カチャン――― 無機質なもの同士が音を響かせる カタカタカタ―――― 画面に向かい、キーボードを打っていた女が、ふと笑みを浮かべ、電源を消す 女は懐から煙草とライターを取りだし、火をつけて一服する 「・・・いい加減に、諦めてほしいものだわ。」 女の呟きを聞くのは、空に上った丸い月だけ 翼をもがれた死者の伝言 序章 時は再び動き出す 「あ〜、数時間ぶりの新一〜。」 学校を乗っ取られて数日。着々と一ヶ月と言う期限は迫ってきているのだが・・・。 相変わらずこの二人は進展する事もなく、それでいて離れる事もなく、ただ二人一緒にいた。 「見ていて鬱陶しいわね。」 「哀ちゃんひど〜い〜〜。」 「うるさいから、黙ってて頂戴。」 貴方達に付き合ってる時間でさえ、今はおしいのよと、ご馳走様と飲んでいたカップを置いて、さっさと出て行った。 「なんか、哀ちゃん様子が変じゃない?」 「そうだなぁ。」 現在、哀が帰ってしまって工藤邸には四人だけ。 そのうち快斗と新一しか今はリビングにいない。 「そういえば、リオンとクラウドは?」 「クラウドは書斎のパソコンで何かやってたし、リオンはもう一つパソコン置いてた部屋あったろ?あそこにいるはずだぜ?」 「相変わらず、篭って情報収集?」 「そうなんじゃね?」 いつも、油断が許されない状態にいる。 できる限りの情報はほしいと、ハッキングや疑わしいものにはいろいろ仕掛けたりして、法に触れるような危ない事もやっているらしいが、手に負えないので新一も放っている。 奴等をどうにかしない限り、あの二人に平穏な日常はないのだから、頼まれたら手伝うつもりでもいる。 自分だって、いろいろあったときは助けがあったし、自分もまた、彼等が困るのなら助けになりたいと思うのだ。 「そういや、最近竜の奴も見ないよな?」 「そうだな。なんか仕事じゃねーの?」 一応言っておきますが、二人に学業兼それぞれ探偵や怪盗なんという付属が着きますが、竜達もまた、それなりに仕事と言う物をやっているのです。 「なんだか、竜や蓮さんって、いつも何もやってなさそうなんだが・・・。紅目の場合は、ふらふらしてるような奴だから今更だけど。」 「俺も、あいつらのことはよくわかんねーからなぁ。」 そして何より、自分を好きだというこの怪盗もまた、新一には意味がわからない奴の一人でもあった。 「・・・そろそろ、夕食の買出しにでも行くか。」 「そういや、そろそろ行かねーとっ。やばい、タイムサービス品が売り切れるっ!」 「・・・お前はどこぞの主夫か?」 「あ、いいかも。新一限定で。じゃさ、新一もらってよ。」 「セールスは丁重にお断りさせていただきます。」 「ひどっ。セールスって、快斗君はそんな大安売り品じゃないよ?でも、新一限定でとってもお買い得なだけだもん。」 しばらくいろいろ言い合ったが、時間の無駄でもあり、行くぞと新一が言えば、はーいと元気よくついてくる。 やっぱり、こいつは主に忠実な大型の犬だ。 躾の必要はない賢い犬だろう。放っておいても問題はなさそうだ。 なので、野放し状態なのだが・・・。 たまに、不安に思う事もある。 やっぱりそれは、無意識に快斗が内に秘める独占欲に気付いているからかもしれない。 だって、ご主人様にかまってもらえなければすねるし、かまった貰う為に仕掛けてくる賢い犬である。 今のところはまだ一方通行なので、快斗が暴走するなんてことはないが・・・。 のちに思いをしっかりと自覚した時に、新一はしっかりと経験することだろう。 だが、今はこれは置いておいて・・・。 「そうそう。今晩は何にする?」 「そうだなぁ。何がいいかなぁ。」 そんな平和な二人の会話が交わされる最中、すでに事件は起こり、それに知らず知らずのうちに足を踏み入れているのであった。
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