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ボクはこの世界で確かに死んだ。生まれることなく、死んだ。そんなボクは外の世界を見たいと望んだ。 そんなボクに声をかけてきたのがあの青年だ。あの声に間違いない。 そうすると、順番に思い出される経緯。 ボクは彼がボクの願いを聞いて、連れて行かれた。そこであったのが『死神』だった。 その死神のおかげで、ボクはこの世界で望みを叶えるために世界を見る時間をもらった。 けど、ここに降り立つ前に何かにぶつかった衝撃でボクは気付いたらあったことを忘れてしまった。 「あの、貴方、ですよね。今のボクがあるのは、貴方のおかげ…。」 「そうかもしれないし、違うかもしれない。君はどう思うの?」 「どっちだとしても、今のボクがあるのは事実だから、お礼を言っておきます。」 たとえあなたが何者であって、ボクをこの世界に戻してくれたことがただの気まぐれだとしても。 「それで、どうするつもり?」 「きっと、もう長くない。もっと世界を見たいという気持ちもあります。だけど、それはきっと無理な話。だから、もう一度ボクはこの世界に生まれたいと思います。ボクは思った通り、この世界が好きみたいだから。」 だから、このまま消えても、本来見ることができなかった世界の景色を胸に、戻れる日を夢みて眠るつもりだと言った。その時、ボクは感じた。もう夢は終わりだということを。 「ありがとう、さようなら…またこの世界で会うことができたら…その時は…。」 ボクの意識が消えていく。 消えた後、残った男が空を見上げる。 「嬉しい…けど、ちょっと悪いことした気がするな。」 「なら初めからしなければいい。」 「だって、時々思ってしまうんだ、デルトール。本当にあの時の選択は正しかったのかって。」 「お前はただ、いくら人が繰り返し過ちを繰り返すとしても、すべてがそうではないと信じていたから、全てを消す魔神との意見の対立の結果、戦う羽目になった。そうだろ、ベルセル。」 「そう、だけど。本当にこの世界が美しいのか。人にとって良かったのかわからない。だから、生まれたがっていた彼に時間をあげて、この世界をどう思うか聞いてみようと思った。僕や君達や、この世界の『真理』に関わる者達以外で、本当にこの世界をどう思っているのか、と。」 その結果、彼は何もしてないけど、ただ世界を歩いてみただけだけど、もう一度この世界にまれたいと言った。 それが、この世界があってもよかったと言ってもらえた気がして、気持ちが楽になったのは事実。 「デルトールも、この世界が好きか?」 「好きではないが嫌いでもない。冥界は面白みに欠けるが、人の感情は時々面白いと思う。」 「そっか。嫌いじゃないのなら、いい。」 ありがとうと礼を言い、男は消えた。 「いきなり死人連れてきて何かと思ったが…まったく、悩むなら私たちのことも無視して、壊してしまえば良かったんだ。」 そうしたら、彼が苦しむこともない。結局、私たちは彼につくられた命。彼が望むのならそれでいいと結果的に思ってしまうから。 「その優しさのおかげで今世界があるが、果たして本当にこの世界は美しいのだろうか?」 壊れかけの歪んだ世界。魔神のように壊しても問題ないような世界。 それでも、その世界の上で私たちは生きている。それが事実であり、だからこそ、彼は壊せないのだろう。 この世界ではなく、この世界に生きる私たちのことが大事だから。 <TruthStoryEnd> 物語の始まりを知るEnd |