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二度目の死は、彼女にいったい何を与えたのか・・・ 異変を察知し、急いで集まり現れる天使達 大切な、女神を守る為に集まる しかし、そこに女神はいなかった 三章 天使達の牙 「何がありました?!」 蓮が慌ててリビングに入ってきて、そこにいない二人の存在に気付き、立っている紅目に問いかける。続くように、まだ異変を知らないキッド以外は集まる。 「悪い。・・・・最悪の事態だ。」 「・・・連れて行かれましたか。」 最初は気付かなかったが、紅目の足元には動く事のない少女の姿がそこにはあった。 血の特有の臭いはなく、明らかに人為的につくられたそれ。 庭には、気絶したり動けなくなった黒服の男達がいる。 「・・・占い通りに、なっちゃってるみたいだね。」 占いの結果を見て、慌ててやって来た。この家に取り付けられているモノで、さらに慌てた。リオンにクラウドに和也もまた、あの男が組織を裏切って抜けたという情報を得て慌てて帰ってきたのだ。 「家を空けておいたのが間違いね。」 「そうだな。・・・調べに出なかったら良かった。」 普段なら家にいるリオンとクラウド。詳しく宝石について調べる為に、過去の記事や記録を漁っていたのだ。 あの男とのかかわりがある数十年の間を調べれば、いくつかはでてくるのではないかと。 だが、それによって今回は痛いことになった。 「・・・まだ、完全に途切れたわけではない。」 あの時、咄嗟に新一が麻都のポケットへと入れた紅い石。 あの男の目的であるものがここにある。なら、あちらから何らかのコンタクトは取って来るはずだ。 だが、新一がいない今、ある二人の事、とくに一番新一に関してうるさい男が黙っていないだろう。 「この状況じゃ、彼にも言わざる得ないわね。」 心臓を綺麗に貫かれているわと、志保は少女の様子を伺って呟く。 「例の場所へ向かってる。・・・悪いが『烏』さん。お子様と魔女殿のお迎え頼めますか?」 「ああ、問題ない。」 「紅目さんには、来ていただきますよ。」 仲間割れをしていたとしても、あの男は決して隙をみせないし、簡単に死ぬ事もないだろうから、手伝ってもらわないといけない。 「リオン、クラウド。情報で煽りの方頼みます。」 天使は確かに清らかな心を持ち、癒す何かを持っているかもしれないが、生憎自分達はただ一人大切に思い信じる女神に手を加える者に対しては、悪魔や死神のように牙を剥くのだ。
窓ガラスが割れ、飛び込んできたものが、朱霞の胸を貫いた。 それを運命として受け入れようとしたのか、ゆっくりと傾いていく朱霞の身体。 目は閉じられ、ここから離れる事を選んでいる。 そんあ朱霞に慌てて駆け寄った新一。 腕で抱き上げて呼びかけても反応はない。息もしていないし、心音も脈も何もない。 元々、これは人の手によって創られて魂を縛っていた器。 この器は役割を果たしたのだ。だから、彼女は新一が持つ宝石に還ったのかもしれない。 「やっと見つけたと思ったら、ちょうど良かったですよ。」 クスクスとあの男が窓から中へと入ってきた。 「貴様・・・。」 「あの時ぶりだね。まったく、あれは堪えたよ、紅目君。」 しばらく身体がだるくてしょうがなかったよという男。 「さて。彼女の始末は終わった事だし、宝石の回収をしないとね。」 そろそろ、発信機を辿って愚かな者達も追いかけてくる頃だしと言う。 やはり、この男は組織を裏切って抜けてきたモノ。 鋭い目が細められ、一層鋭く男を見る。 「その目、いいね。・・・それで、呪いを受けて、貴方はあの女を殺しますか?」 大切な人の命を奪ったあの女を、貴方はどうするのかと、手をすっと前に出して、手の上に乗せられている平らなプラスチックを見せる。 だが、それが麻都の動きを止めた。 ぼんやりと、幻覚が見えた。 そこには、新一とはまた違う、青い瞳の長い茶髪の女が見えた。 「・・・っ、・・・リア。」 目が見開く。あの日以来、見ることのない彼女の姿がそこにある。 いくら映像であっても、間違いなく彼女。どうしてこの男が知っているのか、ここに映っているのか何もわからないが。 「・・・マーリア。」 その女が一体何かと新一は思ったが、麻都の様子を見て、やばいと思った。 マーリアという名前。最初に出会った時、会いたいという言葉は知っている。 これがその人なのかと思うと、まずいと思った。 新一は麻都の懐にある銃をつかんで取り出して、男の方へと向ける。 その隙に、あるものを麻都のポケットにこっそりと忍ばせて。 「そんな危険なモノは、貴方には似合いませんよ?」 「だが、生憎殺されるわけにもいかねーし、こいつを壊されるのも困るんでね。」 「そうですか。」 ですが、私の目的は彼ではなく、宝石と貴方ですよ、工藤君とゾクリと不気味で寒気を感じる笑みを見て、一瞬ひるんだ。 その一瞬だった。 「ぐっ・・・はぁっ・・・・・・・・てめぇ・・・・・・。」 鳩尾に正確に一発入れられて、ずるりと崩れる新一。 さすがにいくら彼女の姿があっても、それは映像。我を取り戻し、戦闘体制に入る麻都だったが、魂はないとはいえ、人の姿の朱霞を自分の方へ放り投げられた挙句、新一を担ぎ上げた相手に銃を向けても撃つことは出来ない。 朱霞にこれ以上穴を増やすのは新一にあとで何を言われるかわからないし、いくら腕はよくても、あの男がわざと新一を盾にすることだってある。 だから、撃てなかったのだ。 「では、次はリオンに会いに来ますよ。」 男は新一を連れて去っていった。 「くそっ。」 まだ、自分は過去に捕らわれている。 乗り越えたと思っていたのに、なんということだ。 すぐに追いかけようとしたが、ばっと、黒服の男達が姿を見せた。 新一がいれば不法侵入だと一言いって片付けて通報して引き取ってもらうが、今の麻都には邪魔なもので、死なない程度に、手加減も忘れてやった奴もいた。 道に出て、さすがに焦った。 すでに、男も新一も、何も痕跡は残っていなかったのだ。 とりあえず、工藤邸に取り付けられた機器によって皆が集まるだろうから、戻って合流するのだった。
「どうしてそんな大事な事、黙ってたんだ。」 「だって。いくらルシファー様だとしても、同等の力を持つドラゴンに刃向かうなんてことはしないわ。」 ルシファーが六限目が終わった際に知らせたお告げ。 それに慌てたのは紅子。すぐに快斗に伝えて、二人揃ってホームルームをさぼる。 担任が呼び止める声や、白馬のうるさい声もあったが、無視して走った。 門を出た頃、そこには『烏』が待っていた。 「てめぇ。」 「話は走りながらでしてやる。今は走れ。」 すっと、目的の場所へと走り出す烏を追いかける。 闇に紛れて羽音を隠して一気に地上へと舞い降りる黒い狩人のように、振り向かずに走る。 烏は気配に敏感だ。集めた宝を持っていかれないように。 だから、着いていっていることぐらいわかっているのだろうが。 「・・・何だ。・・・・・・わかった。」 突如ポケットから小さな着信音がなり、どこかに電話をかける。 今の状況だと、他のメンバーかこいつの組織のメンバーだろう。 「合流するより先に進む。その方が、早い。」 ほらっと、後ろにいる二人に小型の小さな機器を投げ渡した。 それからは、竜の声が聞こえる。 『今回は、こっちも他のことをしていたし、油断していたからね。』 「おい、お前。新一にもしも何かあったら容赦しねーからな。」 『何馬鹿なこといってるの?・・・そんなこと、させるわけないじゃない。』 突如あのおちゃらけた明るい声は低く冷えた声となった。 「それで。」 『大丈夫だよ。竜はとっても目がいいから。猫は耳がいいから。烏はその羽で運んでくれるから。・・・獅子が最後をカバーしてくれるから。』 今はそっちを頼むねと言う。つまり、彼等は別の場所にいてこちらにくるつもりはないのだろう。 だが、自分達の補佐として声で伝えるのだ。実際、竜と猫はとても敏感で、目がよくて耳がいいから。 『あとは、白い鳥の嘴・・・いや、牙かな?』 「うるせぇ。」 「おしゃべりはそれまでだ。急ぐぞ。」 「わかってる。」 人が通れる道では時間がかかってしまう。 ならば、人が通る場所ではない近道を行けばよい。生憎、自分達はいつも平凡な道を歩いているわけではないのだから、やろうと思えば簡単だ。 「新一っ。」 快斗は祈る思いだった。もしものことがあったらどうしようと。
「さて。」 カチャっと、ノート型パソコンを閉じる。 「竜と猫にも牙はありますし、別の獲物をしとめましょうか。」 「おっ、お祭りだね。」 「クラウド。遊びじゃないわよ。」 全員、闇に紛れる黒を纏う。 「お仕事開始だね。」 それぞれ、女神を守る為に天使は己の持つ牙を向ける。
女神に手を出すモノには制裁を 我等の命に代えてでも・・・
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