気配はどんどん近くなる。

向こうに気づかれていることはないが、もう一つの…同業者のたまたまこっちへ訪問しようとしたのだろう、タイミング悪い相手はどちらの気配にも気づいているだろう。

「面倒なことにならないといいが…。」

足を止め、相手方を伺っていると、こちらへ現れた、予定外の訪問者が声をかけてきた。

「本日はどのようなご用件でこちらに?」

「用がないと来たら駄目なのかい?」

「貴方の本業から考えて、普通にこんなところを出歩いているとは思えないですが?」

「ま、確かに死神がうろうろしてたら物騒には違いないよね。」

軽く笑いながら言う彼は、死神でありベルセルでの歴史から消えた歴史を記憶する者、田所北斗だ。

基本的に皆が彼のことは死神だったり田所と呼ぶので、北斗という名前を忘れがちだ。

田所というのが彼を指す名前のように時々思える。

「ま、君の所の誰かをお迎えにきたわけじゃないから、そこは安心してよ。」

「もしそうなら、邪魔をするがな。」

「もう、駄目だよ〜運命捻じ曲げちゃ。」

「貴方の存在がそもそも運命捻じ曲げているようなものでしょう。私自身も、歪みの歯車の一部でしょうけど。」

天という場所から外れた天使。本来は堕天使になるはずなのに、今も尚、変わらず天使のままなのは、仲間や神の影響が大きいに違いない。

けれど、かつての事件のことで、戻るつもりはないので、堕天使であっても問題はないのだが。

「で、冥鎌はここへ来ようとする不届き者に用があるんだよね?」

「そうだが…まさか、貴方もですか?」

「そうなんだよね〜仕事上、内容はあまり言えないけど、彼等が仕事に関係しているから、任せてもらえないかな〜?」

そういうご相談に参上しました。びしっと敬礼するのが少しばかりふざけているように見えたが、彼に任せることにした。

彼が出てきたという事は、この世界においての違反者であることが多い。何にせよ、どうせ自分も相手をつぶす気だったのだ。彼がやってくれるというのなら、わざわざする必要もない。

「ありがと〜。ま、必要なことなら、また後日に今回の件で行くよ。」

じゃあねと手を振って軽やかに飛んでいった死神を見送り、冥鎌は館の方へ足を進めた。

気配は、敵と彼の動きがわかるように探りを入れながら。

 

 

 

思ったより、トラブルはあっさり片付いたようだ。

どんなことがあったのか、わざわざ知る気もないし、大事な場所が無事なら今はそれでいい。

「れんちゃん、行こう。」

いつもの日々が戻った。今日は凛々といつものように館の外へでかける。

寧爛に見送られ、外へ出れば、姿を見せた田所。

「とりあえず、片付いた。それだけは伝えておくよ。」

そう言って、彼は消えた。

何しにここへ向かっていたのか、何があったのか。わからない。

けど、それでいい。知らないことはよくない。けれど、必要以上に知る必要のないことも、この世界に多く存在する。

必要ならば、何れ知ることになる。

死神を束ねる王が下した決断なら、田所だけでなく、覆せるのはこの世界に限られている。

だから、これでいい。

頭から消し去り、凛々と出かけ先へと足を進める。

あの日から、毎年一日ずれて、彼女への報告の為に、何もない場所に何も埋められていない墓標へ手を合わせる為に。








<END>



田所end+++