|
東西南北それぞれ広がり発展を続ける国。 北をノースグロウ、西をウェスグロウ、南をサウスグロウ、西をイースグロウと言い、その東西南北にある国の中央にある大きな帝国をセントラルグラウド。 全てはセントラルグラウドが中心で、消えてなくなるような事があれば、バランスを崩し、全てが崩壊するとまで言われている。 そんな世界でのお話。 セントラルグロウドの一人のお転婆な王女様と、東西南北それぞれの出身であり、それぞれの守護神を降ろした四人の幼馴染の騎士の物語 四方位年代記 「またですか・・・。」 「あの人ですから。」 朝、起こしに来ようとクルードが部屋に来てみれば、ノックをしても返事はなく、やはりといっていいのか、部屋は者家の殻だった。 一緒に来ていたライフェはいつもの事なので慣れているが、クルードは何度あってもなれる事はない。 何せ、身分は違えど、あまり表に見せないが好きでしょうがないお姫様が眼を離した隙に逃げて、その間に何か危険な事があっては困るからである。 ちなみに、出会ってからすでに十年以上。よくもまぁ、一目ぼれをしてからここまで一途に思い続けてきた、少々可愛そうな人でもある。 「相変わらず、お転婆は直りませんね。じっとしていれば、とっても綺麗なお姫様だというのに。」 出て行ったであろう、カーテンが風に吹かれている窓を見て溜息一つ零すのはクルード。 「でも、そんなお転婆なフーラル王女が好きなんでしょう?クルード君。」 黙ってろと言わんばかりに睨みつける。毎度のことだし、見慣れているし。何より、もっと冷酷で鬼神だとか魔王だとか言われるような恐ろしい怒りで溢れている彼の顔と気配を知っているライフェには、今の彼はまだまだ可愛いものである。 「探しにいくんでしょ?はやくしないと、フーラル王女はどこまでも行っちゃうからねぇ。」 「わかってる。・・・ワンディにも探すのを手伝うように言ってくれ。風が一番探すのにはいい。」 「はいはい。」 人使いが荒いなといいながらも、護衛の騎士長の命令に従うライフェ。 すでにクルードは探す為に窓から出て行った後。 「朝から元気だよねぇ。」 だけど、そんな毎日を見ているのは楽しい。だから、このまま続けばいいのにと願う。 続かないだろうということはわかっていながらも。 「さて。怒られるから仕事しましょうかね。」 髪を一本抜いて、耳に付けている装飾品をひとつはずし、呪文を掛けながら髪を絡めた。 「我が契約をするファレスよ。姿を現せ。」 今までただの紅い石と髪だったものが、紅い羽根を持った鳥に変わった。 「頼むね。」 「仰せのままに。」 すうっと姿を消して、役目を果たすためにきっとワンディの元へ行っている事だろう。 「さて。僕も探しますか。」 のびをして、同じように窓から飛び降りて探す為に外に出るのだった。 「どうしたの?」 生きる希望もない幼い子供。 面倒は御免だと無視する大人達を見て、諦めきっていた時声をかけたのは、一人の少女だった。 クルードはイースグロウで、ライフェはサウスグロウで、ワンディはウェスグロウで、ウィスドはノースグロウでそれぞれフルーラ王女と出会い、新たな居場所を与えられた。 彼等は物心付く頃には、親はなく、一人ぼっちだった。 他人を迎えるほど皆は余裕がないので無視をしていたが、彼等こそ、それぞれの国の安定を保つ為の力を供え持つ守護神だったのだ。 それぞれの方位にある国を守るとされる神が彼等が生まれる時に契約を交わした。 最初は彼等も気付かない。 そんな彼等はただの邪魔な者と思い込み、希望もなくただ毎日を過ごしていた。 そして、フルーラと出会った。 最初はとても可愛い子だと思った。だけど、話す言葉は毒舌で、何でもはっきりと言って厳しかった。 だけど、下手に構われたり中途半端に言われるよりはすっきりしてよかった。 居場所が何処にもないことを知ると、彼女は自分の家は広いから来いと言った。 最初は彼女の事を知らなかったから断ったし、悪いと思った。 だけど、大丈夫だといって引っ張られて、まさかあんなに大きな、それも一番偉い王が住むとされる王城が彼女の家だと知ったときは驚いた。 知らないことは時に大変な事になるのだとよく知った。 そんな事で固まっていた彼等を見て、いつも言うのだ。 「私は綺麗に着飾って座っているだけの人形じゃないの。遊び相手がほしかったの。居場所がないのならあげる。だから、私の話し相手になって。」 彼等はそれぞれ順々に来たが、全員同じような出会い方をして、同じような話を彼女とした。 彼女の真剣な、それでいて少し寂しそうな眼を見て、一人押し込められて、大人ばかりがいる中でいるのは寂しいのだと思った。 親がいても、忙しいしく、話が合わない者達と過ごすのは苦痛で、結局人がいても一人という寂しさがあったのだ。 五人それぞれが抱えていた共通点は、孤独。 出会い、五人はそれぞれ互いの幸せのために力をつけ、過ごした。 今では立派な王女と、王女の護衛を任された四人の騎士。 「・・・久々に見たかも。」 しっかりとした、かなりの年代を生きてきたのであろう大木を登り、上で休んでいたフルーラはいつの間にか寝ていたようだ。 「・・・また、クルード怒ってるんだろうな。」 出会ってからいつも怒ってばかりのクルード。だけど、そんな彼が好きなフルーラ。 ちょっとからかえばすぐに反応が返って来て面白い。真面目な奴だからとても面白い。 ライフェは合わせてくれているが、何かが違う。 ワンディのような乗りのよさもまた違う。 何の反応も見せずにすぐに本の世界に戻るウィスドとも違う。 「好き・・・なんだろうなぁ・・・。」 もうすぐ、自分は17となる。遅いぐらいなので、両親は自分を誰かと結婚させようと話を進めている。 「クルードだったら、すぐにオッケーなんだけどね・・・。」 身分が違うから駄目だと言われそうだ。それに、クルードに迷惑もかけられないから。 「どうして、王女だったんだろうな・・・。」 権力も財力もあったから、四人を連れ込んで両親に頼むなんて事もで来たのだが。 王女という肩書きはとても重く、身勝手な事が出来るのはそろそろ終わり。 そんな事を考えていた時だった。 「やっと、見つけましたよ!」 下から少し荒い息のまま見上げているクルードの姿があった。 「あ。」 「あ、じゃありません。どれだけ探したと思うのですか?ワンディがここだと連絡をくれたので来てみたら。また木に登って。」 危ないでしょうと、どんどん文句を言い続ける。 だけど、それが心地よかった。毎日のことなので、ない日は寂しさを覚えるぐらい。 だから、たまに彼等が順々に東西南北の国の様子を見に出かける時は寂しい。言葉に出す事は出来ないが。 「まったく。困ったお姫様だ。」 「何よ。ちゃっかりと登ってきて。」 思い出していたら、いつの間にか登ってきたクルードに気付かなかったので、ちょっと悔しい。 「それに、お姫様って言わないで。フルーラだって言ってるでしょ。」 「はいはい。朝食の支度は整っているでしょうし、他の使用人達にも迷惑がかかります。帰りますよ。」 フルーラを抱き上げて、そこから華麗に飛び降り、着地した。 相変わらず無駄に格好いい奴めと、心の中で文句をいうフルーラ。だから、彼に聞こえる事はなかった。 「絶対ウィスドが怒ってる。」 「・・・怒っていません。食事中は静かに食べたら如何ですか?王女様。」 「王女様って呼ぶ時点で怒ってるって宣言しているようなものじゃない?」 クルードの馬に乗って一緒に帰ってきたフルーラ。 今日もやったのかと、フルーラとある意味同種なワンディが迎えてくれて、侍女のアリアにはいいといっても手伝ってくれるので、大人数より一人だけでいいと言った日から、アリアがフルーラについて着替えを手伝うようになった。 そして着替えて部屋から出るとライフェが待っていて、食堂まで連れて行ってくれる。 必ず、フルーラの回りには誰かがいる。 食堂では四人と一緒なのだが・・・。 今日はじめて顔を見たウィスドは明らかに怒っていた。 「何したっていうのよ。」 ぶうっとむくれて、フォークで指したおかずを口に乱暴に運んで食べる。 可愛い顔が台無しだといいたいところだが、この城では日常のものとなっていて、それがさらにフルーラを可愛く見せていたりもした。 「大丈夫だって。ただね、最近いろいろと物騒な事が多いから、少し控えて欲しいって思ってるだけだって。ね、ウィスド。」 元から無口だが、いざ自分達の前で無口になると怒ってると主張しているようなものなので、大人気ないことばかりしてないで元に戻れと言うライフェ。 「どういう事?」 「あ、物騒な事のこと?」 「うん。何か、あったの。」 「最近、また騒がしくなった。王の事が気に入らない反発組みが騒動を起こし始めている。」 「そっか。」 皆は知っていて、ウィスドはそれで焦っていて、自分に対しても怒っていたのだとわかった。 「ごめん。」 こういう時は、素直に謝るフルーラ。 「もうよい。せっかくの食事がまずくなるからな。」 「そうだよ。せっかくリートさんやリファーレさんが頑張って作ってくれた朝食だもん。しっかり味わって食べないとね。」 「そうそう。いっつもおいしいけど、日が増すごとに美味しくなるし。味合わないとソンソン。」 微笑んで食べるライフェと子供っぽくにこにこしながら食べるワンディは対照的だなと思うフルーラ。 その点、黙々と黙って食べるところは、ウィスドやクルードは同じだと思った。 こうして、朝食も済み、今日は珍しく五人が一緒に過ごせる日だった。 なので、久々に森へ出て自然の中で過ごそうかとフルーラは考えていたのだった。
|