せっかく依頼もあることで居座っていたのだが、家の事情を知っていて母の事を独りにするなと散々言われてしまい、反論するに出来ないまま追い出され、涙を流す。 寂しい事に、愛しい人にたまには家に帰れと追い出された為に、納得はしていないが確かに母の事が心配ではないわけがなく、しぶしぶ帰ってきた青年。 はぁっと、幸せが逃げるような思い溜息。 とりあえず、やる必要のあることをしておこうと、パソコンを立ち上げた。 次のターゲットは何かあるかと思いつつ、メールをチェックした。 すると、数件のメールが来ていて、その内一つはある人物からのものだった。 「・・・へぇ。さっそくですか。」
序章 怪盗からの招待状
『 先に鍵を握る少女と接触し、影に潜む者を止めよ。 』
内容は簡単。事件解決に向けて動けという指令。 「・・・本当に、事件を引き寄せますねぇ、名探偵は。」 困ったものだと思いながら、メールを削除する。他の誰かに見られないように証拠は消しておくに限る。 「それにしても、どうしたものかなぁ?」 この事件に、どうあってもあの探偵は巻き込まれるのだろう。 すでに、動き出しているからなおの事だ。 ならば、先に知らせてみようか。得意の招待状を使って。 早速、彼の好みに合うような暗号を使った招待状を作り始めた。 事件に巻き込まれるよりは、自ら足を踏み入れて先に片付ける方が、翻弄されずにすむかもしれないから。
昨晩は家に一度帰れと、勝手に同居人になった男を家から追い出した。 だから、今日は珍しく静かだった。 家の主はゆっくりと本が読めると思ったが、そうはいかなかった。 差出人のない一通の白い封筒が届けられた。 中を見てみると、それは奇妙な文字で書かれたもの。文章ではなく、彼以外が見ればまったく読めない難解な暗号の招待状であった。
『 天使の導きの元、明日の午後1時きっかりに時計台前でお会いしましょう。 』
世界をまたにかける神出鬼没な白い衣を纏った世紀の大怪盗。 1412という指名手配番号を持つ怪盗KIDからのものだった。 受け取り人は少し不機嫌になりながら、それを持っていた鞄に詰め込んだ。 お隣へよって、この予告状の旨を伝え、明日1時半にとある喫茶店で会おうと約束をした。 そして、そのまま何事もなかったかのように学校へと向かう。 これ以上の欠席は進学にも響いてくる。 留年だけはなんとか避けたいので、眠いが彼は学校へと向かう。
これが今回の事件の全ての始まりであった…。
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