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対象を知っていたので、あっさりペンダントを二つ回収できた。もちろん、暗示をかけてペンダントの存在を忘れさせることも忘れていない。これで、自分達は学園内に生徒として入る必要はなくなった。一応他に影響がないか調べたが問題もなかった。だから、本当にここには用がなくなった。 たった一日で終わるのなら、最初から学生として居なくても良かったのではいかと思うが、あくまで今回は世鷲達がすでに大方のことを調査済みだったからに過ぎないので、あまり文句は言えない。 連絡で田所の方も回収が済んだらしい。これで、あとはエンドールのことをどうにかするだけ、だった。 だが、何だか雲行きが怪しい。5年前の時と同じように、胸騒ぎがするのだ。 「何も、起こらなければいいんだが…。」 この不安が消えることはない。今はただ、解決を信じて最後の仕上げにとりかかるだけ。 エンドールを捜し出して、魔人を封じて浄化し、何もなかったように処理をするだけ。それだけ、のはず。 「そんなとこ突っ立っちゃって何してるわけ?」 振り返れば、そこには声の通り、真代が立っていた。珍しくて、すっきりしたいつもの女ものではなく、男っぽい格好をしていた。仕事であっても、いつもあの格好であったのに、どういうことだと首をかしげる。 少しだけ、普段もその格好でいたらもてるだろうにと思った。 「占いで魔が出た。…そう言えば、状況を理解できる?」 真代の普段とは似ても似つかない男のような声音と、占いという二つの点で、はっとする。決してふざけていない。これから大きな渦に巻き込まれることになる。 5年前のことが比にならないぐらい、厄介なことにこれからなる。それを真代は告げているのだ。 彼の占いはほぼ100%で当たる。だが、その反面、常に占いで結果が見えるわけでもない。あくまで、彼の占いはお告げが下った時にのみ知らせとして発動するようなもの。 余程大きな異変か、何らかの前触れの警告のようなもので、彼の意思で視えるわけではないそれが、彼は好きではないらしいが。 「まだ、この学園から手を引くわけにはいかない。」 その言葉が何を意味するのか嫌でもわかった。 「昨日、話に出たあの家。持ち主はとうの昔に死んでいた。田所が記録を調べたから間違いないだろう。」 「それって…。」 「予定外死亡者が出だして数年後、らしい。つまり最初はまだあの家の主はいた。だが、いなくなった。」 だが、まだ予定外死亡者は出ていて、相変わらず死神による魂の回収がなされていない。 「白灯の奴が言うには、この学園の関係者の一人があの家に出入りしているらしい。」 初日に感じた僅かな違和感から、対象の人物に見張りをつけていたらしい。すぐに違和感であっても感じ取れる白灯に純粋にすごいと思ってしまう。自分は何も感じなかったのに、その辺が守り人と使い魔の違いなのかもしれないが。 白灯は魔女の一族らしく、魔術を扱うことができる。どんな魔術かは全部知っているわけではないが、きっと召喚術による、対象への監視者をつけていたのだろう。真代も魔術のことは詳しくないので、わざわざ司狼への説明はしなかった。 「昨日、あの家が情報としてあがり、さっきも調べたらしい。白城を連れて、な。」 結果、そいつは黒だった。しかも、エンドールもあの家にいるがすでに魂は肉体になかった。 「何、だよ、それ…じゃあ、そいつが?」 「だが、そいつもすでに正気ではないらしい。」 正気を失ったまま、きっと自分が何をしているのかわかっていないまま人の命を奪い続けている。 魔人に操られた人形として、壊れるまで続ける。 「もう、手遅れ…。」 「ああ。手遅れ、だ。」 その言葉の意味も長く続けていれば司狼にだって理解できる。だが、割り切りたくないのが本音だ。それでも、これが自分達の仕事なのだ。 「魔を流す作業は世鷲がするが、そこに至るまでに捕まえなきゃならない。」 今夜、この町で大きな争いが起きる。きっと、被害も出る。 それでも、明日にはこの争いが起こったことも、誰が『消えた』のかも気付かないまま日常を続けて行くのだろう。 「なんで、皆疑問に思わないんだろうな。」 「さぁな。何事もなく流されているだけなのが楽なんだろ。」 今日はもう今夜に備えて撤収だと、来た道を戻っていく真代の背中を見えなくなるまで眺めた後、空を見上げた。 |