序章

 

 逃げなければ

 捕まるわけにはいかない

 

「いたぞ、あそこだ!」

 

 複数の足音が、追いかけてくる

 振り返っている暇はない

 あいつらから逃げないと

 逃げて、父さんと母さんの意思を継いで

 二人が過ごしたあそこへ行かないと

 行って、二人の大切な友人の子供に伝えないと

 動き出した闇をとめるために

 彼等を巻き込みたくないという、あの人と両親のために

 

 「逃がすな!捕まえろ!!」

 

 声はどんどんと近づいてくる。

 もう、駄目かもしれない・・・

 でも、俺は三人のためにやりとげたいよ・・・

 あの人の二人の息子

 俺に、魔法を教えてくれた、大切な友人

 守りたい・・・

 あの人と両親が願うように、俺も・・・

 

 「う、うわぁぁぁ―――?!」

 

 「くそっ、落ちたぞ!」

 「この先は・・・まずい、あのガキ!」

 

 急に足元がなくなり、落ちていった

 底が見えない先へどんどん・・・追っ手の声も今はもう聞こえない

 




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