冥界の日常3

 

どうしたものか。

「あの〜。」

話しかけても返事はない。それどころか、周囲の破壊される音や壊れる建物の瓦礫が飛んできて危険すぎる。

はぁと肩を落とし、もう少しだけ彼等を見守ることにした。

だが、さすがにこちらへ瓦礫が飛んできて命の危険を感じたので、止めに入る。

「悪いけど、いい加減止まれ。」

動きが見える冥鎌にとって、彼等の動きを止める為に拘束することは、一瞬でも隙があれば簡単だ。

「あ、レンちゃん。」

「ゲヒヒ、すごいネ。一回、ボクちゃんと殺リ合オウヨ。」

そんな二人の反応に、はぁとため息をつき、拘束を解いた。

「迷惑をかけたようだな。」

「保護者なら責任持って首輪でもつけていたらどうだ。」

「俺にそんな趣味はない。」

言葉が終わる前に、仕掛けられる数本のナイフ。だが、それをあっさりとるチェシル。相変わらずなようだが、事情を知っている冥鎌としてはいい加減どっちかにしてほしいものだ。

「それで、今日は何の用だ?」

「書庫であるものを調べる為、だな。確証がないことで話をややこしくしたくないので、何か、は言うつもりないが…。」

死神様の許可はもらっていると書類を見せたら、案内すると天霞が言った。まぁ、ここは簡単な造りなようで、様々な術による仕掛けで複雑になっている。

だから、案内があるにこしたことはない。

「凛々、行くぞ。」

「はーい。」

ぴょんっと飛んできて、冥鎌の背中にへばりついた。だが、それをどうこうしない。もう、慣れだ。それを見ていたチェシルが面白いことを思いついたと言わんばかりににやっと口元を歪め、それを見た瞬間天霞はナイフを投げつけた。そして…冥鎌がチェシルと天霞の攻撃を止めた。

「悪いが遊びを続けるなら、勝手に行かせてもらう。だが、道を壊されては困るから、先に行かせてもらえないか?」

冥鎌の言葉に、冷静になった天霞が一息つき、こっちだと言って踵を返した。チェシルは面白くなさそうにしていたが、とりあえず一緒についてくることにしたらしい。

さて、この惨状を誰が片付けるのか。それは彼らのしったところではない。

それにしても、移動だけで、どうしてこうすぐにやりあえるのか。むしろこれは仲がいいのか?時折天霞までもが参戦している。その間にいる冥鎌は、攻撃が当たることはないが、何かもう帰りたくなった。

「ここだ。」

ギィ・・・と鈍い音で開いた扉。中には壁一面が本で埋め尽くされて、明りをつけなければ、真っ暗だ。

「ついでに俺も用意するつもりだった資料の方探すから、終わったら呼んでくれ。」

帰りも外まで案内すると言って、奥へと足を進めていく天霞。それを、見送ったチェシル。

「いいのか?」

「ナニガ?」

「…演技は俺には通用しない。わかってても、ここで演じることを選ぶのならそれでも構わないが…どうする?」

「…そうだね。でも、よくわかったね。」

ここへ来る直前、いきなり戻った正気に、あたふたしていたが、伊達に長年演じ続けていたわけではなく、そのまま演じてだますことができたと思っていたのに。

「気配がまったく違うからな。そういう感覚は人より強い。というより、俺の天使としての能力、なのかもしれないがな。凛々、お前は向こうの書物一通り頭に入れてきてくれ。」

「わかった。」

返事をしてとてとてと走っていく彼女に、走るなと声をかけたが、聞かないのはわかっているので、最近では一応注意するだけだが。

「ま、問題の塊がいるから演じるのだろうが、…好きにしたらいい。」

「悪いね。さすがに、今回はそんなに長くないと思うから…すぐに『チェシル』がでてくるよ。」

そう言って悲しそうに笑う彼の頭を撫で、冥鎌も本来の目的の方へ意識を戻した。