◆商売人と怪しい取引





その日、商売繁盛で売り上げ好調で機嫌がいいロンの元へ、客が現れたことから事件は始まった。

「やぁ、相変わらず汚い格好だね。綺麗にしたら好みなのに勿体ない。」

「ん?ああ、ゆえるはんかいな。」

ゆえるは自他共に認める、(変わり者の)綺麗好き。しかも、自分の好みなら何でもいいというもので、男連中からは嫌われている男?である。

というのも、実際のところ性別は 不明で年齢も不明。毎回違う姿形をしていて、彼の正体が何者なのか知っている者がいないからなのだが、男の姿で迫られても男は喜びはしないので、その辺わざとなのか、つれないと言いながらも気にしてないようなのでそれはそれでいいのかもしれない。

そんな中、普段はこんな胡散臭い、それもぼさぼさの頭で顔が隠れている男だが、整えたらそこそこ綺麗な顔をしているのに勿体ない男、ロンはゆえるの好意も基本的にスルーする、ある意味天然気味もしくは確信犯であまり被害にあってない珍しい男だったりする。

なので、ゆえるとそれなりにまともに付き合える数少ない友人だった。一方通行な片思いではあるが。

「何か面白いものはあるかい?」

「ん?そうだねぇ…ファンラ君、何かあったカネ?」

「おやおや、ゆえる殿じゃないっすか。お久しぶりっすね。」

いやはや、今日で振られるのは何度目ですかと、上司が口説かれているのにも気にしない女性、大きな丸眼鏡をして女性がこちらへやってきた。

「そうだね、何回目だろう。ま、何度でも誘うし、諦めないからいいけどね。」

「そうっすか。大変っすね。ま、頑張って下さいっすよ。それで、どういったものをお求めで?」

「何かね、面白そうなもの、らしいよ。何かあったかい、ファンラ君。」

「そうっすね…むしろゆえる殿だったら、冥鎌殿の羽根とか白灯殿の髪とか言いそうですが、あっちはガード硬くて無理なんすよね。」

「そうなんだ。残念だね。」

「オイラとしても、冥鎌君の天使の羽根は価値あるから欲しいんだけどね。」

ねだってもくれないと笑いながら言うロンは、どう見ても怪しい人にしかみえない。

「あ、世鷲殿の鱗ならあるっすよ。」

この前の戦闘で負傷した際にはがれたらしいのですが、龍の鱗は丈夫だし、物によっては色で装飾を作ることもできて、入荷が難しい分値打ちはあるものだと説明するファンラに 、それを加工してもらえるかと聞いてきたのですぐさまOKを出した。

「どうするつもりなノ?」

「ゆうに贈る。何だかんだと言ってあの二人は仲がよいしね。それに、そろそろゆうの誕生日だろう。」

これ以上の贈り物は他に思いつきそうもないし丁度いいと言う男に、にこにこ客対応するファンラ。はっきり言って、危ない連中の集まりだが、それを突っ込む人物は誰一人いな かった。

その後、いくつか買い物をした後、帰って行ったゆえる。

見送ったあと、店の奥に向かってもう大丈夫だと言うファンラに首を傾げるロン。

「助かった。だが、さっきのあれはどういうことだ?」

平常を装っているようで、結構動揺している冥鎌。

「ん?あれ、いたんだ。」

ゆえるが会いたがってたよと悪気なく言うロンに、気が抜けそうになる。

「とりあえず、匿ってあげた代金もらってもいいっすか?」

「…。」

「何かあったワケ?」

「何と、交渉成立して、やっと手に入るわけっすよ。」

そのきらきらした彼女を見て、ピンときたロンも喜びだす。

「本当?いつも断ってたのに、どういう風の吹きまわしだい?」

「それだけ、ゆえる殿に会いたくなかったんでしょ?」

今日は依頼されていた品を取りに来ただけだったのに、会うとは思っていなかったみたいだしというファンラの答えにいまいちよくわかっていないロンだったが、とりあえず商品 が手に入るのなら問題ないと言わんばかりにうかれていた。

冥鎌としては本当に不本意ではあるが、約束なので仕方ない。

「ただし、あの男には売るなよ。」

「わかってるって。依頼の薬作りにいるだけだから。」

天使の羽根の代用はもちろんあるが、効果が薄れるし、品質もよくない。それに、彼ほどの上位天使の羽根なら申し分ない。

「わかった…。」

冥鎌は諦め、とりあえず一対だけ翼を出し、何枚か抜き取った。

「5枚あればいいか。」

「はいっす。これだけあれば薬作れるっすよ。しかも、いくつか予備も作れるっす。」

感謝っすよと言ってフェンラは店の奥に入っていった。きっと、さっそくそれを使って薬の調合をするのだろう。

「それにしても、そんなに彼のこと、嫌いかい?」

「…。」

「オイラは付き合い方次第だと思うけど、どうなんだい?」

「悪い奴ではないだろう。だが、生理的に受け付けない。」

「くくく、それはあるかもね。うん、それなら仕方ない。ま、しつこさが売りだから、ガンバッテネ。」

嫌な応援だ。

「とにかく、これの件には礼を言っておく。」

「いえいえ、仕事ですから。凛々ちゃんにもよろしくネ。」

冥鎌が帰った後、よこっと奥からファンラが顔を出した。

「帰ったっすか?」

「うん。帰っちゃったよ。はやく渡したいんでしょ。あれないと、凛々ちゃんは不安定になりやすいみたいだし。」

依頼は簡単。ある装飾を修理してほしいということ。滅多にない冥鎌からの依頼に何事かと思えば、凛々の大事なものらしい。

確かに、新しいものを用意することは簡単だが、大事なこれを元に戻すことは難しい。

「ま、ちょっとでも懐いてくれるとうれしいんだけどねぇ?」

「そうっすね。天使の羽根に含まれる精気はいろんな薬品の材料としては高価で手に入りにくいっすからね。」

そろそろ店じまいだねと、片付け出す二人。 冥鎌はまだ気付いていない。ゆえる以上に性質の悪いファンラという女に目をつけられていることに。

この日を境に、何回かに一回は羽を分けてもらえるようになったが、冥鎌との約束を守っているのかそれとも他にあるのか、ゆえるだけはいまだに知らないままだったりする。







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ゆえるのことを本当の意味で知っているからこそ、関わりたくない冥錬。
悪い奴ではないし商売に害がないので気にしないロンと、ロンについていくだけのファンラ