常日頃から、やる気のない男、湊。彼は今日もやる気はまったくなく、とある山奥の木の上で昼寝をしていた。

「ん…ヴァル、か?」

「寝ていても、気配には敏いですね、相変わらず。」

そう言って、姿を見せた少年に、だるそうに湊は身体を起こしてそっちを見た。

「当たり前だろ。元々は俺と君は敵同士なわけよ?」

この気配に対しては、一種の職業病だから自分のせいではないと言い張る湊に、笑みを浮かべるだけの少年。

「でも、僕としては驚きでしたけど。だって、あの…。」

「だー、それはなし。」

「おやおや。」

「だいたい、もう俺はただの魔人だぜ?その肩書も名前も捨てたわけ。わかった?」

「そうですね。」

もし、まだその肩書のままでいるのなら、今すぐ首をはねているところですと、物騒な答えを返す少年に、そう言われていても面倒臭そうにするだけの湊。

「でも、少しぐらい未練があるんじゃないんですか?」

「なんだ?魔神にでも言われたか?俺が裏切り者になるか否かとか。」

疑われているのかと、聞けば、少年は笑って違うと答えた。

「裏切る気がなくても、過去とか記憶って面倒なことってあるでしょ?だから、聞いておきたかっただけ。」

何をとはわざわざ聞く気はないが、かつてあの場所にいた自分が関わった人物とのこの先での関わりについて、だろう。

「戦えないのなら、それでもいい。そうなった時は素直に退いてくれればいいと思ってるから。問題なのは、手助けすること、ね。」

「安心しろ。こちらの都合で手助けした方がいいと判断しない限り、手を出す気はない。」

「あー、成程。確かに、こっちに不利益になることなら、こっちが手を出さなくても向こうで解決してくれたら楽だもんね。」

それもそうだと少年は楽しそうに言う。その笑顔が、湊ははっきり言って嫌いだった。何せ、まったく笑っていないくせに、笑っている顔を見せるからだ。

「ま、いいや。湊が湊のやり方でこの先も協力者なら、ね。」

少年は背を向けて、そこから消えた。

来る時も突然なら、去るのも本当に突然だ。まるで監視しているかのように、タイミングよく現れるあの少年が薄気味悪くて仕方ない。

「ま、結局あいつは…俺なんかよりもずっと人形に近い存在なんだろうがな。」

近くに何かの気配はまったくない。もう一眠りしようと、湊は木を背にして身を任せた。

どうせ、また忙しくなるだろうから、それまではゆっくりしていようと。