そっちよと女の強い声が響く。 観念するのねという女。取り押さえられた男。 「窃盗の容疑で逮捕。」 警察とコンビニで盗みを犯した男との追いかけっこは幕を閉じた。
「お疲れ様です、佐藤さん。」 「あら。高木君だってお疲れ様でしょう?」 捕らえた男をそのまま来るまで警視庁へ連行。 事情聴取したのち、他の刑事に受け渡した。 「あ、佐藤さんと高木さん。」 そんな二人の前になじみある一人の少年が現れた。 彼の名前は工藤新一。この警視庁(日本で?)で知らない者はいないほどの有名人。 「あら、工藤君。今日はどうしたの?」 「あ、先日お借りしていた資料を返しに来たんですよ。」 「そうなの。別に急がなくてもいいのに。」 「いえ。無理言ってお借りしているのですから、当然ですよ。」 やっぱり育ちが違うねぇと思いつつ感心し、家まで送っていこうかといってくれる。 「ちょうど、頼みたい用事もあったし。」 「そうですか?それではお願いします。」 高木はその場に置いてけぼりをくらいつつ、二人は警視庁を後にした。
「それで、頼みたい事とはなんでしょうか?」 「実はね、知ってると思うんだけど二課の方の事なの。」 「二課といいますと、中森警部・・・KIDですか?」 その新一の答えに近いけど少し違うなぁといいながら、続けて答える。 「中森警部が工藤君にどうしても頼みたいって。」 「それはまた、珍しい事ですね。」 「あらそう?中森警部も工藤君の事は認めているじゃない?ほら、同居人の黒羽君の事もあるし。」 「何度か、あいつの事でいろいろありましたからね。」 かなり驚かれていたなぁと思い出す。 今では、優しいお父さんみたいな感じで心配してくれる人。 「今回は、KIDじゃなくてあっちをフィールドとする探偵さんの事みたいなの。」 「白馬・・・ですか?」 それはさらに意外な事だなと思う。あの人が他人に構うなんて、そうそうないからだ。 だが、内容を聞けばなんとなく納得できた。 といっても、誰もがそう思うだろう。 「何かKIDの正体を知る為に必要な実験を行うからだとかいって、いろいろ持ち込むみたいだから、危険がないかどうか見ていてほしいのだというのよ。」 「そうですか。・・・僕でよろしければお手伝いさせていただきますよ。」 依頼を承諾し、次の角を曲がって真っ直ぐ行けば自分の家だと言う頃。 家の前で立っている男の姿を確認して苦笑を漏らす。 行く前もかなり心配していた男が帰ってくるのを待っていたのだ。 「どうやら、お迎えもいるみたいね。」 「・・・そうですね。」 佐藤も笑っていた。 ありがとうございますと、車を降りて笑顔でお礼をいえば、どうってことないわよと元気よくかえされた。 その時だった。 快斗(今はキッド)と新一は何者かのよくない気配を感じ取った。(この先、佐藤から見れば快斗ですが、キッドの方なのでキッドと記します) このあたり、彼等がまともな生活を送っていないところがよくわかるというところ。 すんでのところで突如現れた物騒なものを持つ男を交わす新一と守るように背後へと庇うキッド。 「ちょっと、貴方!」 佐藤が出て銃刀法違反で逮捕しようと行動した時。 「危ない!」 標的を佐藤へと向けた物騒な男は走ってくる。それを、キッドが力を使ったのだった。 動きを止められ、一瞬宙に漂う男。すぐに地面へたたきつれられたのだが・・・。 その光景に呆然とする佐藤。しまったと思うキッド。 すかさず、起きないように、今のが夢だと思うように男へ最後の一撃とばかりに蹴りをいれる新一。 「・・・今、宙に浮かばなかったかしら・・・?」 可笑しいな、目が悪くなったのかしらとつぶやく佐藤に、しょうがないなとつぶやき、中へ入りますかと勧める。 今のが間違い出なければ確かにあの男は宙に浮かんだ。 その理由を間違いなくこの二人は知っているのだと理解できた。 「灰原〜。悪いけど、こいつの始末頼めるか〜?」 「私は処理係じゃないのだけど。」 「でも、昨日やっとできた新薬があるんだろ?」 「まぁね、まだ何にも試していないからやってみたいと思っていたところだけど。」 とりあえず、引き取り手は見つかった。なので、逃げることはない。 佐藤がいるが、今の会話は聞かれていないと思う。すでに、キッドによって中へ連れて行かれているのだから。
さて。ところかわって工藤邸内。 キッドは事の重大さをあまり理解していないのか、のんきに佐藤へ出すお茶の用意をしている。 「砂糖はいらねーからな。」 「駄目だよ。志保ちゃんに言われてるじゃんか。」 「いないからいいんだ。それに、今はきっとご機嫌だろうからいいんだ。」 ご機嫌の意味をすぐさま理解したキッドは、哀れだとは思わない。当然の報いと思っている。 そりゃぁ、愛する愛しい恋人に襲い掛かった男なんて、同情する余地さえない。 もっと言えば、志保にやれるだけやってくれという感じ。志保なら、嬉々としてやるだろうが・・・。 「はい、佐藤刑事。砂糖とミルクは好みでどうぞ。あ、それは今朝作った自信作のクッキーです。よろしかったらどうぞ。」 しっかりと勧めて、さて何処から話をしようかなと考える。 「佐藤刑事。」 「あ、工藤君。」 意識が少し飛んでいたようだ。なんだかびっくりな事があった後に、こんな暢気に同じ顔に囲まれてお茶をしているなんて。 「えっと、こいつは知っての通り、両親の友人の息子です。現在海外で公演中ですので、こちらに来ています。」 「それは、聞いている。だけど・・・。」 「ええ。それの事は僕も最近・・・といっても数ヶ月前なんですが、彼には特殊な力があります。」 「こんな感じですね。先程は咄嗟に使ってしまいましたけど。」 佐藤の前でしっかりとカップを浮かせて見せる。それで、力の存在を証明する。 「ほ、本当に?マジックとかじゃなくて?」 「マジックでは彼はマジックを使いますが、これはまったく別のものです。僕もはじめは眼を疑いましたからね。」 なんだか、どう驚いていいのかわからなくなってきた。新一も真剣にこいつの存在自体が可笑しいんですというぐらいなのだから、本物なのだろう。 新一は滅多な事で非現実な事を認めない。それが、近くで紅子や志保の非現実な事を見てきているからこそ、それと比べると可愛い物だと思うからの判断もあるのだが。それがさらに快斗やキッドも加わればだんだんと受け入れてくる。 だが、その反面それ以上に他の事で非現実を認める事はほとんどなく、真実を暴き出すようになったという事があったりもする。 「ですから。このことは他言無用。誰にも話さないで、佐藤刑事の中だけにしまっておいてほしいんです。」 なんだかんだいっても心配している新一。 いろんな意味で便利な家政夫であるが、心許しているところがあるから余計なのだろう。 本人はそれがどうしてなのかわからずに無自覚でいるが、鋭い佐藤はしっかりと新一の気持ちを理解していたりする。 「わかったわ。大丈夫。絶対にしゃべらないわ。」 「ありがとうございます。」 改めて頭を下げられると、いつも迷惑をかけているのがこっちであるので、何だか居心地悪い気がする。 「あ、それで。今夜大丈夫よね?彼、やはり駄目かしら?」 「大丈夫ですよ。こいつは今夜、出かけるので。」 「そうなの。なら良かった。」 ほっとする佐藤。今の会話の意味がわからないキッドがこっそりと新一に聞くと、今夜のKIDの捜査に参加する事になった事を告げた。 もちろん、どういった理由でどういった事をするのかもしっかりと言ってやった。 日ごろ、来てほしいと駄々こねる男なので、来てくれるのだと喜んだが、理由を聞いてすぐさま無表情となる。とても、不機嫌ですと顔に書いてある。 本当に、わかりやすい奴だなと思う。
「それじゃ、佐藤刑事。」 「今夜。予告の一時間前に迎えに来るわ。」 「わかりました。」 「しっかりとご飯食べるのよ?」 「だ、大丈夫ですっ!」 そう言って、いつも通り元気に佐藤は車を走らせて警視庁へと戻って行った。 背後では、相変わらず不機嫌な男がいたが気にしない。きっと、佐藤の前ではポーカーフェイスを作りつつ、上辺だけの笑顔で対応していたのだろう。だが、彼のポーカーフェイスは簡単には見破れない代物なので、別に問題はないのだろうが。 このまま不機嫌というのはいただけない。まったくもってウザイというものだ。 「おい。いい加減に機嫌を直せよ。」 「・・・別に。怒ってなどいませんよ。」 「いや。顔に怒ってます、不機嫌ですって書いてある。」 「・・・。」 そんな不安定でどんよりとした空気が流れる中。 「たっだいま〜。快斗君のお帰りだよ〜。」 元気な声を出して玄関から入ってくるキッドと同じ顔の男のお帰りだった。 「あれ?どったの?」 なんだか機嫌の悪いキッドと困っている新一。一人だけ何も理解できていない快斗。 なんだかますます部屋の空気が可笑しな方向へと向かっていく。 もちろん話を聞いた後、キッド同様に不機嫌になり、仕返しの如く、八つ当たりをしてやることを決定する快斗。 しかも、ご丁寧に電話で今夜の物取りに参加しませんかと言ってくるし、迎えに来るとまで言う。 もちろん、それは丁重にお断りして、佐藤の迎えの車で行く事にした。 きっと、迎えに来た早々、あの顔を見た瞬間に何かしてしまいそうだったからで、新一なりの配慮だった。 「家の前で死体やけが人はうれしくないからな。」 そんな理由で身の危険を交わせたのだったりする。
日も暮れ、約束の時刻に迎えに来た佐藤。車の音が家の前に止まった時点で出る用意はしっかりとしていたりもする。 もちろん、すでにキッドは仕事で家にはいない。いるのは昼間にいた快斗ではなくもう一人の快斗。 どちらかというと、こちらの方が地で本物っぽいが、新一にとってはどうでも良い事であるので放っておく事にしよう。 「ごめんね。本当に。」 「こちらこそ。無理言ってこいつの事を・・・。」 「いいのよ。彼の送迎を断ったからでしょ?」 「ええ、まぁ。」 急がないと、遅れちゃうわとスピードを上げる。 別に急がなくても充分間に合うのだが、準備やあれを止めるための事でできる限りはやくと言われているのだろう。 なんだか、この危なげな運転はかつて、NYでの母親の運転を思い出す。 いちよう、警察官なので事故を起こす事はないだろうが。ない事を祈ってしまう。 そんな新一の心情を察したのか、苦笑を漏らす快斗。 きっと、そんな心配は無用だろうけど、思い出してしまうものがあるのだろう。 そんなこんなで、通常ならかかるはずの時間より数分はやくして目的地へと辿り着いた。 「あっちゃー。忘れてきちゃったみたいだわ。」 車を降りた後、気付いた。佐藤は警察手帳を車の中に置いてきたらしい。 ちょっととってくると、走ってく姿を見送り、新一は来る事が知らせれていたので顔パスでさっさと現場へと入っていく。 もちろん、中森が迎えてくれた。快斗と一緒になるようになってから表情が柔らかくなってきた気がする。きっと気のせいではないだろう。 だが、快斗だけではなく、新一自身の実力と中身を認めて気を許しているのだとはわかっていなかったりもする。 やはり、彼は自分には無頓着なのである。 「あー。よく来てくれた。ん?快斗君も来たのかね?」 来た早々しっかりと快斗の存在に気付く。新一が今回の自分が呼ばれた原因である探偵、白馬から誘われたけれど、行くなら自分と一緒にという事で来たのだという事を告げれば、あやつわっとわなわなと震える拳。かなりのお怒りのご様子。 「あーあ。白馬の奴、おじさん怒らせてやんの。」 「あの人は本当に探偵が嫌いみたいだよな。」 「白馬だからだよ。父親の権力で現場に来るんだからさ。」 新一は自力で要請がかかるぐらいだが、あれとは少し違う。何より、警察との信頼関係が明らかに違うのだから。 「白馬は確かにお前の事を疑ってるし、その力のことに感づいて今回仕掛けてくるつもりだろうからな。」 まずは止めなければいけないなと暢気な事を言っている新一に、快斗はこっそりとため息を吐く。 快斗としては、新一に気が合って、あからさまに近づこうとするあの男の存在が気に食わない。 だが、自分の告白さえはっきりとわかってない新一には理解しがたいもので、今のところ問題はないような気もするが・・・。 この時、本気で新一にわかってもらうために何かしでかそうと考えた。 母親にも応援されてたことだし。次に会った時もこのままだと何を言われる事か。 「優作さんの目が怖いんだけどね。」 ただ一人、自分達のことを快く思わない男がいる。 あれだけ可愛がって大事にしてきた息子を、手放すのが嫌なのだろうが。 「悪いけど、頂いちゃうもんね。怪盗は狙った獲物は逃さないってね。」 そんな暢気な呟きを聞いていた新一。声が小さいのではっきりと聞こえていなかったのだろうが。 「親父がどうしたんだ?それに、もう次の獲物は決まったのか?」 なんだか、可笑しなところだけ聞いているところがさすが新一というところか。 こういうことには弱いのだろうか。普段なら地獄耳のごとく、聞き漏らさないのだが、こんな状態で白馬に会うということは大丈夫なのか少し心配になる。 「あそこだな。」 見つけたのは白馬がいるはずの、能力研究者達もいる立ち入り禁止のプレートがかかっている個室。 「ここかぁ。いかにも妖しい感じが漂ってるね。」 「・・・なんか、入りたくないかも。」 「なら、今から帰る?」 「頼まれたし・・・。了承したし・・・。」 「そうだね。任された仕事はしっかりしないとね。」 この中にいったい何が待っているのか。きっと、まともなものじゃないと思われる。 ごくりと唾を飲み込んで、恐る恐るながらも、探偵の顔で扉をノックする新一。 その姿にさすがだなぁとのんきに思っている快斗。 予告時間まで後20分。それまでにどうにかできるのだろうか・・・。
ギイッと鈍い扉の音がなり、中から一人の白衣を着た男が出てきた。 「どちら様でしょうか?」 そんな様子の相手に、丁寧に探偵の工藤新一で、白馬探から誘いを受けて来た黒羽快斗だと答えると、すぐに中へ通してくれた。 何気に、この案内してくれていた男が最初の新一の笑顔にやられていた事をここで記しておこう。 中は足元がわかりにくいほど暗いもので、快斗はある一定人物の妖しい屋敷を思い出していた。 「どうぞ。こちらです。」 案内された先は、どんよりと空気がよどんでいて、いかにも何か出るような雰囲気をかもし出していた。 「・・・あ、黒羽君。よく来てくれたね。工藤君も来てくれるなんて、思ってもみなかったよ。」 迎えたのは、この部屋を作り出した原因であり、新一がここへ呼び出された原因である白馬であった。 普段のコスプレでもなく、高そうなスーツの上から白衣ならぬ黒衣を着ていた。 その格好が似合ってるようで似合わず、部屋と同じように奇妙な感じを醸し出していた。 「・・・白馬・・・。」 まさか、ここまで酷いとは思っていなかった新一は、相手の名前しか言葉が出なかった。 快斗もまた、ここまでやるとは思っても見なかったので固まっている。 しかし、二人は並ならぬポーカーフェイスの持ち主。そんな事を相手に悟られるようなヘマはしないのだが。 「さて、そろそろ予告時間ですね。黒羽君、ここにいてはあれは手に入りませんよ?」 一人勝手にしゃべって、一人勝手に解釈して一つの画面を指す。その画面の映像には、今夜『KIDが盗む』と予告した『宝石』が写っていた。 何かとしつこく、快斗をKIDだというクラスメイトである探偵。いいかげん、うざいので何か手を考えようとしていたところだが。 まぁ、今夜はKIDがいるので、快斗がここにいても何も問題は無い。 「10秒前・・・・・・・・・・・1、0!」 勝手にカウントして画面を睨むように、そしてこれで勝ったと言わんばかりに見る画面。 そこには、しっかりと白い衣を靡かせて宝石を盗む『怪盗KID』の姿があった。 「な、馬鹿な?!」 この時ばかりは、志保と紅子に感謝した快斗とキッド。 この後、追い詰めて実験を行おうと思っていたのに、予想外の出来事に戸惑う白馬。 「あ、そうです。これはきっと、KIDのトリックですね。あらかじめ映像を流した?!」 そんな時、新一が持っていた無線から連絡が入る。もちろん、警備で走り回っている中森からだ。 「あ、中森警部。」 『何事もなかったようで、よかった。今からキッドを追う。そうそうにあれをどうにかして、はやく家に帰りなさい。』 心配してくれる人。 「わかりました。あ、今警部が追っているのは間違いなく、ダミーです。キッドは正反対側・・・。○○ビル方面ですよ。」 『なぬ?!それは本当か。』 「ええ、間違いありませんよ。警部も、無茶なさらないように頑張って下さい。」 『よし。お前等行くぞ〜。』 背後では中森の掛け声に応える警官たちの声が聞こえた。 ぶちりときれた無線。会話を聞いていた白馬は本当に現れたのだと知った。 固まり続ける白馬においっと話しかける快斗。 「オメー、いいかげんにして家に帰れ。これ以上ここにいると、ここの責任者に迷惑かかるだろう?」 そんな彼の声と言葉にやっと戻ってきた白馬は、このままでは終わらないと言わんばかりに、何かを始めた。 きっと、快斗や新一にとってはあまりうれしくない事だろう。 「君がKIDでないことは、これから証明してもらいます。」 そういって、なにやら機械機会を取り出した。 これは、彼(が集めた研究者達)が作り出したもの。今回、快斗が持つ力の正体を探り、調べるようなもの。 突如現れた白衣の集団に身体を押さえられた二人。 「「げっ!」」 そんな心の声は届く事はないだろう。 抑えられて快斗へと近づく白馬。今の二人には、彼こそ悪役のボスに見える事だろう。だが、ボスのわりには弱いのだが。 「さて、これではっきりとわかります。もしあれが本当なら、君はその『力』で偽者を作り上げて見せたのだとわかりますから。」 その言葉に、かちんとくる新一。 つまりは、彼が使う『マジック』が偽物で、『力』によるものだと言われているようなもの。 そんなことはなく、力を今までマジックとして使った事はないのに。 快斗(キッド)のマジックが好きな新一。彼が生み出す魔法が好きな新一。 それをそんな風に言われて黙っている程大人しくもない新一。 「・・・・・・。」 隣で黙りこくって、明らかに怒ってますというオーラを漂わせる新一に気付いた快斗は慌てる。 どうして新一が怒って、ここまで他人に悟られるほどのオーラを漂わせているのかわからなかったからだ。 白馬がその機械の電源を入れて、快斗に何かをしようとした時だった。 「あれ?動きませんね。」 実験者で、この研究をするにあたってまとめてきた代表の男が言う。 そう。何も反応がないのだ。本来ならあるはずの反応が見られない。 「ど、どうしてなのですか?!ま、まさか!君が力を使って抑えてるという事ですか?!」 快斗に近づいて大きな声でぎゃあぎゃあいう男。 「しかし。彼には『力』が仕えないように輪をつけていますから。」 「結論から言うと、彼には能力はないということですね。」 さぁ、帰ろうかと片付け始める白衣の集団。 もちろん、新一を取り押さえた男達には快斗が何か仕掛けたので、後日それが明らかになる事だろう。 どうしてなんだとぼやく白馬を、迎えに来たばあやや白衣の集団が連れて帰った。 これで、やっと二人も帰れるのであった。
だからなのか、二人は気付かなかった。 西の探偵が何気に現場近くにいたことを。 もちろん、しっかりと志保達につかまり、いいかげんにしてほしいわとぐちを漏らしているのを聞いている。 その後、彼がどうなったかは、知りたいようで聞けなかったので、二人(三人)とも何も言わなかった。
おまけ 一夜が明けて・・・ 「そういえば、どうしてあれ動かなかったんだろ。」 快斗君疑問〜と言っている横で、何も興味がないと言わんばかりに、キッドが入れた珈琲を飲みながら新聞を読んでいた。 「しかし、良かったじゃないですか。あのままじゃ、ばれていたのでしょう?」 「そうなんだよ。だから、マジックで誤魔化そうと思っていたんだけどね。」 何があったんでしょうねと、不思議がる二人。 その答えを新一が握っていると知るのは、近い日かもしれないが、遠い日かもしれない。 今日も新一に尽くしますかと、洗濯をはじめ、買い物に出かける二人の姿が今日も見られた。 だからこそ、余計に気付かない。 少しずつ新一が自分達への気持ちが変わってきている事に・・・。
おまけの裏側(真実) 「そう言えば、どうして動かなかったんだろう。」 そんな快斗が目的語にしているものを察知した新一は、顔の表情を少し動かした。 しかし、キッドも同様にその疑問でいっぱいなのか、気付かれていないようだ。 「しかし、良かったじゃないですか。あのままじゃ、ばれていたのでしょう?」 「そうなんだよ。だから、マジックで誤魔化そうと思っていたんだけどね。」 何があったんでしょうねと、不思議がる二人。 そんな二人を横目でちらりとみて、くすりと笑みを浮かべる。 その真実を握るのは彼、新一だったりもする。 「秘密だよな。これ以上問題はいらねーし。」 何気に、一緒にくらすようになってから始めて気付いたのだが、どうやらあの二人と同じような力が自分にもあるようだった。 寝ぼけていて階段を堕ちそうになった時、下に落ちず、浮いていた自分がいた。 すぐさま理解できていろいろ試してみて、快斗(キッド)と同じなのだと気付いた。 どうやら、あの力は何らかの原因で病気がうつったようだ。 でも、あの二人の役に立ったのならそれでいいかもしれない。 だけど、まだまだこのことは自分の中だけの秘密。 そんでもって、新一が自分の気持ちと快斗(キッド)の気持ちを理解するのはもう少し先。 |