さて。 バードが言っていた西の彼・・・うるさく迷惑な連絡もよこさない服部がやって来る日。 そして 怪盗キッドの予告日。 「何で、予告なんかしたんだよ。」 「しょうがないでしょ。突然だったんだし。これ、かなり予定外だったんだよ?」 「そういう事なんか、人生にはたくさんあるものさ。」 「うわっ、じじくさっ!」 「失礼だな。」 そんな会話を朝から朝食を食べながら繰り広げられていた。
害虫の再利用方法
「いいかげん、馬鹿やってないで。迎え撃つ用意でもしてなさい。」 突如現れて、相変わらず低レベルな喧嘩を続けている片方は一般男子高校生、もう片方は死神世界で恐れられるほどの権力者の死神。 そんな二人も出来れば関わりたくないのが、現在いる工藤邸のお隣の少女であった。 死神のバードも、あまり怒らせると危険な事をしてくれるお隣さんには、ちょっと困っていた。 「迎え撃つって・・・。服部は確かに連絡よこさないし、迷惑だけど、そんな戦争で敵を撃つみたいな言い方はよくないぞ?」 さらりと、新一も酷い事を言っている事に気付いていない。 「いいのよ。彼に言葉を選んでいる余裕なんてないわ。」 「そうなのか?」 「そうそう。新一は気にしなくていいよ。もし、泊まるっていうんだったら、即追い出すから。」 「確かになぁ。今は快斗もいるし、バードも居付いてるしなぁ。」 そうなのです。新一と快斗が仲良くなってから服部は一度も来ていないので、連絡もしてないから知らないのです。 其の間に死神も増えましたが、とにかく同居人がいるという事なんて、これっぽっちも知りません。 新一にとっては面倒だったので、連絡をいれていなかっただけという事もありますが・・・。 「時間的にもうすぐくるだろうな。」 「電話ないしね。迷惑だね。」 それでも、一応お茶の用意はして出すという、心がけだけはしてやる。 適当にあった得体の知れないお茶の葉だろうが、知るもんか。 新一には珈琲を入れて、今度は紅茶がいいと我侭抜かす死神にはアイスティを入れて、哀にはほっとティを入れた。 その時、ちょうどグッドタイミングでチャイムがなった。 「ちょうど、お茶の時間ってね。迷惑な奴め。」 とにかく出てくるねーっと玄関へ向かう快斗。任せておけばいいかと、のんびりリビングで待つ。 さてさて、玄関では。 「どちらさま?」 「工藤、わいやわい。会いたかったでー。」 と、抱きついてきた。 「離せ!誰だよお前。」 不機嫌ですと顔に出してやっても、何や照れてるのか工藤と、まったく分からない様子。 これで新一が好きだというのだからむかつくものだ。 やっと離しても、怒った顔も可愛いなぁなんて言っているものだから、寒気がする。 どうしたと、なかなか入ってこないのでリビングから顔を覗かせた新一は固まる。 「どういうことや?」 お前こそどういうことだと、新一は言いたい。 何と、快斗に迫る服部の姿がそこにあったのだ。 「何してんだ、服部!」 我に帰って怒鳴り、離れろと服部を睨みつける。 さすがに人違いに気付いて、慌てて一歩下がる服部。どうやら、新一を怒らせてしまったのだと慌てる。 きっと、自分の事が好きで照れている彼は、間違えられて怒っているのだと勝手な事を考えていたが・・・。 「快斗〜、大丈夫か?」 「大丈夫。びっくりしたけど・・・。」 むかついたので蹴り飛ばしてもよかったが、あまりやりすぎると新一に迷惑がかかるし、何より絞め殺してしまいそうで、必死に理性で我慢していたのだった。 「大変だな、白いの。でも、本気でやってたら、目が只者じゃない奴の『目』になるから、良かったんじゃない?」 と、のんびりと様子を見ていたバードがふよふよとその辺を浮きながら、話しかけてくる。 やはりといっていいのか、服部には彼の姿は見えていないようだが。
リビングにあがった服部は縮こまっていた。 かなり新一が服部に対してご立腹だというのに、隣でくっついてくる快斗にはとびきりの笑顔を見せていたのだ。 さすがに、どうしようと考え出す服部。 そもそも、彼がやってきた理由は、一度『死んだ』と言われていた彼が生きていたということを、実際自分の目で確かめるために来たのだった。 死んだというのは嘘で良かったと思ったが、まさか、こんな事になるなんて・・・。 第一に、彼は快斗の存在を知らなかったので、慌てていた。 そう、今日泊まって、今日こそ新一をものにするといろいろ計画を立ててきたのだ。 まずは、怪盗キッドの捕獲で仲良く推理をして〜といった具合に。 「で、何しに来たんだ?」 かなりご機嫌斜めでどすの利いた、猫もかぶっていない不機嫌丸出しの顔で問われて、びくりと肩を震わせながら、答えた。 「へぇ。怪盗キッドの捕獲捜査・・・。」 「せや。一緒に行かへんか?」 ちらりと快斗を見て、見物だけならば、いいかもしれない。それに、逃走経路で待ち合わせするのもいいかもしれない。 だから、捜査には加わらないが、見には行くと答えた。 「さよか。それで、今晩ここ泊めてくれへんか?」 「・・・なら、どうして先に連絡しない?いつも言ってるだろ。」 「せやかて・・・。」 「その話はあとにしましょう。これから検診よ、工藤君。」 だから、しばらくの間出て行って頂戴と、恐ろしい形相で哀が服部を見て、さすがに怯えて、快斗が残るのは問題ないのかという話をする前に、ぽいっと追い出された。 現場で会おうなと新一が笑っていない笑みで言うと、まだ怒っているということで、現場で会うまでは大人しく外で時間を潰そうと決める服部。 それによって、着々と進められる怪盗キッドとお邪魔虫対策作戦の用意。
さて。時刻は予告一分前。 現場ではキッド専任の中森警部が怒鳴り散らしていた。 一つは白馬探の存在。もう一つは、新たに増えた服部平次の存在。 「おぉ、相変わらずだね、おじさん。」 すでに侵入済みの快斗は様子を見て苦笑する。 これだったら、楽勝かもしれない。互いが邪魔しあって、効率よく警備されていないし、穴だらけ。 「それにしても、哀ちゃん本気かなぁ?」 別に哀れんではいないが、もう一度白馬にも仕掛けるみたいだ。 二度目はきっと強烈だろう。 「服部は二度目じゃんなかったか・・・。」 出きれば、自分もそんな目に合いたくないので、合いませんようにと願う。 「さて。ショーの始まりだ。」 しゅっと丸い玉を投げる。 「ん?・・・こ、これは・・・?!」 「そうですよ、中森警部。油断大敵ですよ。」 時刻はジャスト。行動開始。 一面に立っていた警察と探偵達はすでに夢の中。 背後に感じる気配に笑みを零し、その場から立ち去る。 そして、現れたのはなにやら深い笑みを見せる少女と、誰にも見られることはないが、黒い服で覆い、大きな鎌を持った男。 「さぁて、今から実験の時間よ。」 一応、死神なんてものをしているが、運ぶ事は出来るので、哀のお手伝いをするバード。 哀れにも、二人の探偵は阿笠邸の地下へと運ばれていくのであった。
その頃、お隣でたまに奇妙な悲鳴が聞こえてくる気がするが、気にしない快斗は新一に抱きついて離れようとしなかった。 「どうしたんだよ。」 「嫌ね。せっかくの新一と一緒にいる時間をあんなのに邪魔されたから。」 現在新一を充電中・・・。そして、新一の肌を堪能中。 と、なんだか不埒な手が・・・。 もちろん、ぺしっと叩いた。 「痛い・・・。」 「やめろ。・・・俺だってな、その・・・一緒にはいたいんだからな。」 「うんうん、それはわかってるよ〜。もう、新一愛してる。」 ぎゅっと締められる腕。少し苦しいが、別に怒らない新一。 やっぱり、彼等はばかっぷるというか、甘かった。 そんな時間を過ごしながら、彼等の夜は更けていく。
そして、お隣では・・・。 「害虫だって、再利用できるものはするべきなのよ。」 そうしたら、少しは環境問題が軽くなるんじゃないっと、きっと聞いていないだろう実験台の上にいるモノを見て微笑む。 彼等に未来があるかどうかは、お隣さんの気分によって変わる。
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