世界で一番大切な人

誰もを惹きつけてやまない人

自分もまた、彼に惹かれて集まった一人

出会ってすぐに心を奪われた

はじめて、本気の恋をした

悲しませるものは誰だった許さないよ

 

 

 

  第五幕 それぞれの思い

 

 

「うーん、本当に面倒なことばっかりしてくれるなぁ。」

 

快斗はとても困っていた。

青子の様子を見に来ただけであったが、厄介ごとがついてきた。

家が裕福ということもあって、こういったことにたびたび遭遇する事はあるが、今日のような日にはやめてほしかった。

刀を青子の首元に近づけて、金を要求するこそ泥。

 

「離して〜。」

「おいおい、犯人刺激してどうする?」

 

やめてやめて、いやだいやだと青子は抵抗する。

物陰に隠れて一部始終を見ている快斗は、どうしたものかと辺りを見る。

ふと、あるものを見つけ、こっそりと中に侵入した。

 

「渡すから、娘に何もするなよ。」

 

警察という立場から見逃すのは癪に障るが、今は娘の安全が第一と、中森は金庫からお金を出す。

そこへ、にゃおーんと何かが乱入。

 

「うわ?!なんだぁ?!」

「こんなところになんでこんなものが?!」

 

快斗はたまたま側の道で、転がって寝ていた野良猫を投げつけたのだった。

こそ泥がひるんだ隙をついて、快斗は飛び出して丸い珠をいくつかだし、相手に投げつける。

 

「しばらくそーしてな。」

 

快斗君特製、しびれ粉なり〜といいながら、何処からかとりだしたる縄で縛り上げて一丁上がり。

 

「よし、これでいいや。ね、おじさん。」

 

振り向いて後ろに立っている相手にいう。

 

「でかした、よくやったぞ。さすが快斗君だ。」

「快斗〜。」

 

そういって、頭をがしがしとなでる。人が良くて優しくてお父さんみたいで好きなのだが、これは痛い・・・。

 

「でも、こんな時間にどうしたんだ?」

「えっと、最近何かを企んでいる奴がいて、大丈夫かどうか見に来たんです。」

「何か企んでいる奴?」

「ええ、最近起こっている殺人の犯人・・・のことですよ・・・。」

 

急に雰囲気が変わったことに少々戸惑うが、それよりも殺人の犯人ということで、快斗の変わり様は頭からすぐに消えた。

目の前に立ちふさがる犯罪を見逃しはしない。それが、己の信念として貫くプライド。

 

「何?それは本当か?」

「ええ。最近知った情報なんですけど、どうやら『白い騎士』が今回関わっているらしいんですよ。」

「なぬ?」

 

それは聞いた事があった。

まぁ、警察関係者ならば、裏で動く組織や集団、個人的な犯罪者などの情報も結構あるので知っているのだ。

とくに、名前だけならば、一人歩きしていろいろある。

白の騎士は最近名前が知られるようになった、個人なのか集団なのかわからない謎の相手。

 

「そうだったら、なかなかつかまらんな・・・。」

「いえ、大丈夫ですよ。今回も、同じように魔術師達も動くらしいですよ。白の騎士が起こしたことで魔術師達に被害が向き、怒っているみたいなんですよ。」

 

困ったものですよねという快斗に、それは一大事と中森は電話を繋げた。

魔術師達というのは一番謎が多いが、キッド率いる可笑しな術のようなものを使う集団だとして知られている。人数は不明だが、どんなに追い詰めようとしても、情報を引き出そうとコンタクトを取ったとしても、何もつかめない相手。

 

「犯してはならない領域に、入ったみたいなんですよ。」

 

それだけいって、無事だったら今日は帰りますと、快斗が後ろを振り向く。

それに、慌てて呼びとめる中森。このまま、あの友人のように会えなくなってしまいそうな、そんな気がしたからだった。

 

「ちょ、待ってくれ、快斗君。」

「はい?何でしょう?」

 

中森は油断できないほど鋭い相手でもある。

もう、快斗が只の情報屋として警察に提供するような、興味のために動く金持ちだとは思えなかった。

持ってくる情報は、ほとんどが信頼できるもので、正確なのだ。まるで、魔術師が持つ情報のように。

 

「君は、『魔術師』達と繋がっているのかね?」

「・・・さぁ?どうでしょうね。」

「いつも不思議に思っておった。どうして、警察内部でもトップのみがしるような情報をいつも知っているんだ?」

 

自分ですら知らされていなかったことさえも知っていたことがあった彼。

 

「そうですね・・・。おじさんだから、答えをあげようかな。」

 

そういって、中森の方に向き直った。

今見る顔は、始めて見るもの。普段のおちゃらけた彼ではない。

一人の人生をかけたプライドを持つ仕事人の顔。

 

「・・・確かに、俺は『魔術師』と関係があります。」

「?!」

 

それで、中森は悟る。間違いなく、ただ関係があるだけではなく、動く仲間だということに。

中森は頭がいいから、すぐに理解できた。

ただ誤算は、魔術師の本質とメンバーの事だった。

 

「・・・そうか。」

「おじさんの思っている通り・・・。でも、決して犯罪を犯すために魔術師を名乗るわけじゃない。」

「・・・快斗君がそんな楽しんでその道を選ぶような軽い者じゃないことぐらいわしが知っておる。」

 

昔から自分を父のように慕ってくれた子供。

娘と一緒に遊んでいた太陽のような笑顔の子供。

その彼は今、一人の人としてプライドを持って何かに立ち向かおうとしている。

知らないうちに成長していたものだなと、零れ落ちそうになる涙をこらえる。

 

「俺は、真実を知るために、選んだ。今でも、道を間違ったなんて、思っていない。」

「ならいい。わしは君を捕まえる権利はないからな。行った犯行も証拠もないからな。これはただのわしと君とのなんでもない話だ。」

 

快斗は一度頭を下げて、今度は振り向かずに走り去った。それを、中森はただ、快斗の背中を見つめているだけだった。

 

「・・・辛い、のだろうな・・・。両親・・・家族がいないということが・・・。」

 

その道を選んだ理由ははっきりとわからないが、きっかけぐらいはわかる。彼のいない家族のことだ。今いるあの家での家族は偽者。

ただ、同じ血縁という事で作られたもの。

 

「ねぇ、快斗、大丈夫かな。とっても、目が辛そうだった。」

「大丈夫だよ。きっと、わし等にこのことを隠していた事、それを知られた事に対して、すまなく思っているんだよ。」

「そうなの?」

 

もう、今日は遅いから寝ようと青子を部屋につれていき、彼自身も、就寝した。

 

 

 

 

 

 

「・・・今度はいったい、何用か。」

 

背後から声をかけられても、動じずに振り返って話を進めるキッド。

目の前の相手にキッドはいつもの対応の仕方と同じなので、相手は別に気にする事は見せない。

動じない心を動かせるのは、一体誰なのでしょうねと、自分に対しても問いているのか、キッドは心の中で呟き、肝心な用件に入る。

 

「今起こっている殺人の件で、といえばだいたい予想ついていただけるかな?」

「なるほど。次の相手の獲物かもしれない相手の護衛というわけか。」

「そういうところですね。何より、次の相手が彼女では、絶対に手を緩める事は出来ませんから。それ以外でもするつもりはありませんが、これ以上は許せませんからね。」

 

キッドがいいたいことをなんとなくで理解する相手。

魔術師は皆、頭がよいので、説明に時間をあまり必要としない。

彼もまた、同じである。だからこそ、魔術師を名乗るに相応しいものなのかもしれない。

 

「確かに、これ以上彼の顔見知りが減る事はよくありませんね。」

 

そういって、かけていた眼鏡をはずした。

月の光で反射するレンズを見る鋭い目。全ての気配を支配するかのようなその目。

キッドにとって、あまり好きではない目。

何でも見透かされてしまい、動きを封じられてしまうようなその目は、好きではなかった。

同じ目であっても、自分は新一だけにしか動きを封じられるようなヘマはしたくありませんねと思うが、そんな事を考えているなど、相手は知る由もない。

 

「眼鏡がくもって見えないなんてことはやめて下さいよ?」

「そのようなへまはしませんよ。」

「まったく、我等が姫は多くの者を惑わすようだ。」

「そうですね。私も惑わされた一人ですから、なんともいえませんね。」

 

魔術師というものは、彼が中心であることを、誰も知らない。仲間以外は。

誰もがキッドが中心だと思っているだろう。彼を知らないから。

 

「彼を知られたら困ります。命を狙う愚かな輩や賊が増えますからね。」

「ですから、貴方が身代わりというわけですか。」

 

まぁ、姫・・・新一のためならば、自分達は何でもするだろう。

魔術師と言う名の本当の意味は、新一を隠す為のカモフラージュでもある。

本当のリーダーはキッドや快斗ではなく、新一なのだ。

ただそれを、キッドや快斗が奇術を持つて、派手に相手にパフォーマンスを見せる為にそのように思われているだけ。

 

「気付かず、無意識で私達の闇を取り除く。」

「今回、出来れば彼は大人しくしていてほしいものです。」

「それが出来たら、そうしたいのですが・・・。今回相手が悪いです。」

「・・・。」

「鳥と馬はどうこうと問題のあるものではないのすが、犬が大問題です。」

「呼び出しの際に文に書かれていた彼のことですか?」

 

懐にしまっている、自分をここへ呼び出した文を取り出した。

昼間のうちに手配しておいた、今夜動くという内容を知らせる文。

 

「白犬・・・。この男が何かあるんですか?」

「大有り・・・。だから、行動が遅れた。調べるのに時間がかかったんだ。まぁ、他は雑魚だけれど。」

「・・・まさか、彼・・・。」

「その通り。今は上手い事、事が進んで警戒心が少々緩んでいるようですが・・・。まぁ、私達相手に警戒心というものがあっても、何もないのと同じ事ですがね。」

 

キッドは何処からか一枚の写真を取り出した。

警察を片手間に操るようなその奇術で取り出した写真には、一人の血まみれの男が写っている。

正確には、返り血を浴びた男が、それには写っていたのだ。

 

「新一の両親を手にかけただけではなく、俺達の両親も手にかけた男。そして、過去に多くの殺人を行ってきた男・・・。裏で暗黒鬼と名乗っていた男・・・。」

 

それは厄介ですねと、男の顔つきが変わる。誇り高き剣士の空気をまとう。

今回は情け無用で掛かる必要があるとつぶやけば、そうしていただけるとうれしいですよとキッドが言う。

そう、今回、なんとしても決着をつけなければいけないのだ。

 

「今回、上手くやらなければ、あいつだけは逃がしちまうからな・・・。」

「今までの刺客や闇の住人を、手玉にとるように倒していった男でしたよね。」

 

キッドは男にこのまま警護をするようにいって、任せたと一言残してその場から消えた。

 

「・・・彼は、大丈夫なのでしょうか・・・。」

 

心配なのは彼、新一のこと。

自分たちの心配ばかりをする穢れを知らないような綺麗な人。

救いの手を差し伸べてくれた、生きる道を記してくれた人。

 

「・・・あの男は間違いなく、知っているでしょうから。もし知らなくても、手に入れるとするでしょう。価値の大きさなんて、あれには計り知れないのだから。」

 

新一が持つ宝珠を求めて。

あの宝珠に認められ、所有者となった新一。それに封じ込められていた力を扱える唯一のもの。

 

「知っていても知らずとしても、彼に危害が加わる事は間違いないのでしょうね・・・。」

 

 

 

あの宝珠は災いの元。力を求める者たちがいる限りは・・・。

 

静かに、夜は明けていく。

 

決戦の時は一刻一刻と近づいてくる・・・。

 

 

 

 

 

 

「新一〜。」

 

と、家に帰ってきて真っ先に新一がいるはずの部屋へと飛んでいく快斗。部屋の扉を開ければ、うるさいという冷たい言葉と衝撃を新一から直々にプレゼントされた。

だが、あまりうれしくないプレゼントである。できれば、別の物がほしかったりもするのだが…。

 

「うう、痛い・・・。」

 

そんな事を考えている余裕がないほど、本当に痛かった。そんな快斗を横目で見て冷たく見る哀と情けないと思う紅子の二人の姿がある。

 

一体誰が、こんなお馬鹿な相手が、あの神出鬼没で月下の魔術師の異名を持つ、確保不能の全てが不明で紳士的態度を崩さない、神出鬼没な怪盗KIDの正体だと思うだろうか。

まぁ、正確にはその片割れなのだが。この姿を見た警察がどう思うかと思うと、努力が向かわれない警察達が哀れだ。

 

「何馬鹿な事をしているの?まったく、あなたのような男が私の虜にならないなんて、可笑しな時代よ。」

「紅子、虜にする価値なんかないわよ。」

「うわ。それ、かーなりしつれーよ?哀ちゃん。」

 

快斗が価値は新一にあればいいのと言っている間に、紅子の手によって、怪しげなペンダントを首にかけられた。それも、無駄のない動きで早い。

さすが、これまでの経験でいろいろ学んできたとわかる。

 

「ぬわ、何するんだよ、紅子!しかもとれねー。」

 

必死にはずそうとするが、一向にはずれない。力任せに引っ張っても切れる事はない。

最終的には近くにあったナイフで切ろうとしても、ヒビすらできない。

 

「しばらくそうしてなさい。第一に、彼は寝ているわ。起こさないでくれない?」

「え?あ、そっか・・・。ごめん。」

 

急にしゅんとしぼむ。本当、見た目では喜怒哀楽が激しい男だ。初対面で快斗を知らない人間が見れば、そう思うだろう。他人に対しては自分の領域から一線を引き、ポーカーフェイスで顔を隠し、演じる男。どれだけの者が気付くのだろうか。今度実験してみるのもいいかもしれない。哀はひっそりとそんな事を考えていた。

 

「なら、行動は明日の方がいいのですかね?」

 

窓から侵入する白い影。

 

「そうね。その方がありがたいわ。毛利さんの守りとあの三人を捕獲するのにはね・・・。」

「あの二人はどうにでもなるのですが、あいつだけは少々例外ですからね。」

「どうやら仕掛けておいた盗聴器、気付いたみだいだしね・・・。二人にはそのことを言っていないみたいよ。」

「へぇー、余裕じゃん。」

「嫌な人ですね。」

「それはお前等も同じだろう?」

 

また、同じようにいつの間にか背後に立っていた新一。どうしてと、振り返る快斗。

背後に敏感なはずの自分が気付かないなんて。なんだか、自信をなくしそうだ。

 

「・・・それでさ。いったい、いつ起きるのさ?」

「お前が騒がしいのがいけないんだ。」

 

さらりと答えをくれる。機嫌が悪いのか、目を合わせてくれない。俺は何かしたのかと必死に考えても思い当たらない。

 

「え、それって俺のせい?」

 

騒がしい事と何かしたのかという事二つの意味を含めて問うと、本人の返答はなく、別の返答が帰ってきた。

 

「快斗は立ち入り禁止にしておくべきでしたね。」

「そうね。今度のために考えておくわ。」

「魔力を込めたお守りを渡しておこうかしら?」

 

そんな物騒なことは考えなくていいよと泣き言をいっていたが、誰もが感じ取った気配に、いつでも動けるように体制を整えて構えた。

 

どうやら、いつまでもおしゃべりをしているわけにはいかないようだ。

 

「少々、予定していたよりも早いようですね・・・。」

 

長きにわたって続けられてきた遊戯の最終舞台が始まる。

 

 

 

 

 

 

ガッシャーンと、ガラスが割れる音が屋敷中に響く。

 

キッドはすぐに窓から屋敷を飛び出し、一人をおびき出すために朝日が少し昇ったがまだ暗い街をかける。

快斗は足止めをすべく、寺井と共に下へとかけおりる。

 

敵が何人かは予想しづらいが、頭は三人。そのうち一人を抑えれば、後は問題ではない。三人は屋敷から外へ出て、相手をおびき出すかのように、暗い街を走り抜けた。

出て行った三人を確認することなく、行動を開始しましょうかと立ち上がる哀。

 

「私達はまず、外に出ましょうか。」

「そうだな。」

「じゃぁ、私に任せてくれるかしら?」

「紅子だったら、おかしなことしないからね。いいわ。どうするの?」

 

そんなのは簡単のと、魔女は微笑み、一言呪文を唱えた。

簡単な移動手段として使う、魔術の一つ。

 

「ふふふ、私にはルシファー様がついているもの。これぐらいなんでもないわ。」

「私は、ルシファーなんてものは、信用しないけどね…。紅子だからこそ、信用するのだから。」

「…確かに、そうだよな。」

「あら、ありがとう。そう言ってもらえると、うれしいわね。」

 

そんな話の間に、いつの間にか彼等は遊郭への入り口の大きな門の前に立っていたのだった。

足元は一瞬だけ最初に見た模様と同じものが描かれて光、後には何も残らずに消えていた。

相変わらず、不思議なものだなと新一は思っていた。

 

「とりあえず、これは着替えておくべきよね。」

「そうね。出来ればシャワーも浴びたいところだけど、それは後よね…。」

 

これは仕事着でもあるが、動くのには不便だ。それに、あまりにもこの着物では目立ってしまう。

仕事用の衣装だから余計に目立つのだ。

 

「戦闘服・・・そういえば、まだ決めていなかったわね。」

 

作ろうかしらと悩む紅子。キッドと快斗、そして真に戦闘服があって、自分たちにはまだない事を思い出す。

 

「そんなものは適当でいいのよ。」

「おいおい…。」

 

そういって、哀は自分の家でもある月華楼へと入る。哀にとっては、今着ているものでさえ、戦闘服になる。

なぜなら、この服で今までを行きぬいてきたからだ。

そして何より、あの三人とそろえるような服は嫌だった。

哀は適当に動きやすそうな着物を選び、それぞれを紅子と新一に渡した。

 

「すぐに着替えなさい。」

「これにか?」

 

紅子には深紅で黒い蝶が描かれているもの、新一には藍で水が流れるような模様の線が描かれているもの。

渡されて、新一はふと気付いた。自分は女物を着ているが、女ではない。

そして何より着替えるならば、一緒はまずいのではないかと。自分は男手、二人は女なのだ。

 

「・・・俺も、ここでか・・・?」

 

一応確認する為に尋ねる新一。確認をしようにも答えは決まっていると思うが、念のためだ。

 

「もう、今更でしょう?さっさとしなさい。」

「う…。」

 

いいのかこれで・・・。新一は少し二人から離れて、背を向けてこそこそと着替えた。

その姿がまた、可愛いかったりもすると、二人は自然と笑みがこぼれた。

やはり、魔術師を繋ぎ、光を与えるのは光の魔人たる彼だからこそ出来る事。

 

「新一君、急いで。」

「わーってるよ・・・。」

 

そんなことをいわれても、なかなか速くはできない。着物の着付けは難しいし、女物は特に厄介な事が多くて面倒なのだ。

出来ればきたくないのだが、何故か皆が用意するものは女物だったりする。

確かに、ここは遊女屋なのでしょうがないのかもしれないが、どうにかしてほしいというのが新一の心情。

まったく、快斗やキッドが着せようとしている理由を理解していないのだった。

 

「まったく・・・。はい、扇。忘れるんじゃないわよ?」

「わかってる…。」

 

新一は哀から大切な扇を受け取った。これだけは必ず肌身離さずにもっている。

今では、綺麗な音をリンと鳴らす鈴が二つついている。

昼間、あの二人がつけていったものだ。

 

「こちらも、戦闘開始よ。」

 

 





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