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街に出て歩けば、いくつもの警戒しながらもこちらを伺う様子の視線を感じる。はっきりいって、この場所では冥鎌のような格好をしていれば格好の標的なのだろう。だが、警戒しているのは、女帝立花の根城から出てきたことだろう。 女帝に歯向かえば明日はない。それを理解しているからだろう。冥鎌が女帝の客ならば、手を出すということは反逆者として反対に追われることになる。 今更だが、もう少し地味な服装にしておくべきだったなと思う。 こんな場所では、この格好ははっきりいって目立ちすぎるし、お金を持っていると言って歩いているようなものだ。 まぁ、そこらの者達に負ける冥鎌ではないのでいいが、問題が起きると面倒だからそれは避けたい。 「さて…凛々を預かってもらったのだから、その間に仕事を進めないといけないな。」 はっきり言って、人脈や情報操作においては賢示や立花は適任だろうが、今回の探し物である門の鍵のような不確かな存在に対しては冥鎌の方が感覚的な捜査においては上だ。 一応、この街の中にあるか気配を探っておく方がいい。何せ、これだけ空気が汚れている状態では、紅と蒼では力を発揮しきれないだろうから。 まぁ、力の解放さえすれば別だろうが、こんなところでそんなことをされてはさらに面倒なことになる。きっとわかっているからこそ、天も凛々を引き取ってくれたのだろう。 適当な建物の上に飛び、人目がないのを確認して探す対象のイメージを作り、目を閉じて手のひらを地面にそっとつけた。 この街ではありえない、陣が描き出され、澄んだ風が冥鎌の足場からふわりと吹きあげ、一瞬で街全体に風が吹き廻る。もちろん、強いものではないので誰もその風に気付かない。すぐに街の汚れた空気が戻る。 探索の間で、ある場所でかすかに感じたそれに、はっと目を開ける。 立って感じた方角を睨むように見ると、意識をすれば確かにかすかではあるが気配はそこにあった。 だが、あそこはいろいろと厄介だなと思う。 「さすがに凛々は連れて行けないな。」 人が人を買う場所。人を道具として扱う場所。かつて天の道具として扱われていた凛々が嫌う場所だ。 「どうしたものか…。」 とりあえず今のうちにどこにあるのか、もしくは誰が持っているのか確認しておく必要があるかと、建物から飛び降りた。その姿を誰もみていないのはもちろん確認済みだ。 「連絡だけいれておくか…。」 懐から紙を取り出し、それに気配を感じたこととその場所。そして、今から明確な特定の為に一度見に行くということを書き、振り上げる。そうすると、紙は水気もないのに濡れて流れる滝のように流れ、跡形もなく消えた。 彼等がいるであろう部屋に、賢示が可愛がっている熱帯魚の水槽がある。水気があれば、これで水を通して届くので、ここではこれを使っている。 はっきりいって、携帯で相手が出るのを待つよりはやい。 「さて、行くか。」 いつの間にかこちらを伺いながらつけてくる連中をどうにかしてからになるだろうが、さっさとしないと凛々がごね出したら迷惑をかけてしまう。それだけは避けなければいけない。 見た目子どもで中身も子どもだが、凛々は雷の力を宿した剣なのだ。泣き叫んだら、電気を発して周囲にその電気が飛び交い、簡単に破壊してしまう。 凛々のことは嫌いではないが、それだけは本当に勘弁してほしい。後始末が大変なのだ。 はぁと肩を落とす。その時だった。 とうとう向こうから冥鎌を囲うように物騒な連中が姿を見せた。 「何か、用ですか。」 一応下手に出て言えば、相手は下品な笑みを浮かべて、大人しくしていたら怪我はしないぜ兄ちゃんと、悪役のお決まりのような文句を言ってきた。 「急いでますので、失礼します。」 横を通り抜けて立ち去ろうとしたが、男が腕を掴んでとめた。やはり、通してくれる気はないようだ。本当に面倒くさい。 「おいおい、それはないだろ?なぁ?」 反対の手で顎をつかんで品定めをするように見る男に、手を振り払って少し距離をとる。気分が悪い。とことん歪みきった奴のようだ。 確かにこの場所ではこういったことは日常茶飯事なのだろうが、冥鎌にとっては虫唾が走る、品のない最低な行為だ。人を人とみない、これから向かう場所にもたくさんいるであろう嫌いな人種だ。 始末するのはまずいだろうから、適当に倒してここで会った記憶を奪っておけばいい、そう思っていた。だが、そうはいかなくなった。 ふと、リーダー格であろう大柄の男から魔の気配をかすかに感じたのだ。もしかしたら、この男は魔の元との接触があったのかもしれない。そもそも、これから向かう場所もこういう男がいるような場所だ。この男こそ、鍵を持っている奴なのかもしれない。 そう考え付いた時、少しの隙ができていたのだろう。腕を掴まれ、振りほどこうとした時、後ろから衝撃を受けた。手套、だろう。なんとか意識を持ちなおそうと思ったが、少し遅かった。 ガクンと膝をつき、その場に倒れた。 「ったく、手間とらせやがって。おい、つれてけ。」 男の指示で部下の一人が冥鎌を担ぎあげる。 最悪だ。意識が堕ちかけた際に、この男の持つ魔にあてられて、動けそうにない。こういう時、魔と逆に位置する聖の力を強く持つ自分は面倒だ。 凛々が殴りこみにこなければいいのだが。そこで、冥鎌の意識は途切れた。 「それにしても、なかなかの上玉だ。高く売れる。」 「そうですね。」 そこから撤収しだす男達。冥鎌の服の装飾が一つ、そこに落ちたことに気付くものは誰もいなかった。 |