきた。しかも、素人でもなさそうである。持っている刀を見れば判る。上級品であるし、簡単に手に入れることの出来ないものを持っているものもいる。

「ちょい待ち。」

海樹は三人の隣を走り抜けようとした二人の少年少女を止めた。

「あいつ等におわれているのか?」

「そ、そうだよ。わ、来た!」

逃げようとしたが、間に合うはずが無い。もう距離はそんなにない。

「なら、後で事情を教えてくれるか?とにかくこんなところでうるさくされるのは迷惑だからおとなしくしてもらうから。」

目つきが悪い為、ぶつかった折は少女はどうなるのかとびくびくしていたが、今の優しそうな笑顔を見て少しホッとしたのか、おとなしくその場に立つ。

「ということで、許可してもらえますか?貴一。」

「別に、許可を取っている場合ではないでしょう?そうですね、20秒で片付けられますか?」

「了解。藍、二人を頼むな。」

そう言って、すぐ側まで来ている男達に突っ込んでいき、手を軽く体の一部に触れ、次々と倒す。10人ほどの男達は、貴一が言った20秒きっかりでその場に倒された。

 海樹が四人のいる場所まで戻り、交代する。

「頼みます、藍。」

「了解、二人の面倒はしっかり見なさいよ。」

藍はそう言い、倒れた男達一人一人の額に手を当て、何かをつぶやいた。

「これで、あの10人は今までの記憶全てを忘れたよ。大変だね、今まで全部だから。」

少し楽しそうであった。私達の前でさわぐからいけないんだよね、とつけたして。

「さて、とにかくまた来ても困るからとにかくここから離れようか?」

貴一は二人の背中に手を当てて前に歩くように押す。

 それから10分後、三人が二人の住む古い小屋についた頃、10人の男達の情報が入り、回収をする為に来た男がいた。

 




 倒れた男達を送信機で車を出させて運んだ。

「大の大人10人全員確実に動きを封じるなど、すごい人がいるようですね。周りから聞くと、気づかない間にだそうです。そう考えると、1分以内にはすでにこの場から立ち去っているようです。」

男が遠くだんだんと小さくなっていく車を見ている男に言う。

「守宮錠、どう見る?」

「守宮錠はここではやめて頂けませんか?顔がせっかく知られていないのに、名前が知られているせいでばれます。それに、今ここでは峰岸 辰二という市民なんですから。」

守宮錠と呼ばれた男は、辰二と呼ぶように隣に立つ男に要求した。

「…わかった、辰二。質問を戻す、どう見る?」

男は必要以上の言葉は話さず、再び質問をする。

「一年前に死んだとされている三人のうち一人、彼ならば考えられますね。何せ、瀧靜一の人体操作の一人ですからね。動きを封じるのは彼の十八番ですから。何より、彼等は生きているようなことを輝さんが言っていましたしね。」

それを聞き、男は少しぴくっと眉をひそめる。目を覆い被されて表情が読めない彼だが、それを見逃すほど辰二も鈍いわけではない。

「心当たりというものですか?まぁ、私はどちらかというと、生きているにもかかわらず、裏切り者を生かしている輝さんの考えがわかりませんね。もし本当に生きていると言うのならの話しですけど。そろそろ戻らないといけませんね。」

辰二は胸ポケットから銀の時計を出し、時間を確認した。

「いたいた、探したよ守宮錠、紫影。輝さんからの呼び出しだ。」

「これは、わざわざすみませんね、朱従。でも、出来れば街中では峰岸 辰二でお願いしますね。」

再び言う。わかったよと簡単に答えて、朱従と呼ばれる少女は歩き出した。

「今回はね、忙しくなりそうだよね。それなりに経験のある大の大人が10人全員確実に壷をつかれて、全ての記憶を抹消されているんだからな。」

「それは、それは。青…、いえ、紫影の方がいいですか?やはり、あの三人なのでしょうかね?」

辰二は少女朱従の言葉で何か確信するものがあったようだ。先程から隣に立つ、サングラスで目を覆い隠しているすらっと背の伸びた蒼銀の髪の男に尋ねた。しかし、青は何もこたえなかった。

 





 この三人が話をしている間、少年少女を偶然助けた三人は、古い小屋の中にいた。

「で、どうして追われていたのだい?あの人たちはどう見ても一般の人じゃなさそうだけど…。」

そう言うと、少女が奥からもう一人、少女を連れてきた。

「俺は天岸 純、こっちは妹の奈央。それで、幼馴染の大路 菖蒲。あいつ等は菖蒲が受け継ぐ、両親が残した石を狙っているんだ。」

道で助ける結果となった少年少女は兄弟であり、名前は純と奈央。奥から連れてこられたのは菖蒲。どうやら、親が残した財産を狙っての事だろう。

「で、その石っていったいなんなの?今ここにあるの?」

すると菖蒲は、小さく横に首を振る。ここにないのかと言うと、どこにあるのかは知らないのだと言う。

「なら、狙う理由は無いのにさ、何で狙うんだろう。」

不思議に思う海樹だが、横の二人は何かに気づいたようだ。

「ねぇ、菖蒲ちゃん…でいいかな?菖蒲ちゃんはお父さんかお母さんに何か聞いていない?」

すると、少し下を向いてしばらくしてから小さく頷いた。

「でも、その聞いた言葉の意味がわからないから見つけ様がないと言う所かな?」

また頷いた。

「ねぇ、良かったら教えてもらえないかな?私達はいちよう旅をしながら何でも屋をやっているの。」

「何でも屋?なら、見つけてくれるのか?」

「依頼とあれば。」

すると、純は唇をかんだ。依頼しても、支払い代金がないと言う。

「何言ってるんだよ、お金での支払いはいらないよ。どちらかというと、今晩ここに泊めてほしい、それでいいから。それで十分だ。」

海樹は言う。もう疲れが酷いらしい。そして、言ったかと思うと、悪いなと言い、その場に崩れ落ちる。

「あ、あの…。」

急に倒れる海樹に驚く三人の子供。心配要らないと藍は言う。

「そうね、今晩ここに泊めてもらえる?この分だと、もう少しいなければいけないし、お金はあまり使いたくないからね、宿代って結構高くつくのよ。あなた達が嫌でなかったら、ここに泊めると言うのを代金として、探している石を見つけて三人と石を守るという契約をするけど…、どうかな?」

もう、仕事体制にはいる藍、子供達は少し戸惑ったが、それでお願いした。戸惑った理由は、関係ないこの三人に仕事を、たかがこのボロ小屋に泊めるだけでいいという三人の考えの為だった。あきらかに身なりのいい三人には申し訳ないような小屋であり、食べるものも無い。

「さて、これにサインして。」

どこからだしたのか、紙とペンを取り出した。子供達にとっては、こう言ったものを見たのは初めてだったのだろう。あきらかに戸惑っている。どうしたらいいのかわかっていない。

 サイン、自分の名前を人数分ここに書いてと言い、ペンを渡した。子供達は、元々孤児だったわけではないらしく、ある程度は字を書くことが可能だったらしい。

「さて、契約完了。じゃぁ、まず、聞こうかな。その、…貴一………。」

先程までと違う真剣な表情を見せる藍。貴一も少し表情が険しくなる。

「どうやら、先程の仲間のお出ましというところですね…。」

今ここには子供三人と、眠っている海樹がいる。

「しょうがないな、とにかく片付けるから、これからどこに隠れるかとか考えておいて。君たちは、この辺の事それなりに詳しいだろう?」

そう言って、外に出て行った。

「あの、お姉さんは大丈夫なのですか?」

確かに、今ここで眠っている男は見た目も強そうであり、実際にも強いと言うのを目で見て判っている。だが、もしあれより大人数でもっと上級者が現れたとすれば、あの人は大丈夫なのだろうかと不安になってしまう。

「大丈夫だよ。彼女は弱くてもろい硝子だけど、だからこそ強いんだよ。隠さず真っ直ぐで、全てを見通す鏡だから。それに、男二人と一年も旅していてあれだけぴんぴんしているんだからね。」

と言う。本当にお互いを信頼しているからこそ任せる事が出来る。貴一はそう言った。その言葉の後に、君たち三人も、お互いを信頼し会っているからこそ、今も一緒にいて、人のことを心配したり、助けたいって思うんでしょう?

 三人は黙った。

「あれがおとりでこちらに来ては困るので、少し離れていましょう。」

そう言うと、三人はうなずき、こっそりと小屋を出た。

 10分後、藍は戻ってきた。お帰り、お疲れ様と貴一はさわやか笑顔で言うが、側にいる子供三人と、眠っている海樹を担ぐ姿のせいで、どうしても違和感を覚えた。

「記憶は封鎖しておいたけど、絶対にあっちは感づいているよ。私と海樹が得意とする分野での戦術だし、何より記憶封鎖が特にね。そろそろ作戦考えないと、こっちが狩られるよ。」

「確かにね、街でも変に人に見られていたからねぇ。」

「あんたのその髪がいけないんだよ。それより、聞いていい?菖蒲ちゃんの親御さんが残した言葉。」

「……うん。」

小さく答えて話し出した。

 




      あとがき

 サイト開設当初に書いていた品(太陽と月の序章一生並に昔)なので、今とは描き方が多少違うかと。
 なんだか恥ずかしくなってきたなぁ。でも、直す時間は今ないといいますか。
 何より、主人公かと思われる何でも屋よりこのあとでてくるある人が主人公より目立つので、
 どうしようかと悩んでいたお話なんですよ。でも、結構設定頑張って考えていた記憶があります
 とにかく、まだまだ続くのでお付き合い下さいませ。




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