田所さんの解りやすいかもしれない自己紹介1

 

「おっと、こんなところで珍しい人に会えたものだ。」

そういった黒い男に、あからさまに嫌な顔をする少女がいた。

「そんな顔しないでよ。さすがの俺も傷つくからさ〜。」

「ならば、そのふざけた顔と口調をどうにかしろ。目障りじゃ。」

ざっぱり斬られた。だが、それでもめげないのがこの男のいいところ。そして、他の連中からみれば鬱陶しいところ。

そんな男の名前は田所と言う。結構普通な感じだ。ちなみに、フルネームでは田所北斗。ほとんど田所だとか死神呼ばわりされるので、北斗という名前を知らない事が多い謎だらけの変人。

本日は、そんな変人が、守り人達のことを紹介してくれるらしい。

「という企画で、まず紹介するのが、エリア4を統括する守り人、白灯ちゃん。」

「ちゃんづけは余計じゃ。」

ふんっとそっぽ向く彼女に苦笑しながら、ふと、背後に感じた気配に笑みを浮かべる。

「いらっしゃい。」

「こんばんは。主がこちらにいるようだったので、お迎えに参りました。」

そう言って現れたのは、彼女の部下である鴉天狗の青年、白城。守り人にはそれぞれ仕事の上で必要ならば配下として『使い魔』という総称で本部に登録する。彼が白灯の使い魔だ。

彼女には他にも司狼という不運が多い元気な狼少年と、女装している猫又青年を使い魔として側においている。

「帰りますよ。」

「そうじゃな。」

こんなのの相手などしている暇などないわ、と言って、白城の肩に飛びつき、そのまま二人は飛んでいった。

「おやおや。」

せっかくもっと紹介するためにお話をしたかったのだけど、と残念そうに言いながら、彼もまたそこから移動をはじめた。

向かった先は、守り人の本部である、城。エリア0にして、ベルセル全ての統括をする女王がいる場所。

「現在の女王は三代目。ここだけの話、女王というのは名ばかりで、生贄という言葉の方が正しいんだよ。」

怖い話だよね。そう言った田所は、怖いとも感じさせないいつもと変わりないままで言った。

「で、女王陛下には、二人の付き人が現在ついている。」

双子のように対である有翼人。蒼い髪に白い翼の焔と結界の魔術を扱うセルバと紅い髪に黒い翼の水と治癒の魔術を扱うジルバという二人の青年。賑やかな行動派と静かな知性派の二人はいいコンビだ。

「でも、彼等にとってはある意味あの城は牢獄と同じ意味を持ってるだろうね。」

理由は簡単だ。彼等はあの場所を守る義務を持っているのと同時に、この世界の全てで起こった歪みに関する報告書を守り人達からだされた書類を確認し、歴史として遺して処理していくのもまた、仕事。

そして、女王はあくまでも生贄と同意であるのだから、あの城にいることに意味がある。だからこその『牢獄』だ。

「ちなみに、その『歴史』全てを記録して覚えていくのが俺の仕事ね。本業はあくまで死神で、魂を冥府へと運ぶのが仕事だけど。」

さて、次に死神のことと冥府のことについて説明をしないといけないね。

すっと、田所は城の上空から、仕事場でもある冥府の入口に飛んだ。

ふと顔をあげば、丁度仕事へ行くのであろう、同僚がそこにいた。丁度いいと、にやりと笑みを浮かべば、明らかに白灯と同じように嫌そうな顔をする。本当に、結構これでも傷つくんだから。そう思いながら、近づいて話しかけた。

「やぁ。」

声をかければ、一応答えてくれる。

「彼は天霞。同じ死神。元人間。正確には魔女もどき。」

「いきなり何だ。しかも誰にしゃべっている?」

「ほらほら、気にしな〜い。」

「…そうだな。相手にするだけ面倒だ。」

そう言って仕事だからとそのまま去っていく彼を見送り、苦笑する。

「彼は人…正確には魔女の一族だった母親が力がない為に追い出された後、何の因果か、強い力を持って生まれた魔女のなりそこないって奴だよ。」

一人きりで、愛されることない日々に何も感じず死んでもいいと思っていたところに、一人の人間と出会うことで変わった。けれど、その人間もまた、実は家系が魔女に連なっていて、力を持っていた。そして、かつて彼は実父を殺した。

けれど、その時表に現れた歪んだ人格と記憶は奥底へ封じ込められていたけれど、母親の再婚相手の連れ子が天霞のことを好きになって、けれど、天霞は己の救いであった彼を愛していたから、その歪みから義理の妹が兄を殺し、その現場に遭遇した彼は彼女を殺して使い魔のような存在として捕まえた。

「あ〜田所ダ。何?殺ルか?」

「殺らないよ〜それより仕事かい?」

「ン?そうダナ、仕事ダ!仕事大事!だから田所と殺ルの後ダ。」

じゃあなといきなり現れてどこかいった、壊れた少年。彼こそ、殺された『兄』だ。天霞の望みで何とか死神として生きている彼は、天霞の知る彼はまったく異なった存在になってしまった。それでも、天霞は彼の好きなようにさせることを選び今に至る。

ちなみに、彼はチェーンソーが武器である。あの音が好きらしいが、実際はそれで彼が殺されているので、その現実に天霞は複雑なようだ。

「でもま、これも、一つの愛の形なのかもね〜。」

かつて、自分もまた、歪んだ愛によって『殺された』人間だ。

「さて、こんな話はおいておいて、とりあえず冥府というか、冥界について話をするよ〜。」

世界には人が住む世界がある。そこを基準に天界や冥界、魔界や異界といった同じ場所に確かに存在する平行世界がある。そこにはそれぞれ王となる存在が統括している。つまり、冥界にも王がいてそれこそが死神の王。名はデストールといい、世界がはじまった最初の『存在』が最初に創った『仲間』だ。

つまり、彼等はこの世界を誰よりもよく知る生きた歴史書そのものだ。

「俺はあくまで、かつての戦いの後の人の世で、表に出ない歴史を正確に記す為の保険ってわけ。」

田所がその仕事をしなくても、結局死神の王である彼や天界に君臨する『神』だってその情報を含め最初から全てを見聞きしている。

「さて、神様の話しはまた今度にするとして…もう一人死神について紹介しておくよ。」

今はいない鈴本と言う口達者な奴。男のような黒フードのマントですっぽり素顔を隠しているが、中身は天界の住人、天使のような綺麗な金髪の綺麗な女だったりする。だが、中身は悪魔のような奴だ。

ちなみに、彼女もかつては魔女だった。けれど、魔女というのは十三の家名を持つ一族が正統な存在としてあり、それ以外は異端とされ、迫害をされていたので彼女は人はおろか、魔女そのものも嫌いだ。

「さて、そんな彼等が属する魔女について。」

今は知らない者も多いが、かつて魔女というのは、魔神とベルセルの戦いの際において、女王陛下を守る騎士のような存在だった。竜人族や獣人族や、様々な種族がそれぞれ城を守り、敵を倒す為の要の役割を持っていた。

だが、大きな争いがなくなったあと、大分減っていた種族はさらに激変し、戦う必要がなくなった魔女もまた引っ込んだ。

普通の人間にとって、そういった『力』というものは脅威の対象でしかないから。

「結果、魔女の中でも今では役割を忘れつつある感じだけど、それ以上に女王に使える幹部の家名十三だけが正統な魔女として残り、他は異端として排除される結果になった。」

だからこそ、そこから起こりえる歪みがこのような悲劇を呼び、命を落とした後も何かしらの未練から死神になるのかもしれない。

「まぁ、この世界そのものが歪んでいて、いつ壊れてもおかしくないものだから、今更な問題でもあるけどね。」

くすくすと笑いながら、田所は次の場所へと向かった。

「さて、ここはとある崖の上。いい眺めで、よく自殺者がくる。」

仕事が多くて個人的には面倒なところだと説明する田所を、背後からいきなり殴り飛ばす存在が現れた。

「うちのお気に入りの場所を汚すな、馬鹿。」

そう言って怒るのは、この辺り一帯、エリア10の守り人、雪女のゆう。かつて、最初の『戦争』において、最初の『生贄』として命を落とし、この世界にまた戻った風変わりな存在。

まぁ、彼女はアイツに会う為に戻ったのだろうけれど。

「ったく。あんまごちゃごちゃいうと、これ着せるから。」

そういって、どこからともなく出したのは、ふりふりのレースをふんだんに使ったドレス。明らかに女性物だ。だが、サイズが女性物らしくないところからして、誰かに着せる気満々とういうところか。

ちなみに、彼女の趣味はこういった裁縫だ。とくにレースを編むのも好きだ。よって、作ったものを着せたいが、対象がいない。そして、先程紹介した不運の狼少年が被害によくあう。他にもいるが、今は省略だ。

彼女にはぽぽという植物を操る少女を使い魔にしている。エリア6に氷の聖霊のレセリアという守り人がいるが、彼女は同じ植物を操るが、どちらかというと毒使いで、ぽぽの方は解毒だ。ちなみに、ゆうと逆にゴスロリといった服だけでなく和服も好きな彼女もまた、ゆうと同様人に着せる。というより、ゆうに着せようとするので、ゆうからはよく逃げられる。

「それで、どうしてこんなところにいるんだ?」

「ああ、守り人の紹介用に書類作ってるんだ。」

こうやって、画像も遺してねと、今までの分もまとめて見せるとそうかと興味を失くしたようだ。実際、今回っているのは、理由として正しい。

「もし、交代したり、新しい使い魔が増えた場合、すぐに誰が守り人か顔ぐらいわからないと、敵か味方かわからないと困るでしょ?」

「そうだな。」

いきなり挨拶に行って攻撃されたり、追い返されても面倒だしなというゆう。

そんな彼女はいつも一緒にかつて『人』だった頃に出会った竜が一緒にいる。

「今日は世鷲はいないの?」

「ああ。もうすぐ来るぞ。」

ほらと、指さした空に、こちらへ飛んでくる竜の姿があった。

彼は世鷲といって、人が住めない魔に染まった危険地帯、エリアXの守り人だ。

竜の姿をしている、古代種…魔女と同じ、かつて女王陛下と歪みと魔神と戦った兵士の種族の一つだ。今はほとんど残っていないレアな奴である。何せ、魔女以上に、竜は人の前に出ることを拒むからだ。

「田所もいたのか。」

そう言って、翼を閉じてすっと人の姿になった彼は、田所達の前に降り立った。いつみても、一瞬で不思議なものだ。

「あ、そうそう。これ、頼まれ物。」

そう言って、先程受け取ったエリアXに関する女王陛下からの依頼書を渡すと、礼を言って彼はそれを受け取った。

「やっぱり、ゆうのところにきたら君はいるね。」

そう言って笑いながらそこから飛んだ。即座に怒ったのだろう、世鷲が攻撃をするが、このやり取りはよくやるので慣れたものだ。問題は、だんだんと返しがはやくなり、二段目、三段目と攻撃の手数が増えてきたことか。

「じゃ、ばいばい。」

そう言って、田所は早々にそこから立ち去る。あとは彼等の大事な時間だ。お互い気持がむいていても、決してそれは俗に言う恋人同士にならないのは、ゆうがそういったことには興味もなければ鈍いからだろう。

それでも、ゆうが珍しく大事にしているのは確かだから、彼等はあれでいいのかもしれない。

「人それぞれ、って奴だよね。」

さて、そろそろ帰るかと田所が踵を返した時、呼びだしたきた。

「おやおや…これはまた大変そうだ。」

発生した歪みに関して、『女王陛下』から直々の依頼。

「仕方ないから一仕事しますか。」

のびをして、高い空から地上を一度眺め、気持ちを切り替えてその場からすっと彼は消えた。

今日もまた、人知れずに人が消えていく。そして、誰もそのことを知らずに生きていく。

彼らの存在にもまた、気付く事なく…。それが、守り人と世界を知る者達との違い。







あとがき
田所さんのふらふら放浪しながらのキャラ紹介編でした。
よくでる人たちや説明が必要そうなところの解説の為に書いたので、他にもいるキャラ紹介の為に、時間軸滅茶苦茶ながらも、自己紹介シリーズは続きます。
次は冥鎌とその関係者及び忍びや異界についての予定。