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けれえど、ぽかんと動きを止めた二人がそこにいて、後ろにいた女が突如笑い出した。 「ククク、本当におかしなやつだ。なぁ、田所?」 「そうだよね〜ま、だから、僕もしばらく様子見のつもり〜。」 「そうか。」 そういう二人のやり取りに、まったくわらからないボク。けれど、それはボクだけじゃないようだった。 「ちょっと、何なのですの?二人だけで、私のこと、放ったらかしで話を進めるなんてひどいですわ!」 そのまま、賑やかな時間が過ぎていく。 「あら、大変。」 もうこんな時間だと言って、女は立ち上がり、死神だという男に指を突き指してあんたもさっさと帰れと言って、帰って行った。 「賑やかな人だね。」 「そうだな。それもレセリアのいいところだ。」 それで、やっぱり仕事でここにきたのかと女は男に問いかけた。 「まぁ、半分はそうかな。」 そういった男がボクの方を見た。 「このあたりを自由に歩けるのなら猶予があるのかと思ったが、お前が出てくるのなら、違ったのか?」 「あー…話をすると面倒だけど、猶予があるのは事実。彼がこの世界に満足したら終わり。もしくは、一定期間が過ぎたら終わり。」 二人の会話がまったくわからず首をかしげていると、男がボクに問いかけた。 「忘れるのは勝手だけど、満足なら、もう回収させてもらおうと思うが、一応聞くがどうしたい?」 男の問いかけの意味はボクにはわからない。女性の方を見ても、自由にしたらいいというだけで、わからないことに変わりない。 「ボクはボクがわからないのに。だから、どうしたいのかもわからない…けど、ボクが、今の『ボク』が選んでいいのなら…。」 遠慮気味に相手を伺いながら言うと、そうかといって、男は立ち上がった。 「ゆうが許すならここにいたらいいし、時が来るまで『俺たち』が手を出さない様に他の奴等に言っておく。…好きにしたらいい。好きに『世界』をみればいい。」 男が帰った後、ゆうと改めて名乗った女から聞いた。 ボクは本来この世界に存在しないものなのだという。ボクみたいなのを回収する仕事をするのが死神である彼なのだということを教えてもらった。 その時やっと、ボクは生きている『人間』じゃないのだとわかった。そして、どうしてここにいるのか思い出した。 最初から記憶がないのは当たり前だ。ボクはこの世界を知らなかったのだから。 けれど、それでもいい。ボクは『母』が語り聞かせてくれた世界を見てみたかった。母の死で、母の中にまだいたボクは母と共に死ぬはずだった。そんなボクの前に現れたのが『死神』で、ボクの望みを聞いてくれたのも『死神』だった。 きっと、長い間ここにはいられない。けれど、貰った時間を、母が教えてくれた世界の記憶を大事に、ボクはボクとしていられたら、きっと―― <TrueEnd-1> |