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また、やってきた。 堂々と化け物が出歩ける日が。 夏は死人が出ても、そういう季節だからそこまで驚かない。 そして秋が少し過ぎたこの頃は死人どころか、人間ではないものが混ざっていても、人間は気にしない。 本来は収穫祭として収穫を祝ったり、死者に対して何かする夏にあるお盆とは違うものであるというところもあるが、ここ、ベルセルにおいては少々変わったことをする。 それを楽しみにしているものも多いが、面倒だと嫌がるものもいる。 そんな彼等の一日の物語。 贈り物をする日−HalloWeenVer sidシュプレイン 「あら、珍しいわね。」 「ま、それは事実だから否定もしないわ。」 そう言って、レセリアは持っていたものを彼女に渡した。 「頼まれていたもの。」 「ありがとう。まさか、今日くれるとは思わなかったけどね。」 「ちょうど、今日咲いたからよ。」 そう言って、レセリアはそのまま立ち去ろうとした。 「本当は、秋祭り見て行ってほしかったけどね。」 「仕方ないじゃない。今日は守り人は全員女王の城へ集合することが決まっているんだもの。」 だから、春祭りのシュプレインの舞は見れるし、己がやる冬祭りもまた同じ。夏はレセリアが氷の精霊であるが故に暑さに耐えられず見ることが叶わないが、それ以外で毎年見れないのが秋祭りだ。 「ま、ある意味秋祭りみたいなものだから、一緒かもしれないから大丈夫よ。」 「私は一緒に騒ぎたいけれど、残念ね。」 「何言ってるのよ。貴方は、あの人と一緒に見るんでしょ?」 邪魔するなんてこと、する気はないから安心してちょうだいと言って、今度こそ彼女は去って行った。 「もう…でも、仕方ないけど。」 そう言って、渡されたそれを見て、自然と笑みが浮かぶ。 彼女が好きだと言っていた花。希少種の一種となり、なかなか手に入らないこれを、毎年レセリアは律儀に届けてくれる。 シュプレインが頼んだのは、彼女が寂しそうにもう見れないことに嘆いていて、相談して頼んだ最初だけ。それ以降は頼んでいないのに届けてくれている。覚えていてくれたことに二度目の時は驚いたが、嬉しかったのも事実だ。 今年も彼女の笑顔を、幸せを、糧に頑張ろうと思う。たとえ、報われない想いを抱き続けることになっても、彼女が嫌っていないという事実さえあればもう充分なのだから。 sidメイカ・ヒュオル・レイチェ その日、街をあげて盛大な祭りが開かれた。 始まりは5日前のこと。突然仮装祭りをすると言い出したお嬢様に、一瞬何を言ったのかわからず聞き返した後、こういうのがしたいのとかいつまんで説明されること1時間。 時間はだいたい4日。それですべての準備と住人達への連絡と説得をすることになった。 結論から言って、飾らないお嬢様の人気と元々お祭り好きな住人のおかげか、スムーズに開催が決定し、執り行われることになった。 「さぁ、今日はいろんな家に言ってお菓子か悪戯で楽しんで騒ぐわよ!」 それに合わせて、集まった子どもが「おー」と声を上げ、町中へと散って走っていく。大人も子どもも、皆お化けの仮装をして楽しむ。 「で、何でお前はその衣装を選んだ?」 「ん?いいじゃない。誰もわかりっこないんですから。」 お嬢様は走ってどこかにいってもう見えない。ここに残って周囲に異変がないか監視もかねて、もう一度全員が集まる広場で待機するヒュオルは同じ従者であるレイチェの恰好をもう一度みてため息をつく。 「失礼だな。」 「お前の存在の方が、間違いなく失礼だ。本物が本物の恰好するなよ。」 「いいじゃないですか。本当はお嬢様に、と思ったのですが、お嬢様が私は箒好きだからこれだとおっしゃったからですよ。」 「成程。原因はお嬢様と箒か。」 「む、箒は悪くないです。むしろ神です。」 「会話がすでに変わってるじゃないか。」 疲れる。お嬢様に頼まれて作った妖精の衣装も大変で疲れたが、同じ従者の魔女と待つということも思った以上に疲れる。 「でも、似合ってますよ。芸もなく忍にするのかと思ってましたが、悪魔にしたんですね。」 「褒められても嬉しくないし、サービスする気もないしな。それに、忍なんてものに決まった衣装というものがそもそも存在しない。」 「ああ、そうですね。むしろ暗い色の動きやすい服だったら何でもよさそうですね。あ、言っておきますが、魔女もある意味当主が身に着けるものとして装飾や衣装はあるけど、それ以外はないし、今着てる服だって、ある意味、人間が想像したものであって正しくないですから。」 「そうなのか。」 「そうなのです。」 「…。」 「…。」 「暇だな。」 「暇ですね。」 「お嬢様は子どもと一緒に楽しそうだけどな。」 「住人達も楽しそうだしいいじゃないですか。」 「そうだな。」 「そうです。」 「平和だな。」 「平和が一番です。」 その後、時間がきて再び広場に集まり、盛大に結果発表がされる。誰が一番お菓子を貰ったか。 楽しい夜は賑やかな笑い声と共に過ぎていく。平和なのもいいなと思っている二人に、お土産としてメイカから渡されたお菓子を見て、苦笑する。 この町は彼女がいたら平和そうだと笑う二人。わからないメイカだけが何なのよと騒ぐ。 そんな夜。 sidネル・セイレ 「主様…。」 「今年もいっちゃったっすねぇ。」 ぼんやりと過ごす二人。 今年も盛大にお菓子を作ってある意味お菓子祭り状態になった。 「また、戻る。たくさんの、魂。」 年に何度か起こる、この世のものではないものが、さ迷い歩くことが多い時期。 「俺は見えないから、わからないからなぁ…主様だと見えてそうだけど。」 「主様…きっと、見えてる。けど、悪いものも混ざってる。だから、主様はあえて『見ない』んだと思う。」 だけど、人がいいから時々話し相手になって、そのおかげで行くべき場所へ消えていく魂も多い。 「時々、主様を連れて行かれるんじゃないかって、思う。 「ああ。それは俺も思うな。無駄にいい人だから、仕方ないなって感じで普通にすーっといっちまいそうだしな。」 そうならないように、守るつもりだけどなと二人で笑いあう。 早く帰ってくればいいのにと思いながら、賑やかな声をバック音楽にして、空をぼんやりと眺めた。 sid奏鈴・シャルテ 「やっほー」と場違いな感じでぬけた声が厨房へと響いた。 「おや、どうしたんだい?」 「ね、ね、奏鈴みてよ。」 そう言って、シャルテが持ってきたのは大きなカボチャだった。 「ね、すごいでしょ?場所によっては、これで収穫祭とかお盆みたいな感じなのとかお祭りあるんだけど、ここもやらない?」 そういって、シャルテが大きなお化けカボチャを作ったことによって始まった、幻神楼の収穫祭という名ののお菓子を食べて騒ぐお祭り。 時々、主である冥鎌が必ず出かける時期があるためにそれを避けようとするが、今年は思いきりかぶって留守になってしまった。 だが、明日には戻るし、用意しておいておけば食べて感想を言ってくれるので、普段の食事同様用意だけしておく。 「今年もやりがいがあるわね。」 「でしょ?よく育ったしね。さ、こっちもお化けカボチャに顔つくって提灯にするよー!」 そう言って、今日は掃除を休みにして子ども集めて作業をしだす。 「こっちもやるよ。全員配置に!」 料理長の号令と共に、補佐する調理人員達も気合を入れて作り始める。 こうやって、毎年何度かみんなでいろんなことをするため、ここの住人はもう家族のようなものだ。 だから、皆進んで楽しもうとするし、家族だから助けようとする。誰もが過去に問題をかかえているのに、人の付き合い方を知らない連中も多かったのに、この一体感から、誰もこの場所に不満を唱えない。 ここが居場所なんだと、心から思う。 sid琴詠・奇蝶 前日、おかしな動きがあるから監視を続けていたら、馬鹿な連中が現れた。 「悪いが、明日は祭りだ。邪魔されるわけにはいかない。」 「いつの間に…っ?!」 「向こうは一人だ。やっちまえ。」 「へぇ。一人相手に多勢って恰好悪いね。」 「なっ!」 「たかが二人だ。一人は女だ。」 何十人と言う、ろくでなし集団。多勢に無勢。勝利を疑わない。相手の技量も図れない彼等の末路を彼らが気づいていない。 「悪いが、本日から主様が留守だ。」 「守るためなら、容赦するつもりはない。」 そう、すでに人を斬ったことがある罪人なのだから。一人も二人も変わらない。 「命が惜しければすぐに立ち去れ。」 「ここから一歩でも進めば保証はしないよ。」 忠告は無視される。その瞬間、動く風。 彼等は何が起こったのか理解する前に、次々と倒れ、後に残った者達は、得体のしれない恐怖からがたがた震えながら、刃を振り回す。 そして― 「サヨウナラ。」 静かに終わる、命と戦闘。 大事な家と家族である仲間を守るため、すでに汚れた手を再び汚すことなんていとわない。 「明日、こいつら成仏せず彷徨ってたら嫌だな。」 「そうしたら、もう一度斬ればいい。」 「幽霊って斬れるのか?」 「知らん。お前だって殴れないだろ。」 「だろうな。…ま、どうにでもなるだろ。」 人間だろうと化け物だろうと幽霊だろうと、あの場所を脅かす敵なら容赦しない。ただ、それだけのこと。 「お、いい匂い。」 「今晩はシチューか。」 「みたいだね。明日はカボチャずくしだろうけどな。」 「カボチャのポタージュスープが飲みたい。」 「そうだな。今からリクエストしておくか。あ、でもその前に勝負だ!」 「ふざけるな。先にこの始末してからだ。」 「あ、そっか。確かに血の匂い落ちにくいし、余計に変なの呼んでも困るしね。」 おとなしく引き下がった奇蝶をつれ、洗い流すために『家』へと戻る。 sid七騎士 その日、街を彩る灯りと収穫された作物がそのイベントが始まることを知らせる。 だが、生憎興味もないし、警備する程問題が起こる日でもないので、相変わらずサボって昼寝をする七騎士の一人、キュレイアーツ。遠くで、自分を探す騎士団長の声が聞こえるが、知らないふりだ。 本当に真面目で真っ直ぐすぎる女なので、何事にも全力だ。 「ま、それがあの団長殿のいいとこだが…ロウシェもはっきりすればいいのに。」 あの二人のことは深く知らないが、全く知らないわけではないので、いろいろ面倒だなといつも思っている。 周囲は誰も知らない。何せ、あの騎士団長殿は過去の記憶がない。それが何故なのかまでは知らないが、そのせいで、過去の知り合いのことも忘れている。それなのに、過去の知り合いであり、近い存在だったあの男は今も名乗らず他人として傍にいる。 結論から言って、仕事一筋の仕事馬鹿な騎士団長殿だが、ともに過ごす年月と共にあの男のことをどうも気になるようになり、だが仕事馬鹿だから真面目に考えすぎて恋を横においてしまっている。 それを、あの男はそれが彼女の選んだ道ならばとあえて言わずに傍にいる。 「そういえば、こんな季節だったんだな。」 記憶のない女がこの国で騎士になると王に宣言して上まで上り詰めた。その始まりの季節。 ちょうど、トラブルが起きて、その問題となった山賊共を一人で成敗し、今の騎士を作り上げた女騎士。 「こんなとこにいたのか。」 「ワーテルエか。何か用か?」 「用かじゃないだろ。警備の仕事をサボって…というより、面倒なのが町に入りこんだらしい。」 「へぇ。」 「だから、そいつらが問題を起こす前に片づけることになった。」 「そいつはまた…。」 今考えていたあの日の再来のようだ。 「ま、俺が行く必要なさそうだけどな。」 そう言って、ある方向を見る。 「まぁ、一応形式だけでもな。」 それは呼びに来た彼もわかっているのだろう。 「後片付けだけは手伝いますか。」 きっと、盛大に使役する精霊を呼んで、徹底的に敵を排除してせっかく準備した祭りの用意も被害を受けている可能性があるから。 「ロウシェには、記憶を思い出させるより、周囲への影響のことをもっと考えさせるように言ってくれるように頼むべきかもしれないな。」 どうせ、あの騎士団長殿は、真っ直ぐすぎて意見を曲げない頑固さがある。それを唯一曲げさせることができるのが彼なのだから。 「でも、本当馬鹿だよね。」 この国に物騒な騎士団長殿がいることを知っているはずなのに。イベントの遂行を絶対の任務として真面目すぎる彼女が絶対やり通すために手加減なんてしないことぐらい。 「さて、みなさん、危険ですからここから下がって下さい。」 祭りの前の盛大な大仕事が始まる。 sid守り人達の晩餐-女王と田所 その日、年に何度かあるベルセル本部である女王の城へ招集がかかる日。 定期報告会の日やただのイベントのような日など、理由はいろいろあるが、今回はあくまでイベントの方で気楽に参加する者達が多い。あくまで多いだけで、面倒だという連中にとっては義務で参加しているだけのものだ。 そもそも、この召集の際でも、女王が表だって姿を見せることはない。だから、誰も知らないし、知らない相手に対して何か思い入れがあるわけでもない。 だから、適当に過ごして帰るものが多い。元々は、普段合わない他の守り人との顔合わせと情報交換もかねた場として設けられて居るだけで、それ以上の意味はない。 今晩も、顔見知りの連中に挨拶したり、お互い思うところのある異変の欠片のことを話したり、ただぼんやり食事をしたり、各々に過ごす。 「それで、結局今回も君だけは参加しないんだねぇ。」 「そればっかりは仕方ないさ。」 女王の正体を知られるわけにはいかないからねと、その『青年』は困ったように笑う。 「ま、俺はどっちでもいいけどね。あくまで、依頼したのが死神様で、その背後にいるのが『ベルセル君』なんだから。」 女王に命令の権限もないし、田所もまた、同じ。 「でも、変な感じだよね。元々あった女王の剣は今や無用の争いの火種でしかなく、今ある力が新たな女王の剣になりえようとするなんて。」 同じことの繰り返し。終わりはどこにあるのか。 「ま、そもそも女王の剣とかつて呼ばれたものが今もそうであるとは限らない。あくまで、女王の剣というのが、女王の為に存在する力であるから、女王から離れた時点でその名誉から離れるべきだ。」 名誉。力。強い自尊心から孤立していく者達は、いつしか隔離された人と交れない存在となった。 「女王の為の剣となり盾となる。全ては敬愛する女王の為に、この命さえ惜しくはない。全ては女王を守る為、これは戦争だ。」 「それ、あまり好きじゃないけどね。」 「だから、そうやって女王の知り合いとして女王を隠して彼等と会うんでしょ?」 「まぁね。」 確かに女王は生贄という存在だ。だが、ただそこにじっとしていたらいいだけのことで、死んでいく者達をみていることしかできない存在で、いつもそれが嫌で、愛する者の為、結局生贄としているままでいないことを選ぶ。 だが、自分は違う。彼等がたとえ新しい女王の剣であったとしても、同じ舞台の上で同じように戦いたい。だから、力がないことはわかっているから、せめて同じ舞台の上で、ちゃんと同じこの世界に生きる者として見届けることを選んだ。 「ま、死神様みたいに悟りみたいになれとは言わないけど、反乱だけはやめてよね?」 継承の際にごたごたしたんだからと、守り人も知らない過去をちゃんと見てきた彼に笑みだけ返し、彼はすっと城の中へと消えた。 sid紅 今日も、決まりであるからこの場所へきた。いつものように、弟と一緒に。 ここへ来るたび、思い出す。過去のこと。守れなかった彼女たちが今もここにいるようで、それでもいないということを実感して辛い。 ここは、あまりにも彼女たちの思いが強く残りすぎている。 願わくば、彼女たちに幸せを。そして、大事な人たちと共にまたこれからがあることを。 「私はもう、いらない。」 これ以上、何もいらない。弟がいる。同じ目的を持つ仲間がいる。それだけで十分。 だから、それ以外に対してもう心を許すつもりはない。 「姉さん?」 どうしたのと声をかける弟に首を横に振って何もないと示し、持っていたお皿に盛られた料理を口にする。 あと、何度こうやって過ごせるのだろう。 弟においしいと笑みを返すと、嬉しそうに笑う。 私はこの笑顔さえ守れるのなら、他の人間がどれだけ犠牲になろうと、歪みのせいでおかしくなったとしても、最後まで助けようとあがくのをやめる。もう迷わない。そう、改めて心に決めた。 あがけばあがくほど、大切なものから手から零れ落ちる。なら、大切なものだけつかみ続ければいい。 それがどれだけ、他者から冷酷だと言われようとも。 sid白灯 また、気配がする。きっと、ここにいる何人かは気づいているだろう、その気配、その正体。 「だが、あの方もまた、まだ気づいていないのだろうな。」 正体不明の女王の存在が明るみに出ない今日。女王としてでなく、ただの伝達係として近くにいる。その彼ですら気づかずに、こちらを見ている気配がある。 「気になるなら来ればいいものを…。」 「どうかしましたか?」 「何でもない。それより白城。あいつらはどうした?」 「何だか、ゆうさんはレセリアさんに追いかけまわされてますよ。」 そう言って、賑やかなその場所を指す白城。 「まったく…。」 相変わらずな彼等の姿。すっと、遠のいて消えた気配。 「そんなに人の世に混じりたいのなら、勝手に混ざればいいものを…。」 面倒な奴等だと、対象の奴等に文句を言い、出された料理を口にする。 「ま、仕方ないんじゃない?だって、どっちも不器用さんだからね。」 「そういうお前もな、田所。」 だからキライだと言って背後に立つ男から離れた。 「本当、手厳しいね。」 苦笑する男もまた、そこから姿を消した。 sid冥鎌 「ほどほどにしろよ。」 「凛々いい子だから、大丈夫。」 そう言って、先程からずっと他の連中と暴れる凛々の姿にため息一つ。 服を着せると言う名目で騒いでいたゆうも参加して、煽っている。ボロボロになっても笑ってる陣。まったく関与する気のない心。あたふたするヴァーティエ。それぞれが今をある意味楽しんでいるのだろうが、どうも、楽しめる気にはなれない。 先程から感じる気配のせいだろう。 「せっかくだから、挨拶してきたらどうだ?」 「いきなり話しかけるのは反則じゃないか?」 「人の背後にいきなり立つ奴に言われたくないな。」 「相変わらず酷いね。」 そのまま隣にきて立つ胡散臭い男。 「で、どうなんだ?本当の意味で、主だろ。」 「そうだね。だけど、今はあくまでゆえるだからね。」 霊皇でも十二の守護天使でもない、ただの守り人の一人でしかないから、今は会うべきではないのだと彼は言った。 「面倒臭いな。」 「そうだね。けど、同じであって、違うからね。」 「…。」 「まぁ、違うものでも、君を大切に想う気持ちだけは『全員』同じなんだけどね。」 「やっぱり、面倒臭い男だな。」 そうだねと無理に笑う男に、仕方ないので近くにあったお菓子を渡してやる。 「俺はそろそろ子守の時間だ。お前もそれ食べて子守に戻ったらどうだ?」 ゆえるを探して泣きそうになっている彼の使い魔の一人を指して、冥鎌は賑やかなその場へと足を進める。 sidエピローグ 今日は死人や化け物が人の中に紛れても誰も気づかない、そんな日。 今はこの世界にいない姉が、今年は紛れていないだろうかと一人きりの女王の椅子へ戻るさながらに探しながら、今年もいないことを思い知らされて眠る夜。 歪んだこの世界の終わりのカウントダウン。すでに始まっているそれが、すぐ背後まで迫っている。 守り人達もまた、過去を思い、そして未来を思う。 この世界に本当に明日というものが存在するのかどうか。 もし叶うのならば…いや、それはきっと叶うことのないことだろう。 願わくば、また次もこうして集まれる平和であることを願って、彼等は元の場所へ帰っていく。 女王もまた、一人の世界へと帰り、それを歴史の一つとして記すために、一人の死神が見届ける。 |