その日、馬鹿な奴が問題児を怒らせた。

ピシッとヒビが入るような音が聞こえた気がした。そして、あーあと、どこか他人事のように思いながら、すぐにつくだろう決着を見守ることにした。

本日の馬鹿は多少困った悪さする小物だったが、そいつが悪足掻きをし、言った言葉が問題だった。

そもそも、本物の『魔女』の前で、『箒』好きな奴の前で、箒を持ち出して証明がうんたらかんたらとわめいた。

『俺は魔女の一族の者でバックにいるのは一族関係者で幹部だ。これがその箒で、俺に何かあったら、魔女一族を敵に回すことになるぞ。』

と、馬鹿は言ったのだ。

「へぇ…私の前で、箒を振りかざし、魔女の一族を語るのね。」

とりあえず、今日は主が別のところの仕事で動いているのでいなくて良かったと思う。

「なら、当然知ってるわよね?確かに私は魔女の一族を抜け、幹部当主の座を捨てはしたけど、貴方のバックが幹部クラスなら、私のことも知っているはずよね。当主候補だもの。」

そう、本物の『魔女』が冷たい顔を向けた。その瞬間、相手は失言を理解したのだろう。

「残念だが、『俺』も命の保証をすでにしてやれない。」

そう告げて、ヒュオルはそいつから目をそらした。

絶望に染まる顔。

「本物の魔女の前で偽りの魔女を語るなんて、いい度胸ね。」

「お前の場合は魔女より箒が問題なんだろーが。」

「そうね。そう。私が命を懸けるのはお嬢様を守る事。それと、箒収集。…私への冒涜行為、敵とみなし排除するわ。」

むやみに語ってはいけない。魔女と言うことも忍びということも。それが意味することを知らないのなら、覚悟がないのなら、名乗るのは始まりの者達に失礼と言うものだ。

優しい世界じゃないのに、優しい世界にいるくせに、本当に愚かだ。

また一つ消える命。戸惑いなんてない。

語る偽物を野放しにはできない。それがいつしか弊害になるのだから。

「帰ろうか。後始末も終わったし。」

「というより、強制執行しただけじゃないか。」

「そうね。だって、許せないもの。」

「どっちがだ?」

「どっちもよ。魔女なんて、名乗るものじゃないわ。あれはこの世にもういらないものなんだから。」

だから、生半可な気持ちで名乗る偽物には相応の罰を。

「どうせ、君も私と同じで、『女王の剣』のことしらない牙を抜かれたまがい物だしね。」

だから、納得のいかないあの世界が嫌いで抜けた。その後自由にして文句を言われる筋合いはない。

「ま、俺にはどうでもいいけどな。忍びであることを捨てた見だしな。」

何者なのか知られなければそれでいい。今は過去なんていらない。過去のあった自分はあの日死んだのだから。





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「み〜っけ!」

という声と共に飛び込んできた影。

「メイカ様。」

「やっ、ひおちゃん。」

「…」

「もう、相変わらずだなぁ…だからモテないんだよ。」

眉間にしわもよせて、ふけるのはやくなるわよと言ってくる。はっきりいって大きなお世話だ。

「さ、とりあえず行くよ。」

「どこへですか?」

「散歩。だから目的なし。」

はぁとため息をつきながら、いつもの外出に今日も付き合ってしまうのだろう。そういう意味ではこの屋敷の主である旦那様は寛大なお方だ。娘が町に出歩くのをよしとして、むしろ一般人と同じように騒いでも何も言わないし、むしろよくやったと褒めるだろう。

まぁ、貴族であるからという差別社会でないのはいいのだろうが、時々狙われることもあるので、安全の保障が常にあるわけではないから少しぐらいは遠慮してほしいものだ。

「ほら〜はやく〜。」

「わかってますよ。今行きます。」

今日も、誰も知らない裏の権力者がただの娘として町を駆け巡る。

その後に巻き込まれる事件に、また大変な思いをすることになる彼の苦労は続く。