うふふ・・・

これでいいわ・・・

 

平和にばかっぷると見物者が暮らす工藤邸のお隣の地下

妖しげな研究に没頭する少女が、何やら試験管を見て微笑む

その姿を悪魔の微笑みと、彼女の本性を知る者ならそう思う事だろう

 

さて

実行日はいつにしようかしら・・・?

 

その企みの為に、彼には協力してもらわないといけない

少女は電話の受話器に手をとり、お隣へと電話をかけたのだった

 

 

 


   第五話 害虫駆除の薬品実験

 


 

 

相変わらずばかっぷるぶりを発揮している快斗と新一。

それをふよふよと浮きながら見物しているバード。

そんな彼等のもとへ一本の電話が鳴り響く。これは、お隣専用の電話なので、何かあったのか、それともまた博士の発明についての内容か。

「もしもし。」

「黒羽君かしら?」

「そうだけど。どうしたの、哀ちゃん。」

なんだか、声が楽しそうというか、普段見られないほど機嫌がよさそうなので、一体何があるのかと、恐る恐る内容を聞けば、ぜひとも協力しましょうという結果となった。

「で、いつにするの?その害虫駆除対策の実験。」

「そうね・・・。ちょうど、明日学校でしょう?」

「・・・明日、だね?」

お互い、にやりと笑みを浮かべながら、その時は通話を切った。

背後では何やら先ほど以上にご機嫌の快斗に首をかしげる新一と、内容を知って、明日は楽しくなりそうだなと考えるバードがいた。

 


 


害虫駆除を行うと決めた日。

相変わらずにこにこしている快斗に少し不信感を覚えながら、黙ってみている新一。

いったい、今度は何をやらかすつもりだろうか。

以前・・・というと、バードと会う前なのだが、誕生日の計画を企んでかなり妖しい笑みをしていた。

だが、それ以上に可笑しな笑みだ。

「・・・今日は何かあったっけなぁ?」

「大丈夫だ。今日は気分の問題だ。」

「気分?」

「目障りな害虫駆除が成功したら、誰だってうれしいものだ。」

確かに、夏に蚊が飛んで耳元で羽音をされたら鬱陶しくてしょうがない。

そういう事なのだろうか。

新一は対象を蚊だと勘違いしていた。そろそろ夏であるからしょうがないかもしれない。

実際は、快斗にとって蚊以上に鬱陶しいものなのだが。新一は快斗しか見えていないので、気づく事はない。

さすがは、ばかっぷるの片方というべきか。それとも、恋は盲目という言葉だろうか。どちらも?

「とにかく、新一が心配するような事はないから、安心して学校へ行くんだ。」

「?お前は来ないのか?」

「ちょっと、楽しそうだからな。呼べばすぐに行くが、それまでは害虫駆除の第一段階の薬品実験の見学でもしていようかと思ってな。」

「薬品実験・・・?灰原か?」

「彼女もかかわっているな・・・。」

もしかして、蚊以外の何かの駆除だろうか。二人がそこまで蚊を嫌って倒そうとは考えない。

確かにあっているが、まだまだというところだろうか。やはり、彼は恋事には鈍いのだった。

 


 


さて、場所は変わって江古田高校の快斗の教室。

「昨晩はよくもやってくれましたね!」

現れたのは、相変わらず自分をキッドだと言い続ける探偵。

まぁ、間違ってはいないが、決定的な証拠にはならず、いつもつっかかってくるだけ。

そんなところで、俺がぼろを出すわけねーだろというところ。

「何なんだよ、お前。昨日は会ってねーだろ。第一、ずっと新一と一緒にいたし〜♪」

嫌味も含めて言ってやると、顔を真っ赤にして、つかみに掛かってくる白馬。

なので、それを利用して教室を出る。上手い具合に一緒に教室を出てくる白馬。

さて、屋上まで案内しましょうか。

女史の害虫駆除実験室へと。

その後、屋上へ出た二人。そして、意識を失い、その後授業に出る事は無かった探偵。

どうしたのだろうかと、担任は首をかしげる。

そんな中、何処か遠くの方で叫び声が聞こえた気がしたが、空耳だろう。

「あとは、西のうるさい彼だけだねぇ。」

次はどうしたものかと、考える。帰ったら哀と相談かなと考え、新一といちゃつく時間が減っても、まずは駆除が先だと我慢するのだった。

そんな時、想像して妖しくにやけている快斗に、かなり不気味な物を感じて恐れている担任やクラスメイトがいたが、本人は気付いてはいない。

「やっぱり、こいつらは面白いよなぁ。」

行動目的が一定の法則にしたがっている。

「あまり、やりすぎはよくないぞ?」

「わかってるわよ。限度はわきまえているつもりよ。」

と、何やら妖しい液体の入った試験管を持って、次なる実験段階へと進むらしい哀に言葉をかける。

「この人が大人しくしていれば、本来おきるはずの無い事なんだから。」

確かに、鬱陶しい相手ではあるが、この後彼が復活できるかどうかは、彼の体力に聞かないといけないかもしれない。

「しぶといほど丈夫だから問題はないわ。」

どうやら、言葉が口に出ていたらしい。

「過去に、なんどもやってきたのよ。それでも元気だから、丈夫と判断すべきでしょ?」

「・・・そういえば、そんな報告資料もあったなぁ。」

一応、巡回死神であるバードはこの辺一体の人間の資料を頭に入れている。

つまり、新たに死ぬような事や死を免れた事などの報告が入るのだ。

それに例としては新一によって命を助けられた者や、哀によってこのように生と死の一線を漂う者の報告である。

「そういえば、もう一人いたな。」

「大丈夫よ。ぬかりはないわ。」

どうやら、すでに計画済みらしい。

「どうせ、黒羽君も今頃考えている頃だから、帰ってから作戦を練るわ。」

その間、寂しがるだろうから新一の話し相手を頼むわねと、大役を負かされてしまった。

信用されているのだか、されていないのだか。

新一の相手という事は、少なからず信用されているということだろうか。

まぁ、いいか。

そう考えて、そろそろ新一のところへ行こうかと、空高く飛んでいった。

それを気にすることなく、哀は実験を続けるのであった。

 

 


家に帰ってきて早々、お隣へと行ってしまう快斗。

「なぁ、何やってるんだ?」

「害虫駆除の実験結果をまとめているんだってさ。」

「実験?まだ、実験段階だったのか?」

その害虫という対象が何のかわかっていないからこそ、普通に言う質問なのだが。

「どうやら、そうとうしぶといらしいからね。死神でさえ、お迎えするのにてこずるような相手だからね。ほら、息を吹き返したら、連れて行くことはできないでしょ?」

新一のようにねと、言う。確かに、あの時バードの行動で逃げようとして、あのまま快斗をすり抜けるとわかっていても向かって行ったとき、かすかにバードの安心したような顔が見えた気もする。

「・・・お前は、言えないから俺を誘導したわけなんだよな。」

「言ったら駄目でも、行動で示してはいけないとはいわれていないからね。」

何より、死んだらこんなに面白い彼等の見学は出来なかっただろう。

「いい奴だよな、お前。」

快斗や哀みたいに心配してくれる奴。いい奴だという。

だが、その笑顔は本当にいい奴と言っていて、バードにとっては失恋がさらに重くのしかかるのだった。

彼が幸せならそれでいいのだが、先に新一にあったのは自分だが、運命と言うものは酷いものだなぁとしみじみ思う。

ちょうどそのころ、再び隣で奇妙な叫び声があがったが、新一が聞く事は無かった。

 

 


やっと帰ってきた快斗にべったりとくっつく新一。

照れ屋でめったに自分から行動をしようとしないが、素直になる時だってある。

とくに、これだけいつもより一緒にいる時間があるのに、一緒にいられない時は一緒にいようと新一は甘えてくる。

そこが、お隣の少女が馬に蹴られる前に退散するわといい、ご馳走様と二重の意味を込めてカップを残して去っていくばかっぷるぶりの発揮されている状態だ。

こうなっては、誰も割り込む事は出来ないだろう。

だが、わかっていない人達は邪魔をしようとする。

いつの間にか、快斗にくっついたまますやすや寝ている新一を抱きかかえ、額にキスを送る。

「寝込みを襲うのは止めておけよ?」

「しないよ、そんなこと。やるなら、意識のあるときに許可もらってするからね〜。」

「そうですかい。惚気はいらないよ。」

「惚気だけならいくらでも聞かせてあげるよ。新一は絶対にあげないけど。」

「・・・扱いが、あの害虫君達と似ているのは気のせいか?」

似ているかもしれない。だって、害虫以上にしぶとく、死なない奴。そして、新一も気を許している奴だ。一番油断なら無い敵といっても過言ではない。

「はやいうちに対処しないと、変なのが増えるからね。」

「なんだよ。白いのの癖に。」

「白いのって言うなよ。この真っ黒!」

喧嘩のないようははっきり言って、低レベルだった。

「とにかく、俺は寝るから。入ってくるなよ?」

「へぇへぇ、邪魔はしませんよ〜。」

「どうだかね。」

そういって、部屋の扉を閉めようと思ったとき、ふと思い出して快斗が聞く。

「なぁ。お前、死者名簿だいたい暗記しているんだったよな?」

「そうだなぁ。あ、お前等三人は当分大丈夫だぞ?」

「そんな事じゃない。あいつら二人だ。」

「二人?」

一体誰のかとかと思えば、お邪魔虫二人組みの事だった。

「出来れば、哀ちゃんがたまに無茶しても大丈夫なように、書き換えておいてくれない?」

「あの二人だったら、当分大丈夫だぞ?」

「そうじゃないって。突然って事があるだろ?」

「ああ、それね。いいぞ、別に。面白そうだし。」

面白そうで人が死んだり生きたりする運命が左右されるのって複雑なのだが。

「人はわかってないんだよ。寿命より早く死んだ場合は、次に早く生まれ変わり、次の予定寿命に加算されて長く生きられるもんなんだよ。」

地獄に落ちさえしなければねという。その地獄という言葉がとても重く感じられた。

快斗や哀は下手すると地獄行きだ。それだけの罪を犯しているのだから。

「変な心配はやめとけよ?大体、遅かれ早かれ、人は死ぬ。ただ、一命を取り留めればそれは奇跡。偶然だ。あとは、必然的に訪れる死か生。だいたいはそんなもんだ。」

今は、目の前の幸せを大事にしていれば良いという。

「・・・そうだな。ついでに教えておいてやろう。今日、新一のところへ行くまでに一つ頼んでおいた報告があった。」

「何だよ?」

「西の彼が来るそうだぞ。今週の休み。」

「はぁ?!」

また、突然の話。

「というか、なんでそんなこと知ってるんだよ。」

「死神だって、死者を案内するといっても仕事は仕事。仕事には情報が必要なんでね。いろいろとコネがあった方がいいもんなんだよ。」

なんだか、敵に回したくない奴だと思ったのには、間違いないと思う。

「ほら、寝るんだろ?さっさと寝ろよ。お子様だろ?」

「へっ、そういうアンタはおじさんだろ。」

相変わらず低レベルな口喧嘩をして、部屋の中へと入る。良い夢見られたらいいなと側でもぞもぞとくっついてくる新一を抱きしめて眠りについた。

 


明日、またお隣と今週末の予定を立てようと決めながら・・・。





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