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贈り物をする日(ValentineVer) いくら世界を裏側から『監視』し、安定を保つ為に暗躍している集団であっても、地方によって様々な習慣を取り入れて楽しく過ごすことだってある。 実際、続くときは続くが、暇な時は暇なのだ。むしろ、暇であることは望ましいのだが、持て余した時間が長過ぎる彼等は、次第に人々が行う行事というものを実際に行うことで、互いに交流したりするようになったのだ。 そして、普段、そんな行事とは無縁に思われる者達もその行事に巻き込まれる。そんなお話。 sid白城 季節のイベントの周辺だけ、情報収集もかねて、歪みの時だけ表に出す喫茶店を開店させる。いつからそうなったのかはもう覚えていないが、習慣というか、楽しみというか、おいしいと言って帰っていく客の笑顔を見るのが結構うれしいものだと思っている白城のある意味で我がままで趣味だった。 真代と司狼も、手作りの彼のお菓子の数々を仕事の後に食べれるので、その辺は文句はないようだ。それに、ある意味ここではない空間に引きこもっているより、人と関わる方がいろいろと勉強になることもある。 主でもある白灯はこういったことは苦手のようで出てこないが、こういう日に作る白城のお菓子をいつもより食べてくれるので、白城自身、うれしかったりする。 「お疲れ様でした。」 今日でイベントは最終日。最後まできっちりしてくれた二人に礼を言い、綺麗にラッピングされた包みをそれぞれ渡した。 「今日は本当にありがとうございました。」 あとは片付けることもそんなに多くないので、先に二人に戻ってもらい、残った白城は最後の仕上げにとりかかった。 また、しばらくの間、この店は閉まる。だが、またすぐに店を始められるように準備をした上で閉じるのだ。 「まだ、ここにいたのか。」 「ええ。次の為に。」 すいませんと振り返って、相手に謝るとむっとした少女がこちらに歩いてきた。 「それと、本日最後のお客様の持て成しが終わってませんから。」 どうぞと、席を進めると、彼女は席に座った。毎年行われる、二人だけのおかしなお茶会。 「これからも宜しくお願いしますね。」 「…こちらこそ。」 ある意味で、契約更新のような時間。それでも、こんな時代だ。白城にとっては大切な時間だ。そして、これからもこの時間を繰り返すことができるように、新たな罪を重ねていくのだろう。 sid寧爛・奏鈴・凛々 その日、寧爛は休みを貰った。人のように過ごす以上、四六時中入口の案内人として立つことは不自然であるし、万全の状態でいなければ、不法な侵入者を追いだすことができない。その為に、毎日休憩があるし、何日かに一度は休みも貰える。その代役はここに慣れている一般人でこちらの事情に知らない者ではあるが、そういう時は大体二人以上の複数で対応しているし、絶対に力で負けないような戦いに慣れている者がついているからこそ、であるが。 だが、実際休みを貰っても、寧爛はすることがない。確かに食事や睡眠を取らないといけない生き物であることは変わりないのだが、趣味と言ったものはないのだ。だから、こういった長い時間はぼーっと過ごすのが日常だった。時々、寧爛を見つけた子ども連中に世界のお話を聞かせてとせがまれてお話会みたいなことをしたり、水汲みの手伝いをしたり…結局ある意味で他の者達にとっての『仕事』をしているので、真面目だなと冥鎌に苦笑されたりした。 けれど、今日は違う。ちゃんとしたお休みで自分の為に時間を使うのだ。きっと、これがちゃんと休みの過ごし方なのだろう。 急いで、予定の調理場へと向かう。調理場といっても、この建物の規模の為、三か所ある。簡易な設備で誰でも利用できる第三調理室。軽食のお菓子といった類のものを用意するための第二調理室。一日二度の食事を提供する為の一番フル稼働して忙しい第一調理室。 今日向かうのは第二調理室だ。そして、本来なら第一調理室で率先して仕事をしている全ての調理の責任者でもある奏鈴がいる。 今日は、世間では大切な人に贈り物をする日らしい。まぁ、場所によって多少の風習の違いはあれど、そういった行事のイベントを大事にして、皆で協力して年に何度か行うこの機会に、寧爛も初めて参加するのだ。 いつもなら普段通りぼーっと水辺の傍で過ごしているのだろうが、今回は内容を聞いてやってみたいと思ったのだ。 そして、もし受け取ってもらえるのなら…恩人であるあの人に食べてもらいたいと思ったのだ。口にあうかはわからないし、はじめての試みで巧くいくかもわからない。それでも、あの人の為に何かをしたいと思ったのだ。 慣れない作業は思ったよりも難しく、気長に教えてくれるが、そんな奏鈴に申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、何とか形になった焼き菓子。形もあまりよくないし、そこまでおいしいものではない。だから、凹んでいたのだが、渡しておいでと背中を押してくれた奏鈴に、協力してくれた彼女に反対に失礼だと思い、思い切って渡すことにした。 「ちゃんと貰ってやるんだろう?主様。」 「ああ。」 彼女がその場から立ち去った後、背後に話しかけた奏鈴。姿を見せた冥鎌に笑う。 「だが、助かった。あいつは本当に人ではないことで一線を引いてしまう癖があるようだから。」 「そうだねぇ。いい子なんだが、どうしても遠慮してるみたいだしねぇ。」 それは私も気になっていたのだと彼女が言い、苦笑する。 「本当にいい子なんだが、いい子すぎて…思い出しちまうんだよ。」 いい子で、誰にも優しくて、身を犠牲にして、死んでしまった大事な大事な…ある意味、それを忘れる為にここで仕事に没頭しているところもあるが、彼女を見ていると過去を繰り返しているようで複雑なのだと彼女は言った。 「事情も知ってるし、あの時のこと、主様を怨んではいないよ。ただ、ふがいない自分が許せないだけなんだ。」 「…そうか。後悔のない生き方をしてくれればそれでいい。それに…いつも皆の為にありがとう。礼を言う。」 「もう、改めてそんなこと言われてもねぇ…。」 少し照れた彼女に、毎年のように贈るプレゼントを渡した。別に、それに深い意味があるわけじゃない。主だってこの屋敷の管理をしてくれる者達に、今後も仕事をやりやすいようにと贈るものだ。 「やだねえ。聞いてたのかい?」 プレゼントに気付いて困ったけれど、嬉しいような、けれど礼を言って、大事そうにそれを持っていた。 「じゃあ、行くところがあるので。後のことは頼む。」 「ああ。任せておくれよ。今日ぐらい、皆腹一杯笑顔になるお菓子をたくさん用意して迎えてやるよ。」 これを受け取った以上は、とそれをちらりと見せて。 その場を後にした冥鎌。きっと探しまわっているであろう凛々の元へ行くのだろう。 毎年、彼女もまたここでお菓子を一生懸命作って冥鎌に持っていくのだ。それを知っているからこそ、あまり長い間彼を引きとめるのも悪いと思って見送った。 「それにしても…本当に困った人だよ。」 嬉しくて、そんな彼の為に頑張ろうと思えてしまって…本当はとっくに死んで…きっと逢いに逝っただろうに。 今は亡き故郷にたくさん咲いていたこの花は、大事なあの子が好きだった…いや、私が好きで毎年誕生日だと贈ってくれた思い出の花。この近くでは見られないこれ。最近来た行商人が近くを通って、綺麗に咲く街道があると聞いて、見に行きたいと思ったのだ。そして、そのまま…と思ったこともきっと彼はお見通しなのだろう。 鉢植えに種。これからここでも育てて毎年見ることができるように、用意されたそれ。鉢植えはあくまで今見たいという願いを叶える為なのだろう。 「私は寧爛と同じくらい…それ以上に主様のことも、心配だよ。」 周りを気にしすぎるとても優しい人。 部屋に戻った冥鎌は、今いいかとやってきた寧爛から、はじめて作ったという彼女の贈り物を受け取り、お茶をお願いした。お茶を入れることだけは、此処へ来る一般客ではない連中の為に他の者達に頼むわけにいかず、お願いするようになってとても上手くなった彼女。彼女のお茶を、凛々も好きだった。だから、匂いがすれば勝手に出てくるだろう。 攻撃しながらかもしれないが。 「どうぞ。」 「ありがとう。…ああ、そうだ。」 これをと、冥鎌も寧爛へと贈り物を渡した。いつもは、水鳥である彼女の為に、涼しくなれるように雪の結晶を細工したブレスレットを渡していたが、今年はそれと違い、お返しのお菓子も用意していた。 彼女が主張することはないが、彼女にだって好みというものが存在する。 「ありがとうございます。」 ふわんと嬉しそうな笑みを浮かべる彼女を見て、一緒にどうだと席に誘うと、少し戸惑いながらもおずおずと座った。 彼女のいいところではあるが、もう少しぐらい我がままになってもいいものだが…凛々は我がままというか、我が道を行き過ぎてはいるが。 「れ〜ん〜ちゃ〜ん!み〜っけ!」 そういって、飛んできた少女。せっかく食べていた彼女に悪いが、凛々の分のお茶もお願いすると、すぐに出してくれた。本当にタイミングが悪いし、申し訳ない。 「凛々。他に誰かいる時は駄目だと何度も言っているだろう。」 「ごめんなさい。」 しゅんとした彼女に、ふぅとため息が出る。そして、そんな彼女にどうも寧爛は甘いようだ。どうぞとお茶を出して、そうするとすぐに笑顔でお礼を言ってお茶に手を出す。 本当に反省する気があるのか謎だが、自分の非はちゃんと認めるので、だからこそだろうが、あまり敵を作らないタイプだ。まぁ、例外として、絶対に相反して仲良くできないだろう奴もいるにはいるが…。現在は敵なので問題はないだろう。その二番手に好きじゃないと言う奴が、敵ではなくどちらかというと味方側なので困るのは内緒だが。 「あ、そうだ。れんちゃんこれ!」 食べて食べてとそれを渡してせがむ彼女に、判ったからと返事を返して不器用ながらもラッピングされたそれを開けた。中身は最初の頃に比べると形になってきた、歪なクッキー。だが、彼女の想いが詰まっている嬉しい贈り物だった。 「ありがとう。」 「うん。」 えへへ〜と笑う彼女の頭を撫でる。そして、つい同じように寧爛の頭も撫でてしまった。癖というのは恐ろしい。 だが、どうやら戸惑いはあるものの、怒ることはなかったので、問題はないだろう。 とりあえず、今日はのんびり客が来ても断って、お茶会をしていようかと思う。 sidゆう・世鷲 楽しそうに、何かを作る彼女に、一瞬恐怖を感じたのは気のせいではないはずだ。 何故なら、彼女は料理は普通に作れば上手いのに、毎回楽しいからという理由でろくでもないものを作りだすのだ。むしろ、薬品といったものや爆薬と呼んでもよいものを、だ。 この前なんて、フェンラと楽しく毒薬について語り合っていた時なんて、静かに退室したぐらいだ。 今回も逃げるかと、踵を返そうとしたが、どうやら遅かったようだ。 「あ、丁度良かった!世鷲〜。」 見つかってしまった。というより、こっちへきて大人しく待てと目が語っている。間違いなく逆らうと後々面倒なことになりかねないだろう。溜め息一つ、大人しく世鷲は諦めた。 「今日はさぁ、贈り物する日じゃん?だからね、珍しく普通に感謝の気持ちを込めて作って見たわけ。」 この前幻神楼言った時、料理長とかいう奏鈴という女に聞いたそうだ。今回の料理も彼女から教わってためしに作ったそうなので、もしかしたら、普通に食べれるものかもしれないと、少しだけほっとした。 「後少しで…よし、完成!」 そう言って出されたものは、懐かしい、かつて彼女が人だった頃、得意としていた料理だった。 「これ…。」 「確か、好きだったよね〜。」 彼女が作り方知ってて懐かしくなったから、つい作りたくなったの。そう言った彼女の笑顔はあの頃のままだった。 「それに、私の料理食べてたのは世鷲だけでしょ?あの頃さ、最初なんて下手過ぎて、途中から味見役かってくれる人いなくなってさ。」 コツを教えてくれて、少しずつ上達した料理。おいしいと言ってくれた言葉が嬉しくて頑張る気になったというのは、世鷲にゆうが言うことはないけれど。 本当に今回は感謝の気持ちで作ったのだ。 「おいしい。」 「そっか。」 良かった。最近の悲劇の積み重ねの日々の中、珍しく穏やかな時間を過ごせた二人は、そのまままったりと時間を過ごした。 あの頃、もっと続くはずだった未来を願うつもりはないが、今こういう機会があってもいいだろう。 「あと、これからもよろしく。」 「ああ。」 これからも。決してそんな保証がないとわかっていても、口にする約束。 どこかで、今度は大丈夫だと思えたからかもしれない。 sid冥界 その日、ある意味で戦争だった。 「ブラッディ・ヴァレンタイン!」 そう言いながら、本気で殺しにかかってきたチェシルに、毎年のことではあるが、真剣に相手をする天霞。 「今年も楽しそうだね〜。」 そんな殺伐とした中、隅っこでけたけた笑いながら立っている男、田所に天霞はついでにナイフを投げつけておく。 「ひどいな〜。」 「いっそのこと、貴様も死ねばいい。」 「何言ってるのさ。もう死んでるってば。一番其の事わかってるの、俺達や鈴本でしょ〜?」 「そうだな。」 いっそのこと、もう一度死ねとそう言って去っていった鈴本に、相変わらず面白みのない奴だなとぼやきながら、視線を二人の方へ戻した。 「でも、君達は本当に飽きないよね。」 「好きでやってるわけではない。必要にせまられて、だ。」 「田所構うなら、田所も仲間、イレル?」 「いらん。あれが混ざるとそれこそ面倒だ。」 「そっか。ワカッタ。じゃあ、殺し合い再会ダネ!」 そう言って、容赦ない攻撃を繰り広げる。それを交わし続ける。そんなやり取りを毎年やる。その日が終わるまでか、仕事が入るまでか、もしくはチェシルが飽きるまでと、期限は決まっていないのが問題だが。 「そういえば、『コウコウ』は相変わらずみたいだったよ。ある意味君達と似てるよね。」 気付かないまま、墓参りで用意して備えて…。まぁ、君達の方が繋がりはあっちより深いけれどねと言う田所に、黙れと言い返す。 「人との関わりなんて人の数だけあるんだから、好きにしたらいいと思うよ。」 出かけてくるよという田所に、もう帰ってくるなと言う天霞。またね〜と陽気に見送りながらも攻撃を続けるチェシル。 ある意味、大切な存在がお互い近くにあるということは、救いなのかもしれない。田所のように、もう傍にいないことに比べると…。 だから、時々羨ましく思えるのかもしれない。 「なんだか、人間ぽくてやだなぁ…。」 死神になると決めた時に、人間であることをやめたつもりなのに。 sid星架教会 その日、朝から忙しかった。 「足りないわ。」 「間に合わないっ!」 そうやって、あたふたと調理場を占拠する女達。この日がどういう日か知っている子ども達は手伝いは申し出ても、いつものように邪魔をすることは決してない。 だって、明日はお菓子を貰える日だからだ。つまり、今日はその下準備で、もし今日という日に問題を起こせば、明日のお菓子はなくなってしまうのだ。 といっても、教会の者達だけでなく、近隣の街や村にも配るので、そのせいで忙しさが増えているだけなのだが。とにかく、毎年この日は大量のお菓子を用意する。他にも行事というものがあるので、その時も作るのだが、今回のようなチョコレートケーキやココアクッキーを配るのは明日だけなので年に一度という表現もあながち間違いではない。そして、チョコレートが好きな子ども達はたくさんもらおうと、進んでお手伝いしてくれるので、そういう意味では楽だ。 ちなみに、他の日はいちごケーキの日や団子の日があるが、まぁ、子どもにとって、お菓子が食べられると言う口実なら何でも構わないのだ。 「ユエ、悪いけど、このリストのもの、急ぎで調達してきて。」 そう言って渡された買い物リスト。結構な量があり、適当に子ども達を呼んで街へと出かけた。 「ユエ殿。買い物か?」 街でばったり出会った見知った相手に、足を止める。 「そちらも…買い物のようなだ。」 「ああ。」 明日は騒がしくなるだろうからなと言った彼は、どこか嬉しそうにしながら、話をしてくれた。 このご時世、満足にお菓子を食べれない子ども達だって存在する。そんな彼等に毎日与える事が出来る程、余裕があるわけでもないので、こういった行事だけは盛大にやろうと思っていたのだが、確かに行う側も結構楽しんでいるのかもしれない。 そして、ありがとうという笑顔と言葉が、また次もという未来に繋がっていくのだろう。 「よければ、そちらも明日、こっちへ来れるのなら歓迎しよう。」 たくさん用意するから、近隣の子どもが出入りするから問題ないと言う彼の言葉に甘え、きっと話せば子ども達は教会のお菓子を手に入れた後、幻神楼へ行くだろう。 「ならば、こちらはこちらでお菓子を持参して配ろう。」 お互い、違う用意されたお菓子。きっと、二度楽しめるだろう。 「わかった。だが、凛々には気をつけるといい。あれは、お菓子だと知ると飛んできて根こそぎ取っていこうとするからな。」 一応言い聞かせてはおくが、というが、苦笑している彼の様子から、わけておくか、多く用意しておかないとなくなりそうだと思った。 今年は一段と忙しい一日になりそうだと、冥鎌と別れた後思ったユエ。だが、同時に今年は一段と楽しい日にもなりそうだと思うのだった。 sidメイカ 暇を持て余し、退屈だと叫ぶ少女、メイカ。 最近は本当に平和そのもので、確かによそではいろいろあるところもあるが、この国、この街は彼女の望み通り平和そのものだ。目ぼしい情報もなければ、守り人の仕事のようなこともない。悪事を働く山賊も出てこない。 珍しく、本当に何もない平和な日々が続いていた。 「平和なのはいいことじゃないですか。」 「そうね。確かにその通りよ。だけど、平和であっても、楽しいことはあるはずよ。なのに、それすらも何もないのよ。それを退屈だと言って何が悪いの?」 暇を持て余した彼女は、とてもイライラしていた。 「でしたら、御一緒にお菓子作りをしてはいかがでしょう?」 明日は丁度ヴァレンタインですからと言えば、少し考えた彼女はどうして私が作るのよと言い返してきた。 「日ごろの感謝の気持ちを込め、旦那様にお渡しになればいいじゃないですか。」 むぅっとむくれた彼女が、ぼそりと言った一言。料理なんてほとんどしたことないという事実だった。 だが、お仕えするようになって一度も見た事がないので、それは知っていた。だが、器用であるし、必要ならばいろいろなことを自分でこなしていく彼女だ。きっと、教えればできると思った。 まぁ、実際彼女は教えればあっさりと作ってしまったが。 だが、ラッピングのセンスが酷かった。お菓子までは良かったのに。 元々、そこまで器用ではないが、必要に迫られて様々なことをこなすようになったためにそれなりにできるように見られているが、根本的な不器用さは残っていたようだ。 「大丈夫ですよ。お嬢様、これは気持ちが大事なんですから。」 そう言って、渡す方向に話しがまとまったところで、話は終わる所だが、問題があった。 あれだけ暇だったというのに、当日になって盗難事件が起こり、犯人が隣国で指名手配されている犯罪集団だったのだ。 「貴方達、覚悟はできていて?」 そう言って、まったく笑っていない彼女の顔が、より一層相手に恐れを抱かせる。最初こそ、自分達の方が有利だと、いきがっていた連中であったが、年端もいかぬ少女一人に、完膚無きまでにやられる様は、滑稽だ。 「レイチェ、手加減はいらないわ。二度とこんなことできないように身体に教え込んであげるといいわ。」 「ほいな。お嬢様の許可がでたから、どんどんいくよ〜。」 暴走した女二人。ヒュオルですら近づくのを躊躇う状況。完全な八つ当たりだとわかっているが、彼等が悪いということで諦めてもらうことにしよう。 だって、せっかく渡そうとしたものを、渡す前に事件が起こり、挙句の果てに、荷物に入れていたせいで、奴らが勝手に勘違いして潰してしまったのだ。 確かに、今の彼女にはある意味で大切なものだ。死守すべきものだった。それを潰したのだ。完全に怒っている。 ヒュオルでもなかなか見る事がない、主の本気に、少々どうしたものかと考えているが、レイチェが悪ノリして暴れているので今更なのかもしれない。 それに、少しだけ、主の努力を無下にした奴等にヒュオルも怒っていた。だから、主がストレス発散できるのなら、しばらくこのままでもいいかと思うことにして、放置することにした。 その日、感謝の気持ちを贈る日が、彼等にとっては血の雨降る赤い日と成り代わった。 |