雨が降った。

それも、連日続いて、やむ気配はない。

その為か、ずいぶん長い間青い空を見ていない気がする。

「何をやってるんだ、あいつは。」

「どうやら、晴れないから、外を飛び回れず不満のようです。」

「ああ、そうか。」

毎回泥まみれ。中までびしょぬれにして、掃除する彼等の為に、もう少し考えてくれと言った。

少しだけ考えた彼女は、確かに毎日綺麗に掃除する彼等のことを考えると、汚してばかりの自分が悪いというのは理解したようだ。

「だが、あの顔はないだろう。」

「我慢をしいられて、今にも目の前の何かにかぶりつきそうになってますね。」

仕方ないなと冥鎌は一息つき、先に仕事を終わらせようと琴詠と共に部屋に戻った。

 

 

 

雨童と水竜の喧嘩

 

 

 

 

ガラリと開く扉。入ってくる己の使い魔、ぽぽに礼を言って、新しいお茶を受け取る。

「ちょっと、聞いてる?」

「半分な。」

「何それ。誠意が感じられないわっ!」

「だいたい、毎回同じようなことでわめきにくるのに、いい加減飽きた。」

ぐてっと机の上に伸びるゆう。

始まりは数時間前のこと。時々やってくる雨童の見た目少女、中身は何百年と生きてる化け物。

そんな彼女は同じ水を司り、雨に関わる水竜の同じく見た目少年、中身は同じく何百年と生きてるじじいと馬が合わないのか、よく喧嘩をする。

「だって、腹立たしいじゃない。あのじじいったら私の大事な傘を馬鹿にしたんですもの。」

「それで、売り言葉に買い言葉で、お前だってあのじーさんの大事なマフラーのことを言ったんだろ?」

「う、それは…。」

そう、彼等は人の姿になって、適当にそのあたりを出歩いている。その時であった人間から貰った、互いが大事にする傘とマフラー。あまりにも彼等に似合わないそれを、彼等はそれでも大事にして身に着けている。

毎回喧嘩しだすと、それが似合わないとか子どもの喧嘩をして、雨童はゆうの元へ、今頃あの水竜は世鷲の元へ行って愚痴っていることだろう。

「どっちも駆け出しのガキじゃないんだから、大人の対応にしろ。毎度のことながら、しょうもない喧嘩で迷惑だ。」

どうせ、荒れたお前らのせいで、どっかの地域が雨続きで、酷い時は作物に影響がでたり川が氾濫したり、ろうなことにならない。

「とにかく、喧嘩するのは悪いとは言わないが、そのせいで、被害被る連中がいることを忘れるな。喧嘩しても、雨を降らし続けて迷惑かけるな。」

「…ごめんなさい。」

やっと落ち着き、謝った雨童に、ため息一つ。

さっさと、雨を止めろと言うと、すぐに止める。これで、数日続いていただろう雨は止まる。だが、後始末が大変なことになりそうで面倒だとうなるゆうに、ぽぽはお茶菓子のお代わりをくれた。

「ま、今はとまったとこだし後にするか。」

そう言って、つまむお茶菓子。もう少ししたら世鷲と水竜がくるだろう。そうしたら、また喧嘩はするだろうが、二人は帰る。

その後仕事はあるが、数日聞かされてきた話からは解放される。

「本当、面倒な知り合いだけが増えるな。」

 

 

 

 

 

「止んだか。」

ふと、窓の外を見ると、雲の切れ目と光がさしていた。

「そうですね。」

仕事もちょうど一段落して、このまま雨が降っていたら凛凛が暴れそうなのでどうにかしようと思っていたが、その必要はなさそうだと、席を立つ冥鎌。

「この書類の後始末は任せていいか?」

「はい。郵送分は送って、残りはいつものように保管しておきます。」

「ああ。頼むな。」

そう言って部屋を出て、先程凛々がいたところへ行くと、まだそこに彼女はいた。

「雨がやんだから、もう飛び出ていたかと思った。」

「…凛々は賢いもん。びちょびちょの中に出ていったら、やっぱり床が汚れちゃうもん。」

雨でぬかるんだ土。跳ねた泥が汚してしまう可能性を考えられるようになったということだろう。

「今日は別に構わん。もうすぐしたら、雨の詫びを入れに客がくるだろうしな。」

そいつ等が喜んで掃除していってくれるだろうから。他の奴等も、退屈だったんだ。思いきり遊んでいいと言って誘ってこい。そういうと、少しだけまだ迷いながらも、少女は外へ飛び出していった。

「だから、後で中の掃除、全部責任もってやってもらうからな。」

「うわ、最悪。だんだん鬼みたいになってるわね。天使のくせに。」

「毎回同じようなことで迷惑かけてくるそっちが悪いと思うぞ。反省している意味がないだろ。」

振り向けば、そこにいたのは若い女と少し年上の男。

「ゆう、世鷲。すまないが、この後掃除したとき、こやつらがまた喧嘩して被害を広げないように見張っておいてくれ。」

掃除できるのは、間違いなく日が暮れてからだろうから、それまで自由にしててくれてもいいぞというが、面倒だからここにいるという彼等を客室へ案内した。

その日、久しぶりに外に人の声で賑わった。

汚れた廊下を明日皆でまた掃除しようと眠れば、皆驚くことになった。

「れんちゃん。お客さん?」

「ああ、もう帰ったがな。」

「そっか。」

二人でぼんやり外を眺める。雨降りの前までの日常がまた戻った。