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大方、こっちにまで用意周到なのか、寄ってきた敵を倒しつくした三人は一息つく。 「まったく、なんでこう、毎回うじゃうじゃ出るんだろうね。数でせめても無駄だってこと、向こうもわかってるはずなのにさ。」 「そだね〜。時間稼ぎなのかもね。俺達嫌われてる〜。」 きゃーと騒ぐ田所を無視して、ゆうは世鷲の方に近づいた。 「どう?」 「半分当たり、半分はずれってところか。」 そう言って、そこに貼られていた札を剥がす。すると、今まで見えなかったものが露わになった。 「こんなとこに家作ってこそこそしてさ。」 「捨てられた後みたいですけど…これではっきりしたな。」 「本当やだよね。」 残っている気配から、どうしてあれだけの結界で隠れられていたのかを悟る。 黒幕とは別に、自分達が良く知る『敵』がここにいたのだ。そして、今までの背後にいたそれが、手を貸してきた為にこんなにも繋がっていたのだ。 「それで、あの死体、ってわけか。」 魔人が関わっているのなら、だ。いくら天才であっても、人の世で理解できる範囲を超えるものはできなかっただろう。 間違いなく、『魔術』に引っかかる何かを、あの男に教えたに違いない。 あいつならできてもおかしくないが、何も知らない人間が簡単にできるものではないと思っていただけに、やはりといった結果に反対に呆れる。しかも、逃がしたのだから尚の事。何故もっと早く気付けなかったのか。 「普段やる気ないくせに、なんで今回はでてきたんだろ?」 「さぁ?彼でなければわからないからな。」 「確かに、彼って積極的に何かするタイプじゃないもんねぇ。」 ならば、答えは一つだ。『彼』に指示を出した何者かが今回関わっている。その何者かが自分達の知っている魔人かそうでないのかまではわからないが、悪い方向に向かい出しているのかもしれない。 「でも…ま、これではっきりしたね。」 「そうだな。」 「ここを引き上げたってことは、今回の事件の黒幕は切り捨てられたってことだろうしね。」 「背後の大物を逃がしたのが痛いところだがな。」 後はすぐ片付く。ただ、本当の意味で押さえなければいけない存在は逃がしてしまった結果になったが、これ以上『これ』が繋がることはない。 その時、三人はぞわっと、強い魔の気配を感じ取った。 「これ…。」 「ああ。」 「すぐ消えたけど、皆がいる方、だよね?」 簡単にやられるわけはないと思っても、相手が相手なだけに三人はすぐに合流する為に走る。 「やっぱり、湊が関わってた。」 「もうひとつ、別の存在もあったな。」 「それが、湊が動いた原因だろうね。」 世鷲は本来の姿に戻り、乗れと目で指示すれば、ゆうと田所が背に飛び乗った。 確認して空高く舞い上がり、空を蹴って進む。すぐに見えてきたあるす達の姿に、ゆうと田所は世鷲の背から飛び降り、二人の後を追うようにそのまま世鷲も姿を戻し、三人とも何事もなく着地した。 「大丈夫―?」 「あ、はい。白灯様達は中へ入られました。ここも、あと少しで殲滅完了です。」 あるすの言葉を信用していないわけではないが、先程まであった気配から油断できず、三人とも周囲に気を向ける。 「やよいさん、感じた?」 「それが何か、と聞いたことが答えになるでしょうか?」 「そうだね。ここには仕掛けが何もない場所だし、二人は気配を探ることは苦手の部類だったし、二人が感じるほどのものだったら、まずいなと思っただけ。」 気にしないでと言えば、わかりましたと答えた。 「それで、何だっていうのよ。」 「ん?もしかして、真代もわかんなかったの?」 「あのね、あんた達三人がそういうことに関して異常に感知がすごいってこと、もう少し自覚してくんないかな?」 困ったようにいう真代に首をかしげるゆうに苦笑する世鷲。相変わらず能力の高さに自覚がないゆうに話すのも面倒になってはぁと肩を落とす真代。本当、服作り以外には熱意が低い。 そもそも、真代の感知能力はあくまでも突然で意に反して先や昔が見えるというものだ。それは普段の戦闘や状況判断に仕える情報になりえないことの方が多い。 「かすかに、それも一瞬だったからな。無事であることが問題ないという証拠だから気にするな。」 「そう言われてもここまで言われたら気になるじゃない。」 あるすも何がどうなっているのかわからず首をかしげている。 「あまり言いたくないけど、バックに黒幕以上の黒幕がいたってだけ。」 うまく意味が呑み込めない三人に、田所がずばっと爆弾を落とした。わざわざ混乱を避けるためにどう説明するかと考えていた世鷲は、こういう時田所に殺意を覚える。 はっきり言って、逃げられた現状で、今知る必要のないことだ。終わらせてから言えばいいものを、ややこしくする。 「湊がさっきまでここにいて、今までのも関わってたみたい。」 困ったよねと軽く言う田所に、それをはやく言えっ!と怒鳴りつける真代。さすがに魔人の力を持った存在にあるすとやよいも一大事だと気を引き締めなおす。 今頃になって、事の重大さに気付いたようなものだ。知らない間に、大きくなっていたそれに、自然と中に入った彼等の安否も気になってくる。 「とりあえず、あるすとやよいでこの敷地内を囲う結界貼りなおしてくれる?」 一応、外への被害を防ぐために事前に用意はあるが、彼等からきり捨てられたと言っても魔人候補として力をつけた存在との戦いになるのだ。 この結界で外への被害を確実に無くせるかと言われれば、答えはノーだ。大きすぎる力のぶつかり合いによる爆発では、耐えられないかもしれない。 これでも、魔人だけでなく守り人の力の異常さは認識しているつもりだ。 「最悪の場合、二人を巻き込んだら意味がないからね。」 また、戦場のようなことになれば、多くの人の命が奪われる。それに巻き込まれる守り人の使い魔も過去にたくさんいた。 「一応、真代はサポートで残ってくれ。間違いなく、守り人を守ろうとすると司狼か白城が怪我するだろうからな。」 回避に手を貸すものを配置しておくのも大事だ。それに、真代の足を信用しているからこそだ。 本当なら、ここまでの事態になっている以上、『足』で逃げるよりも別の空間へ移動できる術が扱える白城の方がいいが、中にいるのなら普段一緒にいることの多い真代の方が反応しやすいだろう。 ここが機械仕掛けのない場所であるから、あるす達は動きづらいのがあとは問題か。 白城よりは劣るが、あるすの元には空間を移動できる使い魔がいる。彼女が応援としてきていたなら、また話は変わっていたのかもしれないが、今は時間がない。 いつ、溜まった歪みが外へ溢れだして暴走しないとも限らない。 「今から俺達は追いかけてくる。」 「最悪、ここ凍らせて一時的に機能を停止させるから、それも範疇にいれて逃げてね。」 なるべく気をつけるが、そういう細かい調整が苦手だとはっきり言うゆうが、真代にとっては敵より恐い。 味方に殺されかけるなんて、普通は誰も思わないだろうし、そんな宣言自体してほしくない。 「じゃ。とりあえず、何か聞きたいことがあったら、そこにいる北斗に聞いて。置いていくから。」 そう言って、二人はさっさと走っていき、残った、それも無駄に笑顔を振りまいている田所をちらりと見る真代。 できれば、知りたいけれど話しかけたくないのが心情だ。 けれど、何が起こっているのかを知らなくてはいけない。 「どこまでなら、話してくれるわけ?」 「そうだね…とりあえず、ここにいるしつこい連中を片付けた後でなら、皆が戻るまでそれなりに答えてあげられると思うよ?」 いつものへらへらした笑みではなく、それはまるで死神の死への誘いのような、怪しい笑みを浮かべ、鎌を構えた。 忘れそうになるが、あくまでこの男は完全な味方ではない。死神なのだ。 そう実感する時に、抱く恐れから、余計に真代はこの男が得体が知れなくて嫌いだった。 「さて、君達もいい加減にしてくれない?これ以上仕事を増やされたらさ、迷惑なんだよね。」 |