洗濯日和




 

今日も、いい感じに晴れて、風も気持ちがいい。こう言う日は気持ちよく洗濯物を干せるし、速く渇いて効率もいい。

布団も全部洗ってしまおう。そうしたら、今晩は気持ちよく皆寝られます。

申し遅れました。私、幻神楼で洗濯の全権を任されております晴香と言います。

実は、人魚と人間の間に生まれて陸上で生活する一族だったらしく、今でこそ人魚の血が薄れて特性は消えていますが、少々水に触れ過ぎると尾鰭がでてしまうのが難点な人魚もどきです。

あ、洗濯する際に手が水に触れ続けているだけではなりません。足が問題です。

でも、人魚もどきである為、肉食が苦手で、水から離れすぎても息苦しくなる厄介な体質で、仕事がまともにできません。そんな私はここでなら仕事をちゃんとできますし、館の主は人魚もどきだと知っても、むしろ仕事をしなくてもいたいだけいていいと言ってくれて、甘えて居座っていますが、やはりじっとしているのは性に合いませんし、私はちゃんとここの一員でいたいから率先して仕事を引きうけていたら、洗濯物の責任者になんてなってしまった次第です。

でも、ここの人達は泳ぎが得意な私のことを受け入れてくれて、中には人魚の尾鰭を見た事がある人もいますが、個性だと言ってくれました。時々子ども達に泳ぎ方を教えたりもしているんです。

それに、ここには思ったより変った人達もたくさんいるようなので、うれしくてこれからもここにいたいと思っています。

さて、話が少しずれてしまいましたが、とにかく私の仕事は洗濯です。今日も手伝ってくれる人達と集めた洗濯物を一斉に洗います。

中庭には大きな池があり、それは外へ川の流れで続いています。私がこの池を泳いで縄で結んだ洗濯物の数々を水の中に通して最後のすすぎをします。なので、いつもここで一緒に作業をする人達は私の事を人魚だと知っています。恥ずかしい気持ちもありますが、私にできることをして、受け入れてくれることが嬉しいので、これからもがんばっていくつもりです。

「次が最後です。」

皆でやれば、この館の住人のたくさんある衣服も布団もあっという間に終わる。それが終われば、夕昏に取り込むまで自由の時間。このまったりとした時間も好きです。

「終わり。お疲れ様でした。次は最近暗くなるのが速くなってきたので今日から1刻速く作業開始します。よろしくお願いします。」

解散すれば、もうお昼なので、皆食堂へ昼ご飯を食べに向かう。私は少しだけ水の中に浮いてから陸へ上がると、いつものように奏鈴が、私用に用意してくれたお弁当を持ってきてくれた。

「いつもありがとう。」

「いやいや、気にしないでおくれ。体質ばっかりは、仕方ないからね。」

そう言って、まだ水の中に入ったままの足…鰭を指す彼女に私は苦笑を返す。

「昔は嫌いだったけど、今は好きになれそう。」

「そうかい。自分を一番愛せるのも愛してやるべきなのも、自分だからねぇ。」

彼女も、かつて何もできなかった自分を嫌っていた。私と同じ。けれど、今は皆の為に作った料理をおいしいと食べてくれることがうれしくて、料理が得意だった自分をやっとかつてのように好きになれたそうだ。

「あ、そうだ。これ、綺麗になったよ。」

そう言って、私は先日彼女が大事にしていた服を汚してもう無理かなと諦めていたのを見かけ、声をかけて預かったのだ。いつも彼女にはおいしい料理をわざわざ別に作ってもらっているお礼でもあった。

「ありがとう。助かったよ、本当に。」

これは、簡単に諦められる程軽いものではなかったから。そう言った彼女に、本当に良かったと思った。

今日は一日晴れ。心地良い風が吹き抜け、今日も洗濯物が空を泳ぐ。

「明日は雨でお休みだけど、また明後日は晴れそうだから、主様の部屋のカーテンを洗おうかな。」

丁度お出かけで留守にするようだから。帰ってくるまでの桜達が掃除をしておくだろう。カーテンも洗濯したら、きっと気持ちいい。

「さて、昼寝を少ししようかな。」

洗濯日和の気持ちがいい一日だ。次の片付けまでこの空の下で眠るのもいいかもしれない。