見守っていたら、いつの間にか巻き込まれ、『はじめて』誰かと一緒に触れ合い、言葉を交わし、もみくちゃにされ、喧嘩のようなことをして笑った。

「あーつかれたー。もう、レセリア酷いよぅ。」

ぐってりと床の上でうなだれながら転がる男。座ってはいるものの、肩で息をしている女。楽しそうに二人を見て笑う女。そして、からっぽだったボク。

記憶がないだけでなく、ボク自身が最初からからっぽだったんだということを思い出した。

「ねぇ。」

「ん?な〜に〜?」

話しかけるとこっちを向いた男。ボクは答えに気づいている。間違いでなければ、この男がここにきたのはボクのせい。

「貴方は、ボクのこと、知ってるんだよね?」

「どうして〜?」

「ボク、記憶がないんじゃなくて、最初からないんだよね?」

「うーん。」

核心をついた言葉。さすがに男は起き上がって、少しだけ考えてそうだと答えた。

「どういうことですの?」

「まぁ、本人が理解したのなら別にいいか…そいつは死人だ。今この世において、生きて存在していないはずのモノだ。」

「そんなこと…本当ですの?」

こんなにもはっきりしていて、触れることができるのに。それでも存在しないなんてとボクの手をつかんで考える女。

「やっぱり…ボク…。」

「あーもう。確かに君は死んではいるけど、思い出したならどうしているかぐらいわかってるでしょ?」

だから、俺が手を出すことはない。それだけ。終わり!そういう男に礼を言った。

「はじめてのこと。楽しかった。いっと、『生まれること』ができたら当たり前だろう日常をくれてありがとう。」

父が、母が、過ごしていた日常。この世界のこと。

おなかの中でたくさん聞いた。けれど、世界を見ることが出来ず、ボクはこの世界から消える。それが心残りだった。

「ねぇ。きっと長い時間こっちにはいられないんでしょ?」

「まぁ、そうだね。」

「じゃあさ、最後に空がみたい。違うな、高いところから遠くまで見たい。」

とても広いこの世界を。ほんの一部分でもいいから、見たい。その願いを男はわかったといって、ボクを担ぎ上げた。

「特別に見送りをつけてやるよ。」

「そうね。私もつけてあげますわ。感謝なさい。」

そう言って二人がボクのために見送りだと言って用意したのは、たくさんの雪の花と雪の動物。

高い空から見下ろした広い大地。広い空。舞い落ちる雪の花。大地をかける獣や鳥。

ボクはもう一度礼を言い、そのまま眠る。この世界の光景を思い浮かべたまま、眠る

今度は、ちゃんと母にも会いたいと望みながら。

 

TrueEnd-2

 

思い出を胸に眠るEnd