「The, in addition, principle of in question secret?」 「So. I may be a secret. But I may be
complacent. But after all are you a secret because you cannot talk?」 揺れる車内の中で、交わされる異国の言葉 「It is not for the principle of your secret to have begun to be
similar now. However, it be not troubled with self-satisfaction to be hurt.
What it is called, and is used as a foot is too unpleasant to accept.」 「・・・I'm sorry.」 相手の男が言い、煙草に火をつける 謝る女は、煙草の煙ややめて頂戴と文句を言う そして、しばらくして呟かれた言葉 「But I wanted to lend a hand by all means. Without being known, it
wanted to be helped. Since I decided it on that day.」 小さく呟かれた女のこの言葉は聞き取れなかったらしい 聞き返すが、答えないので、男も必要以上には追及しなかった 気を取り直し、男と女が会話を交わす 今後の予定の事について 「Thus what is the next work?」 「You may not appear for the time being?」 「It is all right. There is no problem.」 「・・・The next target is a human being of a certain information
organization.That the reason is because it stole information of this place.」 「So. I understood it. Is it good that I attend after 3rd? 」 「After 3rd. There will not be a problem.」 夜の街中を進む一台の黒い車の中での会話はそれで途切れ、町の誰にも目撃されないまま、そこから去って行った 第六幕 互いが互いを殺し、そして生かす 正体が一つわかった。だけど、それだけでは終わらない。 闇人だけが、今回全てを企んだわけではない。何か別の大きな力も働いているのを感じた。 何度もどうしてと思ったが、力を解放させた後に気付いたものがあった。 これは、闇の眷属同士の戦い。 自分を巻き込む、闇の王を決めるための戦い。 闇の力は強大に膨れ上がりながらも、王の寿命の時は迎えようとしていた。 それが見えたから、わかったのだ。 その候補者達がここへ集まり、一気に襲い掛かってきた。だから、何が真実かわからなかったのだ。 闇は深く、濃いものだった。だが、すぐに壊れる脆いものにまで、力が衰えていた。 それは王が消えてなくなることを意味している。 すでに、闇の眷属同士の戦いは始まっている。 やはり、闇人は・・・夜宵は悪くない。彼は危険ではあったが、自分達を闇の衝突で出来る歪に飲まれないようにしてくれていたのだ。 まだ、彼を信じられる。 彼は、出会ったときからずっと、優しい奴のままだった。 彼が全ての舞台を整え、幕をきった。 それによって、全てが準備が整わないままに姿を見せ、ほとんどが消えてなくなった。もしくは、飲み込まれていった。 だから、誰もがわからない故に多くのことを見逃してしまっていたのだろう。 「快斗。手、握っててもいいか?」 「どうしたの急に。俺としてはうれしいけど。」 いつもの、代わりのない彼の笑顔。彼を含め、あの場所にいる皆と共にあり、自分は救われてきた。 今回だって、きっと自分が巻き込んでしまっただろうに。 でも、気付いてからは手放したくない自分がいる。 こんなことになるのなら、絶対誰の手もとらないと思っていたのに。 「我、光を持つ者なり。」 言葉と同時に、背中の模様が浮かび上がり、光を放ちだす。 快斗と新一の足元にもまた、同じように別の模様が浮き上がり、光を放ちだし、新一の言葉に答えるように闇の中から光が現れる。 闇と光は常に対立し、だがバランスを保つために同じだけ存在するもの。 闇にも光にも支える王がいて世界は安定する。どちらが多くてもバランスを崩して何かが壊れてしまう。 だから、ここに闇が集まるのなら相反する光を集めればいい。 空高く開かれる六枚の純白の翼。 周囲に光が満ちる。 『見つけた。光だ。』 『あれを喰らえ。そうすれば我等はさらなる闇の力を得られる。』 『あれは我のものだ。』 『違う。我のものだ。』 とたんに集まる黒い影。集まって膨れ上がっていく。 だが、新一に近づける影はなかった。 全て、大きな黒い影によって飲み込まれたのだ。 大きな影。そう、闇人の影に。 「お前は今、何を望む?」 新一が真っ直ぐ、再び姿を見せた闇人に問いかける。 それに、優しい、かつて新一が知っている夜宵の笑みを浮かべ、こう答えた。 最初から、これが目的だったのだから。 何も伝えなかったが故に、混乱や悲しみを与えてしまったけれども、これもある意味試練なのだから仕方がなかった。 「我を次の闇の王に。そして、貴方と契約を。」 新一に向けられた手。その手をとれば、彼が闇の王として闇の眷属を統べるものとして認めることとなる。 すでに、ほとんどの王の地位を求めた闇は彼が滅ぼした。 王としての器はそれで問題はないだろう。あとは、光である者との契約をすればいい。 理由なんて簡単だ。 お互いがお互いを侵略しないという誓いでもある。 新一は光の魔人。つまり、光の王を指すことと同じ。 確かに新一は王ではない。王となることは望まなかった故に王ではない。新納もまた、新一と同じように王であるが王となることを望ます『王にならなかった。』 だが、王と同じぐらいの『絶対の力』を持っている。 それに、新一に今足りないものは、闇の加護。 だから、いつか彼が人として心を弱めた時、闇に襲われれば飲み込まれてしまう。 それを彼はずっと心配していた。 光は常に闇を照らす。だが、闇は光を飲み込む。お互いを侵略することでバランスを保つ危うい関係でもある。 自分が死ぬ事になったあの日もまた、闇の眷属による新一を狙ってのこと。 あれで彼をどれほど悲しませてしまったことか。 光は闇の加護を持たなければ、強い光は餌として狙われる。 それでなくても、新一はあまりにも条件が特殊で揃いすぎていた。 故に、自分が闇の加護となると、身体を亡くした時に思った。 その願いは聞き入れられ、この身体を手に入れた。 「わかった。お前の望みを聞き入れる。」 「新一?」 「いいんだ。」 何かを考えている新一に言葉をかける快斗。 まだ、快斗自身状況を把握できてはいない。 わかるのは、目の前に立つこの男が敵であったこと。 今は新一に危害を加える気がないこと。それだけ。 「本当に、いいんだな?」 「ええ。貴方の涙を見ないためなら・・・何でもしますよ?そこにいる彼や・・・こちらへ向かっている彼等のようにね。」 「・・・本当、お前等は馬鹿だよ。」 人と違うということで悲しみ抱えた貴方の側にいられた時間。 毎日が闇でしかない自分にとって、光を与えてくれた貴方のためなら何でもしよう。 ただ、心残りは自分の死で貴方を悲しませてしまったこと。 今は忘れてくれればいい。必ず帰ってくるから。 その時に、思い出してまた名前を呼んでくれればそれでいい。 それを、いつも貴方は自分の時間を自分のために生きろと言ってくれるけれど、きっとそれは貴方を知った後では貴方が必要なのだ。 「光の王よ・・・ここに新たな闇の王となることを望む者がいる。姿を見せよ。ふさわしき者か見定めよ。」 闇を消し去る光が現れる。 長い漆黒の髪を背に流した、蒼い瞳をした女が現れる。 その容姿は新一と同じ。・・・そう、とうに肉体が滅びたはずの新納であった。 「どういう・・・ことなの?」 「お前等が魂を二つにわけたように、彼女もまた、二つにわけたのさ。」 「嘘・・・。」 「そして、もう一つの魂は、衰え、闇に飲まれた光の王の後を継いだ。」 「そう、なんだ。」 知らないことばかり。もっと、知らなくてはいけないことがある。 改めてそのことを思い知らされた気がしたのだった。 前の時だって、前世のことを知らされて驚いた。でも、すんなり何故か初対面に思えなかったあの時の気持ちから、どこかで覚えていたのだと思った。 そして自分はそれだけで止めたのだ。詳しく知ろうとせずに、前世の恋人だから今も好きなのだと思いたくなくて、考えないようにしていた。 それではいけなかったのに。 わかっていなかったのだ。巫女の持つ力について、あまりにも無知だった。 『お前は何故に王となるのか?』 「欲しいものを手に入れるため。・・・大切なものを守るため。」 『欲しいものとは何か。何を守るのか?』 「欲しいのは光。そして、闇から彼を守りたい。」 欲しいものはただ一つ。彼の側にいられること。 『よかろう。すでに覚悟があるのなら、汝の望み、叶えよう。』 「・・・。」 『・・・時は満ちた。闇の王は消えた。ここに新たな王の誕生を認める。』 その言葉の瞬間、闇人の前に漆黒の剣が現れた。 それは、王である証。 柄に手を伸ばし、それを握り締めれば、大地が鼓動し、風が舞い上がる。 そして、空から雷が落ち、蒼い獣が姿を現した。 『また、この時がきてしまったのか。』 「何なの、これ・・・。」 「・・・王座交代の際に現れる、獣だ。敗れた前の王を喰らうために現れた死神みたいなものだ。」 何かはわからないが、何故か知っていた。きっと、前世の記憶なのだろう。 そして、この後何が起こるのかもわかってしまった。 すでに、光の王も闇の王もこの場から姿を消していた。 その代わりに、時矢と智明がそれぞれ別の方向からこの場所へと現れた。 「満腹に満たされるまで、生贄を求めるか・・・。」 「時矢っ!駄目だ!」 「新一?!」 様子がおかしい時矢に状況が飲み込めないなりにも、よくないことはわかっている快斗が止める。 智明もまた、今何が起ころうとしているのかを知り、慌てて新一と快斗を庇うように二人の前に立つ。 これは、神を鎮めるための生贄の儀。 闇の王と光の王のどちらか力が弱まれば、次の王が現れる。 その際に、前の王を喰らう者がいる。それがあの蒼い獣。 そして、時矢は血塗れた呪われた紅い獣。王を喰らった後、生贄を求める蒼い獣の餌である。だが、同時に紅い獣は蒼い獣を鎮めるために喰らい返す相反する存在。 そう、これはどちらが残るかの殺し合い。 ただ、蒼い獣は食われても『魂』は天へと還り、何度も王が変わる度に戻ってくるが、紅い獣は死ぬのだ。 紅い獣は人の中に眠る『呪い』であるが故に、食われるということは『死』なのだ。 時矢は前世のことをあまりにも詳しく知っている。 だから、今、どうなっているのかはわかっているはずだ。そして、同時に思い出していることだろう。 新納の死の瞬間を。 己は周囲の者に死を呼び込む者だと、泣いたあの日のことを。 違う時代に生まれ変わっても、しっかりと覚えているであろうあの日のこと。 「時矢、やめろっ!」 「よくわからないけど、行っちゃ駄目だよ新一!」 「新一様、行ってはいけません!また、同じことが繰り返されてしまいますっ!」 睨み合った末に、姿を見せた紅い獣と蒼い獣がぶつかり合う。 その中に向かっていこうとする新一を快斗と智明が必死に押さえ込む。 あんな力のぶつかりあいの中に飛び込めば、人間なんて呆気なく消し飛ばされる。力があるとはいえ、新一もただではすまないだろう。 「ごめん。俺は新一を失いたくない。」 「快っ・・・。」 行くと聞かない新一を眠らせる。目を覚ましたら怒るだろう。 それでも、自分の優先順位は新一なのだ。 「それで、あれはいったい何なの?」 「それは・・・。知っても後悔されませんか?」 「知らないで後悔するよりはいい。」 「わかりました。」 紅い獣が時矢であること。あれは海が持っていた魔族の証である力。 力は膨大に膨れ上がり、人に害をなす呪いとなること。あれは、力を食らう獣。 かつて、利人と海と新納の前にもあれが現れたこと。ちょうど、光の王の力が衰え、それを喰らうために蒼い獣が姿を見せたこと。 まだ、次の光の王が現れぬうちに前王が飲み込まれれば、世界は闇に飲み込まれることとなる。 紅い獣は蒼い獣を喰らう相反する存在であり、それは人の中に住まう獣だった。 それが、海であり、王を喰らおうとする獣を止められるものでもあった。 しかし、蒼い獣は人が作り出した欲望の塊でもあった。故に弱りきった光の王を喰らっても満足はしない。 つまり、生贄を求めた。その対象に新納が巻き込まれることとなった。 しかし、そんなこと彼等が認めるはずもない。故に海は人の姿を捨てた。その時は力が必要だったからだ。 だが、人の姿を失った後、恐怖が芽生えた。何と醜い化け物なのだろうかと。 ならば、あれを喰らわず自分を食らわせればいい。 それに気付いた新納は庇い、深手を負った。 もちろん、最終的には海は獣を暗い尽くした。だが、運が悪かったのだろう。新納は命を落とすこととなった。 利人も海も嘆いた。何故彼女が死ななくてはいけないのかと。 二人は、彼女が残した最後の言葉を信じ、残りの時間を生きた。 「いつか、また会いましょう。」という彼女の言葉をしっかりと心に刻んで、そのいつかのために決して邪魔をされない権力の足場を築いた。 そこまでの内容を順をおって智明は快斗に話した。玖城家に伝えられた夢物語を。 巫女であった新納は知っていた。紅い獣と蒼い獣のことも、光の王と闇の王のことも。 いつ、何が起こるかわからない。幸せの時間を過ごしていたせいで、忘れかけていた。 どんな時も突然何かが起こる。それだけ、世界は不安定で、理不尽なことばかり。 「また、繰りかえされているのですよ。」 「そんな・・・。」 「何故、王を喰らう獣がいるのかはわかりません。それを造った何者かにしかわからないことです。」 「神、とはまた違うわけ?」 「違います。神とは、言い換えれば精霊と同じ。魔王もまた、魔なる力を持つ精霊を束ねる者。言い方が違うだけで全ては同じなのです。光の王も闇の王も、あの、赤い獣と蒼い獣も。ただ、それぞれ役割を持っているだけ。」 役目を終えれば、それは消える。そして、新しいものがその役目をおう。 そうやって、何度も同じ事を繰りかえしてきた。 目の前で起こっている無意味な争いもまた、繰り返す時間の中の一つにしかすぎない。 「君は、もし神がいるというのなら、信じるかい?」 「いや。今まで何もしてくれなかった奴のことなんて信じた覚えはない。」 「だろう?この世には神なんていない。神と呼ばれるものはあるけれど、それはこの世界を創ったものじゃない。この世を構成する一欠片にすぎない。・・・この世は『神』が存在しない箱庭だ。」 「何だよ、それ。」 「組み込まれたシステムを繰りかえすだけの世界ということだよ。」 力があるが故に薄々と気付くことがある。 どうあがいても変える事ができないこともあると。そして、守ろうとすれば、あざ笑うようにそれを奪うように動いていく何かがある。 「君も、彼と出会って薄々気付いているでしょう。いや、靄のかかった記憶が戻りかけているでしょう。」 「・・・。」 「私達は決してこの世界から抜け出すことはできない。しかし、繰りかえされる中ででも、最悪の事態を回避しようと足掻くことはできます。かつても、皆が皆、足掻きました。ただ、結末は誰もが望まない結果でしたけれども。」 今度も選べばいい。 どちらが喰うか、喰われるか。 「俺は新一の笑顔が優先だからね。」 持っていた刀の鼓動が聞こえる。自分の思いに応えるかのように。 そして、こうすればいいと、何故か自然とわかった。 智明に新一のことを任せ、激しくぶつかり合う二頭の獣の元へと足を進める。 二頭の獣は快斗が近づくのに気付かない。 「気に入らないが、お前もさっさと帰って来いよ。」 新一を泣かすようなことをすれば、許さない。 快斗は蒼い獣の背後に高く飛び上がり、刀を振り上げる。 狙いを定め、気合を込めて一気に振り下ろす。 獣の背が刀の刃によって裂け、黒い血が吹き上がる。そのまま、快斗は背に足をつけて刀を突き刺す。 「はやく、喰らっちまえ。『お前の罪の半分を、同じ俺が背負って墓に持っていってやるからよ』。」 重なる、かつての者達の言葉。 獣の低いうめき声が夜の空に響いた。 「それで・・・何故こいつがいるんですか?」 「それは・・・。」 ただ、苦笑して誤魔化すしかない快斗。なぜなら、全員と合流したさい、いた人物が問題だった。 今回の原因である闇人と、壊したはずの夢人。そして、意識のないままの時矢と新一。 状況が見えない彼等にとっては何故としか、言いようがなかった。 けれども、快斗にとっても、説明できるような出来事ではなかった。 「とにかく、一度帰らない?」 「・・・そうですね。」 「望むのならば、説明ぐらいしてあげますよ?」 「・・・。」 一番、この男と人形を連れ帰ってもいいのか考えるところである。 だが、今は新一をこんなところでいつまでも寝かしておくわけにはいかない。冬のような寒さはないにしろ、夜の風は冷たいのだから。 「全て、話していただけるのですか?」 「ああ。もう、終わったからね。・・・何が聞きたい?」 闇人の問いかけに、快斗はすでにわかっていることを順に確認をした。 彼は新一と知り合いだということ。闇の王の交代の跡目争いに自分達を巻き込んだこと。 そして、もう新一に危害を加えるようなそぶりはみせないということ。 話はまずそこからだった。 「この度は巻き込み、ご迷惑をおかけしました。改めまして、闇の王として新一と契約を交わした夜宵と申します。」 「本当、迷惑極まりないですね。」 「本来なら、闇同士がぶつかりあうだけで、他が巻き込まれることはありませんが、『王』になることを望む闇は闇の加護を受けない強い光を飲み込もうとします。それが一番手っ取り早く力を得る方法ですのでね。」 ずっと、闇の加護がないために闇に狙われる彼。それを守ってきたのが彼の両親や時矢といった影の存在。 今回だって、王位争いのあとは蒼い獣と紅い獣が潰しあいをするだけだった。 「しかし、これでしばらくは王位交代もありませんし、彼も闇の加護を得ました。」 「光の魔人に、何故闇の加護が?」 「光が強すぎるために、バランスを保つために必要なのですよ。光の力は常に背に刻まれた刻印で封じられています。つまり、力を制限されています。これを開放した際、命を燃やすように光があふれ出ます。それを止める術・・・つまり、光を抑えるのならば闇。再び鎮めるために闇の力が必要であり、そのために闇の加護が必要なのです。ですが、彼はそれを得ることができなかった。彼が母体に宿った頃から、闇の王の力は衰え始めた。その為、一番必要であった闇の加護を得る契約ができなかったのです。」 そのために、ずっと最大限に開放しないように封じた。光の王がそれを施した。 あとは、新たな闇の王が現れるのを待つだけ。それには時間がかかりすぎてしまったけれど。 「では、私達は貴方が王につくための手伝いをしてしまった、ということでしょうか?」 「まぁ、そうなりますね。しかし、だからといってあれらが彼を狙わないという保障はありませんけどね。」 「じゃあさ、王と契約を交わしたら、手出しはされなくなるわけ?」 「そうですよ。ただし、私を貶めようとする馬鹿はいますから絶対とは言い切れませんけどね。」 その時、男の名前を呼ぶ声が部屋に届く。 全員が振り向けば、そこには新一がいた。 ただ、悲しげにそこに立っていた。 「お前は、本当にそれでいいのか?」 「ええ。ずっと、決めていたので覚悟はできています。」 「・・・馬鹿だな。お前も、時矢もお前等も。」 皆、馬鹿だと、ぽつりと零す新一の本音。 この世界は何度も同じ事を繰りかえす。そうやって繰り返しの中で人も人ならざるものも過ごしてきた。 確かに、人は繰りかえされる事柄に悪あがきを繰り返して、それを変えてしまうことがある。 それは悪いことではない。悪いことだと決め付けることは誰にもできない。 だけど、それによって違う何かが壊れる。 巫女には繰りかえされる流れを見てしまったからこそ、何が起こるかわかった。 新一もまた、自分の運命を受け入れて、覚悟しているつもりだった。 最近はその覚悟すら崩れそうになっているけれど。 大切なものが増えすぎてしまった。 「では、私はこれで失礼しますよ。」 立ち上がった夜宵は背中に飛びついた夢人に笑みを向け、その場から足元の影に吸い込まれるように消えた。 消えた二人に、再び馬鹿と呟く新一。 「新一は、また何か悩んでるわけ?」 「別に。」 「私は、出来るなら何でも話してほしい。そんな悲しい顔をさせたくはありませんから。」 触れる優しい手。暖かい迎えてくれる手。 いつの間に、大切なものがこんなにも増えてしまったのだろうか。 「本当に、何でもないんだ。・・・ただ、お前等のことがやっぱり好きだと思っただけだ。」 「新一。」 「俺は愛しちゃってるからね。」 「俺も、愛してるぜ?じゃないと、蹴り飛ばしてるからな。」 馬鹿と、二人に捧げる口付け。彼等をお守り下さいと『神』に願いながら、姫の祝福を。 ある時、一人の女がいました。 女は、一人の人間としてではなく、道具としてしか見てくれない周囲の人間から、逃げ隠れるように澄んでいた故郷を捨てて去りました。 そして、女は一人の男と出会いました。 怪我をした、血の匂いを漂わせた男でした。 しかし、女にとっては、はじめて一人の人間としてみてくれた人でもありました。 二人とも、追われる身。 一緒に逃げようとした時、二人は不思議な男と出会いました。 その男もまた、二人を個々の人間としてみてくれました。 それから、三人の不思議な生活がはじまったのです。 女は男達の子どもを産み、自分を道具として見る原因である『力』を失いました。 それでも、女は幸せでした。 一人の女として過ごせる時間が、男と男と子ども達と暮らす生活の一つ一つが大切でした。 だから、女は守ろうとしました。 いつか、男と男ははやい死を迎えてしまう。その原因を自分が作ってしまう。 一人は自分を利用し、目の前で殺されてしまう。 一人は背負った呪い故、呪いの鎖に飲み込まれてしまう。 女はただ、願っていました。自分を一人の女としてくれた大切な人達が、笑って暮らせる世界を。 そして、女は自らの命を代償に、大切な人達を守りました。 しかし、女がいない世界は彼等にとっては笑ってくれる世界ではないのです。 女は彼等に生きて欲しい。この世界は繰り返される世界。 だから、また会いましょうと二人に伝えて命を落とした。後悔はしていない。 自分にしては長く生きたと思っている。でも、彼等の涙だけが後悔として残った。 ごめんなさい。あやまっても彼等にはもう声は届かない。 それでも、また会える日を願って、心を二つにわけて、彼等を大切に思う心と彼等を愛している心の二つにわけて、片方の魂だけ天に返した。 まだ、次の光の王は決まっていない。獣はもう姿をみせないけれど、このままではいけないことぐらいはわかった。 「また、会いましょう。絶対に。」 ただ、女はそれを願い、何度も拒み続けた王となった。 生かすも殺すもお互いの己の心を映した言葉次第。 今度は同じ事を繰りかえして欲しくない。 「本当に、私と夫婦となるつもり?」 「そのつもりだけど?」 「貴方も結構馬鹿みたいね。」 「あんたも馬鹿だと思うが?愛する旦那のために好きでもない相手と夫婦と呼ばれるようになるし、王座は嫌だったんだろう?」 「嫌よ。でも、明るく照らす光が必要なの。まだ、あの人の魂は『私』の死を恐れているから。」 閉ざされた空間の中にいる男と女。 「それで、本当のところは何が望みなの?」 「新一の闇の加護のため、だけじゃ納得してくれないのですか。」 「当たり前でしょう?生半可な気持ちで、ただの人間が闇の王にまでこれるわけがないじゃない。」 「さすが、王の資質をはじめから持っていた貴方には適いませんね。」 男はおどけた笑みを見せながら、二人の背後に聳え立つ、高い塔を見上げた。 上がみえないそれは、どこまで続いているのかは誰も知らない。 「ここで眠ったっきりの、この世界を創ってしまった『神』に興味があったんですよ。」 「・・・。」 「新一を守りたい。その気持ちは本当です。ですが、その為にはこの繰りかえされる世界そのものを変えなければいけない。だから、ここまで来たのですよ。貴方もそうでしょう?王の本当の意味と『彼等』のことを知っているのならば、ね。」 眠ったまま、行き続けるこの世界の『神』 流す涙は『神』の『心の欠片』そのもの。 その欠片が地上に零れ落ち、一人の子どもが世界に降り立った。 神の夢であったその世界に、神が戻ってしまった。 二度と戻らないと決めたその世界に。 そうやって、神もまた抜け出せぬ繰りかえされる世界に閉じ込められた。 何度も魂の欠片を零して、同じ輝きを持つものを生み出しながら。 しかし、神を愛した『神』は彼等を守る者となった。 「今度こそ、抜けられるといいですね。」 「確かに。」 「帰っておいで、愛しい神様。そうすれば、皆帰ってこれるから。ね、シン。」 少しだけ、流れの変わった風が吹く。 かつては賑やかだったこの場所に、主が帰る日を望むように。 |