突如闇に飲み込まれた そこから、一緒にいたあの憎らしい人形の姿も、共に戦っていたはずの彼女もいない そして、かつて・・・今もまた自分を追い詰めるあの闇の足音が聞こえてくる いやっ、いやだっ 恐怖で声が出ない がたがたと、勝手に身体は震え出す 今でもその恐怖を忘れた事はない 組織の恐ろしさ 『・・・どこへ逃げても、必ず捕まえるからな。』 そして、続けてこう言うのだ 『・・・姉が待つあの世へ送ってやるよ。その白い服を紅い色に変えてな・・・。』 残酷な異国の、金色の長い髪を靡かせた黒い悪魔の声が今でも記憶に残っている 勝ち誇ったような、あの嫌な笑みが残っている そして、気付いたら自分は暗い闇の中にいて、側には紅子がいて、しばられているということに気付いた まるで、その隠した罪を裁こうとしているかのように、背後に立つ十字のそれが、心に深く突き刺さる 第五幕 闇を切り裂く光と紅き魔物 闇雲に歩いてもしょうがないことは、すでにわかっている。 歩いてもこの場所から移動していない事ぐらい、わかるから。 だけど、止まっていられない。 他のみんなの事が心配だから。 だから足を進めるが、この冷たく寂しい闇の中では、とても寂しく、孤独を感じる。 「あの時みたいだ。」 まだ、好きという感情を理解せずにいたころ。 キッドの花飾りとなって、妬まれることとなり、ある女によって、この孤独を認識させられた。 その後、ある者の手によって彼女は死んでしまい、たまに孤独を感じるものの、いつも側には温もりがあり、次第にその気持ちは薄れていたのだ。 それが、今は再び襲い掛かる。 だけど、それに立ち向かわないといけないのだ。今回はいつもとは違うから。 それに、やっと好きだと認識できたのだ。 キッドが好きだったが、快斗も好きになって、二人の男を好きになってしまったが。 まだ、何も伝えていない。伝えようと決めたのだから、伝えるつもりだ。 だから、二人の無事を祈りつつ、休むことなく進んだ。 だが、出口など見つかるはずもなかった。 「くそっ。」 闇雲の歩いても無駄だとわかっていても進んだ結果、元から体力のない新一には体の方が先に限界になる。 こんな時、自分の体力のない体が嫌いだった。 「あいつはなんなんだよ。何を思い出せばいいんだっ。」 自分が忘れた人。それに今回は関わっている。 忘れていたのはあの二人のことだけ。 その他に、自分は何を思い出せばいいのか。何を忘れているのか。 ただ唯一忘れているとすれば、助けられなかった彼の名前。 どんなに思い出そうとしても、顔も何もかも、記憶から綺麗に消え、思い出すことはできない。 もし、彼が関わるのなら、いったいどうして、何が今回にかかわるのか。 まったくわからないままでいた。 だが、時間は止まることなく進み、それが新一を焦らせる。 その男が言いたい事。自分が心を閉ざして聞かなかったこと。 その男の正体・・・。それを自分は知っている。 「お前は…?!」 「思い出していただけたようで。全てのものに愛され、そして愛する気高く美しいお姫様。」 闇は笑みを浮かべる。名は一つの呪であり、正体を見破られれば力を失い、配下に下るものもあるが、この男は別で、反対に力を増幅させ、強大な力を得る闇の化け物となる。 だがそれは、とても懐かしく、そして悲しい思い出の中でのもの。 「闇人・・・・・・夜宵・・・なのか・・・?」 「そうですよ、新一。」 自分がかつて、守れなかった人の名前。 こんな力なんかあってもどうしようもないと、嘆き悲しんだ日、失ったはずの命。 「お前がどうして。」 「どうしてだと思います?」 「それも、闇の眷属だなんて・・・。」 「私は、どうしてもやりたいことがありましてね。その為には体が必要だったんです。」 だから、たとえ闇の眷属の化け物と呼ばれるものであっても、身体を手に入れられるのならそれを選んだ。 どうしても、やりたいことがあったから。 「なぁ、俺にどうしてほしいんだよ…。こんなことをしでかしてまで・・・。」 「さぁ。それはこの先にあるんじゃないんですか?いつも、答えは貴方のそばにあるのですからね。」 去っていく男。もう、ここは闇の中ではない。だが今、自分の周りには大切は人達は誰一人としていない。 ただ一人、孤独の中。 「結局、何がしたいんだよ。」 答えの見つからない問いかけ。いくら謎が好きでも、答えを導くことがすきでも。 こんな謎はいらない。・・・望んでなどいない。 「…答えが見つからないから困ってるんじゃねーかよ…。」 少年は見つからない答えを探そうと必死になる。たとえ、この身がぼろぼろになっても、どうしても取り戻したいから。 いつも自分を支えてくれるあの人達の笑顔を守りたいと思ったから。 だから、考える。 進む道がどこにあるのかを。 闇に囚われた者達を取り返すための策を。 しばらくうずくまって考えていた新一。 頭に過ぎるのは、先ほどまで姿を見せていた守れなかった人。 そして、いつも側にいてくれていた彼等の顔。 「やってやろーじゃねーか。」 立ち上がる。 紐の解けた上着がはらりと肩からずれ、白い彼の背中が現れる。 だが、今の彼はそんなことを気にしている余裕などない。 その背には細かく描かれた模様があった。 決して消える事のない、呪いの象徴とも言えるその模様が。 歩き出す。 扇を構え、闇を切り裂き、振り払う。 ・・・闇は新一の進む先から引き、道をあけた。 進みだす。 少年が開かれたその道を進みだす。 闇を照らすその光を持って、手を伸ばす。 新たな道が開かれる ドクン 背中の模様が鼓動を始める。 体中に流れる血液が、身体が覚えている。 さぁ。解放の時がきた。 大切なものを取り戻す為 世に舞い降りるは 全てに愛されし、美しき蒼の瞳を持ち、黒い髪を靡かせる 唯一人の姫巫女 弱みを見せないようにと、目の前に現れた男に研ぎ澄まされた気を向ける哀。いや、今は志保と言ったほうがいいかもしれない。 目は、組織に属し、憎しみを持つものと同じであるから。 だが、相手はひるむ事はなく無視を決め込む。 その時だった。 ふと、男の視線が持っていた、目を通していた書物からそれて上にあがる。 そして、志保も感じ取った。 ただ、闇しかないその場所に溢れんばかりの大きな圧力をかけるような何かが現れたことに。 そしてそれが、優しく包む温かい何かを。 ちらりと見えたものは、大きな光の渦。 一瞬で闇から消え去り、どこかにいってしまったけれど、見た事がないほど大きなものだった。 「何だったの、今のは・・・。」 闇しかなかったその場所に現れた光は、一気に闇を晴らして去っていった。 もう、自分を捉える鎖も枷も何もない。 強い闇のせいで意識が戻らなかった紅子でさえ、意識を浮上させた。 「・・・さすがですね。」 志保達には目もくれず、男は姿を消した。 すでに薄れた中に残された闇に溶け込むようにして。 「何が、起こってるの・・・?」 「・・・闇があるところ、光あり。闇を切り裂く光の刃が、高く聳え立つ壁を打ち砕き、光の使者たる者が今、舞い降りる。そう、言われたわ。」 少し辛そうにしながら身体を起こす紅子に手を貸す志保。 そして、その話の続きを耳にし、紅子や自分の身体がこんなにも震えている理由を知る。 「光が解放されたわ。・・・闇に属する私達にはまぶしすぎるほどの大きな光の源が、目覚めたわ。・・・彼の眠れる力が解放されてしまったの。」 彼が『光の魔人』と時折呼ばれるわけは、身に隠し持つ大いなる光のせい。 どんなに封じて隠しても、溢れ出てくるそれを完全に立つ事はできない。 まさに、光そのもの。 「行きましょう。・・・光とは別に、紅き魔物もまた、目を覚ましたわ。」 「ええ。」 志保はその『魔物』が何のことなのかわからないが、現状を把握しない事にはどうにもならないので、紅子に肩を貸して、彼女の魔術によってその場から離れた。 その場に残ったのは、静けさと、小さな二人の子ども姿が写った、一枚の古い写真だけ。 その場に膝をつき、乱れた息を整える女。 乱れた髪を手でかき上げて、動かなくなった黒い塊を見る。 「・・・私の方が、少しだけ上だったようね。」 だけど、自分はこの場から立ち去るほど体力もなければ、限界も近い。 女・・・ベルモットはいつも持ち歩いている仲間との連絡手段であるそれのボタンを押し、耳に当てる。 「・・・あら。機嫌が悪いみたいね。・・・悪いんだけど、迎えにきてくれないかしら?」 動ける状態じゃないのと、相手に伝える。 相手はとても機嫌が悪そうだったが、すぐに向かうと一言言い、それきりそれから声が聞こえることはなかった。 「ちゃんと、逃げたのかしらね。」 捕まってしまっていたら、せっかく自分が身体を張った意味がなくなる。 でも、簡単に折れるような者じゃないこともわかっているから。 「信じてる。・・・そういう言葉ね。」 自分がいる世界では、何を信じて良いのかわからないような世界だが、組織の主と彼だけは信じられる。 それを元通りしまい、壁を背もたれにして迎えを待つ。; その間、きらりと星が一つ流れた。 キィン――――― ぶつかり合う金属音。 どちらも、無傷とは言わず、どこか怪我を負っていた。 「しぶといですね。・・・しかし、もう遊びは終わりにしましょう。」 これ以上長引くと、痛みを感じる『人』の方が不利だ。 だから、キッドは捨て身で人形に近づき、追い詰めて捕らえた。 それが刃を自分の左腕につきたてても、離すわけにはいかない。 「大人しく、していて下さい!」 キッドは時矢から受け取った札を夢人の額に貼り付け、動きが止まったそれを宙へと放り投げた。 「悪戯が過ぎれば、罰を受けるものだ。」 ザクっと、真がすかさずそれを切り刻んだ。 そして、いくつかに分かれたそれがキッドと真の間に振り落ちる。 「・・・なんとか、片付いたようですね。」 「後味はよくないがな。」 本当に後味はよくない。 あれは人形だといっても、人と同じように感情を持ち動くものであったから。 「無茶をしすぎることはいけませんよ。」 「貴方こそ。」 お互い、夢人から受けた刺し傷の手当てをして、他の者達の無事を祈りつつ、場所を移動する。 向かう先はあの場所。頭の中へテレパシーのように聞こえてきた新出が伝えてきたあの場所へ。 そこに新一がいると。 「肩を貸そう。」 「貴方こそ、私に構う余裕などないでしょう。」 「お互い様ですよ。」 真に手伝われ、そのまま夜の中へと混じり、目的地へと向かうのだった。 無様にも壊れた人形の瞳からは、透明な涙が零れ落ちていた。 それが何を意味するのか、誰も見ていないからわからないし、すでに壊れてしまった人形は何も話すことなどないために、わかることはなかった。 「残念ですが、私は貴方方に負けるつもりはありませんので。」 最後の一つの動きを止め、動きを止めた右手を振り下ろした。 ぐしゃりとそれはつぶれた音とともに、その場で動かなくなった。 「・・・いけない。」 時間はもうない。 押さえつけられていた光が解放されるのは時間の問題。 そうすれば、彼の身の負担がどうなるかわかりきっている。 「どうか、間に合いますように。」 気配で既に闇に連れさらわれた事ぐらい気付いていた。 そして、光の力が強まっていることも気付いている。 快斗があの場所へ間に合う事を切実に願う。 あそこには、かつて新納が残した珠が残されている。 あれを持てば、制御する事は可能だ。増大させる事も、抑える事も。 しかし、ないままに解放すれば、身の負担が大きくなる。 だから、向かわせたのだ。 新出は祈りながらも足早にそこへと向かう。 ・・・新納が眠るとされる、奥にひっそりと建てられた墓がある小さな神社へと。 「ね。・・・実践の方が強いでしょ?」 全ての敵として向かってくるものを片付けた快斗は、その刀を鞘に収め、新出が言っていた北東へと向かう。 どうしてそこなのかはわからないが、そこへ行けば新一に会える気がした。 その直感を信じて向かった。 そして、たどり着いた場所には、小さな人気のない神社だった。 ここだろうかとしばらく気配を伺っていたが、何の気配もない。 だから通りすぎようとした。 『・・・人の手からすり抜けるこの世に舞い降りた使者を守るのなら、珠を手に入れよ。』 ふと、頭に直接聞こえた言葉。 紅子の予言かと思ったが、声が違う。 しばらく考えたのち、快斗は神社の奥へと真っ直ぐ進んだ。 境内に入って、神社を通り過ぎて木々や草が生えるその奥へと真っ直ぐ足を進めた。 そして、小さな祠を見つけた。 快斗は導かれるように、真っ直ぐその中へと入り、それを手にした。 深い蒼の色を持つ手で持てるそれ。 ずっしりと重みのあるそれを持って、祠の中から出た。 ちょうどその時、快斗は気配を感じ取った。 「何?!」 先ほどまで快斗いた場所から溢れんばかりの光が現れ、快斗を包み、爆発した。 そして、空高くその光は飛び上がり、消え去った。 いったいなんだったんだろうと思いながら、ふと来た方向を見ると、そこには新一の姿があった。 「新一っ・・・しん・・・い・・・ち・・・?」 快斗に背を向けて立つ。その背には、淡く紅い光を放つ模様が事細かに描かれていた。 そして、振り返った新一の目は、快斗が知る目とは違っていた。 「誰・・・?」 バッと扇を開き、快斗に向けて構える新一。 味方と敵の判断がついていないのだろうか。目が違う。本気だ。 咄嗟に快斗は避けると、先ほどまで立っていた場所は抉れて地面が掘り返されていた。 しかし、そんなことに驚いている暇はない。 「新一っ!」 どうしたんだよと肩をつかんで揺さぶる。 何度も名前を呼ぶと、少しだけ、自分が知る目に変わり、焦点が快斗に合わさった。 「か・・・ぃ・・・・・・・・・と・・・。」 「そうだよ。どうしたの?」 それに、気になるのが、新一を包むようにして、未だに消えない光の幕のようなこれ。 快斗が近づく事さえ拒むようなそれが、快斗の身体に苦痛を与える。 その時に、再び聞こえた声に従い、快斗は新一の手にしっかりと先ほど祠の中から取ってきた珠を握らせた。 すると、目が完全に自分がしるものに戻り、安定したのか、先ほどまでのことを覚えているのか、涙を流して快斗に謝る新一。 それを抱きしめて、大丈夫だよと慰める。 人が傷つくのも、傷つけるのも嫌う彼だから。 「新一だ。良かった、無事で。」 「快斗も、無事で良かった。」 溢れすぎた力のために、新一の自我が別の何かにもっていかれそうになった。 だから、どんなに手を止めたくても快斗傷つける為に振り下ろされる手が嫌でしょうがなかった。 ・・・彼に怪我がなくてよかった。 だけど、まだ何も終わっていない。 まだまだやらなくてはいけないことがある。 新一を傷かって、肩にかけてくれるそれ。 それに腕を通して、腰でしっかりと結んだ。 「快斗。行こう。・・・決着つけないと。」 あれが何者かわかった以上、何が目的なのかはわからないが、ちゃんと話をしないといけない。 新一の隣には今、快斗がいる。 先ほどみたいに誰もいないことはない。一人じゃない。 気を強く持っても、弱いのが人の心。 巫女も一人の孤独故に弱さを持っていた。 それを支えるのが、守人。 今ではたくさんの守人が、自らの意思で巫女を守る。 決してそれを許そうとはしないけれど、そんな彼等の気持ちを大切にしたいと思うから、守られるだけではなく守ろうと思う。 黒い炎はすでに警察と消防の者達によって消し止められた。 だが、その場所にいる彼等にとっては、まだ止まらない。 再び、黒い炎が襲い掛かる。苦戦して、傷だらけになった相手を追い詰めたつもりになる。 しかし、最後の一撃として放たれたそれは、全て相手の懐へと吸収された。 そして見た、相手の口元に浮かべられた笑み。 最後だと思って出したそれをすべて無効にされたことで、に少なからず驚いているようだ。 そして、次に彼の背後にいるものを見て、逃げ出そうとした。 だが、彼は逃がすはずがない。 「逃がさないよ・・・。俺を本気にさせて、勝手に退場なんて、しないよな・・・?」 カシャンと足元に落ちた。 右の瞳は血のような紅い色の輝きを持ち、相手の動きを封じる。 魔の力を持つ、呪いの紅い瞳からは、何人たりとも逃れることはできない。 いるとすれば、それは彼の者が愛する者か、光の使者か。 「彼が、君を可愛がってくれるようだよ。・・・先日、追い詰めた男がつけていたものなんだけどね。」 欲深い割には、どうもしっくりこなくて、さっさと離れる気でいたらしいこれを、俺がさっきみたいに吸収しちゃったんだと、教えてやる。 一歩近づいて、一歩下がる相手の背後に素早く移動し、首をかききる。 「残さず・・・喰え。」 魔なるものが時矢の言葉とともにその塊に覆いかぶさり、跡形もなくその場から消した。 その間はほんの数秒。 人と同じように紅い血を流したそれ。糸に残った紅い雫を舐め、糸をしまった。 「人の道を外れるのなら、覚悟は必要だっただろうから。」 諦めてもらおうかと、つぶやく。 そして、その魔なるものをその場から消し、夜の空を見上げる。 光の力が解放された事は気付いた。 だから、自分も力を解放してさっさとケリをつけた。 まだ、紅い右の瞳に映るそのままに。 それはかつて、命と引き換えに時を操る事が出来る力を持つ証。 そして、代々が持つその力を継承した証。 ・・・命や力を吸収するという、禍々しい呪いの証。 「・・・母さん。」 かつて、両親の死を目の当たりにした時、自分が持つこの力を何度も恨んだ。そして憎んだ。 目を潰してしまおうかとも考えた。しかし、それは出来なかった。 母と父が、この目を好きだと言ってくれたから、彼等が好きだといってくれたこれを壊すなんて行為は自分には出来なかった。 そして、自分は知らないままに両親の命を吸い取ってしまった。 事故だった。本当に。 助からないはずの事故。三人とも、あの時はかすかに命はあった。 その命を、自分が吸い取ってしまった。 身体の中に眠る力が目覚めた時でもあった。 どのみち、誰も助けがなければ三人とも死んでいた。 それでも、両親の命を糧に助かり、傷が癒えたという事実は今も時矢の心の傷となっている。 それを癒したのが、この妖精と新一という光の存在。 新一が、かつて自分が愛した者なのだとはすぐにわかった。 わかっても、自分は自分だと思っていたが、惹かれていった。 どの好きかはわからないが、大切なのは変わらない。 「・・・行こうか。」 少し離れた場所で待機していた妖精に声をかける。 すると、恐る恐る出てきて時矢の隣に立つ。 今の時矢の姿が彼女には怖いのだろうが、しばらくの間は我慢してもらおう。 まだ、この力を抑えることはできないし、必要だから。 終わりを告げるその時まで。 この命果てるまで。 この忌々しい呪いの鎖の中で。 大切な人を守る為に、向かおう。 また、怒るだろうけれど、こっちも怒ってる。 だって、あれだけの光を解放するとなると、それだけのリスクを伴うから。 「他はどうなってるんだろうな。」 誰も欠けることなく再び彼の元で会える事を願って。 |